私とクルエは、ワームモンとサラマンダモンが融合したデジモン…デジタマモンをデジヴァイスへ入れて、カンナギ・エンタープライズ・ジャパンへ足を運んだ。
神木さんに、救援に来てくれたお礼と報告をするためだ。
秘書の岸部エリカ氏が、我々を案内してくれた。
岸部氏は、最近よく名前を「リエ」と間違われて困る…等、いろいろ喋っていた。
そうして、私とクルエは神木氏の部屋に来た。
「まずは、クラッカーの襲撃を無事に退けられたようで良かった」
ありがとうございます。
クルエが随分な無茶振りをしたようですが、助けてくれてありがとうございます。
「いいや、助けていない。君達がデジクオリアを不正コピーしたから、執行者オタマモンを送り込んでデジタル空間に放火をして私刑に処しただけだ。火を放ったところへ、たまたま、丁度良く、ピンポイントに、クラッカーが送り付けてきたデジモンがいたようだが…。まあとにかく、我々は君達に加担したわけではない。履き違えないように」
ああっそういうスタンスでしたね。
…大丈夫、あのオタマモン達がどこから来たのかは、誰にも教えていません。
「それは何よりだ」
それと、サラマンダモンのサラですが…
モリシェルモンに殺されかけたときに、同じく瀕死になったワームモンと、割れたデジタマと融合し…
このデジタマモンになりました。
そう言い、私はデジヴァイスをプロジェクターへ接続し、スクリーンにデジタマモンの姿を映す。
『クワァ~!クワァ~!ウミョォ~ン!』
「…これが、サラの進化した姿か。レベル5に到達したのか?」
死にかけの状態で、レベル3の成長期デジモンおよび、レベル0のデジタマとジョグレスしたせいか…
レベル5には到達しておらず、4.3…くらいになっています。
「成熟期を超越してはいるが、レベル5には到達していない、か。不思議な状態だ」
せっかくなので、デジヴァイスのカメラをオンにしてみます。
「…わかった」
デジヴァイスのカメラをオンにすると…
デジタマモンの前にウィンドウが現れ、そこに神木さんの顔が映った。
『…!?ク、クワァ~!クワァー!クワァー!クワァァァ!!』
デジタマモンは、神木さんの顔が映ったウィンドウの方へ駆け寄りの夢中で頬ずりをした。
「…サラ。覚えているんだな。私のことを」
『クワァ~~~~!!クワァ~~~~!!』
「…君をデジタルワールドへ放逐して済まなかった、サラ。あのときは今とは状況が違った。セキュリティチームに高カロリーな餌の獲得手段と、広い生育環境、そして成熟期デジモンが産んだデジタマを活用する手段ができた今だからこそ、君は自身の力を十全に活かせるが…、あのときの我々には、それがなかったんだ」
『クワ…』
「だから、我々は無責任にも君を飼育放棄し…棄ててしまった」
『…』
「きっと数多くの外敵デジモンに狙われ、それらと戦い…、毎日孤独と恐怖に苦しみながら暮らしていたんだろう。我々のせいで…」
『…クワ』
「だが、君は生きてセキュリティチームのところへ戻ってきて、クロッソ・エンジニアリングへ来てくれた。そのおかげで、君がデジクロスしたフレイドラモンと、君の子供達が力を合わせ、強大な敵を打ち倒し、セキュリティチームを救うことができたんだ」
『…』
「我々は、育ての親として最低なことをしてしまった…。だが、君が生まれてきてくれて、立派に育ってくれて…、本当に感謝している。どの面下げて、と思うかもしれないが…、君を誇りに思うよ」
『クワァ、クワァ~~!!』
サラマンダモンだった頃のサラは、人間の言葉を理解することはできるが、自ら文章を考えてチャットで意思表示をすることはできなかった。
脳の言語野の発達が、自ら文章を生成できるほどまでに発達していなかったからだ。
だが、チャットで対話できる高度な言語能力をもつワームモンとジョグレスしたことで、二体の人格と知能が混ざり合い、デジタマモンはチャットを使えるようになったようだ。
…デジタマモンは、チャットで文章を打ち出した。
『かみき また いっしょに いたい』
「…ケン、クルエ。デジタマモンはこう言っているが…」
神木さんがそう言うと、クルエは頷いた。
「いいよ、デジタマモン。神木さんと…、そして、ここのオタマモン達。あなたの子供達と…しばらく一緒にいていいよ」
『ありがとう クルエ ブイモンや カリアゲのとこに またもどるよ あとで』
…今ここにいるデジタマモンは、サラであり…
そして同時に、我々の拠点フローティア島でブイモンやカリアゲとデジクロスの特訓をし続けたワームモンでもあるのだ。
つまり、ふたつの出生が、人生が、同時に記憶の中に存在している。
我々のビオトープで、我々に囲まれて生まれ育った思い出と、カンナギのサーバーで神木さんたちに育てられた思い出が。
今、この場では。
後者の思い出に浸ってみるのもいいだろう…。
デジタマモンは、カンナギ・エンタープライズ・ジャパンのビオトープへと入り込んだ。
そして、サラの子供達である赤オタマモン達とともに、温泉を模した風呂に入った。
『なつかしい おちつく』
「…温泉卵みたいだね」
言っちゃったよ!
…デジタマモンの件の報告が終わった。
そして私は、これからやろうとしていることを神木さんに話そうとしたが…。
「待て、私にセキュリティチームとジャスティファイアとの共同作戦の話をしようとしているのか?重要機密事項だろうそれは。聞くわけにはいかない、君達の研究グループとは協力関係だが、君達のセキュリティ事業に表立って加担しているわけではないのだから」
あっ、そ、そうでしたね。
「…君達にはサラの件の恩がある。クラッカーとの抗争関係と直接関わらない範疇で、個人的に礼がしたい」
お礼ですか…
何かありますクルエさん?
「…お礼って言っても、サラが頑張ってくれてるだけだから、私はなんともですね」
「欲がないね…」
欲を言っていいなら…
一つ聞きたいことがあります。
「何かな」
前に教えてくれましたよね。
デジクオリアをそもそも何故作ったのか。
デジクオリアがどういう原理でデジモンやデジタルワールドを観測しているのか。
「…ああ」
元々、古の時代には本物の霊媒師…シャーマン達が世界中にいて、霊視や冥界の観測をするロストテクノロジーを持っているらしかった。
そこで神木さんは、それら霊媒師たちの特殊な脳の状態を人工知能によって再現し、コンピューターに霊視をさせることに成功した。
そうして出来上がったのがデジクオリアであり…
デジクオリアで観測した冥界こそがデジタルワールド。
そして、冥界を漂う幽霊のようなものが、情報生命体デジタルモンスターだと。
「そうだ」
…その『実在した霊媒師』とやらの存在を、あまり触れていませんでしたが…
それについて詳しく教えてくれませんか。
「…いいだろう。他言無用でな」
はい、分かりました。