転生したグリードがスライムと相棒になった件 作:バンドリーマーV
子供達に精霊を宿らせてから数日後。
クロエ「スパァイクっ!」
リムル「ぎゃ~!?」
ランガ「我が主~!?」
ゴーガ「リムル様ぁあっ!?」
ゴーダ「あっちゃ…」
リムルは子供達のバレーのボールになり、空にぶっ飛んで行った。
ゴーダ「落ち着け、あれぐらいどうってことない」
ゴーガ/ランガ「「は、はい」」
ゴーダ「そういや、そろそろ野外訓練か」
ゴーガ「自由学園の毎年恒例行事でしたか。クラスごとに競い合うという…」
数日かけて護衛対象となる教師を目的地に送り届ける。また、郊外の洞窟探索訓練も合わせて行う。行き先の町の、グラトル伯爵の屋敷に毎年泊めてもらっているとか。
ゴーダ「担任は贔屓防止に護衛対象にはならないがな」
ゴーガ「クロエ達Sクラスは、こういう行事には参加が少ないと聞いておりましたが…」
ゴーダ「リムルの奴が、ジェフ先生とかいうイヤミなオッサン教師と生徒自慢で喧嘩した」
ゴーガ「あぁ、成る程…」
ゴーダ「リムルはAクラスの護衛対象、俺は副担だから、ゴール地点に先回りして待ってるだけだろうが…どうなることやら…」
そして野外訓練当日。
ウツロ「私としても気になるしね~…」
ティスという女性教師を護衛し、馬車(とは名ばかりのリムルが用意したキャンピングカー)で進むクロエ達Sクラスを、遠くから見守るウツロ。子供達が寝静まった夜、ティスは呟く。
ティス「…貴女の生徒達、とても素晴らしい子達です。私もいつか、貴女のような先生に…」
ウツロ「…だってさ、シズ」
ウツロは胸に手を当て、笑みを浮かべた。翌日、一番乗りでグラトルの町に到着したSクラスは、洞窟探索訓練の下見に向かったのだが…
ウツロ「さぁて、どうしてるかな…ん?」
ケンヤ「お前ら盗賊かなんかか?」
ティス「えぇっ!?」
子供達とティスは、何故か洞窟内に居座った盗賊団に囲まれていた。多分いつぞや、ドワルゴンの門の前でリムルとトラブった奴ら。
ウツロ(…何でこんなところに?でもまぁ…)
ケンヤ「先生は下がってな」
ティス「ちょっとあなた達!これは訓練じゃないのよ!?」
ケンヤ「まぁまぁ!護衛対象は大人しく守られてなって!俺達がこいつらをぶちのめすから!」
ウツロ(あの子達の敵じゃないか)
盗賊団はあっという間に、子供達に成敗された。
ティス「…(;゚д゚)…」(唖然)
盗賊団は縛り上げたが…
「これはこれは、どういう状況ですか?」
グラトル伯爵の執事が現れた。
ウツロ「…!何、この気配…?」
ティス「ゲスダーさん、無事でよかった…え?」
子供達がティスを守るように前に出る。
ケンヤ「…違う」
リョウタ「あれは、執事じゃない…!」
ケンヤ「執事どころか、人間じゃない!」
光の精霊『正解だぜケンちゃん。妖魔が人間に化けてるんだ』
ケンヤに宿る光の精霊が反応する。
ケンヤ「お前は妖魔だな!」
ウツロ「妖魔…ファントム…!?」
妖魔「フフ、まさか見破るとはね…!」
妖魔(ファントム)は異形の姿を現す。
妖魔「やる気満々のようですね。では、参りますよ」
『『『ッ!』』』
ティス「皆さん、逃げて!」
さすがのケンヤ達も、妖魔相手には苦戦し、吹き飛ばされ、気を失う。
ウツロ「まずい…!変身ッ!」
《セイウチ!シロクマ!ペンギン!》
《ウ・ツ・ロ~・ウツロ・ウ・ツ・ロ~…!》
《──ギンシロセイ!》
ウツロは変身し、ティスの前に出た。
ティス「え…!?だ、誰…!」
ウツロ「話は後、下がってて」
ウツロはメダジャリバーで斬りかかる。
妖魔「ほう、なかなかの力だ…!」
ウツロ「フッ!」
ウツロは氷のエネルギーを刃に纏わせ、氷の刃を飛ばす。
妖魔「ヌッ…!だが…!」
妖魔は倒れたクロエに刃を向ける。
妖魔「動くな」
ウツロ「ッ!」
妖魔「武器を捨て、その変身を解きなさい」
ウツロ「チッ…」
ウツロはメダジャリバーを投げ捨て、変身を解除した。
ティス「え…し、シズ先生?」
ウツロ「違う、説明は後」
ティス「は、はい…」
妖魔「今西方聖教会に目をつけられるのは困るのだ。我ら妖魔軍先見部隊は、まだ少数でしか活動出来ていない。では先生、一人選んでもらいましょう」
ティス「どういう意味…!」
妖魔「そのままの意味です。ここに隷属の首輪があります。生きながらえる代わりに、我らに隷属する子供を1人、選ぶのです。そして選ばれなかった者は、その手で殺してください」
ティス「!?」
妖魔「拒否すれば全員死にますよぉ?」
ウツロ「ゲスが…」
ティス「…っ…私は…」
ティス「私は…教師です!」
妖魔「あ?」
ティス「私が憧れた人は、全身全霊をかけて、子供達を守ろうとした。そんなあの人に…私は、少しでも近づきたい!」
ティスはメダジャリバーを拾い上げ、構える。
ティス「例え1秒であったとしても、あの人がそうしたように、全力で、子供達を守る!」
ウツロ「へ~…シズも根性ある後輩もったじゃないのさ」
ウツロは笑みを浮かべる。
ティス「私は…この子達を一度見捨ててしまった。どうしようもない、救う手立てがないのだからって…向き合うのを避けていた。私はもう…二度と見捨てたりはしないッ!」
妖魔「…フン。貴女にはできる限りの苦痛を与え、楽しませてもらいましょう…!」
妖魔が飛び掛かる。
ウツロ「ッ!」
ティス(私はどうなってもいい…!この子達だけでも、助けてッ!)
