AAA…!
雌雄は決したぞ。我々セキュリティチームの勝ちだ!!
『…帰るぞ、プラチナスカモン』
帰れると思うか?
お前達の所への伝送路はもう遮断したぞ!
『帰れるさ。おいナニモン、起きろ』
「フガ!?」
そう言うと、壁の上で居眠りしていたナニモンが目を覚ました。
そして壁から降りてきた。
そ、そうだ、こいつがいた…!
なんなんだこいつ。
『ナニモン、キンカクモンはまだ生きている。そいつくらいなら抱えあげられるだろう』
ナニモンは、キンカクモンを抱え上げた。
そして…
「フン!」
なんとナニモンは、デジタルケートを空けた!
行き先は…デジタルワールドだ!
こ、こいつ!まさか!
メガのアプモン達と同じ…
ソフトウェアアプリケーションを吸収してパッチ進化したデジモンか!
デジタルワールドへのデジタルゲートを開くソフトの力を、ナニモンは取り込んでいるんだ…!
「マ、マシーー!」
うちの戦力で今まともに戦えるのはボスマッシュモンしかいない。
ボスマッシュモンは、チビマッシュモン達を連れて、ナニモン達のいる方へ走り出した。
だが…
ゲートから出ていくナニモンに追い付くのには、ちょっと間に合わなさそうだ。
『…私の敗因は…私のせいじゃない!バカな部下がズバモンとルドモンを貴様らに奪わせたせいだ!奴らがいれば勝っていたのは私の方だったッ!あのクソアマが全部悪い!本当に勝っていたのは私の方だ!』
メガがマイクを握った。
「たらればで好き放題願望を言うな!現実を受け入れられないお前は…やはり三流以下のヘボエンジニアだ!」
メガはそう言いながら、キーボードを操作して、誰かへチャットを送っていた。
相手の名前は…『ハックモン』…?
知らないデジモンだ。
『ぐぐぐ…!次は絶対に亡ぼしてやる!覚えていろセキュリティ共ォォ!』
そう言い、ナニモンとキンカクモン、小さなプラチナスカモン、そしてAAAのデジドローンはデジタルゲートをくぐった。
完全にくぐり去る直前に…
AAAのデジドローンに、なにか極めて小さなものが飛んできて、くっついたように見えた。
そうしてAAA達は、デジタルワールドへ去っていった…。
デジタル空間には…
蛮族デジモンの死屍累々が残されていた。
これで、すべての敵をようやく倒した…のか?
ガッチモン、一応生き残ってる敵がいるか検索してくれ。
私がそう言うと、カリアゲが不思議そうな顔を向けてきた。
「え?もう倒したんじゃねえのか?」
いや、カリアゲ…
本来いてもおかしくなかったはずの奴が、今回攻めてきた敵の中に見当たらなかったんだ。
そいつがまだ潜んでいる可能性がゼロじゃない。
「?どのデジモンだ?」
バブンガモン…。
岩のような硬い甲殻を持つ、ヒヒに似た姿のデジモンだ。
前に蛮族の集落を見たときは、バブンガモンがいたはずだけど…
さっきの戦いには現れなかった。
どういうことなんだろうか。
「潜んでたらこえーな…。そしたらもう戦えないぞ」
間違いない…。
で、どう?ガッチモン。
『バブンガモンは いねー けど いきてるやつが まだいる 2体だ』
何!?
どいつだ?
『あっちだ』
そう言って、ガッチモンが指さした方を見ると…
「ヒ…ブルヒ…」
先ほどクラフトモンのドリルで頭部を破壊されたシマユニモンが、倒れたまま痙攣している。
あ、あれは生きてる判定なのか…?
まだ死んでないだけって感じだけど。
それで、もう一体は…?
…よく見ると、弱々しく地を這って、シマユニモンに接近しているデジモンがいる。
全身に大火傷を負ったシャーマモンだ。
シェイドラモンに炎の網で焼かれたか、オタマモン達の火炎の罠で焼かれたのだろう。
「テンシ…サマ…オレハ…マダ…イキ…ル…!シナ…ナイ!」
もう死にかけのシャーマモンは…
シマユニモンに触れた。
どうしようというのだろうか。
乗ってみたいのか…?
「…まずい!そのシャーマモンを今すぐ始末しろ、マッシュモン!何でもいいから武器を持ってぶちのめせ!」
り、リーダー!?
そんなに慌ててどうしたんですか!?
