デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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人智を超えた悪意を持つ者

『…オホン。では柔軟に解決する手段を提供しましょう!その名も「デジタル・マーセナリー」です』

 

「マーセナリー…傭兵?」

 

『ええ!気軽にお求めいただけるデジモン派遣サービスです。悪質なクラッカーデジモンをすぐに退治する、一回限りの契約です!どうですか?』

 

「…代金はいくらになります?」

 

『見積りはこんなとこですな。ここから増えも減りもしないでしょう』

 

そう言い、スポンサーさんは見積もり金額を表示した。

 

「ひっ…こんなに!?」

 

『我々とてデジモンの貴重な命を失うこと前提の作戦なわけですから、これ以上お安くはできません。しかしあなたのポケットマネーでお支払いできない金額ではないでしょう?理想的な落とし所ではないですか?あなたは上から必要以上に叱られたり、責任を取らされたるせずに済むし、モリシェルモンによるデータ捕食被害を最小限に抑えられる。我々は対価が保証されるのですぐに動ける。win-winではないですかな?』

 

「うぅ…。とほほ…。今月厳しいなぁ…」

 

『ですがご安心を!今回は!!特別に!!お安くするチャンスをご提供します!一ヶ月以内に見張りマッシュモンサービスのサブスクにご契約頂けたら、なんと今回のデジタルマーセナリの料金は50%キャッシュバックします!!お得です!!どうでしょう!今がチャンス、今しかないですよ!』

 

「お、お安く…!?今しかない!?でしたら是非!よろしくお願いします」

 

『素晴らしいいぃ!素晴らしい判断、勇気あるご決断だ!では契約書にデジタルサインをお願いします!』

 

ま…マジか!

スポンサーさんすげぇ…!

 

しかし、教員さんは不憫だな…身銭を切らされることになるとは。

 

お金がなくて余裕のない者ほど損をしやすい…。

なんか…ちょっと世の中の構造を垣間見た気がする。

 

『ケンくん、我々はまだ一回限りの契約で済ませるプランやキャッシュバックを提示するだけ、まだ温情な方だよ。ローグソフトウェアだったらサブスクの本契約を必須で結ばせうえで緊急対応料金を上乗せしてくるからね』

 

…ローグソフトウェアって警察と提携してるとこですよね。大丈夫なんですかそこは?

 

『値段相応いい働きをするよ』

 

…そうなんですか。

 

『さて…ケン君。教員さんは我々に正式に依頼をした。こちらは契約通りの働きをしなくてはならない…いいね?』

 

…はい。

 

『おっと、リーダー君からケン君に言いたいことがあるそうだ』

 

リーダー?

どうしましたか?

 

『ケン、今からそちらに真・ボスマッシュモンの分身が向かう。戦闘には向かないチビマッシュモンサイズの分身だ。そいつに指揮を執らせるといい』

 

…来てくれるんですか、ボスマッシュモンが。

 

『ああ。ボスマッシュモンは言葉だけじゃなく、菌糸を使った神経接続で直接チビマッシュモンの脳へ指示を送れる。ケンが口で指示するよりも成功確率は上がるだろう』

 

…分かりました。

ありがとう…ボスマッシュモン。そしてリーダー。

 

…リーダーは合理性で判断したように言っているが、おそらく私を気遣って、チビマッシュモン達への死の宣告をボスマッシュモンに代行させようとしてくれているのだろう。

 

やがて、小さなボスマッシュモンが、ネット回線のトンネルからやって来た。

私は隔離チェンバーへのデジタルゲートを開いた。

 

そうしてボスマッシュモンは、チビマッシュモンを囮にして、隔離チェンバーへモリシェルモンを誘引き寄せ、収納した。

 

…デジタルゲートを閉じた。

これで排除完了だ。

 

「あ…ありがとうございました!」

 

では教員さん、この口座に2週間以内に代金を振り込んでください。

 

「…あ、あの。もうちょっとお安くなりませんか?」

 

でしたら学校側で見張りマッシュモンサービスと契約して、キャッシュバックを狙うといいですよ。

 

「…どうにかしてみます」

 

さて…

帰ろうブイモン、みんなのところへ。

みんなが待ってる。

 

どうする?

