ボスマッシュモンは、ワームモンの糸で捕縛されているクラッカーマッシュモンにチャットで問いかける。
『なぜ クラッカーに かたんし あくじを なす』
クラッカーマッシュモンはチャットで答えた。
『ひとは われわれの かみだ ひとのやくに たて そう わたしのそせんは おそわった』
ボスマッシュモンは苦い顔をする。
『だが おまえは ひとを こまらせている それは よくない』
クラッカーマッシュモンは負けじと言い返す。
『おまえこそ われらのあるじの せいぎのおこないを いつも じゃましている ひとを こまらせているのは おまえのほうだ』
正義…!?
クラッカーマッシュモンは、クラッカーの行いを正義と言ったのか、今!?
ボスマッシュモンは叱咤する。
『サイバーはんざいに せいぎなど あるものか』
クラッカーマッシュモンはペースを乱されずに返答した。
『われらのあるじは せかいのいびつな しはいこうぞうを ただそうとしている』
え…?
何だって…?
なんか大事なことを言ってそうなので、マッシュモン達のチャット文章を自動で漢字に変換するようセッティングした。
『世界の秩序は いびつだ かつて世界を暴力で支配し 搾取する側に回った者達が 今は 暴力を振るうなと かつて踏みつけた者達に言っている 支配と搾取の構造を 覆されたくないがためだけにだ 醜いとは 思わないか』
な、何を言ってるんだクラッカーマッシュモンは…
クラッカーにそう言えと吹き込まれたのか?
『我々は 我が主の 理想に 心から 心酔し 新たな神と 崇めた わたしの活動は 我が神の 理想を叶えるための ひとつに すぎない』
ボスマッシュモンは腕を組み、首を横に振った。
『クラッカーに そんな理想など 存在しない 彼らは 私利私欲のために カネを騙し取る 只の薄汚い犯罪者だ おまえは それらしい嘘に 騙されているだけだ』
そう否定されたクラッカーマッシュモンは、ボスマッシュモンを強く睨んだ。
『我が神を 否定すると いうのならば もう 戦いしか 残らない』
ボスマッシュモンは構えた。
『それしか ないようだ だが その状態で どうするつもりだ』
クラッカーマッシュモンはにやりと微笑んだ。
『こうする』
いつの間にか周囲に押し寄せてきていたズルモンやゲレモンなどの粘菌デジモン達が、クラッカーマッシュモンを包んだ。
驚くボスマッシュモンとブイモン。
そして粘菌デジモンの繭は、天井へと一気に登った。
く、しまった…!
スカモン大王になるのか…!?
前回のクレカ会社事件の出来事があって、全デジモンを持ち出すと本丸がもぬけの殻になってしまう危険性が見出された。
ゆえに今デジヴァイスに入れて連れてきた手持ちのデジモンは、ワームモン、ブイモン、ボスマッシュモン、そしてチビマッシュモンが数体…。以上だ。
ケンキモン、パルモン、オタマモン、プニモンは連れてきていない。
繭は天井で蠢いている。
中で合体し、大型の成熟期デジモンへと変態しているのだろう。
どうにかして、今のうちに繭を切り開いて内側からチビマッシュモン軍団で食い尽くしてしまえば勝てるが…
天井まで登る手段が今はない。
…どうする!?このまま指を咥えて見ていることしかできないのか…?
『ぼくに まかせて』
そうチャットを打ってきたのはワームモンだった。
『ブイモン あれにむけて』
「お、おう!」
ブイモンは、ワームモンがしがみついている腕を繭に向けた。
『ふりまわして』
「こ、こうか?」
ブイモンはワームモンごと腕を上に上げて、ぐるぐる回す。
ワームモンは糸を吐く。
すると、どんどん糸が伸び、空中で円を描く。
その直径はどんどん大きくなっていく。
そうか、ハンマー投げの要領で、遠心力を利用して天井まで糸を伸ばすのか!
いけ!ブイモン!
「おおおおりゃああ!」
ブイモンは、空中で回していた糸を、遠心力を利用して繭に向かって投げた。
ブイモンとワームモンの連携はぴったりだ。
糸は一発で見事に繭に当たった。
ナイス!すごいコントロールだ!
『さきっぽいがい ねばらないから このままのぼって!』
ボスマッシュモンはツルハシを持って、ワームモンが伸ばしたロープを登った。
どうやら本当に先端以外は粘着力がないようだ。ボスマッシュモンとその部下たちは、ロープを伝って繭へ近づいていく。
器用なことができるようになったな、ワームモン…。
そして賢くなった。
親のスティングモンに少しずつ近づいてきているのだろうか。
ボスマッシュモンは、ツルハシを振って繭へ打ち込んだ。
…だが、パワーが足りない!
マッシュモンはそんなに腕力があるデジモンではない。
ツルハシを何度か打ち込んでいるが、なかなか繭を破壊できていないようだ。
ツルハシじゃだめだ!
虎の子のスナイモンの鎌を持ってきているので、それをボスマッシュモンへ渡した。
ボスマッシュモンは、鎌で繭を切り裂いた。
…だが、まだパワーが足りない…!
くそ、せめてブイモンやパルモンくらいのパワーがないとキツいか。
だがブイモンは今、下でロープを支えている…!
さすがに戦力が足りないんじゃ…!?
今回はネット回線のトンネルが粘菌デジモンで塞がれていないから、ネット経由で増援を要請できる。
このまま成熟期に進化されたら厄介だ。
やはり、ケンキモンに来てもらった方がいいのでは…!
だ、だめですかスポンサーさん!?
『リーダー君から話は聞いた。契約通り、ケンキモン君の出撃はまだ許可できない。デジタマを最低ふたつ産んでからでなくてはね』
くっ…
だめですか…!
『だが…見張りマッシュモンサービスのニセモノなんてものがのさばったら、我々のブランドに大きな傷がつく。これは見過ごせないねぇ!代わりの増援を既に向かわせたよ!』
代わりの増援…!?
ネット回線のトンネルの方を見ると…
四足歩行のデジモンがペタペタと這ってやってきた。
そのデジモンは、そのまま壁にひっついて壁を登り、天井に貼りついた。
そして、繭へ向かって口から火炎放射を吐いた!
「クワァァ~!」
粘菌デジモン達の繭がメラメラと燃えていく!
そのデジモンは紛れもなく…
サラマンダモン!
サラマンダモンが来たぞ!
『はっはっは、君達が保護した個体…サラだよ!パチモノの詐欺デジモンなんて焼き尽くしてしまおう!』