転生したグリードがスライムと相棒になった件 作:バンドリーマーV
ゼノビア姫が回復した日の夜、公爵家。
アスラン「妹を救ってくれて、感謝する」
調査対象の一人、アスラン王子が訪ねてきた。ソウエイ、フラメア、フォスの調査結果によれば、ソウエイと互角の強さを持ち、仲間思いの好青年、国民の評判もいいらしい。
アスラン「妹も含めて、俺達は仲の良い兄弟だったんだ。いずれ兄貴が王になった時、軍務卿になって支えるつもりだった。だが…」
「「「?」」」
アスラン「兄貴…サウザー王太子は変わってしまったのだ。3年前、病に倒れてからというもの、ゼノビアの病状は悪化を続け、目の光までも失う始末。俺も兄貴も焦ったが、グスタフにもどうしようもないと言われてな。これが本当に病だったのなら、運命だと思えただろうさ」
バラク「違う、とでも?」
アスラン「バラクよ。近頃陛下と面会が叶ったことがあるか?」
バラク「いいえ、ございませんな」
ゴーダ「どういうことだ?」
シフォン「国外に情報が漏れぬ様、隠し続けておりますが、国王陛下も病に臥せっているのです」
アスラン「面会が叶うのは、グスタフのみ。あり得んだろう?息子である俺が、父王陛下にお会いできぬなどと…!」
バラク「そういえば、俺も…いや、言われてみれば、なぜ今まで陛下に会えぬことを疑問に思わなかったのか…!」
アスラン「そうだ。それを重臣である貴様らが不自然だと感じておらぬことこそが、この国の末期的状況を証明しておるのだ!」
ウツロ(話がきなくさくなってきた…)
アスラン「何故黙っていたか不思議か?簡単な話よ。ゼノビアだけでなく、我が敬愛すべき兄君までも、グスタフの手に落ちていたからだ」
バラク「なっ!?その発言、いかに殿下といえど、聞き捨てなりませんぞ!」
シフォン「アスラン殿下は、サウザー王太子が黒幕だとお考えなのでしょうか?」
アスラン「貴様らも考えてみよ。病弱だった兄上が、突然別人の様に力強くなったのが、3年前なのだぞ。無関係だとは思えんだろうが」
リムル(3年前…)
ゴーダ(ゼノビア姫が病に倒れた時と同じ頃か…)
アスラン「恥じるでないぞ。貴様達は、そう思い込まされていたのだ。兄上の魅了(チャーム)によってな」
シフォン「チャーム?まさか!?」
アスラン「そうとも。吸血鬼族(ヴァンパイア)の得意技よな。ルベリオス出の仲間に教わった奴らの特性と、驚くほど合致する」
バラク「ですがサウザー王太子は、陽光の下で平然と活動なさっておられます」
アスラン「ヴァンパイアの上位種はな、陽光の下でも平気なんだとよ」
バラク「では殿下は、グスタフ侍医長がヴァンパイアで、サウザー王太子を眷属にして操っているとでも?」
アスラン「いや、兄上は真祖の血(ザインブラッド)を投与されて、上位のヴァンパイアに生まれ変わっているんじゃないか、とな」
ウツロ「ザインブラッド…」
アスラン「俺の古き友、カールがな…このことが一国の王位継承権争いなどではなく、魔王ヴァレンタインによる人類防衛圏の破壊工作なんじゃないかと疑っているのだ」
シフォン「魔王…!?」
フラメア「…っ…」ビクッ
ゴーダ「ん?」
フォス「フラメア?」
バラク「──ヌゥンッ!」
バラクは気合を入れ、オーラを放つ。
バラク「ぬぅ…!まさか、この俺までチャームされていたとはな…!」
アスラン「ほう。裂破(レッパ)か。見事なり」
バラク「…むざむざと魔の者に手に落ちていた、この愚か者をお許しください」
シフォン「あなた…」
バラク「シフォンよ。俺の手を取るが良い」
バラクは裂破により、シフォンのチャームも解除した。
シフォン「私達がチャームされていたから、今まで言い出せなかったのですね」
バラク「もっと早く打ち明けていただければ…」
アスラン「証拠を得るまで言い出せずにいたのだ」
バラク「決定的な証拠もあるのですな?」
アスラン「ザインブラッドをグスタフに売ったという闇商人を、カールが捕まえている。奴の証言があれば」
バラク「おぉ…!」
