デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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凶悪幼年期ズルモン

~ケン視点~

 

「ウシャバァアアア!!」

モリシェルモンは、貝殻に籠もると、回転して浮きながら、周囲の蛮族デジモン達へ突撃した。

 

シャーマモンやコエモン達が撥ね飛ばされている。

「ウギャァーーー!」

 

柔らかいワームモンへ一撃で致命傷を与えたモリシェルモンの回転タックル。

成長期の蛮族デジモン達は、その威力を一撃食らっただけで再起不能になっていた。

 

パルモンの花粉を、涙や鼻水で少しずつ洗い流している蛮族デジモン達は、視界がきくようになってきたのか、回避行動を取り始めた。

 

ドリモゲモンは、頭部のドリルでデジタル空間の地面に穴を掘って潜った。

 

目を擦りながら薄目を開けているフーガモンは、シマユニモンの手綱を引き、「とにかく離れろ」と言わんばかりに方向を指示をしたようだ。

 

フーガモンを乗せたシマユニモンは、その方向へ猛スピードで駆け出した。

どうやらシマユニモンには花粉があまり効いていないらしい。

目がバイザーで覆われているため、鼻水は出るが涙で目が見えなくなることはないということか。

 

モリシェルモンは、ケンキモンには攻撃してこない。

見るからに鉄の塊であり、食えそうにないからだろう。

 

…さて。

モリシェルモンは本命じゃない。

本当に連れてきたかったのは、デジヴァイスの制御システムを管轄してるドーガモンだったね、確か。

 

『お オレサマか』

 

ドーガモンがきょろきょろしているが、メガが答えた。

「そう。いずれパルモンの目潰しは効力を失う。そうしたら、このドーガモンが数の不利を補ってくれる。決定力はないけど、いるといないとでは絶対違うはずだよ、ケン」

 

分かった。

それで、そのドーガモン戦法はすぐにできるのか?

 

「いいや、デジモンの映像をドーガモンに視聴させて、それを教師データにして3分ほど深層学習させる必要がある。それまでは…モリシェルモンとケンキモンに時間を稼いでもらおう」

 

なるほど…!

ケンキモン、モリシェルモンと一緒にできるだけ蛮族デジモンを減らしてくれ!

 

すると、デジヴァイスからブイモンの声がした。

「お、オイラも…いくよ! ワームモンの…か、かたきだ…!」

 

…無茶するなブイモン。

膝が震えてるよ。

 

それに今は、モリシェルモンが敵味方の区別なく暴れている。

ケンキモンみたいな明らかな無生物型デジモン以外は巻き添えを食らうよ。

 

「…そうかよ…」

 

君にはきっと然るべき出番で役割があるはずだ。

 

「…ねえんだろ、どうせ…オイラみたいに、バカであしひっぱってばかりのザコには…」

 

そ、そんなことないって…!

 

「シャオオオォ!」

モリシェルモンは、シマユニモンに乗ったフーガモンに向かって水流とともに小さな貝殻の弾丸を発射した。

 

「ジャマダァァ!」

なんとフーガモンは、目をつぶっているにもかかわらず、モリシェルモンの貝殻弾丸が飛んできたタイミングに合わせて青銅棍棒を振るった!

 

貝殻に青銅棍棒がかすったようだ。

軌道を反らしはしたが、打ち返せてはいない。

貝殻の弾丸は、隣りにいたセピックモンの大きな仮面に当たった。

 

「ウキイィ!?」

 

貝殻はセピックモンの仮面に突き刺さり、びしびしとヒビを入れた。

そして仮面がばかっと割れ、脳髄を撃ち抜かれたセピックモンは倒れた。

 

凄まじい威力だ…!

フーガモンとて、まともに食らったらただでは済まないだろう。

それにしても、前が見えていない状態なのに、どうしてモリシェルモンの弾丸が飛んでくるのが分かったんだ…?

何か特殊な感覚器官があるのだろうか。

 

そしてキンカクモンもまた、花粉をくらってくしゃみをしていた。

仮面をつけていても、鼻や目に花粉が入るのを防げなかったようだ。

 

そこへ…

ケンキモンが突っ込んできた。

片方のキャタピラーがガタガタと不安定に揺れている。

プラチナスカモンの水銀ボディで若干溶かされたせいで、走行しづらくなっているらしい。

 

ケンキモンは、まだ花粉が効いているうちにキンカクモンを仕留める気だ!

 

右手の穴掘建柱ドリルを、キンカクモンに向かって突き出した!

