ヒトメスさぁ……警戒心薄すぎでしょ……かわいいね♡   作:鐘楼

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第十三話 exposure(前)

 「はぁ……」

 「な、撫で回されてため息つかれた……」

 

 とにかく、アスティが羨むような環境にいないということが分かった今、ここに長居する理由はない。アスティに嫌味の一つでも言って帰ろう。

 

 「……い、行っちゃうの?」

 「……用事がある」

 

 名残惜しそうに私を見る静奈。なぜそんな顔をするのか、私にはわからない。まさか、今のスキンシップで情が移ったのか? だとしたら、簡単で単純で心配になる。いや、記憶を覗いてからずっと心配なのだ。静奈という人間は何から何まで用心不足で隙だらけなのが分かったから。だが、私が気にすることじゃない。どうせアスティがなんとかするだろう。

 

 「日向ちゃんに、黒津さんと……あなたは……」

 「あ、みっきーじゃん」

 「揺川さん……」

 

 新たに声をかけてきたのは、優しげな人間。揺川……その名前は、先ほど挙がったアスティのお気に入りと一致している。

 

 「揺川……まさか、七志明日乃の……」

 「あ、そうそう。こちらあすのんのお気に入りの揺川未姫さんでーす!」

 「お、お気に入りって、なんの話してたの……!?」

 

 アスティのお手つき……長く潜伏するならアスティに伝わらないように避けるべき存在だが、今となっては関係ない。むしろ手間が省けたと言っていいだろう。

 

 「ちょうど良い。私をアイツのところに──」

 

 案内して貰おうと、そう言おうとしたところで、彼女の薬指が目に入り、絶句する。

 

 「──その、薬指……」

 「へ……あっ!?」

 

 指摘され、揺川未姫は慌てて手袋を嵌めて隠す。だが、それで誤魔化せるはずも、見紛うはずもない。間違いなく、誓隷紋が刻まれている。

 

 「たしかに……今の、タトゥー?」

 「ゆ、揺川さん、校則違反じゃ……!」

 「ち、違うの……あのね……」

 

 誓隷紋。向こうの世界においての奴隷契約に用いられていた魔法で、対象との主従関係を結ぶことができる紋章を身体に刻む、というもの。詳しい制約やペナルティは調べなければ分からないが、人間にあれを使うなんてことは正気の沙汰ではない。いくら私たちのルール上人間の雌が保護されていないとはいえ、だ。

 

 「……そこまで腐っていたか」

 「へ……?」

 

 私の呟きが聞こえてしまったのか、揺川未姫が疑問符を浮かべる。哀れな……アスティの人形が。

 

 ……だから、なんだ。アスティは裁かれるような真似はしないし、そこは信頼している。そして、好きなようにされるこの学園の少女たちに対する義理もない。私には関係のないことだ。……そのはずだ。

 

 「……」

 「へ……な、何か……?」

 

 ……各所に認識改変の形跡が見られるこの学園でも、アスティに対する好感という点ではばらつきがあるように感じる。感情に手は加えていない……ということのなのだろう。静奈の気持ちが本物であることも、それを裏付けしている。そう、つまり、次に毒牙にかかるのは静奈なのだ。

 

 「……っ! 来て……!」

 「え……わっ!」

 

 思い立った途端、静奈の手を取って駆け出す。とにかく人気のない場所へ。

 

 「ちょ……待ってよ~!」

 「え……? え……?」

 

 揺川未姫は驚いたまま動けなかったようだが、阿須賀日向は追いかけてきたようだ……構わない、一人ぐらいおまけがいても。

 

 「ど、どうしたの……桐絵ちゃん……いきなり……」

 「追いついたぁ……」

 「……静奈。よく聞け」

 

 ……二人以外に、生徒は見当たらない。それを確認して、ここ一帯に外からの認識を阻害する魔法を発動し、自分の偽装を解き、真の姿を現す。……アスティはじきに見破ってここにやってくる。が、少しの時間は稼げるはずだ。

 

 「……え、エルフ……?」

 「……異種族だ……って、やっぱり復学は嘘だったんじゃん……」

 「簡潔に、必要なことだけ伝えるし、する」

 

 呆ける静奈の目を見て、告げる。

 

 「七志明日乃……アスノティフィル・ナナークーシャは、私と同じ異種族だ」

 

 

 




新作で忙しい(不義理)けど俺はシナジーのない作品の宣伝はしないZE
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