往路ではネット回線トンネルが粘菌デジモンに塞がれてる可能性を危惧して、ブイモン達にはデジヴァイスに入って来てもらったけど…

帰路は安全だから、先にネット回線から研究所に戻っても大丈夫だよ。

 

「…」

 

デジヴァイルのデジタル空間内にいるブイモンは、大きなデジタマを抱きしめている。

ワームモンを失って落ち込んでいる様子だ。

 

…私もつらい。

 

「…オイラ…ほんとになんのやくにもたってねえ…。てきのマッシュモンをたおしたのはサラマンダモンだし、モリシェルモンをおっぱらったのはうちのボスマッシュモンだし…』

 

ブイモン…。

 

『オイラ、はじめっからなんにもせずに、ずっとひっこんでればよかったんだ…。そうすれば…ワームモンは、こんなことに…!ならなかった…!」

 

…自分を責めなくていいよ、ブイモン。

君は自分ができることを十分やった。

もっと強くなって、次に…

 

「…もういいよ…。やくたたずのオイラは、みんなのあしひっぱってばっかで…。オイラよりよっぽどやくにたつワームモンをしなせて…。しんかもできねーし…。オイラのほうがしねばよかったんだ…」

 

そ、そんなこと言わないで…。

 

「…」

 

…ブイモンは、ショックから立ち直るのに時間が要りそうだ。

このままデジヴァイスに入れて、一緒に帰ろう。

 

『われわれは さきに かえる』

おや、ボスマッシュモンは先にネット回線から帰るんだね。

 

『ケンのかみよ わたしにはブイモンのきもちが わからない』

 

ボスマッシュモン…?

 

『わたしは なかまをうしなうことの おそれ かなしみ そのかんじょうが りかいできない』

 

そうなの…?

結構前、うちのサーバーで菌糸の要塞に住んでた頃は、外に出るのが怖いと言ってた気がするけども。

 

『わたしは 菌糸のデジモンだ わたしのからだを こうせいする 菌糸 いっぽんいっぽんが マッシュモンだ そして マッシュモンは 日々いれかわり しんかして 総体として バージョンアップしている』

 

そういや遺伝子もけっこう変異してきてるらしいね。

 

『そうして しんかしていくなかで われわれは なかまをうしなう かなしみを うしなって しまった チビマッシュモンを ぎせいにするたびに いちいちかなしんでは いられないからだ』

 

…そうか。

今まで色々な作戦で、チビマッシュモンが犠牲になってきたけども…

人と同じメンタルなら、同胞の個体が死んで悲しくないわけがないんだ。

 

だけど、ボスマッシュモンがそれを悲しまなくなったのは…

『仲間が死んでも悲しまない』ように心が進化したからか。

 

つまり…進化を重ねる中で、ボスマッシュモンは仲間が死ぬ悲しみを失ったんだ。

 

『そうだ ケンのかみよ わたしには ブイモンを はげませない かれを たのむ』

 

…分かったよ。

 

そう言うと、ボスマッシュモンはチビマッシュモン達と共に、ネット回線から研究所へ先に帰っていった。

 

駅のホームで電車を待っている間、スポンサーさんに通話してみた。

 

『ご苦労さまだったね、ケン君。どうしたのかね?』

 

サラマンダモンを失ってしまいましたが…

スポンサーさんは悲しいですか?

 

『それは悲しいさ!サラは赤オタマモンのデジタマを産んでくれた。炎を吐く優秀なセキュリティデジモンの赤オタマモンをね。それが失われたとなると、オタマモンを売れなくなる。大きな損失だ』

 

そういう意味ではなく。

 

『…男はね、人前で涙を見せないものだよ』

 

…はい。

 

『君のデジヴァイスの隔離チェンバーにいるモリシェルモンには恨みはないが…クラッカーには然るべき報いを必ず与えるさ』

 

…そうしましょう。いつか、きっと。

 

 

 

 

 

 

 

~バイオシミュレーション研究所 メガ視点~

 

つい先程、ケンからワームモンの訃報が伝えられた。

カリアゲを筆頭とした研究チームはみんな悲しんでいる。

僕も悲しい。

 

ケンは今、ブイモンとともに鉄道で帰路についているらしい。

 

デジクオリアの画面を見ると、ネット回線からチビマッシュモンと小型ボスマッシュモンが帰ってきた。

チビマッシュモンの数体は、モリシェルモンを誘き出すために犠牲になったようだ。

 

…おかえり、ボスマッシュモン。

君は無事だったようで嬉しい。

 

