研究チームのリーダーは言った。
もしもPCの異常がデジモンの仕業ならば、そこにはデジモンが住めるデジタル空間があるということ。
そうであれば、デジドローンを飛ばして様子を確認できるのではないか、と。
言われてみれば確かにそうだ。
異常の起こっているPCは、以前デジタルワールドの観測にも使用していた。
そのため、デジドローンとデジクオリアはいつでも使える状態だ。
メインPCの中にデジドローンを飛ばし、異常の原因が何かを確かめてみるべきか…?
フローラモンをドローンの護衛につけてはどうかという案が出た。
フローラモンに、コンピューターへの潜入経験を積ませて鍛えるためだと。
だが私は2つの理由で反対した。
1つめは、フローラモンは戦闘経験があまりにも不足しており、万が一成熟期の肉食デジモンと鉢合わせになったら一環の終わりであるため。
2つめは、フローラモンを入れる記録媒体の問題だ。
仮にフローラモンをフラッシュメモリ経由で問題のPCへ接続した場合、そのフラッシュメモリにデジモンが侵入する可能性があり得る。
そうなった場合、フローラモンを元のビオトープへ戻したとき、ゴミ箱のデジモン(仮)は我々のネットワークへ侵入することになる。
それではせっかくスタンドアローンにした意味がない。
デジモンを送り込める機会は、たった一度…と考えるべきだろう。
よって今回は、デジドローンを単体で送り込むものとする。
レスポンスを上げるために、一時的にデータマイニングを止めた。
いざ、発進!デジドローン!
デジクオリアを起動しようとすると…
「ライセンスが認証できません」の警告ダイアログが表示され、起動に失敗してしまった。
あッッッッ!!!
そうだった!!!
デジクオリアは、有償のお高いソフトウェアである。
不正コピー品が使われないように、起動時はライセンス認証が必須なのである。
そのため、スタンドアローンのPCでは起動できない…!
これは…まいった。
我々は、開発元に連絡し、あらん限りのお願いをした。
その結果、見事説得に成功し、スタンドアローンでもデジクオリアを起動できるように、USBドングルを送付して貰えることになった。
ただし、デジクオリアの品質改良のため、事態の収集がついたらデジクオリアの映像をブルーレイROMに焼いて送付するように、との依頼を受けた。
デジモンは生きたデータであるため、一度焼いたらデータを書き換えできないタイプのROMには侵入できないのである。
我々は交換条件を承諾し、2日後にドングルが送付されるのを待つこととなった。
ドングルでPCのゴミ箱を調査できるのは、最短で2日後である。
それまでは、フローラモンとボタモンの訓練をして待つしかない。
さて、現在のビオトープは、訓練とは無縁の快適空間である。
ここをトレーニング場へと改築しなくてはならない。
我々はフローラモンの飼育から得たデータにより、デジタル空間の構築技術を向上させ、面積を倍まで増やせるようになった。
現時点で必要な訓練は、コミュニケーションの訓練と、戦闘の訓練である。
果たして、どうやってトレーニングをさせればよいのだろうか…?
デジモンの訓練の仕方など分からん!!
分からんなら分からんなりに、方法はある。
自分たちで考えてもラチが開かないので、デジタルワールドを観察し、実際に戦闘訓練のやり方を見て真似すればいいのである。
我々はデジドローンをディノヒューモン農園へ飛ばし、スナリザモン等をどうやって訓練しているのか、観察して訓練方法をパクることにしたのである。
まさか、我々がデジモンの生み出した技術をパクることになるとは…。
…
ディノヒューモンは、スナリザモン2匹とカメモン2匹、サラマンダモンを連れて農園の外に出た。
一向は、サバンナを歩き回り、食糧を探したり、長い木の枝を集めている。
その途中で、一向は3匹の昆虫デジモン達と遭遇した。
うち2匹はクネモン。
もう一匹は…
鋭い毒針を持った蜂型デジモンだ。
フライビーモンと命名した。
フライビーモンは、針を出してスナリザモンへ飛びかかってきた。
ディノヒューモンは、武器でスナリザモンを守り、サラマンダモンと二人がかりでフライビーモンと戦った。
ディノヒューモンの武器と、サラマンダモンの炎が、フライビーモンを追い詰めていく。
やがてフライビーモンは、空を飛んで逃げていった。
残されたクネモン2匹は、スナリザモンと死闘を繰り広げた末に、スナリザモン達の噛みつき攻撃をくらって力尽きた。
スナリザモン達は、クネモンの死骸を捕食した…。
…なるほど。
ディノヒューモンは、実戦形式で訓練しているのか。
参考になるか?これ…
様々な案を組み合わせることにした。
第2ビオトープとして、コロシアムを作るのである。
そしてデジドローンの技術を応用し、戦闘訓練用のボットを作った。
