ケンキモンは慌てている。
そのとき…
『ケンキモン オレといっしょに ドリモゲモンを たおすぞ』
チャットの文章を読み上げたような合成音声が聞こえて来た。
声がした方を見ると…
一体のデジモンがいた。
そのデジモンは…
見たことがないデジモンだった。
赤い帽子を被った、二足歩行の獣形デジモンだ。
成長期だろうか。
あ…あれは!?
メガが口を開いた。
「仮称ガンマ。以前に蟹を煮る鍋の位置を検索したり、さっきチビマッシュモンの体内からマルウェアを検索したのがこの個体だよ」
仮称は分かりづらい!
名称を教えてくれ!
『オレは アプリモンスターズ計画 試作ロット第2号 ガッチモンだ なんていってる ばあいじゃねえ やるぞケンキモン ドリモゲモンを ふたりでたおす』
し…勝算があるのか!?
『まかせろ 秘技 ディープサーチ』
ガッチモンは、両手を地面にかざした。
ガッチモンは、デジタル空間地下の地図データを生成した。
『よっしゃ ケンキモン これを』
ケンキモンは、地図データを見た。
地中のどこにドリモゲモンがいるか、はっきりと映し出されている!
蛮族デジモン達が、いっせいにケンキモンの方へ向かってきた。
モリシェルモンが倒れた今、倒すべき敵はケンキモンただ一体ということだ。
花粉のアレルギー症状が引いた個体から、飛びかかってくる…!
ドリモゲモンの居場所を示すマーカーが、ケンキモンの真下へ来る…!
「そこだ!」
ケンキモンは、マーカーの位置へ向かって、穴掘建柱ドリルを突き出した!
回転するドリルはデジタル空間の地面を突き破り、地中を抉る。
「ウウウゥゥウウギャアアアアアアアアア!!!」
血飛沫と共に、ドリモゲモンの悲鳴がこだました。
ケンキモンが地面からドリルを引っこ抜くと…
ドリルには、胴体を貫通されているドリモゲモンがついてきた。
ケンキモンはドリモゲモンからドリルを引き抜き、ドリモゲモンを地面へ投げ捨てた。
『なんだと…!?貴様、どうやってドリモゲモンの位置を…!?』
AAAは予想外だったらしく慌てている様子だ。
「ウゥ…ゥウウ…!」
致命傷を受けたドリモゲモンは…
最期の力を振り絞って、デジタマを産んだ。
ドリモゲモンのデジタマか…
確保しておこう。
デジモンキャプチャーを使い、そのデジタマを隔離チェンバーへ送った。
だが、相変わらず敵は多い。
花粉アレルギーが治まった蛮族デジモン達が、ケンキモンに押し寄せてくる。
ズルモンに支配されたガニモン達も、再び脚部を狙ってくる。
四面楚歌だ…!
だが、ガニモン達は…
彼らのすぐそばに突如開いたデジタルゲートから伸びてきた、植物のツタのようなものに捕まった。
そして、デジタルゲートへと引きずり込まれた。
そのデジタルゲートの向こう側は…
懐かしのビオトープだった。
オタマモンがかまどに火をつけており、かまどでは大きな土鍋の中で熱湯が湧いていた。
ガニモン達を捕らえたパルモンは…
そのままガニモン達を、土鍋へ叩き込んだ!
熱湯がバシャンと音を立てる。
この土鍋は、ガニモンを茹でて蟹鍋にするためにブイモンが作った逸品だ。
ガニモン達は熱湯から脱出しようとするが…
パルモンとオタマモンは、蓋を閉めて上から押さえつけた。
…まさか蟹鍋を武器として使うとは。
やがて、全力で暴れたガニモンが蓋を払い除けた。
空中で宙返りして、地面へ着地するパルモン。
ガニモン達は土鍋から脱出してしまった。
熱湯の中には…
グツグツに茹でられて動かなくなったズルモン3体の姿があった。
さて、ケンキモンとドリモゲモンが戦っていたとき…
同時並行で、マッシュモンとチビマッシュモンは別の作業をしていた。
モリシェルモンの巨大な死骸を、デジタル空間からどける作業だ。
メガ曰く、モリシェルモンの死骸はドーガモン作戦の妨げになるらしい。
モリシェルモンの直下に巨大なデジタルゲートが開いた。
その中からチビマッシュモン達が出てきて、モリシェルモンの死骸をゲートに引っ張り込もうとしている。
「マッシ!マッシ!マッシ!」
だが、チビマッシュモン達の小さな体では、モリシェルモンをデジタルゲートの中へ引きずり込むのが容易でないようだ…。
そこへ…
「オイラも…てつだう」
デジタルゲートの中からブイモンが現れた。
「こいつを…どかせば、いいんだろ!」
チビマッシュモンに、肉体労働が得意なブイモンが加わったことで、モリシェルモンの死骸をデジタルゲートを通してフローティア島へ放逐することに成功した。
よくやったブイモン!
