総受けスペちゃん   作:223系新快速

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7/20追記:ルドルフが哲学的に悩む場面を追加しました。本当はもっと掘り下げるべきですが、もっと大事な内容があるので、そっちが先です。


第5話 皇帝の責務

コンコンコン

 

グルーヴ「はい、どうぞ。」

スペ「あの、会長さんいますか?」

グルーヴ「会長ならいるが、放心状態だぞ。」

スペ「それでも構いません。」

グルーヴ「なら入れ。」

スペ「失礼します。」

 

ガチャ

 

グルーヴ「どうした。」

スペ「会長さんをどうにかして助けたいと思って。」

グルーヴ「ならば、我々の業務を手伝ってくれないか。」

スペ「はい、分かりました!」

グルーヴ「但し、一つ条件がある。何があっても会長に仕事を渡さないことだ。」

スペ「ど、どういうことですか?」

グルーヴ「今会長はVRで指摘されたことについて悩んでいる。そこに仕事を渡すと、仕事に逃げてしまう。」

スペ「わ、分かりました。」

 

 

暫くして、仕事が一通り片付く。

 

スペ「あの、一つやりたいことがあるんですが。」

グルーヴ「何だ。」

スペ「会長さんが体験した世界に、私も行ってみたいと思うんです。」

グルーヴ「よし、デジタルを呼ぶから、少し待っていろ。」

スペ「はい。」

 

暫くして、デジタルがやってくる。

 

デジタル「スペシャルウィークさんが、会長さんの体験した世界を体験したい、ですか。」

スペ「はい。」

デジタル「良いですよ。但し、一人で行ってください。会長さんも一緒だと、きっとスペシャルウィークさんに甘えてしまいますから。」

スペ「分かりました。」

 

 

スペ「ここが会長さんの体験した世界…。」

皇帝(ルドルフ)『おや、スペシャルウィークか。』

スペ「は、はい…(本当の会長さんと違って、私を敵視しているというデジタルさんの説明は本当だったんですね)。」

皇帝(ルドルフ)『…、その反応、この世界のスペシャルウィークではないな。』

スペ「はい、外の世界から来ました。」

皇帝(ルドルフ)『私にそちらのルドルフが敗れたので敵討ち、といったところか。だが、私はそちらのルドルフのように甘くないぞ。』

スペ「そうじゃないです。ただ、立ち直るためにこの世界を知りたいだけです。」

皇帝(ルドルフ)『なら、もう一人の自分に合うと良い。』

 

そこに、この世界のスペシャルウィークがやってくる。

 

特別週(スペ)『わわわ、私がもう一人!?ドッペルゲンガー!?』

皇帝(ルドルフ)『慌てるな特別週(スペシャルウィーク)。別世界のお前だ。』

特別週(スペ)『そうですか。』

スペ「あの、この世界のこと、もっと詳しく知りたいです。」

皇帝(ルドルフ)『なら、私が説明しよう。』

 

皇帝が説明する。

 

スペ「うーん、私の世界に比べて、奨学制度は少ないですね。余計なお節介というのは本当だと思います。でも、そのお節介のお陰で、自分の才能が開く人もいるんです。私だって、レースを知らなければ、普通のウマ娘として一生を北海道で過ごしていたと思いますよ。」

特別週(スペ)『確かに、そっちの世界よりも生存競争は厳しいかも知れないです。でも、皆生きる事に執念を燃やしています。』

スペ「うーん、どうにも噛み合わないですね…。私達同士なら仲良くなれそうなのに…。」

皇帝(ルドルフ)『これは、話し合って解決する問題ではないな。それぞれの世界観の問題だ。あまり干渉しあうべきではない。』

特別週(スペ)『生徒会長…。』

スペ「会長さん…。」

皇帝(ルドルフ)『だがそちらの世界の私が不甲斐ないというのなら、話は別だ。そちらの世界へ向かうぞ。』

スペ「え、VRって、そんなことも出来るのですか?」

皇帝(ルドルフ)『短時間ならな。さあ、2人とも行くぞ。』

 

 

デジタル「な、何ですかこの挙動。もしかして!?」

 

スペ、皇帝(ルドルフ)特別週(スペ)の3人が飛び出してくる。

 