ティス「──召喚ッ!」
ティスが叫んだと同時に…時間が止まった。
『クフフ…その願い、条件次第では引き受けて差し上げますよ』
ティス「だ、誰…?」
『私のことなどどうでもいい。契約に応じる気はありますか?』
ティス「子供達を助けてくれるの…?」
『えぇ。シズという女には借りがありましてね』
ティス「シズ先生に?」
『借りはここで返しておきたいのです』
ティス「…なら、貴方を信じます…!どんな条件でも構いません!あの子達を助けて!」
『話が早くて助かります。ですが、もっと慎重になった方がいいですよ?特に、悪魔を相手に契約する時はね…』
時間が動き、魔法陣が現れる。
ウツロ「この陣…悪魔召喚…?」
妖魔「召喚だと!?バカめ!貴様如きが…!」
『クフフ…!』
黒髪で礼服姿の上位魔将(アークデーモン)が現れ、翼を広げた。
ウツロ「…!」
ウツロは目を見開く。
ウツロ「…『クロ』…?」
妖魔「デーモンを召喚したのか!?この気配…使役型ではなく、自立型か!」
クロ「御名答。妖魔族(ファントム)にしては、少しは博識みたいですね」
クロと呼ばれた悪魔は、不敵な笑みを浮かべる。
妖魔「舐めるな!その女が呼び出せる程度ならば、この私が負けるはずもない!」
クロ「ほう?その根拠が知りたくもありますが、時間がありません」
妖魔「グアッ!?」
クロは一瞬で悪魔の背後に回り、背中に腕を突き刺すと、依り代にされていた執事を引っ張り出し、妖魔の首を掴んだ。
妖魔「ッ!?」
クロ「簡単に背中が取れましたよ。お強い筈では?」
妖魔「ヒッ…!ギァアアアアアアアッ!?」
妖魔は四肢を次々と斬り落とされ、絶叫と共に血が噴き出す。
ウツロ「…相変わらず容赦ない奴」
ティス「あ…ぁ…!?」
ウツロは呆れ、ティスはあまりに凄惨な光景に、恐怖で震えるしかない。
妖魔「ギァアアアアアアアッ…アッ…」
息絶えた妖魔の体を、クロは投げ捨てた。
クロ「さて」
ティス「ひっ…!?」
ウツロ「あんま先生ビビらせないでよ、クロ」
ウツロが震えるティスとクロの間に入った。
クロ「おやおや、貴女はシズの中にいた…ウツロとか言いましたか」
ウツロ「やっぱりあんた、昔から私の存在に気付いてたよね」
クロ「当然です。イフリートとは正反対の氷の力を、僅かに感じて探ってみたんですよ」
ウツロ「全く、相変わらずのチート悪魔め…今回も瞬殺だし」
クロ「フェルドウェイの配下と言えど雑魚、遊び相手にすらなりませんよ」
シズとクロの奇妙な縁は、40年前に始まった。
クロ『その仮面…その“時間圧”は、まさか無限?無限だと…?興味深い…その仮面、時を越
えているとしか思えませんね…!』
フィルトウッド王国にて偶然シズと出会い、戦闘になったが、シズの仮面が持つ特殊な力に興味を持ち、一時撤退。
シズは国王や貴族の陰謀に巻き込まれて危機に陥ったのだが、そこにクロが現れ、敵を殺害。
実はクロは、国王や貴族に恨みを持つ者達の悪魔召喚に気まぐれで応じていたのだった。
クロ『口裏を合わせてくれるなら、貴女を狙うのはやめて差し上げますよ』
二人は相談の上で口裏を合わせ、クロの存在を隠した。
その後も、シズとクロか度々鉢合わせることになる。
ある時は戦い、ある時は共闘し、奇妙な縁で結ばれた。
シズ『あら、今回は味方?まぁとりあえず座って…食べる?』←焼きトカゲ
クロ『もっといいもの食べた方がいいですよ。引きます』
シズは割とすぐ順応していたが。
数年前、近くに来たからと、自由学園にも一度顔を出したクロ。
シズと話しているのを、子供達も遠くから見てていた。アリスにストーカー呼ばわりされたことを聞いた時は、ウツロはシズの中で爆笑したものだ。
そして、シズが自由学園を離れ、子供達を救う手立てを探しに旅立つ時。
