カリアゲとクルエは、あれからベーダモンとのコンタクトをしたらしい。
結果について、簡潔に報告してもらった。
我々の目的は、ベーダモンを味方につけること…というよりは、「敵に回さない」こと。
クラッカーの側につかないようにすることだ。
カリアゲ達が最初にやったことは、ベーダモンの観察だ。
ベーダモンがどの程度自我を持っているか、何を考えているのか。
それを調べることにしたようだ。
クルエから見た印象としては…
ベーダモンは「退屈そう」だったそうだ。
ベーダモンは光線銃の光をデジモンに浴びせることで、そのデジモンを一時的に操ることができる。
その状態で、ベーダモンの口の中から出てくる寄生体を敵の口の中に潜り込ませて体内胃へ寄生させることで、ほぼ永久的に下僕にしてしまうことができるようだ。
その力を使って、ベーダモンは配下を増やして群れを形成していた。
群れで最も個体数が多いデジモンは、長く鋭い爪と牙を持つ肉食哺乳類型成長期デジモン、ガジモン。それがなんと七体もいる。
次いで、その進化系とみられる、ガルルモンより一回り小柄な狼型成熟期デジモン、グルルモンも三体いる。
あとは、蜂と蛾の混ざったような姿の、鋭い毒針を持った羽虫型成熟期デジモン、フライモンも一体従えている。
かつてはいろいろなデジモンを部下にしていたようだが、餌を食べる量に対する働きのよさ、費用対効果を加味した結果、選りすぐられたのがこの11体であるらしい。
…それ以外の部下デジモンは、今残っているデジモン達の餌となったようだ。
さて、退屈そうというのは…
ようは、この優秀な部下デジモン達に狩りを任せていれば、自身は何もしなくてもノンビリと過ごせてしまう。
故に今、ベーダモンは特に自分自身がやることがないようだ。
遠くに旅に出ようにも、ベーダモンはタコ型デジモンのオクタモンから無理矢理進化して上陸したため、皮膚が水で湿っていないと生きていられない。
ゆえに水場から遠くに離れることができず、旅にも出られない。
…ゆえに、同じ土地で部下が危なげなくとってくる餌を、ぼーっと食べている日々を送っていた。
それに対して、カリアゲが最初に取った行動は…
「ゲームソフトをあげること」だった。
我々の言語を知らなくても楽しめる、パズルゲームだ。
それをデジドローンで、ベーダモンに贈った。
カリアゲは「これはゲームソフトだ、ベーダモン、お前にやる」と言った。言葉が通じないことを分かったうえで、あえて言葉をしゃべった。
ベーダモンは、突如出現したデジドローンに困惑し、光線銃の光を浴びせてきたが…
デジドローンはデジモンほど高度な造りではないので、洗脳光線が効かなかった。
ベーダモンは、贈られたパズルゲームを触ってみた。
やがて、ルールを理解し始め…
ゲームに熱中した。
数日後、クルエがデジドローンで新しいゲームを持ってきて、ベーダモンに贈った。
簡単な縦シューティングゲーム…いわゆるスペースインベーダーである。
今度も通じないことを分かったうえで、我々の言葉で「新しいゲームだよ、ベーダモン」と言ってから渡した。
ただ渡して終わり、ではなく、ゲームの操作の仕方をデジドローンVRで投影した自身の姿で教えた。
ベーダモンはまたもやゲームのルールを理解し、ゲームに熱中するようになった。
それ以降ベーダモンは、我々とコンタクトを取ることに対して積極的になってきた。
そしてクルエとカリアゲは、ゲームを通じてベーダモンとコミュニケーションを取り、チャットソフトを使って言葉を教え始めた。
カリアゲ及びクルエの言語教育の腕前は、これまでに何体ものデジモンに言葉を教えてきた経験があるだけあって、大したものだった。
だが、それ以上にベーダモン自身の知能と学習意欲がとても高い。
ベーダモンは我々の言葉に強い興味を示し、貪欲に様々なことを学ぼうとしてくれた。
そうして言語教育がさくさく進み…
ベーダモンの方から質問をしてきた。
『して 汝らは 余に何の用だ どこから来た何者だ』
こ…言葉遣い!
言葉遣いが独特だ!!!