おまけに中盤、終盤の妄想が邪魔をして序盤どうしようか…なんて状態です。
緑谷は、目の前の光景が信じられなかった。
「しぼんでるうー!え!?さっきまで…え!?ニセ!?ニセ者!?細ー!」
「落ち着け出久!」
目の前の状況が受け入れられず、いまいち言葉が出てこなず、またしても軽元を揺する緑谷に対し軽元はいち早く状況を理解し、緑谷を正気に戻すために言葉をかける。
「私はオールマイトさ」
萎んだオールマイトは、そう言って血を吹き出した。
「ウソだー!ウブェ」「はぁ、そろそろ受け入れろ出久」
未だに目の前の状況が受け入れられず叫ぶ緑谷、ついに痺れを切らした軽元のビンタによって無理やり正気に戻された。
その光景を見てオールマイトは少しだが驚いた表情をしていた、主に軽元に対して。
「君は驚かないんだね?」
「俺?うーん、憧れてたら出久みたいな反応になってたかもだけど、別に俺ヒーロー自体にそんな興味無いしなー…」
軽元は顎に指を置き、考えるような仕草で返す。
軽元は元々ヒーローに興味が無い。
「ふむそうなのか、…見られたついでだが、間違ってもネットには書き込むな?」
軽元が特に気にしてなさそうなのが好都合だったのか、オールマイトは座り込んで服を捲り上げ、左の脇腹を見せてきた。
「ひっ!?」「おっと、なるほどね…」
見るとそこには、痛々しい傷跡が残っていた。
「本当にそっちの君は驚かないんだね…、これは5年前に敵の襲撃により負った傷だ」
呼吸器官半壊、胃袋全摘、度重なる手術と後遺症で憔悴し、それによりオールマイトの活動限界は1日三時間程まで短くなってしまっているらしい。
5年前と聞き、緑谷は毒々チェーンソーとの戦いで負ったのかと聞いたが、オールマイトは違うと言った。
どうやら、オールマイトが世間に公表しないでくれと頼むほどに危険な敵がいて、そいつにやられたようだ。
(……それ俺たちに言ってよかったのか?)
この時軽元は、そう思い口にしようとしたが、本来の姿が見られてるのに今更か…という結論に至り、黙っておくことにした。
「人々を笑顔で救い出す平和の象徴は、決して悪に屈してはいけないんだ」
オールマイトの言うことは最もだ。
しかし、彼がこの後に言うかもしれない言葉を想像し、軽元は止めるべきかと考え出した。
「私が笑うのはヒーローの重圧、そして内に湧く恐怖から己を欺く為さ」
ここまで聞いて、軽元は次にオールマイトが何を言おうとしているのかを何となくで理解した。理解してしまった。
「プロはいつだって命懸けだよ、個性がなくとも成り立つとは、とてもじゃないが…口に出来ないね」
オールマイトの、現No.1ヒーローの口から出た言葉、それは言われた本人である緑谷だけでなく、隣で聞いていた軽元の顔も曇らせた。
(確かにそうだと思うし、その言葉が
軽元は、簡単に緑谷の夢を否定したオールマイトに、そしてその言葉に少しでも納得してしまった自分に対し、怒りで唇を噛み締めた。
昔なら違っていたかもしれないが、今の人々の考えは『ヒーローになるためにはまず個性を持っているか、そしてそれが強い個性か』というものが当たり前のようになってしまっている。
もちろん無個性だからと言ってヒーローになれなくは無い。
しかしなったところで、今の個性社会が常識になってしまった人々の目からは、その人は『無謀な人』として見られてしまう。
「人を助ける事に憧れるなら、警察官って手もある」
(ああ…違うんだオールマイト…)
オールマイトは下手な夢を見せて後悔させたくないんだろう。
「『ヴィラン受け取り係』なんて揶揄されちゃいるが、あれも立派な仕事だ」
(出久は、別に警察になりたくないってわけじゃないんだ…)
しかし、
「…夢を見るのは悪いことじゃない」
(出久は、コイツは俺以外の奴が絶対に言わなかった
「だが、…相応に現実も見なくてはな少年」
(そのたった一言を、嘘でもいいから言って欲しかっただけだったんだ…)
オールマイトは言いたいことを言い終え、屋上を後にする。
