~翌日~
SS「よお、日本のウマ娘ども、相変わらずのようだな。」
ルドルフ「お前は…、サンデー、サイレンス!」
グルーヴ「一体何の用だ。」
SS「決まっている。スペシャルウィークを、アメリカに連れていく。」
それは、特大の爆弾発言だった。
マック「な、なんですって!?」
イナリ「一体何の権利があって、そんな事しやがんでえ。返答次第では、ただじゃおかねえぞ。」
SS「ビビッて結論を出せねえ連中より、荒々しくはあれど、責任を取るウマ娘の方が幸せに出来るって話よ。」
それを聞いてムッとする一同。
フジ「横から割り込んで獲物をかっさらうとは感心しないね。アメリカのトレセン学園はそういう教育をしているのかい?」
SS「かっさらうとは人聞きの悪い。オレとスぺは特別な関係だからよ。」
フジ「そういうの、スぺちゃんについては信用出来ないね。」
そこにスぺがやってくる。
スぺ「皆何しているんですか?あ、サンデーさん、お久し振りです。」
SS「よおスペ、久しぶりだな。」
スペ「エヘヘ、学園に来るなら言ってくださいよ~。」
SS「悪い悪い。」
スズカ「嘘でしょ。あの全てを憎んでいるとまで言われたサンデーサイレンスが笑顔を見せるなんて…。しかもスぺちゃんも懐いているわ…。」
スズカが驚き、他の者達も口をあんぐりさせる。
SS「嘘じゃねえ。日本に来て一層荒んでいたオレを唯一受け止めたのがスペシャルウィークだ。でなきゃ、オレは全てを憎んだ状態から抜け出せていねえぜ。」
デジタル「はい。それに、サンデーサイレンスさんは、有名な同人誌『沈黙の逆襲』の著者でもあるんです。」
ドーベル「周囲から見下されるも、俺TUEEEEな展開を連発しての無双から、最初『な○う系主人公かよ』って突っ込まれたけど、(ほぼ全て)ノンフィクションと分かって爆発的にヒットした同人誌ね。100万部以上売れたわ。」
グルーヴ「そんなに売れたのなら、何故私の調査リストにないのだ。」
デジタル「あー、当時の状況再現の為に、放送禁止用語を連発するんで、出版社が拒否するレベルなんですよ。当然映像を見るのも、我々の年齢では難しいですね。」
グルーヴ「なら修正を掛ければいいではないか。」
ドーベル「それは駄目よ。校正された内容を見たけど、全く面白くないものに成り下がっていたわ。人間の本質を荒々しくえぐり出す台詞とタッチが売りなのよ。」
グルーヴ「全く、スペシャルウィークに悪影響だぞ。」
SS「それは聞き捨てならないな。御託は実際に読んでから言うんだな、女帝さんよ。」
慇懃無礼な態度にイラつきながらも、エアグルーヴは同人誌を手に取って読み始める。
◇
オレは生まれた当初から期待されちゃいなかった。足が曲がっていて見た目は悪いし、幼少期に幼稚園の送迎バスが事故を起こしてオレ以外は全員死亡、オレ自身も生死を彷徨う大怪我だ。誰も彼もがオレを見下し、馬鹿にする。だがこの国は自由の国、アメリカだ。だから、オレは馬鹿にした奴らを見返すために、レースで結果を出すことにした。
結論から言えば、その願いは叶った。オレはアメリカ三冠のうち二冠を取った。残り一冠はあのいけすかねえイージーゴアだがな。最終的にG1を6勝したオレは、セクレタリアトには流石に及ばないものの、名バとして称賛される立場になった筈だった。
しかし、マスコミは
そんなこんなでアメリカのトゥインクルシリーズを走り切ったオレは、コーチになった。オレにはレースしかなく、それ以外は無価値だからな。しかしどこのトレセンも持て余した。憎しみだけでレースをしていたために第一印象が最悪な上、指導は適格だが、あまりにもレース一辺倒なオレのやり方は、他の連中には合わないらしい。オレからすれば、そんな認識だから、レースで勝てねえんだがな。
URAアメリカ支部も、オレの事は持て余していた。G1を6勝である以上、誰も軽くは扱えない。でも、いつも欠席するオレをまともに扱うわけにもいかない。結局、酔狂な日本トレセン学園の理事長が、オレを日本に移籍させてきた。
だが、それはより一層オレを苛立たせた。コーチとして無能だと糾弾されるならともかく、指導があった奴はきちんと結果を残している。なのに半ば厄介払いの形で他の国に、しかも当時はパートII区分の日本への移籍だ。レース業界からの追放をチラつかせる、半ば脅迫じみた勧告がなければ、自宅に引き籠っていたな。
◇
デジタル「何度見ても、双方の主張が正面衝突して一歩も引かないところが生々しいですね。」
ドーベル「普通なら除け者必至なのに、実績が凄過ぎるせいでごり押しが効き、結果泥沼に嵌る。典型的な膠着状態ね。」
