今回の話は、公式がスぺに関してスズカのブライトへの嫉妬を描写したので、二次創作でも取り入れていきます。
トレーナー室で沖野と東条が話をしている。
沖野「おかしいだろ。」
東条「何がおかしいのかしら。」
沖野「一夫多妻制と同性婚の可決だ。幾らシンボリ家とメジロ家とサトノ家が動いたからって、そう簡単に変わるとは思えない。家族構成から社会秩序まで一変するんだから。」
東条「それについては、同性婚は兎も角、一夫多妻制については、昔はどこの国でも当たり前だったから、問題ないと思うわ。側室は何人いても問題なかったのだし。」
沖野「なら、何故廃止されたのかが気になるな。」
二人が押し黙る。そこに、南坂トレーナーがやってくる。
南坂「それは、私情の縺れが原因ですね。」
沖野「南坂トレーナー…。」
南坂「側室同士の争いは、お家騒動に繋がります。そしてそれは、世が世なら他家の介入や国家による取り潰しまで発展する、致命傷です。だからこそ、一夫一妻で責任を取る、という形になったのですが、近年状況が変わりました。」
沖野「状況が変わった?」
南坂「少子高齢化による後継者不足の側面が出てきたことで、側室を復活させる動きが出てきているのです。しかし、同性婚については私も分かりませんね。」
ブライト「それについては、私達が説明しますわ~。」
スズカ、ブライト、ドーベルが現れる。
沖野「スズカ、メジロブライト、メジロドーベル。お前達が知っているのか?」
ブライト「ええ~。」
東条「それで、何がどうなってこうなったのかしら。」
ブライト「今の状況を形作ったのは、そう、私達の争いが発端でした~。」
◇
~回想~
私は、当時連覇のかかった天皇賞(春)を目指していました。結果はスペシャルウィークさんの鋭い末脚に差されて2着。しかし、私はスペシャルウィークさんの事を気に入り、自分のものにしようと画策を始めました。
スぺ「ブライトさん、今日の練習も良かったです。」
ブライト「ええ~、スペシャルウィーク様との練習は、凄く身が入りますわ~。」
それはもう、他のメジロ家の方が驚くぐらいに。
ライアン「最近ブライトがあれこれ動き回っているんだよ。それも普段からは考えられないくらい早いペースで。」
マックイーン「メジロ家の悲願である天皇賞、それを連覇出来なかった事で考えるところがあるのかもしれませんわ。」
ドーベル「それは違うと思う。ブライト、スぺの事を気に入ったのよ。このままじゃ、私のスぺが取られちゃう。奥手になっている場合じゃない。」
ライアン「ドーベル…。」
ですが、それを面白く思わないのが、スズカ様でした。当時のスズカ様は天皇賞(秋)での怪我のショックから立ち直れていませんでしたが、スペさんの事を大事に思う気持ちは変わりません。
スズカ「スぺちゃん、どうして、ブライトと…?」
スぺ「あ、スズカさん、ブライトさんって良い方ですね。同じステイヤーとして、尊敬出来ます。」
その言葉はスズカ様にとって衝撃的でした。ライバルとして同じレースで競争することを楽しみにしていたスズカ様にとっては、その時認識していたかはわかりませんが、スぺ様を寝取られたと思ったのでしょう。
◇
沖野「なんでライバル同士で寝取り寝取られという言葉が出てくるんだ。」
ブライト「心境を考えるとそうとしか表現出来ませんわ~。」
東条「いいわ、続けて頂戴。」
ブライト「はい~。」
◇
~回想~
スズカ「ブライト、ちょっといいかしら。」
ブライト「はい~?」
スズカ「…負けられない?」
ブライト「何について負けられないのですか~?」
スズカ「スぺちゃんについてよ。」
ブライト「あら、そうですか。まさか、自分の方が先にスぺ様と仲良くなったから自分のもの、というんじゃないですわよね。」
いつものんびりした言葉遣いの私ですが、狙った獲物を逃さない、ハンターの目つきと言葉遣いになり、一気に緊張が高まります。
スズカ「スぺちゃんは渡さないわ。同室で、この学園で最初に仲良くなったのが私。」