そんな彼の背中を、軽元はただ見ることしか出来なかった。
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あの後二人はビルを降りてからトボトボと帰路に着いていた。
お互いに顔を見れず、俯く。
緑谷はどこか悟ったように、軽元は未だにオールマイトの言ったことが受け入れられずに。
オールマイトの秘密を知ってもすぐに受け入れていた軽元でさえ、『友達の夢を否定したオールマイト』に関しては脳が受け入れるのを拒否している。
「ねえ、らいちゃん…」
軽元が何も言えないでいると、緑谷の方から口を開いた。
「プロの…トップまで言うんだ…分かってるよ、これが現実さ…、分かってたから…必死こいてたのに…」
隣を見ると、緑谷は泣きそうなのを必死にこらえていた。
それを見た軽元は、何を言うかも考えてないのに、咄嗟に緑谷に声をかけようとした。
「なあいず…『BOOOM!!!』っ!?」
しかし軽元が言おうとしたことは、爆発音によって遮られた。
音のした方を見てみると、そこは商店街で、入口に人だかりもできていた。
気づけば緑谷と軽元は、無意識に足を運んでいた。
二人は何とか人混みを掻き分け、何が起きてるかがわかる位置まで来た。
「…え?」「おいおいおいおい…マジかよ…」
二人が見たのは、炎上する商店街、複数人のヒーロー、そして、オールマイトが気絶させ、ペットボトルに入れたはずのヘドロ敵だった。
「なんでヒーロー棒立ち?」「中学生が捕まってんだと」
野次馬から聞こえてきた声に軽元はギョッとした。
(マジか…あれは俺だから大丈夫だっただけで、普通の奴ならほんとに45秒以上ももたねーぞ…!)
軽元は個性の性質上大丈夫だったが、他はそうはいかない。
恐らくかなり苦しいだろう。
現場に駆けつけたヒーローも、相性がどうとか言って動こうとしない。
(おい!なんでヒーローが相性で戦うか戦わないか決めてんだよ!)
軽元は、そんな情けない彼らを睨みつけ、すぐにため息を吐き前に出る。
(免許無しに個性を使うのは犯罪…そんな事言ってられるか!これ以上時間かければアイツの命が危ない!)
覚悟を決め、駆け出そうとした時、ヘドロ敵がこちらを向き、捕まっているのが誰かわかってしまった。
(え…
捕まっている爆豪を見て、軽元は足を止めてしまった。
(なん…で…こんな事で足が止まる…!?)
脳ではわかっているが、身体が言うことを聞かない。
この時軽元は、今まで緑谷を虐めてきた爆豪がこのような目に会い、「今まで出久にしてきた分苦しめ」なんて事を考えしまっていた。
もちろんそんな事を考える時点で最低だ。
しかし、無個性だからと虐めて当然のような空気を作り、散々虐めてきた爆豪も最低なのだ。
そのせいで軽元は、一瞬だが迷いが生まれてしまった。
しかしその直後、悩んでいる軽元の横を何かが通り抜けた。
「馬鹿ヤロー!止まれ!止まれ!」
プロヒーローの一人が叫ぶ。
軽元は、自分の横を通り抜けた者を見て驚愕した。
(な!?出久!?)
彼の横を通り抜け、爆豪のもとへ走るのが緑谷と知り、軽元は慌てて止めようとした。
しかし、緑谷と一緒に視界に写った爆豪の顔を見て、その気は無くなった。
(なるほど、そういう事か!)
爆豪の顔は、助けを求めているようにも見えた。
緑谷の走り出した理由を知り、軽元は先程の邪念が吹き飛び、緑谷の後を追うように走り出した。
「そうだった…お前はそういう奴だったよな出久!」
どんな相手だろうと、助けを求めているように見えたら
「そうだったよな!個性が無くてもお前は、根っからのヒーローだったよな!」
後ろからプロヒーローが何かを叫ぶのが聞こえるが、今の軽元の耳には入ることは無かった。
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緑谷は、自分でも自分の行動が理解出来ていなかった。
(何で出た!?何してんだ!?何で!!)