マシンアームに木の枝のハンマーを振ることができる飛行物体である。
デジドローンの中にはキノコが詰められており、ドローンを破壊すると中のキノコを食べられるようになっている。
これを使い、デジモン達の訓練をすることにした。
フローラモンと、ボタモンを…
…うおっ!?いつの間にか進化している。
ボタモン改めコロモンを、このコロシアムへ放った。
試作型ボット3体は、まずはフローラモンの方へ飛んだ。
フローラモンは、いつものように遊んでくれるのか?と思って、ボットへじゃれつこうとした。
だがボットは木槌でフローラモンを殴打した。
軽くポカっと叩く程度だ。
びっくりしたフローラモンは、泣きながらコロシアム内を逃げ回った。
我々は、いつものデジドローンを向かわせて、フローラモンへ敵と同じ武器を与えた。
フローラモンは、我々が味方だということは分かってくれたようだが…
木槌をぶんぶんとがむしゃらに振り回すだけであった。
ボットには一向に当たる気配はない。
一方のコロモンは、ボットに木槌で叩かれると、シャボン玉のような泡を吐いて応戦した。
我々が木槌を与えると、コロモンは木槌を咥えた。
そのまま目の前のボットを叩くのか…と思ったら、なんとコロモンはぴょんぴょんと跳ねてフローラモンの方へ向かい、フローラモンと戦っている方のボットを背後から殴打した。
不意をつかれたボット。
3つ点灯していたランプのうち、1つが消えた。
コロモンは、再びボットを叩こうとするが…
空中を飛行しているため、コロモンの木槌は届かない。
するとコロモンは、自分の木槌をフローラモンへ渡した。
フローラモンはきょとんとしている。
コロモンは、武器を持たず、ボットへ泡を吐きかけて攻撃(?)した。
このボットは「攻撃を受ける度にランプが1つ消える」という挙動をするため、こんなしょぼい泡攻撃でもランプが1個消えるのである。
コロモンはフローラモンに向かって吠え、その後ボットに向かって吠えた。
フローラモンは木槌を握りしめると、ジャンプしてボットを叩いた。
3つ全てのランプが消えたボットは、地面に落下し、パカっと蓋を開けてキノコを出した。
ボットはあと2つ残っている。
フローラモンは、両腕の花を開くと、花粉のようなものをボットへ吹き付けた。
霧散した花粉をくらったボット。
「攻撃を受ける度にランプがひとつ消える」…。
つまり、花粉をくらった数だけランプが消えることになる。
2機のボットは両方とも、一瞬で3つ全てのランプが消え、落下した。
コロモンとフローラモンは、喜びながらボットの方へ駆け寄った。
…そのとき。
フローラモンの撒いた花粉を、コロモンが吸い込んでしまった。
コロモンは、涙と鼻水を出しながら、何度もくしゃみを繰り返した。
まさかフローラモンの花粉は、アレルギーを引き起こす作用があるのだろうか!?
これはまずい。
我々はコロモンをコロシアムからビオトープの水場へと転送した。
コロモンは、水場へ飛び込み、体を洗った。
数分後、ようやくくしゃみが止まったようだ。
一方のフローラモンは、ドローンが落としたデジタケを集めていた。
フローラモンがすべてのデジタケを集め終わった後、我々はフローラモンをビオトープへ転送した。
アレルギーが収まったコロモンは、フローラモンを見つけると、不機嫌そうな顔をしたが…
フローラモンがコロモンへデジタケを差し出すと、コロモンはそれを食べた。
…ドローンを使った戦闘訓練は成功といったところか。
ただし、次はフローラモンとコロモンを一緒の部屋で訓練させるのはやめた方が良さそうだ。
あの花粉を何度もコロモンに吸わせるわけにはいかない。
…
さて、初回トレーニングは完了だ。
次はどうするか…?
デジタルワールドを散歩させてみようかとも思ったが、そのまま脱走して帰ってこなくなる可能性もある。
どういう訓練をするか…
何度か、それぞれに飛行型ドローンとの戦闘訓練を積ませてみた。
慣れてきたフローラモンは、これをゲームだと思ったらしく、それなりに楽しんでいる。
一方のコロモンは、自分の力不足を感じているのか…
高くジャンプする練習をしたり、泡を勢いよく吐く練習をしている。
やがて、コロモンは興味深いことをし始めた。
土で泥のボールを作り、それをフローラモンへ渡したのだ。
フローラモンは、最初それをプレゼントか何かと思ったらしく、自分の寝床へ飾った。
だが、コロモンは新しくボールをいくつか作ると、そのうちの一個を壁に投げた。
そして一個をフローラモンへ渡すと、コロモンは木槌を咥えて、先程ボールを投げた壁の前に陣取った。
フローラモンが、優しく泥のボールをコロモンに向かって投げると…
コロモンは、そのボールを木槌で叩いて破壊した。
フローラモンとコロモンは、このスポーツを気に入ったらしく、暇を見つけてはこのスポーツをやるようになった。