ブライト「あらー、それはスぺ様の気持ちを汲んでの事ですか?そうでなければ、幾ら言い張ったところで、虚しいだけですわよ?」
スズカ「…。走りで勝負よ。勝った方が、スぺちゃんをものにできるわ。負けないから。」
◇
東条「とんでもない修羅場ね。」
ブライト「私達ウマ娘の嫉妬や独占欲は人間のそれを上回りますわ。1人を3人が取り合うのだって、珍しくありませんわね。もっとも、その後が更に大変でしたが。」
沖野「この時点で相当なのに、さらに悪化するのかよ。」
◇
~回想~
結局、走りで解決するというのは上手くいきませんでしたわ~。お互い得意距離が違うことに加え、スぺ様がよく割り込んでくるのですわ~。幾ら火花を散らしていても、本人の前で争うのはお互い望まず、それ故に結論を出すのだけが先送りされていたのです。
ですが、その状況に痺れを切らしたのがドーベルでした。
ドーベル「いつまでもたついているのよ。決めないなら私が告白するから。」
スズカ「何故貴方が出てくるのかしら。」
ドーベル「私は人見知りだし、自分の能力が薄汚いやり方にも使えるから遠慮していたのよ。でも、二人がこんなに煮え切らないなら、スぺは私が貰っていくから。」
ブライト「それで断られたらどうするのですか~。」
ドーベル「ひとしきり泣いて、初恋は実らないものだと自分に言い聞かせて、やけ食いして、太り気味になって後悔して、また一から出直すわ。」
ブライト「ほわあ~。ドーベルは強いですわ~。」
ドーベル「貴方達は、失恋が怖いの?怖いなら、恋をする資格はないわ。無理矢理奪うのも駄目よ。私の創作能力で、きっちり落とし前を付けさせるから。」
◇
東条「これまでのドーベルからは考えられないくらい凛々しいわね。」
沖野「そのままドーベルがゴールするんじゃないのか?」
ブライト「このままであればそうでした。ですが、とあるウマ娘が絡んだことで、事態は意外な方向に転がるのです。」
沖野「一体誰だ?」
デジタル「はい、私です!」
デジタルが突然現れる。
沖野「ここでデジタルが絡むのか。」
デジタル「はい!」
◇
~回想~
デジタル「ドーベルさん、その争い待ってください!」
ドーベル「デジタル、幾ら貴方が名家アグネス家の出身でも、やっていい事と悪い事があるのは分かっているわよね。」
デジタル「ええ。『人の恋路を邪魔するものは、ウマ娘に蹴られて死んでしまえ」という格言だってありますし。」
ドーベル「だったら、邪魔しないでもらえるかしら。」
デジタル「ええ、普通なら。ですが、スペシャルウィークさんは、一筋縄ではいきません。これを見てください。」
ドーベル「これはデジタルの描いた同人誌…。な、なにこれ!?」
私は思わず声を上げる。そこに描かれていたのは、同期の仲の良さが壊れ、スペシャルウィークを巡って醜く争う自分達の構図だった。
デジタル「正直に言って、書いていて吐き気がしました。ウマ娘ちゃん達はレースで健全に競う事こそ本懐、こんな作品は邪道以前に悪意の塊でしかない、と。ですがそれでも、夢の中で書け、と誰かが囁くのです。」
ブライト「その同人誌、私にも見せてください~。」
私はブライトに渡す。
ブライト「ほわあ~、私の心理や行動が、緻密にかつ大胆に描写されていますわ~。」
スズカも同人誌を見る。
スズカ「私が悪に走ったら、こういう事やりかねないわね。でも、どうしてデジタルは干渉することを決めたの?」
デジタル「カップリング論争は、戦争になります。それがライバル関係であれば、複数が同時並立することもあり得ますが、恋愛感情が絡むと、どれかが選ばれて残りは切り捨てられる。デジたんは、それに耐えられません!」
ドーベル「思ったよりも個人的な理由ね。私が躊躇する理由にはならないわ。」
「「同じく。」」
そう言って私達はスぺの部屋に向かったわ。
◇
沖野「どう考えても繋がらないんだが。」
ドーベル「そうね。でも、それがスぺの希望だったから。」
◇
~回想~
突然私達3人が押し掛けてきたことで、スぺは驚いていたわ。
スぺ「スズカさん、ブライトさん、ドーベルさん。急にどうしたんですか。」