元々緑谷は、他のヒーローが来るまで、捕まった相手には耐えてもらおうと考えていた。
しかし、捕まっていた彼、爆豪勝己の顔を見て、後先考えずに飛び出してしまった。
(無個性の自分に何が出来る!?)なんて事を考えながら、尚も緑谷は足を止めない。
(このまま行けば無駄死に…、考えろ!どうすれば…!)
「出久!」
「うぇ!?らいちゃん!?どうして!?」
「出久!お前1人じゃこの状況をどうにするのは難しい!」
「っ!?」
「だから!俺も手を貸す!一緒にあのクソヘドロ倒して、とっとと爆豪助けだすぞ!」
「っ!うん!!!」
軽元の言葉に、緑谷は自然と頬が緩んだが、そんな状況じゃないと慌てて緊張感を取り戻し、目の前のヘドロ敵に集中する。
ヘドロ敵は、腕をしならせ、鞭のように振るった。
二人を弾き飛ばすために放った腕は、緑谷を庇うように前に出た軽元に命中する。
鍛えたプロヒーローすら弾き飛ばし、ぶつかった壁を凹ませる程の威力の一撃をくらい、その光景を見ていた野次馬からは「ヒッ…」と短い悲鳴も聞こえてきた。
確かな手応えを感じ、ヘドロ敵は邪悪な笑みを浮かべる。
「おっと、まだ笑うのは早いぜ?」
しかし、直後聞こえた声により、その笑みは崩された。
見ると、軽元には傷一つ付いていなかった。
ヘドロ敵は、軽元を弾き飛ばそうと更に力を込める。
しかし軽元はピクリとも動かず、逆に弾き返された。
「ほら、ぼさっとしない!爆豪助けるんだろ?」
軽元は立ち止まった緑谷の手を引き、無理やり走らせた。
ヘドロ敵の攻撃を受けても当然のように無傷だった軽元を見て、緑谷は驚愕の表情を浮かべるが、今は爆豪を助けるのが先なので、すぐに切りかえ、走った。
ヘドロ敵まであと少しとまで迫ったところで、軽元は前に出た。
「俺が奴の気を引く、出久はそのうちに爆豪助けだせ!」
そう言うと軽元は飛び上がり、そのまま
「ヒッ!」
どうやら身体が流動的であっても、目や歯を攻撃された際の痛覚はあるらしく、明らかに目を狙っている拳に、ヘドロ敵は怯み、動きが止まった。
その隙を緑谷は逃さず、ヘドロ敵の懐に潜り込み、ヘドロをかき分けた。
「なんで!てめぇらが!?」
ヘドロ敵が怯んだことにより拘束が緩んだのか、喋れるようになった爆豪は二人に向けて叫んだ。
「足が勝手に!何でって…わかんないけど!」
「俺は走る緑谷見て、ついでに視界に写ったお前を見たんだ、そしたらな!」
「「君(お前)が、助けを求める顔してた!」」
二人が同時に叫ぶ
「もう少しなんだから邪魔するなぁ!!」
しかし、その隙を突かれ、ヘドロ敵は今度は緑谷を狙い腕を振るった。
「っ…しまった、出久!避けろ!」
軽元は咄嗟に緑谷を助けるために手を伸ばした。
軽元と違い、緑谷は一撃受けるだけでもひとたまりもない。
しかし、ヘドロ敵の攻撃は緑谷に当たることは無かった。
緑谷とヘドロ敵の間に
「君を諭しておいて己が実践しないなんて…」
緑谷の行動に感化されたのか、活動限界だったはずのオールマイトは
「プロはいつだって命懸け!!!」
そう叫びオールマイトは軽元と緑谷と爆豪の腕を掴み自身の後ろに引っ張り、ヘドロ敵に向けて拳を振り下ろした。
「
その拳から放たれた一撃は、とてつもない風圧を放ち、ヘドロ敵を吹き飛ばした。
そして、その時の風圧が上昇気流となり、風が止むと、空から雨が降り注いだ。
右手一本で天候を変えたオールマイトに、野次馬達は歓声を上げていた。
あれから散ったベトベトは、ヒーロー達が回収し、無事警察に引き取られた。
そして緑谷と軽元はと言うと…。
「まったく!君が危険を冒す必要は無かったんだ!」
プロヒーロー達に説教を受けていた。
軽元は最後まで動かなかったプロヒーローに対して言い返そうとも思っていたが、早く帰りたかったので黙って説教を受けていた。
