ハローハロー、君は一体誰なんだい?
ハローハロー、リスナーさんの敷波さんは楽しそうに聞いているよ。
「今日も今日とで敷波さんは哨戒任務ですよーっと。今日は雨かぁ」
しとしとと雨が降る。紫陽花なんて鑑賞するにはいい雨具合だ。まあ、ここは海上で哨戒中だからそんなものは見れないんだけど。
そんなアタシには小さな趣味がある。今日は聞けるかな。
『ハローハロー、愛するリスナーの皆聞こえているかい?おねーさんだよ。今日もいい雨だから雨のラジオをやっていくよ』
陸から遠く離れた海の上、更にラジオなんて拾うはずのない艦娘専用の無線チャンネルから流れてくる不思議なラジオ。海の上で雨が降っている時だけ流れてくることがある、不定期放送の放送局もパーソナリティーの人も何もかも不明のラジオだ。もう一つ分かっているのは雨が止む前に番組が終了することだけ。
『今日はしとしと雨だね。落ち着く音色でおねーさんは好きだなぁ。皆も好きだと嬉しいなぁ』
喋るのはメインパーソナリティの自称「おねーさん」だけだ。彼女がどういう名前で、どこの所属なのかも全くの不明。
ただ、楽しそうに喋る彼女の声は何も見えない退屈な広い海の上で、ピリピリと緊張し続けなければいけない哨戒任務では一時の癒やしとなる。
『じゃあお便り行ってみよう。『おねーさんこんにちは』うん、こんにちは。
『強くない雨は浴びてて気持ちがいいんですけど風邪を引いちゃいます。おねーさんはどうしていますか?』
うんうん、そうだよね。だからおねーさん、出かける前にたっぷりのお湯を張ったお風呂と熱々のシャワーの準備をして出かけるんだ。気持ちよく冷たいところに体の芯まで温まるお風呂やシャワーはいいものだよ。体を冷やしすぎないようにするのが雨を浴びて楽しむコツさ。こんな気持ちのいい雨を浴びないのは勿体ないからね。
そんなわけで今日の最初の音楽は『雨音バスルーム』だよ』
このラジオに誰がどうやって投書しているのかも不明だ。ペンネームが読み上げられることもない。それにこうやって選曲される音楽も聞いたことのないものが多い。気になって帰ってから検索してもヒットしないことだって珍しくない。ただ……
「今日の曲も、今日の雨にぴったりだなぁ」
おねーさんがセレクトするのは今降っている雨具合に合っている雨が好きになれるような曲。その選曲センスに外れはないのだ。
「よーし、アタシも帰投する前に温かいお風呂の準備してもらおうっと!」
この後のちょっと楽しいイベントに思いを馳せつつ、ラジオを聴きながら軽い足取りで哨戒を続けるのだった。
雨みたいに降ってきたら続きます。