は、話の流れからすると…
『一狩り』というのは。
集会中の蛮族達に、シューティングスターモンのミサイル攻撃を撃ちこむってことですか!?
「そうだ!奴ら蛮族デジモンを野放しにしていては国家防衛上の危機と判断した。よってシューティングスターモンの100%のパワーでまとめて粉砕殲滅する!」
し、しかし。
まだ罪を犯していない蛮族デジモンもいるんじゃ…
「罪?私はシューティングスターモンの餌を狩るだけだ。罪がどうとか関係ないだろう。貴様達は川で釣りをする時、罪を犯した魚デジモンだけを釣り上げるのか?」
…そういうスタンスですか。
ならまあ…口出しはできないか。
人に近い姿をしているとか、知能が高く文化があるとか…そういう要素を理由にして特別扱いするのも違うしな。
あ!でも、ディノヒューモン農園は餌にしないでもらえませんか?
「なぜだ?」
…我々のパートナーデジモンは、4体ほどがあの農園の出身です。
いや、赤オタマモンもルーツを辿れば農園出身か。
我々セキュリティデジモンのさらなる進化の可能性を模索する上で、あの農園は研究観察対象として非常に有用なんです。
「いいだろう…今はな。だが、奴らがクラッカーと手を組むようになったら潰す」
…それは…仕方ないか。
分かりました。
…パルタス氏には、利害を理由にして農園への攻撃を避けさせたが…
実のところ、あの農園をもっと観察したい、滅ぼさせたくないという感情が理由だ。
農園がAAAと手を組まないようにする方法がなにかないか、考えなくちゃな…。
蕃族の殲滅を企てるなら、集会をするタイミングを見図る必要がありますね。
『それで、蛮族の集会はいつやるんだ?』
…分かりません。
監視するしか…。
シンが口を開いた。
「しかし、ずっとデジドローンで見張っていたらバレるかもしれないッすね」
それはそうだ。
どうにかして、バレずに見張る方法はないか…?
そう話していると、パルモン改めシュリモンが話しかけてきた。
「みてみて!」
シュリモンは、全身を覆う布の服を脱ぎ去ると…
ほぼ100%植物って感じの生身が現れた。
「こうしたらどう?」
そしてシュリモンは、植物に擬態した。
…うーん。これはすごい。デジモンだと気付かないかも。完全に植物にしか見えない。
蛮族の拠点はジャングルにある。
この姿でジャングルの植物に紛れ込めばバレなさそうだ。
潜入するときは、シュリモンにデジドローンを持ってもらい、一緒に擬態してもらうことにしよう。
『しかし、シューティングスターモンがフルパワーで攻撃する場合、5分ほどエネルギーをチャージする必要がある!集会が始まった瞬間に発射、というわけにはいかないぞ』
わかりました。
うまくシューティングスターモンの準備ができてるときに、集会が始まるのを狙いましょう。
その時、スポンサーさんから通信が来た。
『オホン!諸君、蛮族の拠点なら他にもひとつあるぞ!キウイモンの島だ!』
ああ、スポンサーさん…そういえば言ってましたねそんなこと。
パルタス氏が、スポンサーさんに返事をする。
『何、本当かクロッソ!ならばそちらも殲滅する!シューティングスターモンが発射したと同時に、キウイモンの島へジオグレイモンを送り込む!スターモン抜きで我々の言うことを聞くか怪しいが…こういう機会も必要だろう!』
…キウイモンの島に攻め込むんですね。
もしもキウイモンがいたら保護してもらえませんか?
『なぜだ』
…蛮族が肉にせずに飼育しているとしたら、それは生かしたまま利用する価値があるということです。
うまく鹵獲できたら役に立つと思いますよ。ズバモンやルドモンのように。
『ふむ…それはもっともか。検討しよう』
そういえば、ルドモンとズバモンはどうなったんですか!
『ルドモンは成熟期に進化したぞ!ティアルドモンと名付けた。これからきっとデジタマを生むだろう』
おお、それはよかった。
ズバモンは?
『ズバモンか!死んだぞ!』
し…死んだ!?