逆に爆豪は、そのタフネスと個性を称賛されていた。
本人は複雑な表情をしていたが、それが気付かれることは無かった。
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あの後、結局帰れるようになったのは夕方で、軽元は(こんなに時間かかるんなら言い返しとけばよかった)なんて思いながら緑谷と帰り道を歩いていた。
緑谷の顔色は優れない。
本来、人助けという正しい事をしたのなら、求めずとも褒めの言葉があってもいい。
しかし蓋を開けてみれば、あの場で動かなかったヒーローから「ヒーロー活動の邪魔をした」なんて言われ、群がるだけで真にヒーロー活動の邪魔をしていた野次馬からは笑われ、逆にその現況である爆豪を称賛し出す始末。
そんな緑谷を見て軽元は、今度はちゃんと言うことを考えた上で口を開く。
「なあみど「デク!それと客!」…は?」
しかしまたしても爆豪によって遮られる。
「俺は…てめェらに助けを求めてなんかねえぞ…!助けられてもねえ!あ!?なあ!?一人でやれたんだ!無個性の出来損ないと個性隠してる舐めプ野郎が見下すんじゃねえぞ!恩売ろうってか!?見下すなよ俺を!」
ここで一呼吸置き、「クソナード共が!」と吐き、爆豪はそのまま帰って行った。
「私が来た!」「わ!?」
そして、それと同時に曲がり角から勢いよくオールマイトが飛び出してきた。
先程まで取材陣に囲まれていたが、本人曰く、「抜けるくらいワケないさ!なぜなら私はオールマイトなのだから!」らしい。
途中で盛大に血を吐いて最後まで言えなかったが、恐らくそう言おうとしてたのだろう。
「少年、礼と訂正…そして提案をしに来たんだ」
オールマイトは、緑谷を見ながらそう言った。
「君がいなければ…君の身の上を聞いていなければ、口先だけのニセ筋となるところだった!ありがとう!」
オールマイトの言った言葉に、緑谷は否定した。
「そんな…いや、そもそも僕が悪いです!仕事の邪魔して…無個性のくせに生意気なこと言って…」
「いず「そうさ!」……」
軽元は緑谷の言ったことを否定しようとしたが、また遮られた。
完全に蚊帳の外である。
軽元は諦めて一旦黙ることにした。
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「あの場の誰でもない、小心者で無個性の君だったから、私は動かされた!」
オールマイトの言葉に胸が高鳴る。
「トップヒーローは学生の頃から逸話を残している…彼らの多くが話をこう結ぶ!『考えるより先に体が動いていた』と!」
僕は何故か、母の言葉を思い出していた。
『ごめんね出久…ごめんね…!』
「君も、そうだったんだろう!」
違うんだお母さん、あの時僕が言って欲しかったのは…
「君は、ヒーローになれる」
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『
誤字脱字等ございましたら報告お願いします。
グダグダだったりする?もう少し端折った方がいいのかな?
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〖次回予告〗
「いやーさすがオールマイト、一瞬アンチになりかけたけど、出久の欲しい言葉をちゃんと言ってくれるとはねー」
「あはは……、あ!そう言えばらいちゃんの個性って結局なんだったの?」
「俺の個性?そういえば言ってなかったな」
「えっと俺の個性はな……明日教えるわ、とりあえず今は疲れを取ろうぜ」
「次回〖持ち腐れた宝〗」
「…それほんとに教えてくれるの?」
「ほんとだって、期待しときな!」
「「さらに向こうへ、Plus ultra!!」」