艦これSS パールハーバーの提督   作:九九艦爆

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第八話 Silver Bullet

真珠湾に増援が着いて三日目。護衛艦隊の主力である佐世保、呉の艦隊は南方に進撃。湾内に残っていたのは横須賀の艦隊と輸送船団のみであった。進撃する艦隊はマーシャル諸島の敵艦隊を攻撃しに行く予定である。現在北太平洋は真珠湾を占領、主力を撃退したおかげで制海権が安定していた。しかし残存戦力は南太平洋、オーストラリアに逃げた様であった。その撃滅のため本土で整備していた主力部隊が出撃していった。

 

~~オワフ島 ヒッカムビーチ~~

 

提督「なんでこんな…ねぇ?」

 

提督は見慣れない緑色の第三種軍装を纏い、腰に軍刀、M1911コルトをさげ、愛車であるジープに寄りかかっていた。

 

加賀「たまにはいいんじゃないかしら?こういうのも。」

 

横では加賀が袴姿と脇にホルスターに入ったM1917リボルバーを身に着け、ジープに据え付けしてあるM2ブローニングの手入れを行っていた。

 

提督「陸軍に任せておけばいいのに…」

 

加賀「そうもいかないわ。飛行場はともかく、ここはもともとアメリカ軍の基地でしたし、何か情報があるはずです。アメリカ軍の情報やつながりを作るきっかけになるかもしれません。あまり詳しい情報を陸軍に知られるのも…」

 

提督「河原は大丈夫さ。信頼できる。しかし…フレッチャーのためもあるな。よし、そろそろ行くか。」

 

陸軍は戦車やトラックを使用し、前線を警戒。トラックなどを使い歩兵を追従、建物内などを索敵し進撃していった。敵の襲撃よりも進撃速度を重視した方針で前進していった。

 

提督と加賀は歩兵部隊とともに機密書類、情報を集めに来ていた。

 

提督は運転しながらあることを思い出していた。

 

提督(変だとは思っていたが…こんな辺境に戦力をこんなに増やしたと思ったらこれだよ…予想はしていたがな…)

 

~~前日、着任艦歓迎会~~

 

提督「諸君、遠路遥々ご苦労であった。当分作戦はないのでゆっくり休んでくれるといい。今夜は着任を祝い、乾杯とさせてもらおう。乾杯!」

 

艦娘達「「「乾杯!」」」

 

提督は新規着任艦と既存の艦娘達と皆で食事をしていた時であった。彼が賑やかになると思っていた宴会は驚くほどの静けさであった。

 

加賀や由良は提督に目を合わせる。さらっと参加していた赤城隊と加賀隊の制空隊長たちも口に食べ物を入れる寸前で手を止める。

 

提督(おい、加賀。どうしてこんなに静かなんだ?)

 

加賀(彼女たち食事に手を付けようとしていないわ。)

 

提督「なぁ…君たち食べないのか?」

 

??「これ…食べてもいいんですか?」

 

提督に恐る恐る視線を合わせる一人の艦娘がいた。彼女は重巡の青葉であった。

 

提督「なんでだ?変なものなんて入ってないぞ?」

 

青葉「私たちみたいなのが…こんな贅沢なものたべていいんでしょうか…」

 

~~現在に戻る~~

 

加賀「あの子たちのこと?」

 

提督「ん…?あぁ…ばれてたか…そうだ。長官が選んでこっちに送ってくるってことはそういうことだって気づいておくべきだったよ。よほどひどい環境にいたんだろうな…」

 

艦娘は人間の姿をしているため人間と同じ扱いがされるのが普通…であるはずだが一応は兵器でもある。艦娘たちが現れて頭の固い人間はほとんど辞職などしていった。しかしいい意味にも悪い意味にも変に頭のキレる人間が残ったため、艦娘を艦同様に敬意をもって扱うべきだと述べるものもいれば、所詮兵器だと言って無下に扱う者もいる。今回着任した艦のほとんどは劣悪な環境で勤務させられており、長官の計らいで検挙された司令部より保護、移動となった艦であった。

 

提督「何とかしないとな。」

 

加賀「…何とかなるわよ。」

 

提督「加賀…そろそろ動こう。」

 

加賀「了解。」

 

提督はハンドルを切り、陸軍の車列から消える。草原を少し走り、飛行場の滑走路に出て、建物に向かって走っていく。

 

格納庫や倉庫の前をジープで走る。加賀はM2を構え提督も周辺に睨みをきかせ周辺を散策していた。

 

滑走路には爆撃の跡が多数。格納庫の中にはボロボロの航空機が置いてあった。輸送機のDC-3やP-40、A-20やB-24、B-18まであった。ほとんどは翼が折れていたりエンジンがなかったりなどまともに使えそうな機体はなかった。

 

二人は車から降り、銃を構え周辺で一番大きな司令部施設へと入って行く。ボロボロのドアを開け、瓦礫だらけの廊下を進む。

 

~~数分後~~

 

提督「うーん…ここには何も…か。」

 

加賀「ここはあの子たちに任せましょう?」

 

加賀が目線をやった先にはジープ三台とそれに乗ったセーラー服の妖精たちがいた。

 

海軍陸戦隊隊長妖精「提督、お疲れ様です!」ビシッ!!