 

キンカクモンはドリルを金棒でガードした。

「ヌウゥゥゥ!」

 

キンカクモンはケンキモンから距離を取る。

まだぶつかり合うのは不利だと悟ったようだ。

キンカクモンは仮面を外し、手で目を擦っている。

 

カリアゲがガタッと身を乗り出した。

「うおっ…あれがキンカクモンの素顔か…美人さんだ…!敵じゃなけりゃあなぁ…!」

 

いや、おそらく蛮族デジモン達は、猿型デジモンがAAAからの影響を受けて人に似た姿に収斂進化したデジモンだ。

敵じゃなかったら人の姿に近付く機会すらなかったはずだ。

 

「おお、そっか…今はそんな解説してる場合じゃないと思うけどな!」

 

それはそう。

私の悪い癖だなぁ…

 

「そんなこと言ってる場合じゃないのはお前もだろカリアゲ!」

リーダーがツッコミを入れた。

 

「あっそりゃそッす!サーセン!」

 

ケンキモンは、巨大なボディで強力なパワーを発揮して戦っている。 

 

その動力源は、ケンキモンのコクピットに搭乗している「本体」が体内で発電した電気と、ケンキモンの予備バッテリーに充電していた電気の二つだ。

現在のケンキモンは、それら二系統の電力を同時に使ってオーバーロードしているから、本来のDPを超えたパワーを出せる。

 

だけど、いずれ予備バッテリーの電力は尽き、パワーが半減してしまうだろう。

そうなる前に、ケンキモンは短期決戦で強力な敵を仕留めようとしている。

 

距離を取ったキンカクモンに詰め寄ろうとして、脚部のキャタピラー(無限軌道)をぶん回そうとするケンキモン。

その時。

 

『今だ…やれ!』

AAAのデジドローンからそう声がすると…

突如、ケンキモンの脚部のキャタピラーの履帯がバチンと切れた。

 

な…なんだと!?

プラチナスカモンに溶かされたとはいえ、破断するほどのダメージは負っていなかったはずだ!

どうして!

 

ケンキモンの足元には何かがいた。

それは…

 

3体の、蟹型デジモン…ガニモンだった。

くそっ、こいつらがハサミで履帯を切断したのか…!

 

だけど、ガニモンはこんなに細かい命令を聞いて実行できるデジモンじゃないはずだ…!

なぜこんなに命令に従うんだ。

それに、花粉は効いていないのか…!?

 

…いや、効いてる!

目からドバドバ涙を流していて、目が真っ赤に痛々しく充血している!

物凄く辛そうだ!

 

フローティア島では、ガニモンは花粉をくらったら視界が効かなくなって海へ逃げていったはずだ。

 

このガニモン達、おかしいぞ…

蛮族デジモン達ですら耐え難い目の激痛と痒さに襲われているのに、なぜこんなロボットのように忠実に命令をこなせるんだ!?

 

「どけ!」

 

ケンキモンは、鉄骨カッターを振ってガニモンを打ち払った。

 

ぶっ飛ばされたガニモンは仰向けにひっくり返る。

 

ん…?

ガニモンの腹部になにかついている…!

 

こ、これは…

ズルモン!

 

粘菌デジモンのズルモンが、ガニモンの腹部に潜り込んでいる…!

寄生してるのか!?

 

ガニモンは、あの寄生ズルモンに操られていた…!?

 

リーダーは驚いた。

「なんだと…!?今まで見てきた粘菌デジモンに、寄生する性質は無かったはずだ!どうやってあんなデジモンを作り出した!?」

 

クルエは寄生ズルモンにドン引きしながら答えた。

「どうって…どうにかしたんじゃないですか…?亀のデジモンを剣や盾への変形デジモンにできる奴らですよ、これくらいやってきそうですが…」

 

「だが…自然界にいるデジモンの中には、寄生性のデジモンは居ない。パッチ進化やジョグレス進化をしたとしても…、寄生して栄養を吸うだけならともかく、宿主を操る能力を獲得するように人工進化させるなど容易いことではないぞ…!」

 

リーダー。

心当たりがあります。

 

「フクロムシ」…という寄生虫を知っていますか?

 

「…ああ。知っている。カニに寄生して、体を乗っ取って操ってしまう生物だな。デジタルワールドでは、そのニッチに該当するデジモンは見つかっていなかったはずだが…」

 

そのフクロムシは…

フジツボの近縁種なんです。

 

「フジツボ…海岸の岩にくっついてるヤツらか」

 

はい。

フクロムシはフジツボと同系統の、蔓脚類という甲殻類です。

 

そして、フジツボがカニの腹部にくっつくようになり、寄生能力を得るように進化した生物。それがフクロムシです。

 

そして、デジタルワールドにはフジツボによく似たデジモンがいます。

 

『フジツモン』…。

ピチモンから進化して、ガニモンへ進化する幼年期レベル2デジモンです。

 

「フジツモン…たしかタコ型デジモンのオクタモンの頭部にくっついてたり、岩にくっついたりして水中を漂う生ゴミの粒を食っている幼年期デジモンだな」

 

はい。

クラッカーはおそらく、粘菌デジモンのズルモンを、こともあろうにガニモンの進化前の姿であるフジツモンとジョグレス進化させたんです。

 

そうして、現実のフクロムシの進化を辿らせて、それに酷似した性質を持った寄生性ズルモンを作り上げたんです!

