デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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絞り出せ、戦力を

~再び、メガ視点~

 

ケンのことは仮称ニュー…ナビモンが迎えに行ってくれている。

5分もすればデジヴァイスの中にいる仮称デルタ、ドーガモンを連れてきてくれるはずだ。

 

だけど、それまでの間何もしなかったら、デジタル空間が破壊し尽くされてしまう!

今できることを、少しでもやろう!

 

シンがランドンシーフを持ってきた。

「ランドンシーフ起動しました!これでうちらのサーバーのデジタル空間の好きなとこにいつでもデジタルゲート開けるッスよ!」

 

カリアゲがサムズアップした。

「ナイスだシン!あれ?どこにでも開けるってことはよ…蛮族デジモン達の足元に落とし穴みたいにゲートを開けば、全員デジタルワールドに追放できねえかな?」

 

残念だけどできないよ。

デジモンがゲートをくぐるかどうかは任意なんだ。

強制的にKICKすることはできない。

 

「うーんそっか…くっそ…」

 

リーダーがクルエの方を向いた。

「そうだ、デジタルワールドといえば…ベーダモンはどうだ!?ヤツの協力は得られないか!?」

 

「えっ…ベーダモンですか。いちおう声かけてみますね」

クルエはうちにある3機のデジドローンのうち2機目を起動し、ベーダモンへコンタクトを図った。

 

モニターにはベーダモンが寝床にしている樹が映る。

 

「ベーダモン様!聞こえる!?手を貸してほしいの!ピンチなんだ!」

 

すると木のうろからニュルニュルとベーダモンが出てきた。

ベーダモンはチャットを送ってきた。

『忙しいな 何事だ 余に何の用だ 研究者よ』

 

うおお、チャットを使いこなしている!

クルエとカリアゲはベーダモンに言葉を教えられたんだ。すごい。

 

「うちのサーバー内に敵デジモンがたくさん侵入してきたの!このままじゃ私達みんなやられちゃう!お願いします、力を貸してくださいベーダモン様!」

 

『面白そうなことになっているな 様子を見せろ』

 

クルエはデジドローンのプロジェクターで、うちのデジタル空間内で暴れている蛮族たちの姿を見せた。

 

『これはこれは 愉快な祭ではないか』

 

「愉快じゃないです!このままじゃみんなやられちゃう!どうか、何卒お助けくださいベーダモン様!」

 

『余に何をしろと?』

 

「こいつらを洗脳光線で、ベーダモン様の手駒にしてやってください!」

 

『それで 汝らは 彼奴らとどう交戦したのだ』

 

「いえ、まだ…」

 

『つまらん 自ら戦いもせず 最初から余に助けを求めるか セキュリティを自称しておきながら何たる醜態か 恥を知れ痴れ者が』

 

痴れ者!?

クルエがデジモンから痴れ者って呼ばれた!

なんてボキャブラリーだ。

 

『愚図め 思っていた以上につまらんな汝らは そんなことで滅びるのならさっさと滅びてしまえ』

 

「そ、そこをなんとか…!何でもしますからああぁ!」

 

クルエは頭をペコペコ下げている。

 

『何でもするだと ならば 汝らの滅びの悲鳴でも聞かせるがいい』

 

「そ、そんなあ!」

 

ベーダモンは笑っている。

性格悪くないか?こいつ…!?

 

カリアゲがマイクを握った。

「ベーダモン!敵の数は圧倒的だ。こっちの戦力は向こうよりうんと少ねえ…圧倒的不利だ!」

 

『そうらしいな カリアゲ』

 

「だけど!俺達は死にものぐるいで戦う!そして絶対に勝つ!」

 

『ほう』

 

「だから見ていてくれ!俺達がAAAをぶっ倒すところを!」

 

『それは面白い あの調子に乗っている生意気な小僧を 汝らが叩き伏せ 地に顔を擦り付けさせるとでもいうのか』

 

「おうよ!やったらぁ!」

 

『それは愉快だ 彼奴の無様な姿を余に曝け出させるというなら それほどおかしなことはない しばらく見物してやる』

 