 

提督「ご苦労、楽にしていいぞ。パッと見た感じあまりいいものはなかった。一応詳しく調べておいてくれ。」

 

陸戦隊長「了解しました。陸軍はもうすぐドック周辺を制圧します。そこらへんはまだいいと思いますが…」

 

提督「あぁ、そのあとのメインの建物だな、あれは先に見ておかないと…」

 

そういってジープに乗る二人。助手席に置いていた無線機が突然鳴る。

 

??『ガガッ...提...督...聞こ...すか...』

 

提督が無線機のつまみを回し、通信が聞こえるように合わせる。

 

由良『こちら由良です。艦上から港を見ているんですが…』

 

提督『どうした?勿体ぶらないで報告してくれ。』

 

由良『陸軍が軍港をほとんど無視して進んでいるんですが…』

 

提督『クソッ!江原でも一応陸軍だったな。』

 

提督「加賀ァ!行くぞ!隊長、あと任した!」

 

陸戦隊長「りょ…了解です!」

 

提督は全力でアクセルを蹴る。エンジンが唸りを上げ、砂埃を巻き上げながら港へ走り出した。

 

~~数十分後、真珠湾司令部施設~~

 

提督「おぉ…」

 

ここは米軍が使っていた司令部施設。白色の建物で周りの建物よりも大きい。周りの建物が爆撃などの攻撃でボロボロの中でもまだしっかりときれいに残っている建物であった。

 

提督と加賀は銃を構え、中に入って行く。廊下は屋根から垂れている配線や瓦礫で大変なことになっていた。

 

提督「もしかして俺の執務室…ここに作るのか?」

 

加賀「フォード島だと不便よ。ここしかないでしょ?」

 

提督「外見はマシだったが…ひでぇな、ほんとに。」

 

そう愚痴を垂らしながら奥へ進んでいく。廊下から両脇にある部屋を見ると海図がある作戦室のような部屋、書類を管理する部屋、会議室のような部屋など様々な部屋があった。

 

提督「ここか…」

 

提督はある部屋の前で止まった。

 

扉には『Admiral's Office』と書いてあった。提督公室。いわゆる執務室である。提督と加賀はお互いに目を合わせ、扉を開ける。

 

提督&加賀「「??」」

 

二人は唖然とした。部屋はあまりにもきれいでさっきまで人がいたかのような整理具合であった。

 

加賀「あら、ないわね?」

 

提督「あぁ…予想外だな。」

 

加賀「トラップぐらいしかけてるものだと…」

 

提督「おい…そんなものあるわけないだろ…」

 

加賀「じゃあ何があると思ったの?」

 

提督「死体。」

 

加賀「…相変わらずね?」

 

提督「お互い様だろ?」

 

二人は部屋に入って行き、机の上を見る。英語で書かれた文書の中に、ひときわ目立つ銀色の物体があった。そこには銀色の『.45ACP弾』が乱雑に置いてあった。

 

加賀「これ何?銃弾?」

 

提督「銀の弾丸…Silver Bullet…か」

 

 

銀の弾丸

 

それは文字どうり銀でできた弾のことである。しかし、銀の弾丸という言葉には、『通常の手段では対処が厄介な対象を立った一撃で葬るもの』という比喩や、『架空の存在である吸血鬼や狼男もを殺せる』ということも信じられていた。

 

 

提督「何でも一撃、悪魔だろうが深海の奴らでも殺せる…か。」

 

加賀「それは迷信じゃない?」

 

提督「さあな?」

 

提督は机に置いてある書類へと目を動かす。

 

加賀も書類へ目を通すが、英語がさっぱりな彼女はすぐに書類を置き、周辺の戸棚を漁り出した。

 

机の真ん中にある書類、『All that happened』 そう書かれた書類の束を提督がめくる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

この書類を読んでいるのは誰かは私は知らない。味方だろうが敵だろうが、人間だろうがそうでなかろうが、知る由もない。しかし、これから書いてあることはすべて事実である。信じられないかもしれないが、それは私も同じ気持ちだ。未だに理解が追い付いていない。

 

