デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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以心伝心

私が指示を出し終えたあたりで…

アイスデビモンは、フレイドラモンの方へ、何かを投げるように手を大きく振った。

 

しかし、何も投げ飛ばされていないようだが…?

 

「!?い、いってえ!」

 

フレイドラモンが距離を取り、右目を押さえた。

な、なんだ!?何をしたんだアイスデビモンは!?

 

フレイドラモンの右目側から、キンカクモンが回り込み…

電撃棍棒でフレイドラモンを殴りつけた。

 

「うああっ!」

 

次第に押され始めている…!

言い方は悪いが、フレイドラモンの格闘術はパワーとスピード、一撃必殺の火力に頼ったゴリ押し戦法だ。

 

スタミナが減り、その火力が落ちてきた今、不利になるのは自明の理だ。

 

「くそっ…!目が痛え!」

 

しかし、アイスデビモンはいったい何をした…?

 

「…まさか」

 

メガ、心当たりがあるのか!?

 

「AAAはさっき、アイスデビモンはセメントやガラスも操れると言っていた…!もしかしたら、今ケンが指示を出してフレイドラモンの耳を傾けさせている間にできた隙で、すごく細かいガラス片を生成して投げ飛ばしたのかも…!」

 

い、陰湿すぎる!

細かいガラス片を飛ばされて、目にちょっと当たったということか!?

想像するだけで嫌だ…!

 

これは、私のミスか…

私が指示を出して、フレイドラモンを注意を引いてしまったせいか…?

 

「だけど、何も指示を出さなければこのままジリ貧のまま押し切られるだけだ。たとえミスがあったとしても、僕たちはやれることを探してやるしかない。立ち止まるわけにも、じっくり時間をかけて吟味するわけにもいかない」

メガ…。

 

「そうだよ!何か策があるんでしょ!?」

クルエ…。

 

…そうだね。挽回しないと。

さあ、来い!

ティンクルスターモン!

 

私がそう指示を出すと、デジタルゲートが開き、ティンクルスターモンが飛び出してきた。

 

ティンクルスターモンは、アイスデビモンに向かって回転しながら突っ込む。

 

『む!?バカな、そいつはフーガモンが片付けたはず…もう復活したのか?それとも温存していた2体目がいたのか?』

 

アイスデビモンは、ティンクルスターモンの突撃を回避する。

 

ティンクルスターモンは、空中でUターンして、キンカクモンに突っ込んできた。

 

キンカクモンは、野球のバッターのようなフォームをとり、ティンクルスターモンを打ち返そうと棍棒を振りかざした。

 

ティンクルスターモンは、カキーンと大きな音を立てて吹き飛んでいった。

 

「!?ムム…?」

キンカクモンは、何か不思議そうな表情をしている。

今の反撃の手応えに、なにか違和感を感じたようだ。

 

『まあいい、とんだ邪魔が入ったが、仕切り直しだ!貴様達の切り札を今処刑してやる!』

AAAがそう言うと、キンカクモンとアイスデビモンは、フレイドラモンの方へ向き直った。

 

二体はフレイドラモンに襲いかかろうとするが…

 

『ウバシャアアアア!』

突然デジタル空間に怒声が響いた。

 

キンカクモンとアイスデビモンは、怒声の方を見る。

 

すると、大きなデジタルゲートが開き…

モリシェルモンが出現した。

 

『何だと!?バカな、このモリシェルモンは先程殺したはずだ!別個体を引っ張ってきたのか!?いつの間に!』

 

AAAは驚いている。

 

『フン…成る程な。もはやフレイドラモンでは我々に勝てないと考えて、モリシェルモンを誘引して戦わせようというのか。だが、その戦術には致命的な欠陥がある!信徒達よ、距離を取れ!』

 

モリシェルモンは次々と水流を放つ。

キンカクモンとアイスデビモンは、距離を取ってそれを躱す。

 

『モリシェルモンは殺しやすい奴を先に狙う!こうやって離れれば、先に食われるのは貴様のフレイドラモンの方だ!』

 

そうやってキンカクモンとアイスデビモンはどんどん遠くへ離れていき…

 

『ある地点』へ到達した。

 

その地点とは…

先程、ドリモゲモンがモリシェルモンを仕留めるために掘った穴が空いている地点だ。

 

今だ!!