さて、クレカ事件のときは、ブイモンやパルモン、コマンドラモン達が不在のタイミングで、我々の研究所にクラッカーの差し金であるキャンドモン達が攻めてきたっけ。

 

あれはクラッカーによって、文書作成ソフトの脆弱性を突かれてマルウェアを送り込まれたせいで、デジモン伝送路を繋げられてしまったんだ。

 

今回は同じ過ちは繰り返さない。

脆弱性対策はしっかりやっている。

そして何より、ネット回線のトンネルをチビマッシュモンに見張らせている。

 

ネット回線を行き来しているデータの中に、悪質なマルウェアが存在している場合、どうやらデジモンはそれを肉眼で視認できるらしい。

デジモンは、人間が開発したセキュリティソフトのファイヤウォール以上の脅威検出能力と対処能力を持っている。

 

万が一、他のソフトの脆弱性を突かれたとしても…

そこにマルウェアが送り込まれてきたら、見張りマッシュモンがパクっと食べて対処してくれる。

だから今度は、同じ手は食わない。

 

「マシマシ~!」

見張りマッシュモンが交代をするようだ。

同じ個体が長時間ずっと集中して見張りをしていると、集中力が落ちて脅威検出精度が下がりかねない。

だから、複数の個体で交代で見張りをしている。

 

…それにしても、ワームモンを失ったのは本当に惜しい。

 

ワームモンには、セキュリティデジモンという役割だけじゃなく、デジクロス・システムの被検体としての役割があった。

 

成長期であるワームモンのうちはそれが叶わなくとも、成熟期へ進化してからデジクロスの力を獲得してほしかった。

 

デジクロスシステムは、普段はDPが低いデジモンが一時的に高いDPを獲得する、戦闘力ブーストの力だ。

それは維持コストを安くしつつ、いざというときに強大な力でクラッカーデジモンを排除できるという、セキュリティデジモンとして理想的な力だ。

 

将来的に、各企業は自社のサーバーを守るためにセキュリティデジモンを飼育するようになるかもしれない。

だが、そのセキュリティデジモンがシューティングスターモンのようにとんでもなく高いDPを持ったデジモンの場合、食べる餌の量も凄まじいことになり、それだけ維持コストがかかってしまう。

零細企業には大きな負担になってしまう。

 

だから、ワームモンは僕達の未来がかかっていたといえる。

デジクロスシステムを搭載したセキュリティデジモンの量産という未来が。

 

しかし…

その機会は失われてしまった。

 

僕が代表を務めるデジタルアソートのデジモン達は、戦闘向きじゃない。

ワームモンの代わりはやれないんだ。

 

カリアゲが机に突っ伏している。

「…どうすりゃ良かったのかな、俺達…。やることやってたつもりだったのに…」

 

…精神論、根性論で語っても仕方ないよ、カリアゲ。

方法論で考えよう。

 

今回は、敵の手口があまりにも巧妙すぎた。

というよりは…コロンブスの卵だね。

 

粘菌デジモンを餌にして、野生のモリシェルモンを呼び寄せ、デジタルゲートを潜らせてけしかけるという手口自体は至極簡単なものだけど…

その手口をクラッカーより先に閃き、対策することができていなかった。

 

ワームモンを失った原因があるとするならそれだよ、きっと。

 

「なんなんだよクラッカーの野郎!!性格が悪すぎるだろうが!!そんなん普通思いつかねえよ!!」

 

うん…

正直、あまりにも悪どすぎて、まともな人間じゃ思いつかないのは確かだ。

 

人間が起こすサイバー犯罪なら、犯人にどんな悪意があろうと、手口はだいたい過去のデータから分析されているから、「既に見つかっている手口の延長線上」で考えれば先回りして対処はできる。

 

だけど…

デジモンを使ったサイバー犯罪は、「過去のデータの積み重ね」がない。

 

だから「過去の手口の延長線上」を考えようとしても、先回りはできない。

敵は常に「新しい発想」で攻めてくる。

 

クラッカーより悪どいことを考えられる人間が、セキュリティ側にいないと…

クラッカーにより「新たな手口の発明」には対処しきれないのかも。

 

「誰ができるんだよそんなこと…」

 

…無理だよねえ。

 

「いや、もう一つ…確実な手段がある。後手に回っても対処できる手段がな」

 

リーダー…?