「早くしろマッシュモン!!」
「マ、マシッ!」
ボスマッシュモンは、スナイモンの鎌を拾い、シャーマモンの方へ駆け寄った。
「早くトドメをさせ!」
「マシィィーー!」
マッシュモンは、鎌を振り上げた。
…その瞬間。
シャーマモンとシマユニモンの体が、光り輝いた。
「マシャアァァ!?」
ボスマッシュモンは、シャーマモンとシマユニモンを包む光から発せられたパワーにより吹き飛ばされた。
「マ、マシイィイーーー!」
起き上がったボスマッシュモンは、光り輝くシャーマモンに鎌を振り下ろす。
だが。
眩い閃光が周囲を包んだ。
光が消えたとき…
ボスマッシュモンが振り下ろした鎌は…
たくましい腕によって受け止められていた。
…光の中から現れたのは、半人半馬のデジモン。ケンタウロスのような姿だ。
頭部は兜で覆われており、右腕には砲身のようなものが生えている。
こ、これは…
ばかな。
ジョグレス進化…だと!?
「オ、オォオオ!テンシサマアアアーーー!!オレハ!!ヨミガエッタゾォオ!」
歓喜の声を上げた半人半馬のデジモン…仮称ケンタルモンは、ボスマッシュモンを筋骨隆々な馬の後ろ脚で蹴り飛ばした。
「マ゛シャ゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ーーー!!」
吹き飛んでいくマッシュモン。
「ま、マッシュモン…!」
倒れているブイモンは、立ち上がろうとするが…
もう立つ力も残っていないようだ。
ケンタルモンは、そのままブイモンににじり寄った。
そして、ブイモンの首を左手で掴んで持ち上げると…
右腕の砲身にエネルギーを貯めた。
「うぁっ…は、はなせ、ちくしょう…っ」
ブイモンにはもう、じたばたと暴れる体力すら残っていない。
…『公正世界仮説』という思考バイアスがある。
ざっくり言うと、「いい事をした者には幸運が訪れ、悪いことをした者には天罰が下るはずだ」という思い込みのことだ。
先程、我々のパートナーデジモンであるブイモンが、ピンチに陥ったときに、奇跡的にデジクロスの力に覚醒した。
私は心のどこかで思い込んでいた。
この奇跡はきっと、人々を守るために努力してきたブイモンの善性に、天が味方して奇跡を授けたのだ…と。
だが、それこそが思考バイアスだったのだ。
善に奇跡が起こるのなら…
悪にも平等に、奇跡は起こる。
『攻撃をやめろ、信徒よ!』
その声を聞いたケンタルモンは、驚いて声の方を向いた。
そこにあったのは…
AAAのデジドローンだ。
『繰り返す。そいつへの攻撃は中止しろ。今はもうそれ以上戦わなくていい』
「ナ、ナゼダ テンシサマ! ワタシハ コイツラヲ ミナゴロシニシテ アナタニ ムクイル!」
『より完璧な殺し方を思いついたからだ。蘇ったその力で、私に尽くしてくれ…できるな?』
「モ、モチロンダ!」
ケンタルモンはブイモンを地面に放り捨てた。
「いてっ!」
地面に落とされたブイモン。
『このデジタルゲートを通って、いったん本拠地へ戻ってこい』
デジドローンがそう言うと、デジタルゲートが開いた。
「オオセノママニー!」
ケンタルモンは、デジタルゲートから出ていった。
…そうして、デジタルゲートは閉じ…
デジドローンも消えた。
「ぷ…ククク…あははははは!」
クルエが腹を抱えて笑っている。
「ひーひひひひ!こりゃおかしいや!やるなリーダー!」
カリアゲも大笑いしている。
「そっか、これがあの手品のカラクリか!成長期蛮族をいっぺんに消した手品の!なるほど!」
メガは手をポンと叩いている。
「…そうだ。ドーガモンの力で、『AAAのデジドローン』の動画と音声を合成して再生した。AAAに絶対服従している蛮族達は、その言葉通りに動くからな」
…デジタルゲートはどこへ通じてるんですか?
「カリアゲがこれまでに探し続けてきた、フローティアの候補地だった孤島だ。資源が何も無い、植物もない土地だ」
…島流しにしたんですね。
奇跡は善にも悪にも平等に起こる。
だが、手繰り寄せた奇跡を勝負に活かせるかどうかは、別問題なのだ。
積み上げてきたものが、運よく花開いたとしても。
既に見放しており視界に入れていなければ、せっかく起きた奇跡も『活きない』のだ。