 

「…そうか…!『どんなデジモンにも寄生して操れるズルモン』を作ろうとした場合、あらゆる宿主デジモンの神経系統を乗っ取れるような複雑怪奇な形質を作り上げなくてはならない…そんなことはとうてい不可能だ。だがいずれガニモンへ進化する遺伝子を持った幼年期のフジツモンをベースにして寄生デジモンを作ることで、ガニモンの神経系統を乗っ取ることに特化した形質を獲得したということか!」

 

きっとそうです。

ガニモンの神経系統を乗っ取れるようにしたいなら、ガニモンの遺伝子を持った寄生デジモンを作ればいい…ということです。

その遺伝子にはガニモンの神経系統の設計図が刻まれているはずですから、それを乗っ取れるデジモンに進化させるのも容易い!

 

「理屈は分かるけどよぉ…そんなことやるかフツー!?どんだけ性格悪いんだよAAAのヤツ!」

カリアゲは悪態を付いている。

気持ちは分かる。

 

…AAAのデジドローンから声がした。

『…何だ?今のお前…ガニモンの腹部を一目見ただけで、私が寄生ズルモンを作り上げた手段を一瞬で言い当てたのか?』

 

だったら何だ!

 

『…お前、私と手を組まないか?クラッカー側に来いよ』

 

行くわけ無いだろ!

 

『そうか…仕方ない。おい、もうそのデカブツは用済みだ。片付けろ』

 

ん…?

AAAのデジドローンが、なにかへ指示をした。

 

「ウシャアアアア!」

モリシェルモンは、多数の蛮族デジモンに対して数の不利など知ったことかと言わんばかりに圧倒している。

 

シャーマモンを叩き潰して殺し、食わずに捨てて、新たな獲物を仕留めにかかっている。

 

モリシェルモンはヌメモン系統なので、腐敗した死骸でも平然と食う。

そのため獲物を仕留め次第逐次食うのではなく、とにかく殺せるだけ殺してから、それを巣に持ち帰ってじっくり食べる習性がある。腐り始めたものから…。

 

そうだ…

ズルモンは粘菌デジモンだ!

モリシェルモンの大好物!

 

ケンキモンは、足下の小さなガニモン達を相手にするのを手こずっているが…

モリシェルモンの興味を引ければ、腹部のズルモンごとガニモンを優先的に食ってくれるかもしれない!

 

ケンキモン、モリシェルモンの意識を引け!

 

ケンキモンは私の指示を聞き、ガニモンを一体モリシェルモンの方へ弾き飛ばした。

 

モリシェルモンをおびき寄せる気だ!

 

その時…

「ガアアアアアァァァ!?」

突如、モリシェルモンが悲鳴を上げた。

 

どうしたんだ、モリシェルモン!?

 

「ガアアアアアァァァ!ァガアアアァァァ!ゴバアアア!」

 

モリシェルモンは吐血した。

物凄く痛がっているようだ。

な、なんだ!?

 

『くっくっく…このデカブツを繰り出して、一杯食わせたつもりか?だとしたら興醒めするほどつまらんな。この私が…自分が使う手への対抗策を何も用意していないと思ったか!』

 

モリシェルモンはグルンと白目を向いた。

するとモリシェルモンの頭部が、メキメキと裂けて…

血飛沫をあげ、頭の中から何かが突き出した。

 

それは…

回転するドリルだ。

 

「ウウゥゥゥウ~~!!」

 

モグラ型成熟期デジモンのドリモゲモンが、モリシェルモンの頭部を突き破り、引き裂いてモリシェルモンの体内から出てきた。

 

モリシェルモンは、力なくうつ伏せに倒れた。

 

「ウゥーーーーー!!」

ドリモゲモンは雄叫びをあげている。

 

 

…そんな…。

あんなに強いモリシェルモンが、こんなに一瞬であっさりと仕留められた!

 

ドリモゲモンのDPは、モリシェルモンに比べれば遥かに低い。

だが、ドリルで地中にトンネルを作って掘り進む力を持つドリモゲモンは、ある意味モリシェルモンにとって天敵なんだ…!

 

途中からモリシェルモンの腹部の下へ、そのまま『掘り進んで』しまえば、モリシェルモンの体内へそのまま『トンネル』を掘り、内部から破壊してしまうことができる。

 

くそ…!

そんな手があったなんて!

 

『ついでだドリモゲモン!そこのガラクタを解体してやれ!』

 

「ウゥゥ~~!」

モリシェルモンを仕留めたドリモゲモンは地中に潜った。

 

ま、まずい…!

ケンキモンは今、キャタピラーは破損していて移動できない!

 

地中からドリモゲモンに攻撃されたら、回避できない…!

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