いけ!マッシュモン!

 

私はチャットを打って、地面の穴に隠れているボスマッシュモン及びチビマッシュモン達へ指示を出した。

 

「マシ~~~~~~!」

 

ボスマッシュモン達は、キンカクモンとアイスデビモンの足元の穴から、一斉に胞子を噴出させた。

 

「!?ゴホッゴホッ!」

突然の胞子により、キンカクモンとアイスデビモンは咳込む。

だが、彼らの視線は未だにモリシェルモンとフレイドラモンを見据え、警戒したままだ。

 

…フレイドラモン、いやシェイドラモン!

今だ!!!

 

「…そういう…ことか…ケン!こうだな!」

フレイドラモンは、シェイドラモンに変形した。

 

そして、胞子に包まれたキンカクモンとアイスデビモンに向かって、炎の粘着糸を飛ばした。

 

…やった。

しっかり伝わった!

 

 

 

 

つい先ほど。

詐欺事件の調査のために、小学校へ出向いて、クラッカーマッシュモンと戦った際…

敵のクラッカーマッシュモンは、粘菌デジモンの繭に包まれて、合体しようとしていた。

 

サラマンダモンが天井から火炎放射をして繭を燃やすことで、合体を阻止したが…

 

その後クラッカーマッシュモンは、繭から飛び出して…

想定外の手段でサラマンダモンへ反撃をしてきた。

 

サラマンダモンへ、大量の胞子を飛ばしてきたのだ。

 

サラマンダモンは、その胞子を燃やそうとしたが…

その時、ある化学現象が起こり、サラマンダモンはダメージを受けた。

 

その現場を、ブイモンは見ていた。

 

ブイモンだけじゃない。

今ブイモンとデジクロスしている、ワームモンとサラマンダモンも、そこにいた。

 

…その現象を…

ブイモンはしっかりと見て覚え、学んでいた。

 

ブイモンの本当の強さはここにある。

デジクロスをしてパワーを得たから強いんじゃない。

 

勇気があるから、というだけじゃない。

 

ブイモンは、自分の弱さを認めて、劣等感を抱きながらも…

それでも強くなろうとして、必死に創意工夫を凝らしてきたのだ。

工具作りをしたり、武器の使い方を練習したり、ワームモンとの連携の訓練をしたり…。

 

そう。

ブイモンの強さは、弱さを克服しようとして、学ぶ姿勢にこそある!

だからこそ、私が出した曖昧な指示の意図を、気付くことができた。

 

 

シェイドラモンが飛ばした火種の糸は…

あの時と同じ現象を引き起こした。

私の意図通りに。

そしてシェイドラモンの意図通りに。

 

そう…

粉塵爆発だ!

キンカクモンとアイスデビモンは突如、爆炎に包まれた。

 

「ギャアアアァッ!?」

 

 

 

私が立てた作戦は、ドーガモン、ナビモン、ガッチモンの3体のアプモンによるアプリンクで、彼らの能力を統合することで実現した。

 

まずはガッチモンが、ドリモゲモンが地面に空けた穴の位置と、地面に掘ったトンネルの内部経路を検索した。

 

そして、ナビモンとドーガモンは…

動画生成の力と、ナビゲートの力をリンクさせることで、

地面の穴の位置へ『敵をナビゲートする』ための動画を生成したのだ。

 

それが先程出現したティンクルスターモンとモリシェルモンの姿だ。

 

実際のところ、ティンクルスターモンはまだフーガモンにやられたダメージがあって戦線復帰はできない。

 

モリシェルモンの2体目なんて確保していない。

 

これらは、ドーガモンが作り出した幻影なのだ。

ファンビーモンの姿を増やしたときと同じ手段で、ティンクルスターモンとモリシェルモンの立体動画をデジタル空間へ投影しただけだ。

 

