デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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不穏な提案

カリアゲがため息をついている。

 

「しかし…結局AAAは今回もまんまと逃げ帰ったのか。こんなの何回もやられてたらもたねーよ…本拠地に攻め入れねーのな…」

 

ごもっともだ、カリアゲ。

正直、二度も三度も同じことを繰り返されたくない。

 

どうにかならないのか…

 

「なるよ、どうにか」

メガ?

どういうこと?

 

「敵は去った。出てきていいよ、ハックモン」

メガがそう言うと、デジタル空間の影からひょこっと何かが出てきた。

 

あれは…

青いローブを被った獣型デジモンに見える。

何のデジモンだ?

 

「うちのデジタルアソートで開発中のアプリモンスター、ハックモンだ。十分な能力が発現していない開発途中の状態で、ガッチモン達ほど十分な戦闘サポート能力がないから、今回の戦いには加えなかった」

 

そのハックモンがどうしたんだ?

 

「ハックモンは『ハッキングツール』の能力を持たせている。まだ未完成だけども…『食べたマルウェアをコピーして操る力』を限定的に獲得している。この力で、スパイのチビマッシュモンに仕込まれていた『デジモン伝送路を繋げるマルウェア』をコピーし…AAAのデジドローンにくっつけたんだ」

 

なんだって!?

それじゃあ…

 

「そう。ハックモンが完成すれば、AAAのデジドローンに仕込んだマルウェアを起動して、僕たちのところへデジモン伝送路を繋いでしまうことができる」

 

カリアゲが立ち上がった。

「それじゃあ…本丸に打って出られるってことか!」

 

「そうなるね。もっともそのためには、ハックモンの完成以外に必要不可欠な要素が2つある」

 

「ん?なんだ?」

 

「ひとつは戦力の充実。今の僕達の戦力はひどく損耗している。まずは怪我を治さなきゃ」

 

「それはそうだけど…もう一つは?」

 

「…今回AAAの下僕にいた…ナニモン。あれと同じ能力をもつアプリモンスターを育てなくてはいけない」

 

「なんでだ?」

 

「こちらが送り込んだデジモンが、もしも適当な端末に誘い込まれてかネットから隔離されたら、脱出できずに監禁されてしまうでしょ」

 

「お…そりゃそうか。せっかく攻め込んでも監禁されたらな…」

 

「だから脱出手段として、ネットから切断されてもデジタルワールドへ逃げれる力が必要だ。…AAAがナニモンを育て上げたのも同じ理由だろう」

 

「できるのか?」

 

「頑張ってるけどまだできてない。AAAのやつ…一体どうやってあんなデジモン育て上げたんだ…悔しいけどあいつやっぱ凄いよ」

 

…何か非人道的なことをして育て上げたのかもね。

 

 

 

それにしても…

戦場の死屍累々の蛮族デジモンたちの死骸、どうしよう。

 

寄生ズルモンを摘出したガニモン達も、あの後結局死んじゃったし…。

 

ブイモンが不思議そうにこちらを向いた。

「え?くわないのか」

 

そ…それは…

…そうか。

 

人っぽい姿をしてるから、あんまやりたくないんだけど…

糧にしてやるのが、蛮族デジモン達の供養になるだろう。

 

「おう!」

 

これだけたくさんあるから、腐らないようにハムやソーセージにするといいよ。

 

「なんだそれ?」

 

煙で炙って燻製にしたものを塩漬けにすると、保存食になるんだ。

 

加工の仕方は、教えるから…

ボスマッシュモンやティンクルスターモンといっしょにやっておいてくれ。

 

「ケンはいっしょにみてカントクしてはくっれねーのか?」

 

…加工されてるところを見たくないから。

 

「ヘンなのー」

 

とりあえず、腐る前に燻製に加工するといいよ。

 

ボスマッシュモン及びチビマッシュモン達が、フローティア島で燻製や塩漬けをする準備を始めた。

 

フローティア島の真ん中には、シェルモンの大きな死骸が倒れている。

参ったな…これもどうにか処理しないと。

 

「うぅ…あしいたいぃぃ…いたいよぉ」

パルモンは、折れた足を痛そうに庇っている。

これじゃ移動ができないよな…。

複雑骨折してるみたいだし、手術しないと元通りに歩けないかもしれない。

だけど手術をする設備なんで、うちにはない…。

 

と、とりあえず、飯を食べるといいよ。

ガニモンを茹でたから、ほら。

 

「いただきまーす…」

パルモンは、茹でられたガニモンの甲殻を鉄の武器でこじ開けた。

そして、もぐもぐと食べ始めた。

 

「んまーひ」

パルモンはガニモンのカニ味噌を食べた。

すると…

 

パルモンの体が…光り輝いた!