1940年9月、日本軍はインドシナに進出。連合国である我がアメリカ合衆国、イギリス、オランダは日本への経済制裁を行った。それにより日本は石油輸入の9割が規制された。これにより日本は制裁解除のために列強と妥協点を探るか、保有資源が尽きる前に戦争を仕掛けるかの二者択一を迫られた。しかし、日本の内閣により前者のような選択肢は取れれず、開戦の道へと進んでいった。我がアメリカ軍も開戦に備え、南方への戦力移動、太平洋艦隊の増強を行っていた。

 

転機が訪れたのはこのぐらいの時であった。1941年初頭、戦力移動のために本土から送られてきた陸軍部隊をポートモレスビーへ輸送していた輸送艦隊が突如として”消えた”のである。当初真珠湾の分析官や上層部は日本軍の仕業だと読んでいたがその予測はすぐに違ったことが分かった。

 

”奴ら”は次々と我が国の艦船を襲っていった。最初は”奴ら”の情報が掴めず、被害が拡大していくだけであった。本格的に反撃の体制を整え、反撃に出ようとしたとき日本からの協力要請があったが、こちらの状況などを伝える前に謎の電波妨害を受けた。日本以外にもイギリスなどヨーロッパ諸国とも連絡がつかなくなり、戦況は悪化していった。

 

この真珠湾でも奴らへ対抗するための中枢基地としてかなりの戦力増強をしていた。しかし敵艦隊がかなり近海に出現するようになった。こちらも太平洋艦隊主力である。負けるわけにはいかない。

 

一回目の出撃では相手が水雷戦隊だったのにも関わらず、戦艦一隻轟沈、大破一隻、小破多数という結果になった。ひどすぎる。なぜかは分からない。

 

本土からカナダに敵が上陸したとの情報が入った。奴らは海だけでなく、陸にも進行しているらしい。奴らは何者なんだ?なんのために戦っているんだ?

 

本土との通信がとれなくなった。妨害電波だろうか。ノイズがひどく、何も聞き取れない。

 

この基地に配備されているレーダーがおかしくなった。レーダー画面には何も映らず、電波が乱反射しているように見える。

 

だいぶ押され始めた。ほとんど包囲されているようだ。本土とも通信は途絶えたまま、戦力は減っていくばかり。

 

戦力は多少あったが補給も増援もなく、私は部下が死んでいくのをただ見ているだけしかできなかった。

 

1942年に入り、戦力の限界が来ていた。これ以上被害が出ると上陸され、占領される恐れがあった。幸い空襲などはされなかったため、軍港や民間人には被害が出ていなかった。そこで我々はすべての艦船を使い、本土へ撤退することになった。

 

とても苦しい決断であったが人の命を預かる以上、プライドを捨ててでも守らなければいけない。

 

私は皆についていくことはできない。ほかの味方が来るかもしれない、日本軍が来るかもしれない。そう言って皆を説得したが、自分ではこれが私にできる死んでいった仲間への謝罪だと思っている。

 

皆が無事出港して今は私が一人この島に残っている。正直さみしい。

 

何か嫌な予感がする。

 

この書類を書き上げなくてもよくなったかもしれない。

 

船が入ってきた。艦型は米軍のだ。しかし、乗組員が…

 

死にたくない。

 

敵に殺されるぐらいだったら自分で死んでやる。

 

ここは占領された。

 

この書類を読んでいる君へ。

 

君は味方か?

 

敵か?

 

人間か?

 

奴らか?

 

何のために戦っている?

 

どうやってこれを読んでいる?

 

教えてくれ。

 

私は、

 

私は、もう限界だ。

 

もし君が味方だったら。

 

君が人間だったら。

 

”奴ら”を倒せるだろうか。

 

今までのような世界を取り戻せるだろうか。

 

もうこの世界はもとには戻らないかもしれない。

 

しかし、奴らがいる限り悪化していくだけだろう。

 

私は最後まで戦うことを決めた。

 

この銀の弾丸で。

 

私は銀の弾丸にはなれない。

 

銀の弾丸になれるか?

 

私はなれなかった。

 

私には迷信にすがって銀の弾丸を撃ち出すことしかできない。

 

神に祈り、迷信にすがり、来るかもしれない味方へこの書類を書いた。

 

本当に笑える。

 

自分がみじめだ。

 

もう、いいか。

 

さようなら。

 

読んでくれてありがとう。

 

幸運を。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

提督「…」

 

加賀「なんて書いてあったの?」

 

提督「…」

 

加賀「提…督…?」

 

提督「…あぁ。すまない。よし、書類は全部保管だ。貴重な情報が得られるかもしれん。」

 

加賀「わかったわ。…大丈夫?」

 

提督「少し疲れただけだ…」

 

机の上の弾丸を拾う。

 

提督「もらっていくか…」

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