~~~フォード島野戦病院~~~
ここは米軍が使っていたであろう宿舎を改装して作った一時的な病院である。艦娘に乗っている軍医妖精などが運営している。設営時の事故やこれからの戦闘に備えある程度の設備を輸送船に積んでいた。フォード島以外に作る予定だったが予想以上に建物が壊されており、ほとんどが原型をとどめていなかったため、ほとんどが無事だった宿舎を使うことにしたのである。しかし、大きな理由はそこではなかった。真珠湾に入港した時点で飛ばした偵察機や、陸戦隊をオアフ島本島に上陸させ偵察を行ったところ、なんと人間が生活していたような跡が確認されていた。しかしこれは提督や艦娘、一部の妖精にしか聞かされていない。なぜなら士気かかわる可能性がある。だがこの鎮守府の指揮官はそれを無視するほど無能なわけではない。彼も策があるようだ。
一台のジープがスキール音を鳴らし止まる。屋根がついていないその車から、遠くからでもわかる真っ白な第二種軍装に黒縁に星が一つの階級章を付けた男と飛行服の妖精がおりてきた。
提督「しっかし、初出撃で被弾とは幸先悪いんじゃないか、淵田中佐?」
淵田中佐「被弾って言っても破片が方に当たっただけですけど…ッツ!」
提督「言わんこっちゃない!無理すんなよ…とりあえず診てもらえ。」
淵田中佐「まあ、軽巡一隻、駆逐三隻撃沈で損害は私だけです。まだいいでしょう。」
そういいながら二人は宿舎の中に入っていった。そして二人の視界に入ったのは異様な光景だった。
提督「困ったなぁ、こいつは…」
そこにベットに横たわるたくさんの妖精の姿があった。あるものは包帯で巻かれ、あるものは腕を固定され、もがき苦しむもの、ある程度話ができそうなものなどほとんどが負傷していた。彼らは艦隊が撃沈した深海棲艦の乗組員…正確には撃沈した地点に漂流していた者たちである。
軍医妖精「提督、どうされましたか?」
提督「あぁ、こいつが対空砲の破片を浴びたらしくてな。」
淵田中佐「これです。いてて…」
軍医妖精は淵田中佐の傷を見て、奥で治療を受けるよう指示した。そして提督はあることについて軍医に聞いた。
提督「あいつは?どこにいる?」
軍医妖精「…こっちです」
二人は奥の宿舎に入っていった。
提督「…こいつか」
提督の前には体のところどころを包帯で巻かれ、点滴を打たれている金髪の少女がいた。その少女は深海棲艦を撃沈した海に漂流していたところを救助された漂流者の一人である。意識はなく、由良の内火艇に収容され治療を受けつつ真珠湾の野戦病院に来た。
提督はその少女を顔を見ながら、彼女の手を握った。
その瞬間、彼女がうっすらと目を開いた。
軍医妖精「!?意識が戻りました!提督!」
提督「おおおおぉ落ち着け!」
軍医妖精「あなたこそ落ち着いてください!提督!」
提督「おい、お前さん、喋れるか?」
??「…who…are…you…」
提督(英語?まさかこの子…海外艦か?)
提督「I'm a Japanese rear admiral. Are you abyssal fleet?」
??「No…I'm…fleet girls.」
提督「艦娘…なのか。What you're name?」
??「I’m… Fletcher class destroyer… USS Fletcher.」
提督「フレッチャー…最新のアメリカ駆逐艦か…」
フレッチャー「あの…ここはどこですか?」
提督「!?日本語喋れるのか?」
フレッチャー「えぇ、少しだけ…ですが。」
提督「驚いたな…ここは」
フレッチャー「パールハーバー…ですか。あなたは味方…なんですね?取り返してくれたんですね…よかった…」
そういって彼女はまた意識を失ってしまった。提督は軍医妖精に容体を確認させた。彼女は安心して眠ってしまっただけのようだ。
提督「軍医妖精、彼女が起きたら連絡してくれ。執務室でいい…少し出かけてくる。」
そういって提督は宿舎から出て、乗ってきたジープに乗る。
彼は空を眺めた。日が沈んできており、空はオレンジ色に輝いていた。
提督「きれいだなぁ…」
??「そうね。」
提督「うわぁ!?加賀!いつからそこにいた!」
