「さて、モンジューとのいざこざが終わったのを見て、今度は他のウマ娘が控室に押しかけてきました。」
「まあ確かに、レース直前に『La victoire est à moi.』なんて言われたら、怒るのも当然ね。」
「私が経緯を説明した上で、エルには責任を取って、腹を切るように言ったのですが、相手はそれでは収まりませんでした。会長さんが出る必要があるかとも思いましたが、相手はスペちゃんを指名してきたのです。」
そう言うグラスワンダーの目は光が灯っていない。
「おいおい、スペに無茶な要求でも突き付けたか?」
「いいえ、スペちゃんとデートする事を要求してきたのです。」
「えーっと、グラスちゃん、『吹き込んだのがエルコンドルパサーであろうと、言ったのがスペシャルウィークである以上、スペシャルウィークが我々の応対をすべきだ。』だったよ。」
「いいえ、あれは間違いなくデートでした。」
「おいおい、これじゃ話が進まねえぞ。」
「グラスさんは掛かっているから、このキングが説明するわ。元々彼女たちは、レース出走後に東京観光をしてから帰るつもりだったのよ。で、あの発言があったから、スペシャルウィークさんに同行するように求めたの。スペシャルウィークさんは東京の事を詳しく知らないから、名所を案内するためにかなり苦労して準備していたわ。」
「それで、途中でその事を知った相手が、スペちゃんの地元に変更するように言ったのですが、スペちゃんの地元の機構を聞いてあっさり撤回しました。無理もないですよね、11月下旬の北海道は、雪と氷に覆われて、余所者は苦労するのですから。」
「ちょっとツルマルさん、私の台詞取らないでよ。まあいいわ、それで、一生懸命取り組むスペシャルウィークさんを見て、段々相手も心を開き出したのよ。で、東京観光が終わったら彼女たちは言い出したのよ。『スペシャルウィークは日本にいるのは惜しいウマ娘だ、故郷に連れて帰る。』ってね。」
「本人にその気がなければ移籍は出来ないはずだが。」
「向こうからすれば、ヘッドハンティングの感覚でしょうね。実際、年度代表ウマ娘がエルコンドルパサーさんに決まった時、その選出経緯を聞いて、正当に評価しないなら移籍した方が良い、と勧めてきましたし。」
「あーあれか、あれは実際荒れたんだよな…。」
「だからこそ私とブエナで結果を出す必要があったわけです。」
シーザリオが口を挟む。
「それはどういうことだ、シーザリオ。」
「日本のウマ娘は海外で勝てる、日本のレースレベルは高い、その二つを示す必要がありました。それで私はアメリカンオークスを勝利し、ブエナは国内路線で好走を続け、その二つを示したわけです。」
「まさかシーザリオの行動を誰も止められなかったのって…。」
「ええ、私の実績に盾突ける、あるいは性格的に向いているウマ娘がいなかったからです。エル先輩はやらかしがあり、タイキ先輩は路線が違うし出身がアメリカなので議論に筋違いなところがある。パール先輩は世界という観点から見て今回の件はどう決着しても次に繋がるとして局外中立、ステゴ先輩はスペ先輩の尻尾を噛んだという前科から、黄金世代から厳重警戒されている。他にも海外で勝ったウマ娘はいれども、今回の件を仕切れる性格ではない。」
「私とザリオが結果を出したことで、やっと向こうも諦めたんです。まあ、その代わりというべきか、スぺ先輩が自由に出入りできる許可証を出すことにしたようですが。」
「てことは、オレが頭を下げたのは全くの無駄足ってことかよ!?」
「残念ながらその通りです、サンデー先輩。」
「ったく、生徒会の奴ら、そうと決まっているんなら連絡の一つも寄こせっての。」
(先輩のそういう気質が損している理由なんですが、黙っておきましょう。)
◇
「そうだと知っていたら、もう一年走るべきだったでしょうか。」
「スペ先輩が気にすることないです。先輩は自分が出来る限りの事をしました。周りが五月蠅かっただけの事です。」
「ハーッハッハ、仮に走っていたとしても、僕の
「オペラオー、声が震えているわよ。」