「サンキュー!ベーダモン!」

 

『おや 余の力を借りたいと懇願していたのではないのか クルエはそうだったが』

 

「自分達の身を護る戦いだからよ…最初からヨソを当てにするのはお門違いだろうよ」

 

『貴様はよく身の程をわきまえているな カリアゲ』

 

ベーダモンは腕を組んでいる。

 

『余の洗脳光線は 一度に2体も3体も同時に操ることはできぬ この数を相手にしても 余の下僕たちを繰り出せば勝てなくはないが つまらん しばらく戦って数を減らせ』

 

「ああ!」

 

『余を愉しませろ できなければ そのまま見殺しにする その方が愉快だ』

 

「オーケイ!なんとかしてみるさ!」

 

…いいの?

力を貸してもらえる感じじゃないけど。

 

リーダーは頷いている。

「これでいい。今大事なのは、ベーダモンをAAAの側につけないことだ。味方じゃなくても、敵でなければ十分だ」

 

いいの!?これで…!?

 

「無理に頼んで機嫌を損ねられ向こうについたら最悪だ」

それもそうか…。気難しいなほんと。

他にできることは…

 

「さて…パルモン。進化だ!」

 

ええっ!?

どういうことカリアゲ!?

 

「パルモンは今の俺達の仲間では一番…マッシュモンを除けば一番長い間成長期のままでいる。だけどパルモンは、十分な戦闘経験を積んで、獲物を狩ってきた!今なら進化できるはずだ!」

 

そんなに狩りしてたっけ?

 

「釣りだよ!プカモンやスイムモンをたくさん釣ったし、ガニモンも倒した!」

 

そうだったね。

 

「パルモン!分かるか?今俺達が大ピンチだってことが!サラがやられて…ワームモンもやられたんだ。俺の大好きなワームモンが…!」

 

パルモンはしょんぼりしている。

「ワームモン いなくなった かなしい」

 

「このままじゃみんなもいなくなっちまう…!だから、頼むパルモン!俺達を護ってくれ!一緒に奴らを倒そう!」

 

「わるもの!たおす!」

 

「いくぞ!なるんだ…成熟期に!今こそ進化だ!パルモン!」

 

「しんか…する! みんなを まもる!」

 

おお!?

いけるのか!?マジで!?

 

「ぱるもん… しんかぁーー!」

 

パルモンは全身に力を入れて踏ん張った。

いいぞ、いけ!パルモン!

 

 

 

「…かわんない」

 

…進化は起きなかった。

あれ。

なんかできそうなノリだったのに。

 

「なっ…!?くそ、行けると思ったのになー!何が足りないんだ!?」

 

「カリアゲパイセン…」

 

「シン!そんな目で俺を見るな!」

 

いや。

やれることは何でもやるべき状況だからいいと思うよ。

ナイストライ。

 

『プーックックックック…!フーッフフフフ…!』

ああっ!

ベーダモンが笑ってる!

ちくしょう…ウケを狙ってるわけじゃないのに。

 

「とはいえ…やれることはある。奴らの破壊を食い止めるために、今できることが!やるぞ、パルモン!」

 

「しんかを!?」

 

「そっちはいい!ゴニョゴニョ…」

 

「なるほど、わかった!じゅんびする!」

 

パルモンは何かの支度をし始めた。

 

 

 

デジタルゲートの中では、蛮族デジモン達がデジタル空間を破壊し、研究データを奪っている。

 

『くっくっく…どうした研究者ども!パルモンは?コマンドラモンは?ズバモンとルドモンはどうした?怖がって出てこれないか!くっくっく!臆病なセキュリティ共だ!とんだ看板倒れだなぁ?』

 

ね、ねえリーダー。

最悪の事態に備えて、研究データを予備の記憶装置にバックアップすべきじゃないかな?

 

「そうだな。できる限りリスクに備えよう。クラウドストレージへのデータ移送も始める!」

 

僕は最悪の事態に備えて、大事なデータのバックアップを始めた。

研究データで特に大事なものは、ネットワーク外部のクラウドストレージへ送ろう!

