総受けスペちゃん   作:223系新快速

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前話のデジタルの構想通り、ハーレムメンバー全員が心情を吐露しますが、1人目のルドルフがいきなりこけます。ネタに詰まりましたが、Eclipseの史実のレースを考えた結果、筋書が思い浮かびました。最初はルドルフの独善性を盛り込むつもりでしたが、流石にやり過ぎだと思ってこの程度の表現になりました。
なお、ルドルフのレース運びは、史実での評価をベースにしています。まあ、これくらいやっても驚きませんが。


第3話 Eclipse first, the rest nowhere

デジタルの呼びかけで、ハーレムメンバーの候補達が一か所に集められる。

 

デジタル「というわけで、デジたんがスペシャルウィークさんの好感度管理を司ることになりました。」

ルドルフ「私が出来ないのは業腹だが、他のライバルの管理でないだけマシと思うしかないか。」

シリウス「おーおー、皇帝サマの本音が漏れているな。」

デジタル「では、全員の前で一人ずつ、スペシャルウィークさんについて惚気てください。まずは会長さんから。」

ルドルフ「なっ…。」

デジタル「拒否権はありませんよ。」

グルーヴ「デジタル、何の意図があってこんなことをする。返答次第では只では済まさんぞ。」

 

グルーヴが睨むが、デジタルは平然と受け流す。

 

デジタル「自分の気持ちに素直になること、自分の行動に後悔がないこと、自分の行動に責任を持つこと、これらを満たしていることを証明するためにやるんですから。何しろ、法律を変えないといけませんからね。」

マルゼン「法律ね。確かにその通りよ。現在の日本の法律では、重婚は禁止。恋人を作らずに遊び相手を何人か持つ場合でも、バレたら浮気となり、社会的に居辛くなるのは変わりない。これを一変させるには、本物の愛を見せないと駄目よ。ルドルフ、生徒会長としてビシッと決めて!」

 

だが、ルドルフは動揺したまま何も言えない。

 

テイオー「カイチョー、どうしたの?早くしてよー。」

ルドルフ「無理…、ルナには無理ー!」

テイオー「え、ルナ?」

シリウス「予想通りだな、皇帝サマ、いやルナちゃん。」

 

シリウスがニヤリと顔を歪ませる。

 

テイオー「何が予想通りなのさ。気味悪い笑い方して。」

シリウス「ルドルフは、スぺの事で惚気ることは絶対に不可能だ。『全てのウマ娘に幸福を』という題目を掲げる限り。」

テイオー「どうしてだよ、カイチョーじゃ達成不可能だっていうの!」

シリウス「ルドルフ側の問題じゃない、スペシャルウィーク側の問題だ。それも達成可能だということが原因だ。」

テイオー「それがどうしてカイチョーと関係あるの!?ワケワカンナイヨー!」

シリウス「『全てのウマ娘に幸福を。』これは、スペシャルウィークのハーレムの範囲を広げれば、間違いなく自動達成可能。だが、自分の掲げた題目を、自分よりも上手くやれる奴がいる。それは、ルドルフの存在意義を消失させるんだよ。」

「「「!!!」」」

テイオー「け、けど、それなら他にやることを見つければ…。」

シリウス「フン、大方帝王学に縛られて、そのような発想が出来ないんだろうな。」

シービー「そうだね。私としては、ルドルフはもっと柔軟な発想をするべきだと思うよ。」

 

ダッ

 

テイオー「あっ、カイチョー、どこに行くの!」

シリウス「私に何もかも見抜かれて、居辛くなったんだろうな。一人目の脱落者だ。」

テイオー「そんな…。」

シリウス「しかもルドルフの場合、これまでのやり方の因果応報もある。」

テイオー「どういうこと?」

シリウス「ルドルフは、相手の心をへし折る走り方をするんだよ。皇帝たる自分には、絶対に勝てないという絶望を与えるような。だがそれは、覇道を突き進むが故に、一度揺らぐと総崩れのリスクがある。」