グルーヴ「ちょっと待った、日本に来てから今までは、相当な時間が経っている。にも拘らず、貴様はこれまで一度も学園に顔を出していない。」
SS「当たり前だ。その理由は次を読めば分かる。」
デジタル「え、この次はまだありませんが。」
SS「まあな。それは現在進行形で形成中だからだ。取り敢えず、出来たところまで見せる。」
◇
そんな訳でオレは日本に来たが、当然やる気なんてない。秋川理事長はオレの境遇を理解してくれたが、他が駄目ということで、私は毎日その辺をぶらついていた。そんなある日、スぺに出会った。
その日は朝から雨が降っていて、とりわけ機嫌が悪かった。そんな中、レインコートを着て河川敷の傍でランニングするスぺがオレを見つけて話しかけてきた。こんな空模様で傘も差さずにずぶぬれでは風邪をひくとするが、レース以外のこの世の全てを憎んでいるからどうでもいい、とするオレ。じゃあ、レースをしようと言い出した。こんな雨の中でのレースなんて、久し振りだったが、足は普通に動いた。
レースが終わった後、スぺは不思議そうな顔をしていた。こんな足があるのに、何でレースに出ないのか。オレはもう引退した身だとすると、コーチは、と食い下がる。腕は確かだが、レースに全てをつぎ込み、他を切り捨てる指導法が合わないとする。
なんでレース以外を憎むのか、そんなの悲しい、とするスぺに、オレはだんだん腹が立ってきた。こいつには奥ゆかしさや深謀遠慮はかけらもない、はっきり言わないと分からない、と。だから噛み付くような口調で、オレの半生を語った。それで諦めると思ったら、真逆の反応をしてきた。自分も、今の母親がいなかったら、多分そうなっていただろうって。
生まれてすぐに母親がいなくなり、父は行方不明。育ての親が愛情を注いだお陰で今の自分があるが、そうじゃなければオレと同じような性格になっていただろう、とする。自分がサンデーさんの親になるのは無理だが、友人として仲良くなる事は出来る、とする。後、何故か運命的な何かも感じる、と。
次の日から、オレは学園に顔を出し始めた。幸い、こっちの学園には、スぺの他にも運命を感じる奴が大勢いた。フジ、マーベラス、スズカ、リョテイ、アヤベ、タキオン、カフェ、ロブロイ…。スぺだけに関われないが、立場はある。それに、マックイーンも気に入ったし、アメリカに比べればマシだと思い始めた。
だが、いつからか、学園の連中はスぺに誑かされ始めた。ふざけんな、こんな連中の為にオレは指導してるんじゃない。なら、スぺをアメリカに持ち帰るのが、オレとスぺの為だ、と結論付けた。マックイーンを連れて帰れないのは惜しいが、まあ仕方ねえ。
そこからは、オレは忙しくなった。特に苦労したのがアメリカの説得だ。オレが態度を改めたのが信じられないって顔だった。まー、スぺがきっかけで変わったと言ったら、モンジューという思わぬ方向からの援護射撃が来たがな。お陰で借り一つ出来ちまった。セクレタリアトを説得出来たから、効果はあったがな。
それに比べれば、同人誌を作るのは楽だった。出版社への持ち込みには失敗したが、アシスタントは紹介してもらったし、原稿があるから作業が早い。取り敢えずスぺに出会う直前までを作成して出版したわけだ。
◇
スズカ「」
フジ「」
アヤベ「」
ルドルフ「人付き合いの悪いサンデーサイレンスが大人しく指導に徹していたのは、そんな裏事情があったとは…。」
ドーベル「な○う系主人公が一転してメインヒロインって、路線変更ってレベルじゃないわよ。」
ロブロイ「急展開過ぎて、脳がついていけません…。」
デジタル「だからってノンフィクションである以上、嘘は書けませんよ。」
超展開過ぎてついていけない一同。だがサンデーサイレンスは容赦なく畳みかける。
SS「アグネスデジタル、鏡の自分を使ってアイデンティティを確立させるお前の対応は見事だ、それは認めよう。」
デジタル「あ、ありがとうございます!」
SS「だがそのやり方は、色々と難があり過ぎる。」
デジタル「そうなんですよね。」
デジタルが俯く。主な問題点は次の3つだ。
1.失敗した時のリスクが高い
2.デジタル以外は実行不可
3.入学したばかりの子は、解像度が低いのでほぼ対応不可能
SS「特に3つ目が致命的だ。後輩の中に、スぺに運命を感じる奴が、入学早々掛かったら、手の打ちようがない。」
デジタル「ですね…。」
SS「だからこそのレースだ。スペシャルウィーク争奪戦と称して、勝った者が一定期間、プライベートな時間においてスぺを独占出来る。」
ツヨシ「それじゃモブにチャンスがなくて、不満が溜まりますよ。」
SS「心配ご無用。スぺが勝ったら、スぺが選ぶ権利がある。これなら、レースで勝てなくても、普段から関わりがある奴が選ばれる。」