だらけた天才   作:貝SAW

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そうはならんやろ(ご都合)











それはうだるような夏のことでした

 

 

 

 

 

 

--???の家--

 

 

 

 

 

「お母さん、塾に行ってくるね」

「行ってらっしゃい、まふゆ。いつ頃帰ってくる予定かしら?」

「夕飯前には帰ってくるよ」

 

「わかったわ。勉強、頑張ってきてね」

「うん、行ってきます」

 

『――から昼間にかけて、35℃をこえるでしょう。猛暑日が続いております。熱中症対策にこまめな水分補給を行いましょう。――』

「……今日も暑いわね。」

 

 

 

 

 

 

--スクランブル交差点--

 

 

 

 

 

「……」

 

朝比奈(あさひな)まふゆは、塾へと向けて足を進めていた。

まふゆの通う宮益坂女子学園はこの間から夏休みに突入しており、多くの生徒は長い休みを有意義に過ごしている。

まふゆもそのうちの一人で、夏休みの課題を早々に終わらせて、医療に携わる職業になるために勉学に励んでいる。

 

だが、それは生徒に限った話で、大人たちはいつもの通り会社へ働きに行かなければならない。

回遊魚のごとく流れる人波に、まふゆは身を任せて進んでいく。

 

その流れがせき止められる。交差点だ。

この道路の向こう側に行きたいのだが、ちょうど赤信号に変わってしまった。

 

「……」

 

燦然と輝く太陽は容赦なく待ち人たちに熱を送り、その光を反射させるビル群は諸人を気にせず晴天を見上げる。

ジワリとくる湿気が余すことなく肌に触れ、それをどけようと熱波が微風を届ける。

いつも通りの夏。何度も体験した夏。

 

「(なんだか、頭がぼーっとする)」

 

それは立ち止まる人たちも知っている。

その不快さも、そこに隠れる危険も。

まふゆも当然知っている。

 

「(……バランスがとれない。ふらふらする……)」

 

知ってはいるし、予防もしている。

だが、今日はタイミングが悪かった。

 

 

ここの信号機は待ち時間が長い。

特に、朝方は自動車の信号の時間が長くなる。

ちなみにいうと、まふゆ自身は感じてはいなかったが、今日の調子は最悪に近い。

 

「……っ!」

 

ありえないことだったが、それがありえてしまった。

崩れ落ちるように膝を突き、四つん這いになるが、気持ち悪さはひどくなるばかりだった。

何も考えられなくなる。平衡感覚が失ってしまう。

 

 

 

 

まふゆは、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!」

「……」

 

えぇ……目の前の人が急に座り込んだんですけど……

気づいてる人……駄目だ、みんな暑さでいかれてやがるぜ。

そんなにスマホ見て楽しいか?楽しかったわ、ごめん。

 

「……」

 

……倒れちゃった。

……声かけたいけど、注目されたくないなー

……ふつうこうはならんやろ←なっとるやろがい!

 

 

 

「……大丈夫ですかー」

 

うわ、触っちゃった……じゃなくて、意識なさそうだな。呼吸は……大丈夫。

ってか最悪。いま信号青になるの?

タイミングわりーなー!

 

「……」フゥ

 

「すんませーん!!誰か手伝ってくれませんかー!!」

 

……恥っず。顔あっつ。

……通り過ぎんじゃねえよ。手伝えよ……

あっあの人に……いや、ムリムリ。いま胸がキュってなった。

 

まじでこんな時にコミュ障発揮してんじゃねえよ。

……いいや、一人でやろ。

 

「どっこいしょ」

 

とりあえずおんぶして、日陰目指すか。

いやーやっててよかった応急救護。

うわはわ……体やらか……あっつ!

こんな暑い日にひと肌とか求めてないからやめてくれる?

 

「……」

 

着いたらやること……多分熱中症だろうから、自販機で飲料買ってこないと。

 

「この辺、自販機あったっけな……」

 

 

……。

 

 

「よし、ついた」

「あってよかった自販機近くで(倒置)」

「楽な姿勢にさせて、ポカリ3本買って、1本飲ませて……残りは脇を冷やすんだっけな」

 

読んでてよかったコ〇ンのマンガ。

でも……確かふくを脱がして風を送ってたよな……。

……流石に?

 

「……とりあえずポカリ買うか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「ハア……ハア……」

「……」

 

救急車に連絡した、ポカリ飲ませた、脇を服越しに冷やした、何故か持ってた扇子で風を送ってる。

……問題ないな!ヨシ!

 

「ハア……ハア……」

「全然起きねえなあ」

 

というかここまでやってまだチラ見して通り過ぎる人は何なの?

馬鹿なの?死ぬの?

俺も早くこっからおさらばしたいんだけど?

 

なんでこんなクッソ暑い日にずっと外にいなきゃならないわけ?

もう汗すごいんだけど。

めんどくさいなあ……。

 

「ハア……ハア……」

「……」

 

紫髪とか珍しいなぁ……。

というかこのひと、めっちゃきれいじゃん。

こんなんならお近づきになりたくて男の一人や二人きてもおかしくないんだけどなあ……。

 

……なんか、うなされてない?

まあ、いいか。早く救急車来ないかなー。

 

 

「ハア……ハア……」

 

 

……。

 

 

「――――――――♪」

 

 

……。

 

 

「――――――――♪」

 

 

……。

 

 

「――――――――♪」

 

 

……おっ救急車来た、これで勝つる。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ふう、やっといったか。

もうこんなこと起きてほしくないなあ。

……もうこんな時間か、早めにご飯食べようかな。

 

「……」ハア

「めんどくさかったなあ」

 











『即興:あなたが安らげる歌』






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