これは…まさか。

進化か!

 

パルモンが進化した姿は、…植物の手足を持つ忍者のようだった。

背中と手足の先端には、大きな手裏剣がついている。

 

「脚!治った~!」

 

進化したパルモンは、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、脚が治ったことを喜んでいる。

 

手裏剣がついてるから、シュリモンと名付けよう。

しかし、どうして今進化したんだ…?

 

「さっき『進化しろ』って言ったからじゃねえか?」

 

おお、カリアゲ?

 

「さっき俺達、パルモンに何度か『このピンチを乗り越えるために進化してくれ』って頼んだじゃん。で、パルモンも進化しようとして…できない~ってなってた。それが今、遅れてやってきて、進化したってことじゃねえか?」

 

そ、そういうことか!?

さっきは「パルモンはもう成熟期に進化できそうなのに、なぜ進化できないんだろう」と思ってたけど…

 

そうじゃなかった。

成熟期への進化条件は満たしていたし、進化もできるんだけど…

「進化するぞ!フーン!」と気張ってすぐに進化が始まるようなものじゃなかった、ということか。

 

…なるほど。

やっぱり進化というのは、ピンチに陥った時に急にできるものじゃないんだな。

 

だからこそ、ブイモンがデジクロスという「その場で急に強くなる力」を得たのは僥倖といえるのかもしれない。

 

「それにしても…蛮族がまた力を取り戻したらやですね~」

クルエがだるそうな声で言った。

 

それはそうだね…。

蛮族の残党はまだまだデジタルワールドにいる。

それが今回我々のところに攻めて来れなかったのは、クルエがデジクオリアの裏技を利用した奇策によってAAAからのデジモン伝送路を切断したおかげだ。

 

いやほんと、あの時はナイスプレイ。

 

「いえい」

 

きっとこれからAAAは、蛮族の残党をクラッカーデジモンとして利用するだろう。

 

一般人や企業を狙ったサイバー攻撃をデジモンで行い、それを止めにきた我々のセキュリティデジモンを、蛮族デジモンで迎撃する…という戦いになっていくのだろう。

 

骨が折れそうだな、それは…。

 

『ふむ?蛮族の生き残りがまだいるのか?』

 

そうですよパルタスさん。

キンカクモンは生き延びたようだし…

これからも蛮族デジモンは増えていくと思います。

 

『ふむ…蛮族は集会をすることはあるか?』

 

ニセシャッコウモンのありがたいお話を聞く集会があるっぽいですね。

 

『ふむ…、なるほど分かった!』

ど、どうしたんですか?

 

『シューティングスターモン!聞いているか!』

 

『ウィーッス ドウシタ パルタス』

 

『お前…腹が減ってないか?』

 

『サイキン狩リニイッタバカリデ ホゾンショクハ マダマダアルガ』

 

保存食…。

どこに保存してるんですか?

 

『野生デジモンがいない極寒地帯の永久凍土に蔵を掘って、そこに貯蔵している。天然の冷凍庫だ』

 

あ…なるほど。賢い。

デジタルゲートを寒い地域に繋げば、それだけで冷凍庫が出来上がるのか。

 

…パルタス氏、最初の第一印象がアレだから脳筋みたいなイメージあったけど、やっぱ普通に頭いい人なんだな。

 

『デ?ハラヘッテタラ ナンダ』

 

『…これから一狩り、行かないか?シューティングスターモン。いい餌がたくさんある場所があるようだ』

 

『…ナルホド、オモシレー ヤッチマウカ』

 

え…え?

一体何を…パルタスさん?

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