テイオー「どうしてそんなにカイチョーの走りに詳しいの?」

シリウス「それは私がルドルフのアンチだからだ。アンチというのは、下手なファンよりも対象をよく見ている。事細かに批判するためにな。」

テイオー「そんな事言ったって、ボクよりカイチョーのこと詳しいわけがないでしょ。」

シリウス「まあ、お前程ルドルフをよく知り、また挑むウマ娘なら、私も敵わないだろう。ルドルフのクイズで敵わなかったようにな。だが、そんなウマ娘が何人いる?」

テイオー「えーと、ボクの他には、ツルちゃん、マルゼン先輩、シービー先輩、ラモーヌ先輩くらい?」

シリウス「そうだ。逆に言えば、それ以外になら私は勝てる。」

 

シリウスがそう言ってスペを見る。スペは訳が分からないという顔をしている。

 

スペ「あの、シリウスさん、会長さんどうしたんですか?お話を聞いても良く分かりませんでしたけど…。」

シリウス「ああ、自分のやり方を崩されて、どうしていいか迷っているんだ。しかも、原因が無自覚のうちにな。」

スペ「私、会長さんを追いかけます!」

シリウス「スペ、言っておくが情けは無用だぞ。無自覚のうちに相手の立ち位置を奪っていたというのは、質が悪い。今お前が何を言っても、ルドルフには逆効果だろう。」

スペ「それでも、それでも見捨てられません!」

シリウス「なら思い切ってやることだな。そして、逆効果という私の見立てを狂わせてこい。」

スペ「はい!」

 

ダッ

 

スペがルドルフの後を追う。

 

 

ルドルフ「ハア、ハア、ハア…。」

スペ「会長さん、大丈夫ですか?」

ルドルフ「…。」

スペ「膝枕しますか?マルゼンさんから、相手がショックを受けているときは、これが一番だって言われたので…。」

ルドルフ「…頼む。」

 

スペが椅子に座り、ルドルフがその上に横になる。

 

ルドルフ「ああ、心が安らぐな…。ずっとこうしていたい…。」

スペ「会長さん、きっとお疲れだったんですよ。暫くこうしていますね。」

ルドルフ「ああ。」

 

そう言って眠りに落ちるルドルフ。

 

スペ「いつも威厳がありますけど、こうしてみると、やっぱり私と同じ女の子なんですね。」

 

スペがルドルフの髪を撫でる。そんな様子を遠くから見て、嫉妬するウマ娘達。

 

エル「グギギギギ…、羨ましいデース!」メリメリ

グラス「幾ら会長さんでも許せませんね。」スチャ

キング「膝枕をさせる権利の行使は、高くつくわよ。」ギリギリ

スカイ「どんないたずらを仕掛けてやりましょうかね~。」ニヤニヤ

テイオー「カイチョーずるい!」プンプン

マルゼン「スペちゃんにしたことはあるけど、されたことはないのよ。不公平だわ。」クチトガラセ

 

 

ルドルフ「フウ、よく寝た…。ん、皆どうした?」

フジ「良く休んだなら、もう良いんじゃないかな。」ジロリ

アマゾン「さっさとスペへの思いを告白しな。」ギロリ

 

寮長コンビが迫る。

 

スペ「あのー、それなんですけど、私から提案しても良いですか?」

アマゾン「そりゃ構わねえが、何をするんだ?」

スペ「『Eclipse first, the rest nowhere.』エクリプス先輩と同じレースをしましょう!」

ルドルフ「分かった。」

 

 

ルドルフ「スペシャルウィークは、私とヒートレースをすることを望んでいるようだ。」

沖野「ヒートレースか。当時の記録によると、エクリプスは4マイルのヒートレースに出走している。メートルに直すと6400mだ。また、距離が長いことから、1ディスタンスを超えると失格になる。これもメートルに直すと約220mだ。2回先着した方が勝利となるが、僅差の場合は同着としてもう一度レースを行う。」

ハナ「今のレースからすると考えられない長距離と回数を走っているわね。何故このレースを選んだのかしら。単なる自己再認識にしては重過ぎるわよ。」

沖野「分からない。だが、スペがそれを選択したなら、俺達はそのやり方で最善を出せるように尽くすだけだ。」

 