どうして!?
『ヤツらをデジタルワールドで強敵と戦わせて武者修行させていたらな…二体とも成熟期に進化したんだ』
ふむふむ。
『だが、二体ともその場で脱走をしたんだ!』
脱走ですか…「まあそうなるだろうな」って感じですが、それで?
『お仕置きがてらに、シューティングスターモンに20%の出力で突撃させてから捕獲しようとしたんだが…力の調整を誤って70%の出力が出てしまった!』
…どうなりました。
『ティアルドモンは瀕死ながらも生き延びたが…ズバイガーモンは粉々に消し飛んで死んだ!やりすぎたな、ふはははは!』
やりすぎたなじゃないですよ!
安くないお金を払ってもらって売ったんですよ!
そっちが大損じゃないですか!
『まあそういうこともあるだろう!幸い、飛び散ったズバイガーモンの肉片や剣は回収できた。次に何かのデジモンを育てる時に与えたらパッチ進化するかもな!』
…流石にどうかと思いますよ。
『仕方がないだろう!成長期の段階ですら超強力な剣と盾だった奴らだ。それが成熟期になったのだぞ、スターモンやジオグレイモンで連れ戻そうとしたら腕の一本や二本切り落とされかねない!』
それは…
…致し方ないか。そのままほっといて脱走させたらAAAに回収されるだろうし…。
とても惜しい。
さて…
負傷したデジモン達への応急処置が済んだことだし、戦場の死屍累々を片付けるとしよう…。
「マ、マシィ…」
…ケンタルモンに蹴り飛ばされたボスマッシュモンは、だいぶダメージが大きそうだ。
チビマッシュモン達、シュリモン。頼んだよ。
「マシーーーー!」
「まかせて!」
その時。
『感動した』
音声読み上げソフトによって、チャット文章が読み上げられたような声がした。
な、なんだ?誰の声だ?
声がしたのは…
…デジタルワールドで、ベーダモンと通信しているデジドローンだ。
今まで、AAAとの戦闘の映像をベーダモンに向けて生配信していたのだ。
今のメッセージを発したのは、ベーダモンか。
そういえば居たっけね。忘れてた…。
『適当に敵の数が減ったら 汝らに手を貸してやり 貸しの一つや二つでも作ろうかと思っていた だがまさか 余の力を借りることなく あの生意気な小僧を撃退するとは 天晴だ』
お、おお…
どうも。
『いい戦いを見せてもらった 面白かったぞ汝ら 愉快 痛快 爽快な逆転劇だ 汝らがたまに持ってくるゲームソフトより遥かに面白い』
なんかべた褒めされている。
『気に入ったぞ セキュリティチームよ 次に何か面白いことをするとき 余の力が借りたくなったら呼ぶがよい 興が乗ったら手を貸してくれよう』
それがどうも。
『ではな』
ベーダモンは去っていた。
シンがジト目でベーダモンを見て、ひそひそ話をしてきた。
「…今回の戦い、ベーダモンが力を貸してくれたらもっと被害を抑えられたんじゃ?」
まあ…いいよ。
あくまでカリアゲやクルエのミッションは『ベーダモンをクラッカー側につけないこと』だから。
「はあ…」
なんでも聞くところだと、AAAもベーダモンにコンタクトを取ってきたことがあるらしい。
だけど、利用する気マンマンだったのが「鼻について気に食わない、生意気でムカつく」とのことだったそうで、結局ベーダモンはAAA側につかなかったようだ。
「クルエさんとカリアゲパイセンは、ベーダモンを何かに利用はせず、ご機嫌取りに徹したから反感を買わなったんスね。はー、器用なもんスね」
…気難しいよねベーダモン。
マッシュモン達とシュリモンは…
蛮族デジモン達やシェルモンの死骸を解体して、燻製ハムに加工した。
余った残骸は、トイレ兼有機肥料製作所にいるププモン達に与えた。
蛮族デジモンは、自発的に我々を襲ってきたわけではない。
彼らもまた、クラッカーに利用された存在なのだ。
せめて糧にすることが、弔いになるだろう。