偉いぞ!
「そ、そうかな…へへ…」
ブイモンは少し照れている。
「オイラ、これくらいしかできることないからよ…」
…自分を卑下するなよブイモン。
十分いい働きしてるんだから。
ガニモンの排除と、モリシェルモンの放逐に完了したとき…
「ウホオォォ!」
ジャングルモジャモン2体がケンキモンに飛びかかってきた。
ケンキモンは先程、ガニモン達と格闘していたが、だいぶ脚部を破壊されてしまった。
この場から移動することは難しいだろう。
「ウホォァ!」
ジャングルモジャモン達は、青銅の棍棒でケンキモンのボディを叩いた!
ガキィンとすさまじい金属音が鳴り響いた。
「ウホ?」
殴られたケンキモンのボディは凹んでいたが…
青銅の棍棒はそれ以上に凹んでいた。
ケンキモンのボディは鉄製だ。
そう簡単に青銅に負けはしない。
…それを鑑みると、薄い板金とはいえ、鉄のキャタピラー履帯を切断したガニモンのハサミは本当に自分恐ろしい武器だったんだなと実感させられる。
パルモンが不意をついてガニモン達の腹部に寄生したズルモン達を茹で殺すことには成功したものの…
統率された行動を取るガニモン達は、下手な成熟期より恐ろしい敵だった。
ケンキモンは、クレーン鉄球をジャングルモジャモンへ振りかざす。
「ウホッ!」
だが、ジャングルモジャモン達はそれを軽快に回避した。
続いて、鉄骨カッターやドリルを繰り出すが…
「ウホハハハハ!」
ジャングルモジャモンはそれらの攻撃を、ひょいひょい飛び跳ねて回避する。
くっ…
スピードで完全に負けている…!
パルモンの花粉による弱体化が解けた蛮族デジモンが、こんなに手強いのか!
『金属のボディか…。フーガモン、やれ!』
AAAのデジドローンが指示を出した。
すると、フーガモンはシマユニモンの手綱を握って、シマユニモンに何かを指示した。
シマユニモンは、ケンキモンに角を向けると…
角から放電を放ち、ケンキモンへ電気ショックを浴びせた!
「ぐっ…があああああ!」
ケンキモンの中の本体が苦しそうな声を上げた。
電撃攻撃がケンキモンの金属ボディを伝い、中の本体にダメージを与えているのか!
や…やばい!
シマユニモンにそんな力があったなんて…!
このままではやられてしまう…!
「3分だ!いくぞ、ドーガモン!」
その時、メガの声がした。
空中にデジタルゲートが空いた。
その中から飛び出てきたのは…
ファンビーモンだ。
ファンビーモンが…
なんと、2体、3体…4体…!
次々と飛び出してくる!
合計16体のファンビーモンが、デジタルゲートから出現した!
『なに!?バカな…これだけの短期間でファンビーモンをここまで殖やしたのか!?』
「ヒイィィィ!」
敵のキャンドモン達は、ファンビーモンの群れの姿を見てビビった。
群れのうちの一体が、尾から毒針を飛ばした。
「ウホォオ!?」
毒針は、ジャングルモジャモンの一体に当たった。
「ウホギャアァア!」
毒針から電気ショックが発せられ、ジャングルモジャモンが感染した。
え!?
ファンビーモンの毒針って電気も出せるの!?
私が驚くと、カリアゲが解説してくれた。
「毒針の中に電源が入っているみたいだぞ。すぐに引っこ抜かれないように、少しの時間だけ感電させて、毒が回る時間を稼げるようにしてるみたいだな」
カリアゲ…
随分ファンビーモンに詳しいな。
「まあ…俺はファンビーモンと仲間になろうとして、ずっとコンタクトを取り続けてきたからな。ガニモン鍋の残りとかあげたら、喜んで食ってたぜ」
それが今、活きたということかな。
「いや、あんま活きてないな!シマユニモンを狙えって言ったけど、やっぱ言葉は分かってねえみてえだ!」
確かに。
今はジャングルモジャモンより優先して、シマユニモンを狙って欲しい場面だ…!
そのままジャングルモジャモンは、麻痺毒で動かなくなった。
…成熟期相手をこんなあっけなく無力化するファンビーモンの猛毒。
やはり純粋な戦闘能力においては規格外だ。
ファンビーモンの毒針攻撃を見た蛮族デジモン達は、大層驚いている様子だ。
空中から即効性のある麻痺毒針を飛ばしてくる敵…
それが16体もいる。
その状況の恐ろしさに、蛮族デジモン達は気付いたようだ。
続いて、他のファンビーモン達も毒針を飛ばし始めた。
それらの毒針はすべて、命中するスレスレで外れてしまったが…
『自分に向かって毒針が飛んできた』というだけで、蛮族デジモン達はパニックになっているようだ。
「ウホオォォオオオ!!ホァアアア!!」
ケンキモンの取り囲んで青銅棍棒で叩いていた蛮族デジモン達は、一斉に逃げ惑う!