スペとルドルフが準備する一方、シリウスは興味なさそうな顔で見ている。

 

シリウス「フン、これほど結果が分かっているレースも珍しいな。メジロマックイーンが天皇賞(春)を走るときでさえ、ここまでではないぞ。」

テイオー「どういうこと?」

シリウス「このレース、ルドルフの惨敗だ。」

テイオー「それって、自分の気持ちを見失っているから?」

シリウス「違う、それでルドルフが惨敗する事はない。そうではなく、圧倒的な実力差を見せつけられるということだ。」

テイオー「どうしてそんなことが言えるの!?」

シリウス「すぐに分かる。黙って見ていろ。それとも、お前は全部説明しないと分からない、二流のウマ娘か?」

テイオー「うっ、分かったよ…。」

 

準備が終わり、2人がスタートする。スタートしてすぐにスペシャルウィークが先に立つ。

 

テイオー「え、なんかペース早くない?」

沖野「ああ、3000mの最初の1000mとほぼ変わらないタイムだ。」

テイオー「それじゃあ絶対最後までバテちゃうよ。」

シリウス「ああ、だからルドルフも足を溜めている。だがこのレース、このままだとルドルフは惨敗だ。」

 

シリウスの言葉通り、最初の3kmはそこまで動きがなかったが、4kmあたりから差が出始める。次第にルドルフの足が重くなり始めたのだ。

 

ルドルフ「(何故だ、スペシャルウィークはあんなに楽に走っているのに、何故私は足が重くなる…。)」

ハナ「ルドルフ、どうしたの!?」

シリウス「やはりだな。ルドルフは、このレース形態ではスペシャルウィークに絶対に勝てない。」

テイオー「距離の長さ?」

シリウス「それもあるが、それだけじゃない。そもそも、我々ウマ娘は長距離ランニングがトレーニングとして取り入れられている以上、たった6kmでへばるような鍛え方をしていない。マラソンの距離を人間以上の速度で走っても平気なウマ娘もいるくらいだ。」

テイオー「じゃあなんで…。」

シリウス「テイオー、お前、6kmを競走すると言われて、最初から最後まで速く走るか?」

テイオー「そんなことしないよ。ラスト1kmくらいまでは足を溜めて、それからスパートをかける。他の皆だって、きっと同じ筈。」

シリウス「だよな。だが、スペシャルウィークは違う。あいつは3000mの道中の走りを6000mで維持出来るんだ。おそらく、大自然で走り回っていたが故の、基礎体力の違いだろうな。」

グラス「普段のレースでは見えない、北海道生まれのスペちゃんの特長ですね。」

シリウス「ルドルフは確かにレース体系の中でなら最強だ。だが、その枠の外にあるレースで、しかも相手の土俵となると、勝てないんだよ。」

テイオー「それってカイチョーが井の中の蛙だって馬鹿にしてない?」

シリウス「そうじゃない。現実にそういうレースがない以上、レースのレギュレーションに沿って努力をするのは真っ当だからな。だが、そのレギュレーション内で皇帝として君臨するが故の視野狭窄、これを破壊したかったのだとしたら…。」

エル「スペちゃん、虫も殺さぬような顔をして、とんでもない策士デース!」

スカイ「私も思いつかないような策謀とか、脱帽ですな~。」

 

結局、2回ともルドルフの惨敗に終わった。しかも、2回目は足が回らずに歩いてしまい、失格のおまけ付きである。

 

シリウス「スペ、どこまでがお前の策略だ?」

スペ「え?どういうことですか?」

 

シリウスが自分の推察を説明する。

 

スペ「そこまで考えてないですよ。」

「「「え?」」」

スペ「私はただ、レースの原点に立ち返ることで、会長さんの悩みが晴れると思って提案しただけです。入学時に、Eclipse先輩の標語を見せられて、それを思い出して提案したんです。」

シリウス「…、無自覚にルドルフの心を折る行動原理から考えるべきだったな。」

エル「こっちの方が恐ろしいデース…。」

スカイ「予測出来ませんからなー。」

ハナ「それで、どうなのルドルフ?」

ルドルフ「一晩、考えさせて欲しい。」

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