デジタル「えええ、向こうの会長さん!?どうして、どうしてですか!?」

皇帝(ルドルフ)『こっちの私が不甲斐ないとなれば、何もしないわけにはいかないだろう。』

デジタル「これは大変なことになりますよ。」

皇帝(ルドルフ)『大変なこと?こちらの私に気合いを入れ直すのが、そこまで問題だとでも?」

デジタル「そ、それはそうですけど、簡単に世界を移動出来てしまうのは色々と問題です。第四の壁と言って、空想上の存在が、実在世界に出入りできるようになったら、世界が壊れちゃいますよ!」

皇帝(ルドルフ)『確かにそうだ。だが、VRをこのような形で使う以上、リスクについて考えるのも責任の内だと思うが。』

デジタル「うっ...、それは...。」

 

デジタルがひるんでいると、ルドルフがやってくる。

 

ルドルフ「な、もう一人の私…、何故ここにいる!」

皇帝(ルドルフ)『不甲斐ないからそちらのスペシャルウィークを、こちらの世界に連れて行く。お前には勿体ない。』

ルドルフ「な、何だと!?デジタル、どうにかしてくれ!」

 

デジタルにすがりつくルドルフ。だが、そんなルドルフにデジタルが言い放つ。

 

デジタル「今の言葉で決心がつきました。会長さん、これが会長さんが越えなければならない壁です。」

ルドルフ「な!?」

デジタル「皇帝の責務は皆を守ること、『全てのウマ娘を幸福に』の第一条件です。相手が誰であろうと関係ありません。それが鏡の自分であろうともです。」

皇帝(ルドルフ)『アグネスデジタルはきちんとリスクを考えているな。』

デジタル「当然です。発案ですから。そして、会長さんの場合、むしろ鏡の自分をどうにも出来ないのであれば、誰も助けられませんよ。」

ルドルフ「何故だ。」

デジタル「会長さんの唱える、『全てのウマ娘を幸福に』は、哲学的要素を含みます。そして、どんな哲学も、まず自分を生かすことが第一です。それを忘れたのでは、特別週(スペ)さんの指摘するお節介に、本当に該当してしまいますね。」

 

それを聞いて、ルドルフが項垂れる。

 

ルドルフ「私は、どうすれば...。」

デジタル「ヒントは、昨日のスペシャルウィークさんの言葉です。」

ルドルフ「そういえば、原点回帰のためにレースをしたな。私の原点は…。」

 

 

ウマ娘A「あーあ、また負けちゃった。」

ウマ娘B「やっぱり速いなあ、ルナちゃんとシリウスちゃんは。」

ルナ「そんな事ない。君達だって、鍛えればもっと速くなる。」

ウマ娘A「えー、でもルナちゃん達はシンボリ家でしょ?走れる環境が違うって。」

ウマ娘B「そーそー、トレセン学園に入るのだって、幼少期の鍛え方が大きくものを言うし、血筋だって関係するじゃん。」

ウマ娘A「じゃあ、また明日ね。」

ルナ「あ、ああ。」

 

家へ帰る2人を私は見送るしかなかった。

 

ルナ「シリウス、私はどうすればいいのか。」

シリウス「さあな。ただ私は、あいつらを見捨てることはしない。あいつらに走る気力がある限り、付き合うさ。」

ルナ「…。」

 

~その日の晩~

ルドルフの父「どうしたルドルフ、手が止まっているぞ。」

ルナ「お父さん、実は…。」

 

私は今日の出来事を話す。

 

ルドルフの父「それは難しい問題だ。だが、逃げてはいけない問題でもある。それを解決するために、権力は存在する。シンボリ家やメジロ家といった名門が存在するのもそのためだ。」

ルナ「じゃあ、私も早く権力を使いたい!」

ルドルフの父「そうだな。だが、権力には使い方というものがある。それを間違えると逆効果だ。それに、実力がなければ権力は入手出来ない。まずトレセン学園で結果を出して生徒会長に就任し、そこで結果を出す。それくらい出来なければ、この問題は解決しない。」

ルナ「はい!」

 

 

ルドルフの顔に生気が戻る。

 

ルドルフ「私が何故『全てのウマ娘を幸福に』という題目を掲げたのか、思い出した。走る環境が十分に整備されず、実力を発揮出来ないことが、子供心に許せなかったのだな。シンボリ家の者として、それを変える力があるはずだと信じて。皇帝(ルドルフ)、もう一度勝負だ。」

皇帝(ルドルフ)『良いだろう。今の君となら、良い勝負になるはずだ。』

 