加賀「あなたがそのじーぷ?に乗ったときぐらいです。」
提督「頼むから気配を消さないでくれ…」
加賀「それよりあの艦娘らしき子は?意識は戻ったの?」
提督「戻ったは戻ったんだが…また眠ってしまったよ。よほど疲れていたんだろう。」
加賀「そうね…それと、フォード島の後始末がだいぶ終わってきたのだけれど、少し問題があるの。」
提督「ほう。なんだ?」
加賀「一応使えなさそうなスクラップはまとめておいたわ。だけどまだ使えそうな部品や小銃、工具があるの。」
提督「なんだ、そういうことなら使っても問題ないと思うぞ。第一、このジープも使ってるしな。」
加賀「使えたら…使うわ。」
提督「なんだ?そりゃ?」
加賀「実は少し実験に私の整備妖精に診てもらったのだけど、深海の奴らのせいか、米軍のものなのかはわからないのだけれど、規格などが合わないって…」
提督「そいつは…困ったなぁ。」
加賀「それと…これは実際に見てもらったほうがはやいわね。」
そういって二人は再建されたハンガーのほうへ向かっていった。
二人がハンガーにつくと、見慣れない航空機がそこにはあった。
提督「米軍のF4F…か」
提督の目の前にあったのはずんぐりした見た目の単発機、F4Fワイルドキャットだった。F4Fは現在の深海棲艦…もとは米国海軍の主力艦上戦闘機である。12.7㎜を四門搭載しており、防弾や降下速度などが日本軍機よりも優れていた。一方で旋回や航続距離は日本機に一歩譲っていた。深海棲艦との戦闘で零戦、96式艦戦との戦闘記録がある。96式では速度や火力、防御力で苦戦を強いられているが一方零戦では敵の練度にもよるが比較的善戦している。
提督「こいつ飛ぶのか?」
加賀「整備妖精…どうなの?」
整備妖精「飛びはすると思いますよ、飛ばす妖精がいませんけど。」
提督「さすがに…なぁ。」
加賀「あなたなら飛ばせるんじゃないの?」
提督「おい、やめてくれ…俺はパイロットじゃないんだぞ…」
整備妖精「え?提督とばせるんですか?!」
提督「まぁ…な。あ、あんまり広めるなよ!面倒になる。」
整備妖精「はい。広めません!」
~~次の日~~
朝早くのバンカー。数人の妖精が緊急時用に零戦を外に押し出す。まだ日が完全に上っておらず薄暗い空を眺めながら一人の男がバンカーに入ってくる。そしてF4Fの主翼にそっと触れる。ひんやりとした鉄の感触が彼に伝わる。
提督(F4Fか…こいつには随分お世話になったからなぁ。)
そんな会話をしていた時バンカー内にベルの音が鳴り響く
提督「なんだ!敵襲か?!」
ベルが鳴り、バンカー内の妖精たちがあわただしく走り出す。
加賀制空隊隊長志賀大尉「敵襲だ!制空隊全機出撃だ!整備妖精!即応機は?」
整備妖精「滑走路です!もう飛びます!」
志賀大尉「俺の機は?」
整備妖精「第二陣で出せます!2、3番機も一緒です!」
志賀大尉「赤城隊は?」
整備妖精「出撃後で整備上出せません!」
提督「志賀大尉!余裕があったらでいい、敵の機種と詳しい特徴、あとは戦闘の癖も見てきてくれ!任せたぞ!」
志賀大尉は提督に向かって敬礼をした、全力で愛機へと走っていった。
~~数十分後、フォード島飛行場管制塔~~
提督「艦上機だぁ?嘘だと言ってくれ…」
加賀「空母戦ですか…さすがに気分が高揚します。」
提督「おい…敵空母はいないほうがいいだろ…」
飛行場長妖精「迎撃戦は誘導が命だ!迎撃隊の現在位置は?」
通信妖精「カホオラウエ島上空を通過、アレヌイハハ海峡上空とのことです。」
航空参謀妖精「敵編隊と会敵するのはハワイ島上空になりますね…」
提督「ハワイ島って…火山あったよな?」
加賀「えぇ。あるわ。」
提督「生き延びたとしても救助は困難…か。」
航空参謀妖精「加賀隊の練度と志賀大尉の指揮に期待するしかないです。」
提督「…」
加賀「ここは危険です。妖精たちに任せて本艦に…」
提督「そうだな、俺がいても邪魔だろうし…航空参謀、飛行隊は空中退避させろ。飛行場長、迎撃隊や退避した部隊の収容も頼むぞ。」
提督は加賀を連れて走っていった。二人はジープに乗りどんどん上がっていく第二次迎撃隊を眺めつつ空母加賀に乗り込むための内火艇に向かっていった。