アスラン「リムル殿、ゴーダ殿、ウツロ殿。改めて、感謝する。貴殿らの薬があれば、ゼノビアがヴァンパイアにならずに済むだろうからな」
バラク「王女殿下は、ヴァンパイアにはなっていなかったということですな。サウザー王太子も、王女殿下を溺愛しておられましたからな」
アスラン「俺もそう思いたい。ともかく、優先すべきは、逆臣グスタフを討つことよ」
バラク「このバラク、微力ながらお力添えさせていただきたく存じます」
アスラン「期待しているとも。準備が出来次第、王宮へ攻め込む。グスタフを討ち、ゼノビアを救い出す!」
その後。
ゴーダ「フラメア」
フラメア「は、はいっ!?」
一人そわそわしていたフラメアに、ゴーダが声をかけた。今は部屋に二人きりである。
ゴーダ「お前、どうした?」
フラメア「ど、どうしたというと?」
ゴーダ「魔王ヴァレンタインの名前が出てからだよな。お前がそわそわしだしたのは」
フラメア「…!ま、魔王、バレンタイン…」
ゴーダ「魔王の名前に恐怖した、っていうには、少し違うように見えたが」
フラメア「そ、それは…」
ゴーダ「…会ったことあるのか?魔王ヴァレンタイン」
フラメア「…っ!ルミっ…あの方は…こんなことをする人じゃ、ないです」
ゴーダ「そうか」
フラメア「えっと、その…私…」
ゴーダ「言いづらいなら今はいい。だが、悩みがあるならいつでも話せ。素直に頼れって言ったのはお前だぞ?」
フラメア「…はい。ありがとうございます…!」
フラメアはようやく笑みを浮かべた。
リムル「よしゴーダ、分身体に意識を移すぞ」
ゴーダ「おう」
実はリムル、後宮に分身体を置いてきていた。ゴーダもガタキリバの分身を応用し、リムルの分身体にクワガタ、カマキリ、バッタのメダルを宿すことで、情報を共有していた。
リムル『うわっ!なにこの寒気!?』
大賢者《告。圧倒的なエネルギー量に反応しています。カリュブディスには劣りますが、オークディザスターに匹敵しています。この場で解析鑑定を試みた場合、こちらの存在がバレる確率が80%以上です》
ゴーダ『じゃあやめとこうぜ』
リムル『だな』
強固な《魂の回廊》により、ゴーダも《大賢者》の声を聞くことができていた。
サウザー「ゼノビア!アスランが君を苦しめていたのに、私には何も出来なかった。不甲斐ない兄を許してくれ」
ゼノビア「大兄様は何も悪くありませんわ。それに、アスラン兄様のせいだと決まったわけでも…」
サウザー「いいや。グスタフも言っていたがね、アイツはギルドを抱き込み、我が国に薬が届かない様にしていたのだ!もう何も心配はいらないから、今日はゆっくりと休むが良い」
ゼノビア「はい。ご心配をおかけしました」
サウザー「構わないとも」
サウザー王太子はゼノビアの部屋を出ると、部下に呼びかける。
サウザー「ゼノビアが回復した今、遠慮はいらん。アスランと奴を支持する者どもを根絶やしにしろ」
リムル(アスラン派閥とサウザー砂漠で全面戦争か…)
ゴーダ(互いを黒幕と疑ってるし、真犯人は別に…やっぱグスタフか?)
ゼノビア「そこに居るのはどなたかしら?」
『『!?』』
ゼノビア「昼間来て下さった方かしら。リムル様と…もうお一方は、一緒にいらしたウツロ様と気配が似ておりますが…」
リムル「違います!」
ゼノビア「でしたら、あなた達のお名前は?」
リムル「さ、サトルです。一緒にいるのは相棒のゴ…あ、エイジです!」
ゴーダ「ぐっ…!え…エイジ、です…」
ゴーダは渋々名乗り、一時的に意識を宿したメダルの姿、リムルもスライム姿を見せる。
ゼノビア「まあ!その姿も可愛いですわね」
リムル「えっ!?あの、俺はスライムでして、そのリムルさんとは関係ないので…」
ゼノビア「とても優しそうなおじさま達ですね。そういうことにしておきますので、私のお願いを聞いてくれませんか?」
『『?』』
ゼノビア「私は目が見えなくなりましたが、その代わりに、人の魂の形が見える様になったのです。サウザー大兄様やアスラン兄様は、泣き叫んでいる少年の様。とても優しい方々なのです。エイジ様からも似たようなものを感じますが…」
ゴーダ(…俺、泣いてるように見えんの?)