 

そして大容量データを転送すると…

 

デジクオリアの画面では、大容量データが光の塊として可視化され、ネット回線トンネルの方に向かって飛んでいくのが見えた。

 

だが…

ネット回線トンネルの前で陣取っているプラチナスカモンが立ちふさがった。

 

プラチナスカモンは大口を開けて、転送中のバックアップデータを食べた!

 

「うんみゃああァ~~~い!もっと!美味いデータを食わせてくれよォ!ギャーッハッハッハ!」

 

だめだ…

外部ストレージへの大容量データ転送は妨害されてしまう!

 

バックアップは内部だけでやるしかない…!

 

「じゅんび!できた!」

 

おおっ、準備いいかパルモン!

それじゃあ…やるぞ!

 

デジタル空間の天井から穴が空いた。

 

そこから、右手から蔓を伸ばしてロープ代わりにしたパルモンが降りてきて…

 

花粉の入った粉を、蛮族達の頭の上にぶちまけた!

 

そして、左手の蔓を大きく振り回して気流を作り、花粉を散布した!

 

蛮族デジモン達は、涙を流してくしゃみを始めた。

「ゲッホゲホ!オヴェ!オゲーッホゲホ!!」

「カユイイイイ!メガアアア!ハナガアアアア!」

 

シャーマモンやコエモン達は目を開けていられないようだ。

「ウホオォォオオオ!ゴッホゴッホ!」

ジャングルモジャモンも目を擦っている。

パルモンの花粉アレルギーは…成熟期にも通用する!

 

「キィイィイイ!」

怒ったセピックモンが、ブーメランを投げようとしてくるが…

パルモンはすぐにゲートへ引っ込み、ブーメランを回避した。

 

時間稼ぎにはなるはずだ!

頑張れパルモン!

 

パルモンはあっちこっちから出ては逃げを繰り返し、ストックしていた花粉をあちこちの蛮族デジモン達へ浴びせて回った。

 

花粉が効かないプラチナスカモンや、必死に我慢して反撃しようとしているセピックモンは、飛び道具を投擲してパルモンを仕留めようとしている。

 

うお、危ない!

ブーメランが当たりそうになった。

大丈夫かいパルモン!

「へーき!」

 

その時。

「私が 出る!」

そう声がした。

 

次の瞬間。

大きなデジタルゲートが開き…

 

中から巨大なデジモンが出現した。

ケンキモンだ!

 

全高6mの巨大なマシーンの図体はやはりでかい!

 

普段のケンキモンは、右手がフォークリフト、左手がパワーショベル、肩にクレーンがついており、とても戦闘向きには見えない。

 

しかし今出撃したケンキモンは、どうやら装備を換装しているらしい。

 

普段パワーショベルだった左手には、油圧鉄骨カッターがついている。

フォークリフトだった右手には、穴掘建柱車のドリルがついている。

クレーンには解体工事用の鉄球がついている。

 

おお…!?

解体工事仕様の装備だ!?

 

ケンキモンは、キャタピラー(クローラー)を唸らせて走行し…

一体のセピックモンの胴体を、鉄骨カッターのハサミで挟んだ!

 

「ウギ!?」

 

「むぅん!」

 

そして、鉄骨カッターで…

バチンとセピックモンの胴体を両断した!

 

「グッギャアアアアアアア!!」

 

蛮族達は、突如響いた悲鳴に、目を擦りながら驚いた。

うおお、す、すごいぞケンキモン…。

こんな緊張した状況でこんなコメントするのもなんだけど、僕の趣味にぶっささる。

最初から戦闘仕様なんじゃなく、換装で戦闘仕様になる上に、その武器も工具だってとこがロマンに刺さる。

誰か分かってくれるかなこれ… ケンなら通じるだろうか。

 

「花粉が 効いているうちに 強い敵から 倒す!」

 

ケンキモンは、ユニモンに乗ったフーガモンに突撃しながら、進路にいるシャーマモンやキャンドモンをクレーン鉄球でぶっ飛ばした!