そして、地面の穴へマッシュモン達を忍び込ませておき…

敵をその位置へナビゲート完了したタイミングで胞子を噴出させたのだ。

 

フレイドラモンは、その全容を全て理解したわけではないし、それを求めたわけでもない。

 

ただひとつ、『粉塵爆発の火種をつける』。

その役割をしっかり理解し、果たしてくれたのだ。

 

奇跡的に強大なパワーを得ただけのデジモンにはできない芸当。

日頃から創意工夫を凝らし学ぶことを怠らなかったブイモン自身の性格があったからこそ実現できた作戦だ。

 

「ガ…オゴ…!?」

だが、さすがは成熟期二体。

今の爆発だけで仕留めきれるわけではない。

 

しかし、それで十分だ。

キンカクモンとアイスデビモンが有利に立ち回れてきたのは、フレイドラモンの一撃必殺の炎の爪攻撃を、戦いの経験から得た実力で対応して、戦闘力の差を技で埋めることができていたからだ。

 

突然想定外の爆発を食らって、隙ができた今…

ここが攻め時だ!

 

シェイドラモンは再びフレイドラモンへ変形した。

 

「うおぁあああああ!」

 

フレイドラモンは、残った全てのパワーをすべて絞り出す勢いで爆発的な火力を引き出して…

炎のツメでキンカクモンの腹部を切り裂いた!

 

「ギャアアアアアアアッ!!!」

青銅の武器を瞬時に溶断するその威力をマトモに腹に食らったキンカクモンは、大出血をしながら吹き飛んだ。

 

「ぜはっ…ぜはっ…!あとは!お前だけだあああ!だらあぁ!」

見るからに体力が尽き果てそうなフレイドラモンは、アイスデビモンの頭部に、炎を纏わない貫手を放った。

体力が残りわずかであることを理解しているため、火力を無駄遣いせずに格闘戦でけりをつけるつもりなのだろう。

頭を串刺しにする気だ!

 

だが…

フレイドラモンのツメは、アイスデビモンの頭部をつるっと滑った。

「な!?」

驚くフレイドラモン。

「ウハハハ!ハアァッ!!」

アイスデビモンが、鋭い爪でフレイドラモンに引っかき攻撃を放ってきた!

「ぐぅっ!」

フレイドラモンは手の装甲で引っかき攻撃を受け止めたが、装甲に爪痕が残っている。

 

「なんだ!てめぇぁ!」

フレイドラモンはアイスデビモンの心臓部を狙って貫手を放ったが…

やはりつるっとツメが滑った!

 

「ワハハハハ!」

アイスデビモンのカウンターパンチを、フレイドラモンはギリギリのところで躱した。

 

「くそ、どうなってんだあいつの体…!」

フレイドラモンはどんどん息が荒くなっている。

 

リーダーがフレイドラモンに声をかけた。

「分かったぞ!アイスデビモンは体の表面をガラスでコーティングし、さらにその上に特殊なワックスを塗っている!その二重層の働きによって、物理攻撃を滑らせて回避しているんだ!」

 

『くくく感づいたか!なかなか優秀な解析能力だな!だがそれ以上にィィ!!私の最高傑作のアイスデビモンの能力の方が優秀だあァァァーーーーッ!!!!』

 

このまま火力を節約して、打撃で攻めても、奴のボディに傷はつけられない…!

物理攻撃は滑ってしまう!

なんて厄介なデジモンだ…!

 

「蝋…さっきからかけられまくってる硬いやつか…なら!溶かせばいいんだろぉ!」

スタミナが切れかける寸前のフレイドラモンは…

最後の灯であるかのように、弱々しい炎をツメに纏わせた。

「これで…終われえええええぇぇぇぇ!!」

フレイドラモンは、炎のツメ攻撃を繰り出す!

 

「ヌウウウウウウウウウ!!」

アイスデビモンは両手からセメントを出して、炎のツメの攻撃を受け止めた!

 

「燃えろおおおおおお!」

「ガウオォオオオオオ!!」

 

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