ゼノビア「グスタフ侍医長は怖い方。とてもドロドロしていて、薄紫の闇の様」
大賢者《告。彼女の権能は、ユニークスキル《夢想家(ネガウモノ)》。魂の形、つまり、人間の本質を見抜く能力です》
ゼノビア「父王陛下は、私が倒れてから一度もお見舞いに来ては下さいませんでした。グスタフ侍医長はその腹心」
ゴーダ「つまり、グスタフが国王からの命令で動いているってか?」
ゼノビア「はい。…!隠れて!気配を消して下さいませ!」
二人が隠れると、グスタフが入室し、眠りの魔法を発動する。
グスタフ「今回復されるのは、時期尚早。あのお方の為にも、もっと魂を磨き上げておかねばならぬ」
ゼノビア『大兄様の今の強さも、恐らくは侍医長に与えられた物。おじさま達に兄様達をお救い頂きたいのですわ!』
ゴーダ(《思念伝達》か…?しかし、やっぱグスタフは黒だ。《探求者》で探ったが、悪意と歪んだ欲望でドロッドロだぞ)
リムル(確定だな。なら…)
ゴーダ『救うなら、あんたも揃ってだ』
リムル『全力を尽くすと約束するよ』
ゼノビア『本当に、優しいお方達ですね』
リムル達は、一度テンペントに転移する。
ベニマル「アスランとサウザー。両王子を争わせて、グスタフという奴に何の徳があるんです?」
リムル「ゼノビア姫の考えでは、国王の命令なんじゃないかって話だが…大事なのは、争いを止めることだ」
ベニマル「それで、いつ出向きますか?」
大賢者《告。明日には動きがあると予測します。個体名グスタフが、ゼノビア姫に呪いをかけていました。これによって、体調が崩れた責任を…》
ゴーダ『薬(蜂蜜)を飲ませたリムルとウツロになすりつけ、呼び込んだアマディ侯爵家の責任問題をでっち上げる。それに反発してアスラン派閥が動けば、準備万端のサウザー派閥が一網打尽にするわけだ』
リムル「明日だ。ベニマル、お前にはアスラン王子の足止めをお願いしたい」
ベニマル「お任せを」
リムル「ソウエイ。お前にはバラクさんを任せる。説得に応じれば良いが、そうでなければ、力づくで押し止めてくれ」
ソウエイ「御意」
ゴーダ「ゴーガ、ランガ、お前達はアマディ侯爵家の守りを頼む」
ランガ「承知!」
ゴーガ「お任せを!」
大賢者の推測通り、リムルとウツロは無実の罪で牢屋に入れられた。
ウツロ「じゃ、よろしくねリムル」
リムル「おうよ。待ってろよウツロ」
捕まったリムルは分身体であり、本体に意識を戻す。
ゴーダ『おう、来たか』
リムル『おうよ。作戦開始だぞ、ゴーダ』
ゴーダ『それはいいが…ほんとに俺も変身するのか?俺は…』
リムル『罪悪感があるのは知ってるが、普段の姿じゃ出れないだろ?それに…ウツロも言ってたが、いい機会だよ。ゼノビア姫がお前の魂を見て言ったこと、覚えてるだろ?』
ゴーダ『…お節介な奴らだな。分かったよ』
二人はゼノビアの部屋に向かう。
ゼノビア『まあ!本当に来て下さったのですね!』
リムル『当然だろう?約束したからな。ゴーダ、行くぞ!』
ゴーダ『あぁ』
二人は人間の姿に変身する。リムルは前世である三上悟の姿になり、ゴーダは…
ゴーダ「…まさか、この姿になる日が来るなんてね…」
その姿はまさしく、火野映司だった。
「なっ!?怪しい奴!?」
「まさか、姫様を狙った刺客では…!?」
サトル「操糸妖縛陣!」
エイジ「よっと」
従者の女性二人が構えるが、一人はリムル/サトルが《粘糸》で縛り上げ、一人はゴーダ/エイジが《具現化(CLAWs)》のハチの針先でチクッと刺す。
エイジ「安心して。微弱な麻痺毒、しかも微量だから、15分もすれば元通りに動けるよ」
サトル「それでは、お姫様を預かりますね」
サトルがゼノビアを抱え上げる。
「ま、待ちなさい!」
「失敬な!何者なのです!?」
サトル「待てと言われて待つ泥棒が居ないように、何者かと問われて答える不審者もいないだろう?だけど、俺達は優しいから教えてやろう。俺達は大怪盗リ…サトル&エイジだ!」
エイジ「ダサい…」
サトル「ダサっ…!?」
「リ・サトルに、エイジ?」
サトル「違います!サトルです!大怪盗サトルね!そこんところ、間違えないように!行くぞ!」
エイジ「はいはい…」
二人は窓から飛び去った。
ゼノビア『あの…大怪盗というのは、何でしょう?』
サトル「…ノリです」
ゼノビア『はぁ…ですが、何も言わない方が良かったのでは?』
サトル「あ、あはは…!違いますとも!情報撹乱の為に、偽情報を流したのです!」
エイジ「嘘ばっかし、かっこつけたかっただけでしょ」
サトル「う、うるさいよ!ていうか、お前キャラ変わってるぞ!」
エイジ「しょうがないだろ!映司の姿になると、自動的に口調とかも寄っちゃうの!」
そして…
サトル「ベニマル~!ソウエイ~!」
エイジ「お待たせ~!」
フラメア「あ…ゴー…じゃなかった、エイジ様!」
フォス「え、変身してるですか!?」
動く寸前のアスランやバラク達を足止めしていた、ベニマルとソウエイ、近くから様子を見ていたフラメア、フォスと合流したのだった。
ED「ココロトラベル」岡咲美保