デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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深い傷

今度こそ戦いは終わった…

が。

だからといって一息ついてノンビリというわけにはいかない。

 

敵との戦いで、我々のデジモンは負傷したし、サーバーのシステムもいろいろ破壊された。

 

ブイモンは、キンカクモンやアイスデビモンとの戦いで全身に打撲を負っている。

症状からすると、各部の骨にヒビも入っていそうだ。

 

…考えてみれば当たり前の話だ。

蛮族デジモン達は、青銅器の武器を手にする以前は狩ったデジモンの骨を武器にしていた。

しかし「骨器」というのは馬鹿にできない強さがある。なにせ生物の肉体の中で最も硬い部位を武器に加工して使うのだから、生物の肉体を損傷させるのには必要十分なのである。

打撃で敵の骨を折ることだってできる。骨に骨をぶつければ、破壊できるのは自明の理だ。

…その骨器よりもずっと硬い凶器を振るう筋骨隆々のキンカクモンに、フレイドラモンはしこたま殴られたのである。たとえデジクロスによって肉体が頑丈になっていようとも、骨や筋肉、血管に損傷を負うことは避けられない。

「めちゃ痛い」とのことだが、命に別状はなさそうなのが幸いだ。

 

パルモンは、両足を骨折している。

セピックモンのブーメランで足を折られたのだ。

…我々の世界の人間は、足の骨折の治癒に一ヶ月かかることもあるという。

パルモンはどうだろうか…。

 

クラフトモンは…ひどい重症だ。

蛮族の王フーガモンに頭部含む全身を滅多打ちにされたのである。

ただでさえ全身に酷い負傷をした状態なのに、無理をしてデジタルゲートシステムやファイヤウォールの修復をしたため、怪我がさらに悪化したようだ。

対応を間違えたら死に至る危険がある。

 

幸い、これまでに積み重ねてきた研究成果によって、傷の治りが早くなる薬効成分をもつ薬草がいくつか発見されている。

しばらくの間は絶対安静にして、この薬草を混ぜた食べやすい食事を与えて回復を待たねばならない。

 

クラフトモンの外装であるケンキモンは、脚部が大破している。

幸いにも上半身はダメージが少ないので、ケンキモン修復の目処は立ちそうだ。下半身は解体して一から作り直さなくてはいけないだろうが…。

もっとも、外装より先に中身の治療が最優先だ。

 

ティンクルスターモンは、フーガモンに青銅棍棒でぶっ飛ばされて気絶していたが、もう元気そうに動き回っている。

「痛ムガ平気ダ」とのこと。

とんでもないタフさだ…どんな頑丈さしてるんだ。成長期なのに。信じられない。

パルタス氏の地獄のシゴキで超耐久力を得たとみえる。

 

ファンビーモンは、一番重篤…危篤状態だ。

 

ファンビーモンは多数のシャーマモンにボコボコにされて、キャンドモンに燃やされた。重度の火傷は呼吸器の中まで達している。

傷口を塞いで体液流出を止めはしたが、どんどんバイタルが低下しており…

今の我々では手の施しようができない。

 

ビオトープにて、ブイモンは命の灯火が消えかかっているファンビーモンのそばに寄り添っていた。

 

「ファンビーモン…せっかくたすけたんだぞ…いきろよ。しぬなよ…」

 

「…」

ファンビーモンは弱々しい目でブイモンを見つめている。

 

「オイラのこと、まえにくいころそうとしたくせによ…!オイラはおまえよりつよくなって、おまえをみかえしてやるってきめてたのに…!かってにこんなとこでしぬなよ…!」

 

「…」

 

「みてたか?オイラがワームモンとがったいして、つよくなったとこ…!かっこよかっただろ!さっきテキをたくさんやっつけてたおまえにだって、もうカッコよさでまけねーぞ!」

 

「…」

 

「オイラ、いままでずっと、じぶんのいちばんがなくなるたびにおちこんでた…。やっとわかったんだ、それがなぜかって。オイラ…カッコよくなりたかったんだ、おまえみたいに…」

 

ファンビーモンは、目を瞑った。

 

「くそっ…!しんじまうのかよ…。さいごまできらいだったよ、おまえのこと…!ちくしょう…!」

 

…そこへ、パルタス氏が通話で入ってきた。

 

『む、ファンビーモンが死ぬのか!?それは大きな損失だな…』

ファンビーモンは優秀なデジモンだったんですが…

このダメージは正直…手の施しようがありません。

 

『そうか…ん?そこのビオトープにあるデジタマは何だ?ワームモンとサラマンダモンが融合したものとは別だな』

 

これはドリモゲモンが死に際に遺したデジタマです。

 

『確保したのか』

 

ドリモゲモンは優秀なデジモンです。

蛮族に混じってAAAの指示通りに作戦をこなせる知能を持っているし、地面を掘り進んで敵の足元からドリル攻撃ができる。

あれだけ強力だったモリシェルモンを、DPに大きな差があったにもかかわらず、実質単騎で倒しました。

 

つまり、あまり動き回らずに戦う巨大なデジモンに対して、ドリモゲモンは強力な特効メタ性能を持っているといえます。

 

そのデジタマが育てば、間違いなく優秀なセキュリティデジモンが育ちますよ。

 

『なるほど!おいティンクルスターモン!そのデジタマを破壊しろ!』

 

は!?

 

『イエーーッサ!』

多少元気を取り戻したティンクルスターモンは手裏剣のように突撃して、ドリモゲモンのデジタマに突き刺さった。

 

「な…何やってんだてめぇェーーーッ!!」

突然のパルタス氏の凶行に、カリアゲは混乱しながらブチギレた。

 

『慌てるな、こうするんだ』

 

破損したデジタマは、ファンビーモンのもとへ転がった。

 

すると…

ファンビーモンに触れたデジタマが、光を放ち…

ファンビーモンを包みこんだ。

 

「んん!?」

カリアゲは目をひん剥いている。私も同じ表情だ。

 

やがて光が止むと…

少し大きくなった一個のデジタマがそこにあった。

 

「え?え?」

困惑するブイモン。

 

な…何やったんですかパルタスさん。

 

『ん?貴様達は死にかけのワームモンとサラマンダモンを、破損したデジタマへ吸収させたのだろう。同じことをファンビーモンでやったんだ』

 

ジョグレスを誘発させた…!?

な、何故!!?

 

『何故ってそれは貴様…ファンビーモンは優秀な遺伝子を持つ強力なデジモンだ。その遺伝情報が失われていくのを指を咥えて見てろと言うほうがおかしいだろう』

 

ええ…。

あ、あの。ドリモゲモンを育てたかったんですが…。

 

『強力だが制御がきかなかったファンビーモンの遺伝子と、知能が高く強いドリルを持ったドリモゲモンの遺伝子が混ざったら、さらに優秀になるはずだ。いい事ずくめではないか』

 

…。

そもそも孵化するかどうかも分からないですよ。デジタマのシステムがバグったかも。

 

『そうかもな!ハハハ!』

 

「そうかもなじゃねえ!!」

…もういいよ。過ぎたことは仕方ない。

ってか勝手なことしないでくださいパルタスさん!

 

『貴様らの判断が遅いからだ』

 

…この人、合理的なとこはあるんだけども。

感性が度し難い。

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