『くそ…戦え!逃げるな!』
AAAの言葉も、パニックの蛮族デジモン達には届いていないようだ。
シマユニモンに電撃攻撃をさせていたフーガモンは…
「イッタン キョリヲ トレ!」
シマユニモンの手綱を引いて、電撃攻撃を止めさせた。
ファンビーモンの群れをケンキモン以上の脅威と見なし、距離を取ることにしたようだ。
「ブルッヒ!」
放電を止めたシマユニモンは、だいぶ疲れているようだ。
あの放電攻撃はなかなか体力を消耗するらしいな…。
シマユニモンは、再び駆け出そうとした。
…その時。
どこからともなく、高速回転する手裏剣のようなものが飛んできて…
シマユニモンの首の横側を切り裂いた。
「ブルヒヒイィィ!」
斬撃を首に食らったシマユニモン。
首の切り傷からボタボタと出血した。
飛んできたのは…
星形の一頭身ボディの真ん中に顔があり、黒いサングラスをかけたデジモン。
…ティンクルスターモンだ!
『ふはははは!手遅れになる前に間に合ったようだな!』
この声は…パルタスさん!?
そういやリーダーから救援要請をしてたんだっけ。
ティンクルスターモン!久しぶり!
『ヒサシブリ? オハツニ オメニ カカリヤッス!』
あれ。
前にティンクルスターモンとは話したことなかったっけ。
『そいつは前に見せたときは幼年期のピックモンだった個体だな!あのとき会わせたティンクルスターモンは、今はスターモンへ進化したぞ!』
おお、そうなんですか!
『上からの許可が通ったのはティンクルスターモンだけだった!スターモンとシューティングスターモン、ジオグレイモンは出撃許可が通らなかった。仕方あるまい、こちらをもぬけの殻にはできないからな!』
十分助かります!
スポンサーさんから通信があった。
『諸君。今はあまり関係ない話だが…ローグ・ソフトウェアに連絡したところ、クラッカーデジモンの駆除に協力してくれるそうだ』
おお、なんと!?
で、ではそっちのセキュリティデジモンがここへ来てくれるんですか!?
『いや、ここには来ない。見守りマッシュモンとかいう詐偽は、学校だけでなく生徒の親達にも被害が拡大していたのを覚えているかね?』
あー、確かそうでしたね。
モリシェルモン乱入の有耶無耶で、そっちは放置して帰ってきちゃいましたけども。
『ローグ・ソフトウェアは、その親御さん達のとこにいるであろうクラッカーマッシュモンを駆除し、自分たちのところのセキュリティサービスの営業をかけるようだ』
それを聞いたカリアゲは前のめりになった。
「何だよそれ!?俺達が先に見つけた敵じゃねえか!横取りかよ!」
『君達が命がけで暴いた敵の手口だったが…。状況が状況なだけに、つい口を滑らせてしまった。すまないね』
「ずるいぞ畜生!」
いや…そうとも言えない。
一番大事なことは、セキュリティサービス同士での小競り合いに勝つことじゃない。
クラッカーデジモンの被害者が、一刻も早く被害から救われることだ。
今こうしてる間にも、生徒の親御さん達のパソコンやスマホから、クラッカーマッシュモンによって情報を抜き取られたりしているかもしれない。
それを…
『我々が行くまで待て』とは言えないよ。
ローグ・ソフトウェアがすぐ動いてクラッカーマッシュモン退治してくれるなら、それに越したことはない。
「おお、そりゃ…そっかぁ…。そうだな」
『…損な性格だね。だが、それが我々が君達を信頼している点でもある』
それはどうも。
『本当に今と関係ない話ですまないね!だが一応リアルタイムで伝えておくべきと思ったんだ』
…まあ、AAAがこちらへの攻撃に集中している間に、その手先を排除するのは悪くない判断です。
ファンビーモンの群れは、毒針を飛ばし続けている。
大体はハズレており、蛮族デジモンに命中しそうでしないギリギリのところのようだ。
しかし、中にはきちんと命中する毒針もある。
そんなカオスな状況で、ファンビーモンを注視して警戒している敵デジモンを…
ティンクルスターモンが、背後から回転手裏剣タックルで切り裂く!
「キャドオォォオオ!?」
キャンドモンの一体が、ティンクルスターモンに切り裂かれた。
この連携攻撃は、敵にとって相当厄介だろう。
「ウキッ!」
セピックモンの一体が、ブーメランを握りしめた。
「ウキャアアアア!」
セピックモンは、空中を飛ぶファンビーモンに向かってブーメランを投げ飛ばした。
投げられたブーメランは…
ファンビーモンの体をすり抜けた。
「ウキッ!?」
ブーメランがすり抜けるという異常な現象に驚くセピックモン。
「う、ウキー!」
攻撃が効かないと見ると、セピックモンもファンビーモンから逃げた。