クロ『…確かに、仰ることも分かります。我々悪魔も、貴女方異世界人も、この世界の住人にとっては同じ…兵器でしょう』
シズ『私は…この世界が嫌い。そんな選択をする…せざるを得ないこの世界が…でも、あの子達にはそんな思いをして欲しくない。幸せに生きて欲しい…この世界で…』
クロ『なるほど…素晴らしい考えです。だから貴女は旅立つのですね。弱き者のために、一縷の望みを求め…残された僅かな時間に懸けて』
クロ:──あの子達の気持ちを置き去りに。彼女は英雄の照合に見合う魂の輝きがある。ですが、時として…悪魔よりも残酷でしょうか。
クロ『貴女と顔を合わせるのも、これが最後でしょう。お気を付けて』
シズ『待って!もしも…もしもできるなら…私が死んだ後も、世界の行く末を見届けて──』
クロ『よしなさい。悪魔に願い事をするとロクなことになりませんよ。それに…貴女と私は相容れません。貴女はこの世界を嫌いと言いましたが、私は…大好きなのですから』
シズ『…そう。さようなら…クロ』
シズは少し寂しげな笑みを浮かべ、クロを見送った…。
クロ「あの時のシズの願いを、今は貴女が継いでいるわけだ」
ウツロ「そうだね…私は、シズの欲望を叶える」
クロ「クフフ、貴女も中々面白い。シズが目を覚ましたら、昔の借りは返したと伝えてください」
ウツロ「はいはい、さっさとかえんなよ」
クロ「えぇ、その前に…」
クロはティスを見る。
クロ「長々と話をする暇はありません。召喚主の貴女に負担をかけぬよう、これでも気を遣っているのですよ。それよりも、報酬を頂きたいのですが、よろしいですか?」
ティス「…っ…覚悟は、出来ているわ」
クロ「それでは、要求を告げます。私のことは、一切秘密にする事」
ティス「…え?」
クロ「この約定を違えた時、貴女の魂を頂くことになるので、ご注意を」
ティス「え…それだけ?」
クロ「えぇ。今回の件は、シズに借りを返しただけなので、その他のことはどうでもいいのです」
ウツロ「何だかんだ言って、シズとクロって仲良いよね」
クロ「うるさいですよ、ただの腐れ縁です」
ウツロ「はいはい」
ティス「あ、ありがとう…でも、この状況をどう説明すれば…」
クロ「下らない。妖魔はそこの少年を守護している、光の精霊が倒した事にすればいいでしょう」
ティス「え?」
光の精霊『やっぱりバレてたのかよ』
ケンヤの中から光の精霊が顔を出した。
ティス「え!?あなたが、光の…!?」
光の精霊『あ、どうも〜』
クロ「それでは、私はこれで」
ティス「あ、ちょっと…!」
クロは姿を消した。
ウツロ「あいつちゃっかり隷属の首輪持って帰りやがった」
光の精霊『あいつ丸くなったな』
ティス「え、お知り合いですか?」
光の精霊『知り合いっていうか、一方的に知ってるだけなんだけど。ま、それより、まずはみんなの手当てだ』
ティス「そ、そうですね!」
ウツロ「手伝う」
ティス「と、ところで貴女は?」
ウツロ「後で説明するから」
その後、ティスは何とか誤魔化しつつ、リムルやゴーダに報告。
リムルはグラトル伯爵の妻(ジェフ先生の妹)の病を治して感謝され、ジェフ先生とも和解したのだった。
ウツロ「…ってわけで、シズは今眠ってるの」
ティス「な、なるほど…」
ウツロも自分とシズの関係を、ティスにこっそり説明した。
ウツロ「クロのこともそうだけど、私のこともナイショだよ」
ティス「わ、分かりました…シズ先生を、お願いします…!」
ウツロ「任せときなさい」
こうして、今回の騒動は終結したのだった。
──後にクロはリムルに召喚され、名を貰う事になる…『ディアブロ』と。
ED「リトルソルジャー」田所あずさ
次回『コリウスの夢』編 開幕