 

「デジモンを使ったサイバー犯罪なら、クラッカーのデジモンと戦って暴力によって倒してしまえば被害は収まるんだ」

 

まあ…それはそうだけど。

言うほど楽なことじゃ無いと思うよ…。

 

「そうだ。強いデジモンを育てることや、運用することは難しい。DPが高いデジモンを育てれば、維持コストも跳ね上がる。…だが、ジャスティファイヤはそれを承知であえてDPが異常に高くて燃費が最悪のシューティングスターモンを育て上げた。いかなるコストを払ってでも、最終的に勝利できるようにするためだ」

 

…武力というのは、実際に行使するだけじゃなく、チラつかせることに大きな効果があるとはいうね。

 

「そうだ。シューティングスターモンの存在は、いわばクラッカーへの脅し、抑止力でもある。『政府を攻め落すためにいかに強力なデジモンを育てようとも、最終的に勝つのはこちらだからやめておけ』…とな」

 

でもシューティングスターモンは極秘の秘密兵器だから、抑止力にはならないと思うけど…。

 

「シューティングスターモン自体はな。だがジャスティファイヤの戦力はそれだけじゃない。ティンクルスターモンやアグモンなど、DPが高い成長期を育てていた。そっちを成熟期まで育て上げてから、存在を公表し、見かけ上の抑止力として掲げるつもりだろう。秘密兵器シューティングスターモンは、それらの抑止力をより強く見せるための奥の手として運用するつもりだ」

 

ああ、なるほど…

シューティングスターモンに強い敵を倒させて、その手柄をティンクルスターモンやアグモンの功績として発表することで、表向きの抑止力を実際より強く見せるのか!

 

…あのパルタスって人、初めて見たときは随分なアンポンタンだなって思ったけど…

案外抜け目無くて有能なのかな?

 

「オレは最初からそうだと評価しているぞ」

 

…うーん。

人って第一印象だけだと分からないものなのかもね。

 

「だが、オレ達研究所の戦力も地道にだが着実に育成をしている。キンカクモンの子供であるプニモンは先日トコモンへ進化したし、ケンキモン…の本体もようやく一個デジタマを産んだ」

 

ケンキモンのデジタマ、ようやく一個産まれたんだ。

良かった。

正直、今回ワームモンを失った件についても、コマンドラモンがいればなんとかなったような気がする。

 

「それは決して過大評価じゃないぞ、メガ。実際の戦いで、コマンドラモンはクラッカー相手に自己判断で先手を取って戦ってきた。DPがそれほど高くないにもかかわらず、極めて優秀なセキュリティデジモンだ。それほど頼りになるコマンドラモンを、これからたくさん産めるようになれば、ハッキリ言って暴力しか能のないクラッカーデジモン如きには遅れを取らないだろう」

 

コマンドラモンは戦闘能力だけじゃなく、透明化によるデジタマ採集の能力も高いからね。

もしもまだコマンドラモンがケンキモンに進化してなかったら、今頃フローティア島でガルルモンやトータモンのデジタマも育てられてたのかな。

 

「そうだろうな。ケンキモンは透明化能力を失ったことを悔やんでいる。だからこそ、ケンキモンが産むデジタマは、きっと透明化に長けた優秀なデジモンに育つだろう」

 

桃栗三年柿八年…。

先を見て立ち回らなきゃね。

 

そうやってリーダーと話していると…

クルエが席から立ち上がって背伸びをした。

「ふぅ~、疲れた…でも、だんだん分かってきたぞ、あいつのこと」

 

おや?

そういやクルエって今何してるの?

 

「…ワームモンのこと、残念だったね…あんなにみんなに懐いてたのに…。カリアゲには特に…」

 

…うん。

それで、クルエって今何してるんだっけ?

僕がデジタルアソートの方に重きを置くようになる前は、レポートの直しとか、他のチームや外部との調整とか色々やってくれてたよね。

 

「あれ、メガには言ってなかったっけ?ベーダモンとの対話だよ」

 

ベーダモン…

あのタコみたいなやつだっけ。

 

「リーダーに言われてさ、『クラッカーと手を組まれる前にどうにかして味方につけろ』ってことらしくって。それで仲良くなろうとしてるんだ」

 

 

…うまくいってる?

 

「いろんな教育ビデオ見せたり、あとは一緒にゲームで遊んだりはしてるよ」

 

ゲーム!?

なにやってんの!?