~~ハワイ島上空~~
志賀大尉「全機!聞こえるか!そろそろ会敵が予想される!哨戒機より、敵はおそらく艦上機、機数はおよそ40機。戦爆連合だろう、敵戦に警戒しつつ攻撃隊を狩るぞ!」
加賀隊妖精たち「応!」
志賀大尉(こっちは上がって集合できた第一陣が一個中隊…九機だけ。まだ第一中隊が上がれたから練度は問題ない。おそらくこの後二階堂大尉の第二陣で来ると思うが…それまで機数不利。敵戦を叩けるかどうかが肝だな…)
加賀二番機「こちら二番機!上空11時方向!おそらく敵機!」
志賀大尉「こちらも視認した!…!敵機散開、戦闘機隊が来るぞ!増槽を投棄、散開しろぉ!」
たった9機の迎撃隊が増槽を捨て、軽く運動をするように動く。先頭は志賀大尉。高度不利の中軽い零戦一二型は高度を上げていく。15機ほどの敵戦が零戦隊に降りかかる。他の攻撃隊はまっすぐ真珠湾に向かっていった。
~~フォード島~~
スピーカー「総員戦闘配置につけ!繰り返す!総員戦闘配置につけ!」
加賀艦攻隊”橋口少佐”「空中退避だぁ!整備中の機はバンカー内に隠せ!艦爆隊は戦闘機隊の援護に行け!艦攻隊はカウアイ島方面に退避!」
整備妖精「早くエンジンかけろぉぉぉぉ!急げぇ!」
”海軍陸戦隊”隊長妖精「ようやく我々の出番だ!総員配置につけ!」
そう叫んでいるのはこの真珠湾の防衛のために編成された海軍陸戦隊である。彼らは南方や北方に前線が移ったため内地で手空きになった砲術課、そして整備課の妖精たちである。真珠湾では設営隊としての役割もあるが、鎮守府の防衛がメインの部隊となっている。もともと米軍が使っていた対空砲や新設した対空砲での防衛を任命されている。しかし、人数が50名程度であるため、設営隊や整備妖精たちも一時的に手伝いをやっている。
~~空母加賀艦橋~~
《パパパパパッパッパーパパパパパッパッパー》
砲術妖精「対空戦闘、配置につけぇ!」
妖精がドタバタと配置につく。見張員妖精は空を睨み、敵が来るをじっと待っている。
配置が終わり、艦内が急に静かになる。そして一人のため息が艦内に響く。
提督「加賀…やっぱちゃんとした防衛隊が必要だな。」
加賀「なにを言ってるの?私の隊だけで十分でしょう?みんな優秀な子たちですから。」
提督「練度は問題ないんだが…数が足りん!このまま増援なかったら加賀隊も赤城隊も過労死するわ!」
提督「加賀、動ける艦は?」
加賀「白露と時雨がすぐ動けるわよ。搭乗員の救助ね…連絡しておくわ。」
~~ハワイ島上空~~
志賀大尉「熟練の一航戦の力、なめてもらっちゃ困る!」
決め台詞を吐き、照準器に捉えた敵機に20ミリを放つ。敵機は主翼から火を噴きながら落ちていった。
志賀大尉「ようし!一機撃墜!次だ!ってそうだ、敵機の特徴を調べなきゃな…」
そういって彼は新たに見つけた敵機に向かっていった。
二機はお互いを正面に捉え、一直線に向かっていく。「ヘッドオン」である。敵機が機銃を撃ち始めると同時に志賀大尉の機体は機首をグッと上げる。それを追尾しに敵機も食らいつく。しかし、敵機はすぐに失速した。
志賀大尉「あんまり低速は得意じゃないようだな…どれどれ…」
志賀大尉はラダーを使い上に向いていた機首を真下に下げる。敵機の後ろにつき、敵を観察する。
志賀大尉(こいつもF4Fか…いや、機銃が六門、F4F‐4だな。練度はあまり高くないし、今まで戦ってきたやつより圧倒的に弱い気がするな。あと気になるのは…”国籍マーク”がないことか。米軍だったらつけてるし…今までの深海の奴らもつけてなかった。よくわからんが闇が深そうだ。)
そして彼はまた敵機をしっかり照準に捉え、射撃をする。そして敵機は黒煙を吐きながらハワイ島に落ちていった。
突然空が静かになる。敵機はいなくなり、味方機の零戦だけが残っていた。
志賀大尉「全機、本機の周りに集合せよ。こちらの被害は?」
加賀五番機「こちら五番機、六番機が被弾。先に基地に帰還しました。」
志賀大尉「了解、燃料と残弾が不安な機は帰還せよ。他の機は本機に続け!攻撃隊を狩りに行くぞ。」
