世界防衛大型重機 コバキオマル ~勝手に戦闘ロボットを用意してたんだけど、俺たち以外の勢力がちゃんと戦ってる~   作:ツル@oreo

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第5話 もう一人の幼馴染

 尾上(おがみ)会長、いやユイ姉とは御式学園に入学してからの付き合いではない。もっと昔、もう一人の幼馴染と呼んでいいほどの古い関係だ。

 

「あんたら、何いじめてんのよ!」

 

 夕焼けの公園。上級生にいじめられていた幼い司と火伊奈(ひいな)を助けてくれたのはユイ姉だった。

 一回りも二回りも違う体格の男の子たちに単身で挑み。次々と襲い掛かってくる少年たちを一掃した。ただ、やり方が目をついたり急所を抉ったりと容赦がなさ過ぎて幼かった司は唯に対して恐怖を抱いてしまった。

 戦闘は終わった。立っている者は唯ただ一人で上級生男子たちは悉くが地の上に倒れ伏している。

 頬に返り血を滴らせた唯が司を振り返り、見る。

 

「ヒッ……!」

 

 つい、見開いた唯の目が怖くて火伊奈に手は出させまいとかばうように抱きしめた。

 ゆっくりと唯が歩み寄る。彼女が歩く一歩一歩が言いようのない恐怖へのカウントダウンのようで司は耐え切れず目を閉じた。

 

「大丈夫? ケガはない?」

 

 優しい声がした。

 恐る恐る目を開くと、自分に向けて精一杯の笑顔を向けている唯の顔があった。

 それだけで、司の恐怖は吹き飛んだ。

 

「あの、僕を弟子にしてください!」

 

 唯の手を取って、勢いよく立ち上がった。

 唯は驚きと喜びの入り混じったような表情を浮かべて、「うん」一つ頷いた。

 

「へへへへへッ……」

 

 嬉しくて司は笑った。照れくさくなって、その照れを隠すように唯の頬に伝っている返り血を手で拭うとつられるかのように「フフ」と唯も笑い始めた。

 それから唯とは家族同然の付き合いをするようになった。

 よく火伊奈を入れた三人でお泊り会をしたり、誰かの親に連れて行ってもらって共に旅行に行ったり。

スペックも高いうえに努力家な唯は権五郎に大変気に入られて、司が中学校に上がるぐらいになると権五郎の期待の対象は唯にほとんどシフトしていた。

ただ、その期待のベクトルが全く司とは逆で当時の赤川工業の仕事を任され、工場の中で効率的に作業を分担したり、厄介な依頼人との仲立ちになったりとビジネスマンとしての、中学生だった唯のスペックの高い面を見せつけた。一時期はほとんど唯が会社の経営を一手に引き受けて会社を乗っ取った勢いだった。

だから、権五郎について悩んでいると言うと彼女は話がすべて理解できるため話は早く、解決できる見込みもあるというわけだ。

 

               ×    ×    ×

 

 学食の中はにぎわってはいるものの全盛期ほどじゃない。

 昼休みを半分すぎて、大方の学食利用の生徒は食事を終えている。今残っているのは話が盛り上がって駄弁り続けている暇人たちのみだ。

 

「流石、にこの時間になると()いのがないですね」

 

 券売機のいたるボタンに売り切れのランプが点灯している。おおむねの人気メニューは昼休み開始直後に多くの生徒たちが頼み、もう残っているのはほんの一部だ。

 定番安価の親子丼と、最近メニューに追加したカツと海鮮系をミックスした海山(かいさん)ゴージャス丼しか残っていない。海山ゴージャス丼は分厚いカツとふんだんに使われた魚介類でボリュームもさながら値段も二千円と、学食の範疇を超えたその名の通りのゴージャスな一品となっている。

 自分の金なら親子丼一択なのだが、会長のおごりである。一度は食べてみたい一品ではあるのでここは甘えてみてもいいんじゃないかとよこしまな考えが頭をよぎる。

 

「じゃあ、海山ゴージャス丼で……」

「え⁉」

 

 後ろの会長から戸惑いの声が漏れた。

 振り返ると平然と司に笑顔を向けており、聞き間違いかと思う。

 

「そういや、会長は何にするんです?」

「親子丼」

 

 即答だった。若干圧を感じるほどの即答だった。

 にっこりとした笑顔を崩さないまま司を見つめている。

 

「あの、何でもいいんですよね?」

「ああ、当然さ」

「じゃあ、ゴージャ……」

「…………」

 

 空気が、ズッと重くなった。なぜだかニコニコ笑っている会長の顔に恐怖を感じ始める。

 

「一緒のがいいな……」

 

 ボソッと会長がつぶやいた。

 その一言で司の心は決まった。

 

「俺も親子丼にします」

 

 そう言わないとどうなるかわからなかったので会長の言葉に従った。

 司が背を向けたとたん、会長は胸をホッと撫で下ろしたが、彼が知るところではない。

 

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