 

「なんか…気難しいんだよね~ベーダモン。面白いかどうかで物事を判断してるみたいでさ。私達のことを観察対象として見てるみたい。私達がデジモンを観察してるように、あっちは人間を観察対象にしてる、みたいな?自分が観る側だ、みたいなさ…」

 

気難しいんだ…。

 

「でさー聞いてよ!ベーダモンにアニメ見せたらさ…」

 

 

その時。

デジクオリアの映像を映したパソコンの画面から、大きな音が鳴った。

 

何かが激しく削られているような音だ。

 

な、なんだ?

 

画面を見てみると…

映っているのは、サーバー内のデジタル空間だった。

 

なんと、ネット回線を護っているファイヤウォールが可視化された壁が…

ヒビ割れてボロボロになっている!

どうやら音は、ファイヤウォールから鳴っているようだ。

 

「マシィ!マシシィィーー!」

チビマッシュモン達は、デジタル空間内で何かを追いかけて、捕まえて食べている。

 

チビマッシュモン達が追いかけているのは…

可視化されたコンピューターウィルスだ!

 

え…?

何だこれ、どうなってんの!?

 

コンピューターウィルスが侵入してきて、ファイヤウォールを破壊したのか!?

 

いや…そんなバカな。

トロイのような潜伏型マルウェアだろうと、チビマッシュモン達は検出できるはず!

 

ファイヤウォールを破壊する前に、ウィルスを駆除できるはずなのに!

 

なんでこんなことに…!?

 

「なんだ!?サイバー攻撃か!?」

 

り、リーダー!

新型のコンピューターウィルスがデジタル空間内で増えてるんだ!

 

「セキュリティソフトだけで駆除できないとは…本当に新型のウィルスらしいな。チビマッシュモン、ウィルスを駆除しろ!メガ、ファイヤウォールを修復できるか!?」

 

やってみる!

しかしなんなんだ、この大きな掘削音は…!

 

とりあえず僕は、破損しているファイヤウォールの修復を試みたが…

 

何かがファイヤウォールを突き破ってきた。

 

それは…

回転しているドリルだった。

 

やがて、何かがファイヤウォールを完全に破壊しながら出現した。

 

「ウゥゥゥーーーー!」

…頭部にドリルがついた、モグラ型デジモンだった。

 

こいつは…!

蛮族の集落で見たことがある…!

ドリモゲモンだ!

 

こいつがここに出現した…ということは…

 

「ああ。マルウェアによって、デジモン伝送路を繋げられたらしい…!」

 

まずい!

どうするリーダー!?

ネット回線を遮断する!?

 

「それをやると、デジクオリアが機能停止して、デジタル空間内部の状態が分からなくなるな…。だが被害が拡大するよりマシだ!やってくれ!」

 

…くそ!マルウェアによって、ソフトウェア制御による電子的な回線切断ができなくされている!

これはアナログで対処しなきゃダメだ!

 

「シン、カリアゲ、クルエ!大至急、外部に繋がっているネットワーク回線を全て物理的に遮断しろ!メガは同時並行で、デジモン伝送路の電子的な切断を試してくれ!」

 

リーダーがそう言うと、シン、カリアゲ、クルエはいくつもある外部との接続を、ひとつひとつ切断しに奔走した。

 

その間、僕はデジタル空間内の様子を観察しながら、勝手に繋げられたデジモン伝送路の電子的な切断を試みた。

チビマッシュモン達は目についたマルウェアを片っ端から食べようとしてるみたいだけど、どうも揺動用のダミーみたいなのがたくさんあるみたいだ。

伝送路を勝手につなげているマルウェアを特定して、チビマッシュモン達にそれを最優先で駆除してもらおう!

 

ネット回線のトンネルからは、ドリモゲモン以外にもデジモンが出てきた。

 

次に出てきたのは…

小鬼型成長期デジモン、シャーマモンが4体。

ロウソク型成長期デジモン、キャンドモンが4体。

類人猿型成長期デジモン、コエモンが2体。

 

さらに、ジャングルモジャモン1体と、セピックモンが2体。

 

そして…

フーガモンと、キンカクモンがやってきた。

 

「ヒヒィイーーーン!!」

フーガモンはシマウマ型デジモン、シマユニモンに乗っている。

 

成長期が10体。成熟期が6体。

計16体のデジモンが、百鬼夜行のようにぞろぞろとやってきた。

 

蛮族デジモン…!

ついに戦線投入されたか!くそ…!