志賀大尉はそういって味方機を4機連れ、攻撃隊に向かった。しかし彼は追いつくには時間をかけすぎたことに気づいていた。
~~マウイ島上空~~
坂谷少佐「第二次迎撃隊全機、増槽を投棄。加賀隊の一中隊が戦闘機隊はやってくれた。攻撃隊は俺たちが狩るぞ!」
第二次迎撃隊妖精たち「応!」
坂谷少佐「敵の上空を通過、降下して仕留める。まだまだ…いまだ!全機降下開始!」
二階堂大尉「加賀二中隊全機、一中隊や赤城隊に負けるなよ!突っ込めぇ!」
赤城隊の第一中隊9機と加賀隊の第二中隊9機が機体を反転させ編隊を組んでいる敵の攻撃隊に降下していく。その瞬間敵攻撃隊の何機かが光る。後部銃座で応戦してきたのである。そして迎撃隊を曳光弾が包む。その中を潜り抜け敵機に銃撃を浴びせる。敵はおよそ30機。その半分が第一撃で落ちていく。
坂谷少佐「敵機はおそらくSBDドーントレスとTBDデバステーターだ。今の真珠湾に通すと艦隊が壊滅しかねん。全機反転!一機も通すな!」
迎撃隊は降下でつけた運動エネルギーを位置エネルギーに変え、高度を上げる。今度は銃座による攻撃がなく、敵機に下部銃座がないことがわかる。
迎撃隊の使っている戦闘機は零戦二一型。武装で20ミリがついているが120発しかなく、継戦能力は乏しい。が、一撃しかしていない迎撃隊はほとんどの機が残っていた。
敵攻撃隊に向かって零戦が20ミリを放つ。歴戦の一航戦搭乗員によって放たれる20ミリ一号銃は悪い弾道をものともせず敵機に吸い込まれていった。そして敵機はバラバラになりヒラヒラと落ちていった。たった二回の攻撃だけである。敵の攻撃隊は壊滅…全滅した。今までの戦闘を生き抜いた歴戦の一航戦の熟練度がうかがえる先頭であった。
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《第一次真珠湾空襲》
敵戦力 F4F 16機 日本軍戦力 零戦二一型 27機
SBD 16機
TBD 12機
戦果 敵機全機撃墜 『完全勝利S』
損害 零戦一機被弾(帰還成功)
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~~加賀艦橋~~
通信妖精「迎撃隊第二陣より通信、敵攻撃隊全機撃墜。損害なし。帰投するとのことです!」
提督「さすが…一航戦だな。」
加賀「当たり前です。みんな優秀な子たちですから。」
提督「内火艇を用意してくれ、島に戻る。」
加賀「えぇ、わかりました。」
~~数十分後フォード島~~
迎撃隊の第一陣が帰還し、フォード島に降りてきている。その帰還するのを眺めながら、一人の男が宿舎に向かって入っていった。
軍医妖精「提督、来られましたか。」ビシッ!
軍医妖精が敬礼をして提督を迎えた。その奥では一人の少女がキョトンとした表情で彼らを眺めていた。
提督「やぁ、少しは眠れたかな?」
フレッチャー「えぇ、少し…ですが。それよりAir raidがあったって聞きました。大丈夫なんですか?」
提督「心配しなくていいさ。そんな簡単にやられるつもりはないよ。」
フレッチャー「そうですか…たのもしいですね。」
そういって彼女は微笑んだ。
提督「ようやく君の笑顔を見れたよ、フレッチャー。」
フレッチャー「…///」
提督「すまないが当分はここで過ごしてもらうことになる。そしてつらいかもしれないが君の知っていることをすべて聞かせてもらうよ。」
フレッチャー「はい、もちろんです。助けてもらいましたから…」
提督「そうだ。まずここに来る前の記憶ってあるかい?」
フレッチャー「あまり詳しくは覚えていないんです。ですけど、一つ覚えてるのは…私は…沈んだんです。このpacific Oceanに…」
提督(沈んだ?ではさっき我々が攻撃したのは…)
フレッチャー「私は…謎の艦上機にやられたんです。」
提督「謎の艦載機?なんで謎なんだ?機種は?どこの機体だったんだ?」
彼女はゆっくりと怯えたように口を開いた。
フレッチャー「友軍機の…F4FとTBD、SBD…です。」
いかがでしたでしょうか。またまた謎は深くなっていくばかり。さぁこれからどうなるのでしょう。次回もお楽しみに!