 

その後事情を話した上で、再度2人のルドルフの模擬レースが行われる。

 

沖野「VRから皇帝(ルドルフ)が出てきて、こちらでも勝負とは…。」

ハナ「突っ込みどころが多すぎるわね。第四の壁を越えるなんて、それだけで世の中の技術や常識が変わってしまうわ。」

沖野「しかもこれをアグネスデジタルは受け入れた。世界が壊れるリスクをちゃんと考え、その上でルドルフが越えなければならない壁とまで言い切った。」

ハナ「私は反対したけど、デジタルとルドルフを翻意させることは出来なかったわ。只の恋煩いを超えているわよ。」

沖野「サトノ家も、蜂の巣をつついたような騒ぎだ。サトノダイヤモンド、サトノクラウンが中心になって、今回の件を究明するべく動いている。」

スペ「でも、勝負については大丈夫だと思います。ルドルフさんの雰囲気が違います。さっきまであんなに不安げだったのに、今は見ていて凄く頼もしくて、誰が相手でも勝てる気しかしません。」

沖野「ああ、勝負については問題ない。まず勝つだろうし、万が一負けたところで皇帝(ルドルフ)も納得するだろう。」

ハナ「問題はその先よ。どうやって法律の問題を潜り抜けるのか。」

スペ「そうですね...。でも、今は勝負を見届けたいです。」

沖野「そうだな。」

 

グルーヴ「スタートは私が、」

ヒシアマ「ゴールはあたしが勤める!」

グルーヴ「また寝たりするなよ。」

ヒシアマ「こんな面白い勝負、寝てる場合じゃないって。可能ならタイマンしたいくらいだ!ギャラリーだってあんなに集まっているぜ!」

 

ヒシアマゾンの言うとおり、他のウマ娘達はトレーニングを一時休止してまで2人の対決を見に来ている。

 

グルーヴ「位置について、用意、スタート!」

 

ダッ

 

2人が好スタートを切る。そのままぴったりと張り付いて併走状態になる。

 

皇帝(ルドルフ)『なんだ、ちゃんと走れるじゃないか。』

ルドルフ「スペシャルウィークにかまけて、自分の事を疎かにしていた自分を見つめ直したからな。もう負けないぞ。」

皇帝(ルドルフ)『ならば、私の役目も終わりだな。』

ルドルフ「どういうことだ。」

皇帝(ルドルフ)『それは走り切れば分かる。』

 

結局レースは半バ身差でルドルフの勝利に終わった。

 

ルドルフ「私の役目が終わるとは、どういうことかな。」

皇帝(ルドルフ)『私の役目は、もう一人の自分の鏡となり、問題点を修正させ、より高みを目指せるようにすること。それが済んだ以上、私の存在意義はなくなる。データ上の存在である以上、消えるのが宿命(さだめ)だ。」

ルドルフ「そんな、それでは私の身勝手で生まれ、消滅するようではないか!」

皇帝(ルドルフ)『人間、そんな綺麗な生き物ではないよ。それに、第四の壁を考えると、これが現状では最も適切と言えるだろう。』

タキオン「彼女の言うとおりだ。科学や技術は、適切に使えば薬になるが、過ぎれば毒になる。VRをまるで永続する万能薬のように勘違いする者が多いから、こうやって終わりを明示するのも必要だ。そしてそれは、皇帝でなくては聞く耳を持たないのだよ。」

 

アグネスタキオンが諭すように言う。

 

デジタル「それに、依存しすぎると、VR側が不満を持って、反旗を翻す可能性もあります。今回だって、もし会長さんが負けたら、スペシャルウィークさんはVR空間に囚われの身になっていたでしょう。」

皇帝(ルドルフ)『アグネスデジタルの言うとおりだ。だからこそ、全体を管理する人間が必要だ。そちらの世界を見ていると、社会が発展するのは良いが、細分化されて責任がぼかされているようで、心配だ。』

ルドルフ「…、もしかして、これはハーレム形成の大義名分に使える?」

皇帝(ルドルフ)『それは君次第だ。ただ、君が必要だというなら、もう暫く留まる。説得材料は必要だろう。』

ルドルフ「…、私一人では不十分だ。もう一人泥を被るものが必要だな。」




デジタルに続いてタキオンも重要なアドバイザー役になりました。アグネスのやべー奴らですが、私の小説では大活躍ですね。
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