 

「ギャアアオオオ!」

 

成長期程度は相手にならない!

 

「ゲッホ!ゴホ!」

 

フーガモンもユニモンも、まともに前が見えないようだ!

そのまま王手を取れ、ケンキモン!

 

『なんだ貴様ら、いつの間にそんな大型デジモンを!?面白い!迎え撃て、プラチナスカモン!』

 

AAAのデジドローンから指示が出た。

 

「ギャハーッハハッハ!俺様の出番だナ!?ギャハーッ!」

 

プラチナスカモンは、ケンキモンの顔面に目掛けて飛んできた。

 

ケンキモンは、それを鉄球で迎撃しようと試みた。

 

鉄球は空中でプラチナスカモンにヒットした!

プラチナスカモンはべちょっと潰れ、鉄球に張り付いた。

 

おお、やった!

そのままフーガモンにトドメをさせケンキモン!

 

ケンキモンは、フーガモンの首にめがけて鉄骨カッターを繰り出す!

 

その時…

ケンキモンのクレーンから鉄球がぼろりと外れ、ケンキモンの足元にずんと落ちた。

 

自身の鉄球に足をとられ、つまづきそうになるケンキモン。

 

必死にバランスを取って、なんとか転倒を回避した。

 

な…なんだ!?

なんで急に鉄球が外れた!?

 

鉄球の方を見ると…

なんと潰れて張り付いているプラチナスカモンが、ずるずると蠢き、ケンキモンの脚部にひっついた。

 

ケンキモンのクローラーは、次第に溶けていく!

な、なんだ!?どうなってるんだ!?

 

「スカーーッカッカッッカッカ!俺様を倒したと思ったか!?その慌てよう、スカっとするゾ!」

 

それを見たリーダーは、はっとした顔を見せた。

「AAA…これは…!火山地帯のズルモンの性質だな!」

 

『ほう?気づいたか!そうだ、火山地帯のズルモンがもつ、岩石や鉱石を溶かす性質だ!貴様らがプラチナスカモンと名付けたその個体には、その性質を与えた!』

 

「なん…だと…!だが、酸の反応にしては早すぎる…それだけじゃないな!」

 

『くっくっく…貴様らが名付ける前に、私がプラチナスカモンにつけていた名を教えてやろう。そいつの名は…「アマルガモン」』

 

アマルガモン…?

 

「アマルガム…。まさか…プラチナスカモンの正体は…!『水銀』か!」

 

「スカーーッカッカッッカッカ!その通り!俺様のボディは!金属を溶かして吸い取るキラッキラの水銀だァーー!スカーーッカッカッッカッカ!!」

 

や、やばい…!

そんなのに引っ付かれたら、ケンキモンは…!

 

その時。

 

デジタル空間に、大きなゲートが開いた。

 

そして、その中から大きなデジモンがのっしのっしと這い出てきた。

 

『ウバシャアアアアアアアア!!!』

 

そのデジモンは、超高圧の水流を噴射し、ケンキモンからプラチナスカモンを洗い流した。

 

「グヒャーーー!?」

 

水流で剥がれたプラチナスカモン。

 

「な、なんだ!?俺様の見せ場をよくも…!」

 

そのデジモンは…

 

「ンバアアァ」

 

大きな口で、プラチナスカモンをばくんと丸呑みにした。

 

『む…!?』

 

「水銀になろうと…粘菌デジモンは、こいつの大好物だ。指示がなくとも…最優先で狙う!」

 

そ…

その声は!

 

「お前が使った手に…今度はお前自身が苦しめられろ!AAA!」

 

け…ケン!

来てくれたんだな!

 

「お待たせメガ。連れてきたよ。ドーガモンを…そして、こいつを!」

 

『ウバシャアアアアアアアア!ゴアアアア!』

 

デジタル空間内に解き放たれたモリシェルモンは、周囲に蠢いている二足歩行の餌達を見て大喜びし、咆哮を上げた。

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