ドーベル「スぺ、単刀直入に聞くわ。この三人の中で恋人になるなら、誰が良い?」
スぺ「ええ~、そんな、選べないです。」
ドーベル「理由は?優柔不断な理由だったら今ここではっきりさせるわよ。」
スぺ「私、そういうのまだ良く分からないです。同性での恋のイメージが湧かないですね。」
ドーベル「なら、私が教育するわ。それで改めて、選択してもらうわよ。」
ブライト「ドーベル、抜け駆けは駄目ですわ~。デジタル様に一任するべきですわね~。」
という訳で、様子見になったわ。でも結局、スズカが選ばれた。合宿の経緯をスズカが楽しそうに話していた時は、そう思ったのよ。
◇
沖野「確かに、あの合宿の経緯を見れば、スズカが選ばれても不思議じゃないな。」
南坂「でも、そうはならなかったんですよね?」
ドーベル「ええ。モンジューのせいでね。」
それを聞いて全員が察する。
ドーベル「何となく想像がついたと思うけど、説明するわね。」
◇
~回想~
ジャパンカップでモンジューがスぺにキスしたことで、これまで自覚のなかったスぺ掛かり勢が一斉に火を噴いたわ。モンジューに押しかけて、一斉にこの言葉を放ったのよ。
「「「| : La_victoire_est_à_moi《調子に乗るな」」」
モンジュー「La Semaine spéciale est à moi. Je ne la donnerai à personne.(スペシャルウィークは私のものだ。誰にも渡さない。)」
お互いが睨み合う中、スぺが割って入ったのよ。
スぺ「どうして仲良く出来ないんですか。モンジューさんは確かに憎たらしいくらいに強かったけど、良い人ですよ。」
モンジュー「Ce que disent les vainqueurs est absolu. Tirons notre épingle du jeu aujourd'hui. Ils sont également suffisamment compétents pour parler fort. (勝者の言うことは絶対。今日は引こう。大口をたたくだけの実力もある。)」
その一言で、皆引き下がったわ。ま、エルのやらかしがはっきりして、グラスに成敗されていたけど。
でも、皆はスぺを好き、という気持ちに蓋をしなければならなくなり、段々狂い始めたのよ。
◇
スぺ「そうだったんですか。」
ドーベル「スぺ、聞いていたのね。」
スぺ「ええ、まあ…。」
ドーベル「貴方が気にすることないわ。文句があるなら、私だってジャパンカップを勝てば良かっただけの事。」
グルーヴ「そういう事だ。ま、そう考えると、前年のジャパンカップを制することが出来なかったのは、惜しいものだったがな。」
ルドルフ「グルーヴ、それを言うなら私やテイオーは制しているぞ。」
ブエナ「私もです。」
今回の話は、かつてハーメルンに投稿されていたウマ娘の修羅場小説をベースにする予定でした。その作品では、デジタルが海外遠征している間に、とあるトレーナーに対して重バ場な感情を抱いたウマ娘達の手で戦争が起こり、それが世界大戦にまで発展してしまう、というものでした。裏設定ではありますが、デジタルに囁いていたのは、この世界のデジタルです。
この小説、まだゲームをプレイするか悩んでいたころに見つけ、大喜びで何度も読み返したものでしたが、ガイドラインが厳格化した際に非公開になってしまいました。PDFで保存すればよかった…。
当初の予定では、その世界でもしデジタルが積極的に動いたら、というIFをイメージしたのが今作品になる筈でした。そしてその場合、デジタルが動きまくる事になっていました。が、自分の作品を後で読み返しても、自分の作品だと胸を張って言える内容を目指した結果、それは違う、となりました。それで修正した結果が今作になります。借り物状態の時はまるで成立の見込みがなかったのに、自分の物になってからは、凄いスピードで出来上がりました。AIの場合、こういう観点から見ると、まだ至らないところがありますね。