一番嫌な手を打ってきた!

くそ…

伝送路を維持してるマルウェアはどこだ!

 

僕とリーダーは、一緒にマルウェアの本体を探しているけど…

デジタル空間内に散らばっているのはどれもダミーばかりだ!

 

「…待てよ。チビマッシュモン達がケンたちのところから帰ってきた後…、一番最初に見張りを交代した個体はどれだ?」

 

…え?

交代した見張り?

…ログを見る限りだと、この個体のようだ。

そう言い、僕は一体のチビマッシュモンを指した。

 

「おい、そこのチビマッシュモン!ちょっと体を調べさせろ!」

 

リーダーはそう言い、チビマッシュモン達に、該当個体のチビマッシュモンを取り押さえさせた。

 

「マシ!マシ!」

 

「だが、調べるといっても…オレ達の使っているデジモン分析ソフトでは、スキャンに長い時間がかかる…!そんな時間はないというのに…!」

 

いや、すぐに済むよリーダー。

僕は、デジタルアソートで育てた平和利用デジモンの試作型、仮称ガンマを連れてきた。

 

「そいつは…、蟹鍋作りのときに、湿地帯で沼に埋まったシャコモンの貝殻の位置を探し当てたデジモンか!」

 

そうだよ!

僕たちデジタルアソートが開発した…『検索』の能力を持つデジモンだ。

 

仮称ガンマ!そのチビマッシュモンを調べろ!

 

『合点承知だぜ!』

 

やがて仮称ガンマによる検索結果が表示された。

怪しいチビマッシュモンの体内には…

なんと、マルウェアが埋まっていた。

 

「…やはりだ…!伝送路を繋いでいる本物のマルウェアは、このチビマッシュモンの体内に埋まっている!」

 

ええ!?

どういうこと!?

 

「オタマモン!今すぐその個体を排除しろ!」

リーダーがそう言うと、赤オタマモンが出てきて、怪しいチビマッシュモンを火炎放射で燃やした。

 

「マシャアアアーーーーー!!!」

 

リーダー…これは…!?

 

「…オレは正直、今回の事件…すぐに片付くと思っていた。シャバい詐欺業者をしょっぴいて、それで終わりだと思っていた」

 

僕もそう思ってたよ。

でも実際は…モリシェルモンという罠が仕掛けられていたんだ。

詐欺と合わせて、二重の罠が待ち受けてた…!

 

「いいや…違う!罠は三重だったッ!奴の真の狙いは…!コイツを紛れ込ませることだったんだ!オレ達の…チビマッシュモンの中に!」

 

ど…どういうこと!?

『ご明察。デジモン伝送路を切断したようだな。トロイを破壊したか。だが…気付くのが遅かったなぁ。クックック…』

 

この声は…!

 

声がしたほうを見ると、デジタル空間内には、デジドローンが1個浮いていた。

 

『貴様らの手持ちの戦力でモリシェルモンを排除するためには…チビマッシュモン共を餌にしてモリシェルモンを誘き出すしかないだろう?クックック…うまく知恵を使って対処したつもりだったか?私に踊らされているとも知らずに?』

 

お前…!

 

『そうして、あの場にチビマッシュモン共を誘き出して…その中に、私のチビマッシュモンを一体、紛れ込ませたんだ。ファイヤウォールの破壊と、デジモン伝送路の接続…そしてデコイを出す機能を持ったマルウェアを仕込んでね…!』

 

やることが…汚いぞ…!

AAAェーーーッ!!!

 

『はーははははは!なぜ気づかない!!我々が用意した偽物のセキュリティマッシュモンがいるんだ!ならば偽物のチビマッシュモンがいる可能性も!すこ~し脳ミソを働かせれば気づけたはずだぞ!?セキュリティ共!!』

 

っ…

なんなんだこいつ…!

本当になんなんだよ!!

 

『さて!待たせたな、研究者諸君!今度こそきっちり滅ぼしに来たぞ!クックック!』

 

この男の悪意…

あまりにも我々の想像を超えすぎている…!

悪意の権化そのものであるかのようだ。

 

『メガよ、前に私のことを、道具の使い方が下手なヘボエンジニアと呼んでくれたなあ!これでもまだそう言えるか?ンン!?』

 

うがっ…

コイツ、言われたことを根に持つタイプだ!

悪意の権化がどうとか形容せずとも、シンプルに性格が悪い!!

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