「これ、お願いできる?」
「おう、任せろ」
「ほかのクラスがどんな感じか見に行こうぜ」
「いいぜ、行ってみよう」
「ねえ、衣装こんな感じでいい?」
「うん、いいと思う」
「作んのだりー」
「まじそれな」
「ちょっとあんた達、しっかりやりなさい」
神山高校の文化祭は刻々と近づいています。
ここら辺まで来ると、学校側も授業をすることはなく、その時間を文化祭準備に全てつぎ込んでいます。
そのため学校のそこらじゅうで人が動き回り、賑やかな様相をしています。
1-Cは今のところ順調といえるでしょう。
クラスの雰囲気は十分良いものといえますし、作業進行度もこのままいけば余裕をもって間に合います。
一部さぼっている人を見かけますが……クラスの士気にかかわらない程度の度合いなので、大丈夫です。
お化け屋敷の順序も決まっています。
あるものを取りに行き、それを持った状態で出口を目指すような感じです。
テンプレですが、こういうのはこれでいいと思います。
「青葉くん、こんな感じでいいかな?」
「あぁ?あーもうちょっと強度ほしい。」
「そう?これでいいと思うけど……」
「俺的にはもうちょっと。ガムテで少し補強する程度の補強で十分だから、やってほしい。」
「あ、それだけでいいのね。それじゃあそうするよ」
「ん」
うちのクラスで一番働いているのは青葉くんだといえるでしょう。
どのようなお化け屋敷にするのか、数パターン用意してくれました。
どれも悪くないものでしたので、クラスでどれにするのか悩みに悩みました。
「青葉くん、今どんな感じ?」
「……こんなん」
「どれどれ……わぁ!結構雰囲気あるね!」
「ん」
青葉くんは細部までこだわって制作に力を入れました。
制作班が大まかな着色まで済ませた道具たちの仕上げを美術部の人たちと協力して行っています。
今目の前にあるのはお化け屋敷のキーアイテム……が置かれる土台ですね。
長年放置された見た目をしています。
「やっぱり青葉くん、うまいね。何かやってるの?」
「家でたまに絵描いたりDIYやったりしてるかな」
「あーそれでかー」
青葉くんは一人でいるのが好きなのか、会話している場面を滅多に見ません。
普段は机に突っ伏しているか、スマホをいじっています。
それに、青葉くんは背が高くてガタイがいいので、冷めた目で見下ろされるとちょっと怖いです。
「邪魔しちゃってごめんね。それじゃ、引き続き頑張ってね」
「ん」
「疲れたら休んでもいいからねー」
「ん」
クラスのリーダーになる関係上、クラスの中でもかかわりがなかった人たちとはなす機会が生まれます。
その時に青葉くんも含めて、今まで見えてこなかった一面を見せてくれるので、少し得した気分になります。
「あっ」
その中でもやはり、青葉くんのことを知れたのが一番の成果だと思います。
「……やっぱり、いつ見てもすごい」
目の前には一つの絵画が置かれています。
描かれているのはこのお化け屋敷のキーキャラクターである少女です。
質素な洋服に身を包んだ少女の顔はマジックで塗りつぶされていますが、なぜかかわいい子なのだろうと誘導されるように想像してしまいます。
まるで昔の画家が描いたような劣化した感じも再現されています。
美術館でこれを展示するとしたら、誰もが少女を見て立ち止まることでしょう。
「あっ、実行委員の会議遅れちゃう!」
この絵が来る人の目に飛び込んだ後の反応を早く見たくてたまりません。
きっと誰もが同じ反応をするでしょうから。
―――――
「……」
……わたし、青葉くんちゃんさんは後悔しております。
ここまでこだわらなくてもよかった……っ!
普通に辛いです。
俺の集中力はクソ雑魚ナメクジなので、気が散るなにかがあるとすーぐ切れちゃいます。
もうめんどくさいのなんの。
「青葉くん、補強ってこんなもんでどう?」
「んぁ?あーおk。それでいいよ」
「そう?あーよかった。それじゃあ、うちら休憩するね」
「ん」
その中で俺のやる気をゴッソリ持ってったのはやっぱりあれですね。
あの絵画。
あれくっっっそ時間とられたわ。
当分絵描きたくないわ……
いま塗る作業してるんですけどね?
「……」
誰か変わってくれないかなあ。
俺もうサボりたいんだけど。
働きたくないんだけど。
さぼっている奴見ると殺意沸くぐらいには働くの嫌なんですけど。
ダメ?そう……(´・ω・` )
彰人君出したいけどどこで出そう……