フローティア島では、有機肥料を使った農耕が行われている。
島に住む我々のパートナーデジモンの排泄物や、ジャスティファイアから送ってもらっているシューティングスターモンたちの排泄物を、島の中央の肥料置き場へと捨てている。
そこで幼虫型デジモンのププモンを大量に飼育し、排泄物をププモンたちに食べてもらうことで、糞の中に残った有機物を食べてもらうのだ。
そうすることで、堆肥特有のメタンガスの悪臭を抑えつつ、急速に大量の肥料を生産可能なのである。
尚、肥料の回収はマッシュモン達が行っている。
そうして作った肥料を使って、様々な野菜を育てている。
トウモロコシ型の植物、マメ型の植物、根菜型植物、薬草、などなど…。
植えている野菜は、一切品種改良はしていない。
デジタルワールドに自生している野生の植物から採取した種だ。
デジタルワールドの植物は、野生であってもまるで我々の世界の品種改良された野菜のように可食部が大きい。
そして凄まじく成長が早い。
マッシュモンが今、ベッドに寝て安静にしているクラフトモンに運んだ野菜薬膳スープは、フローティア島で栽培された野菜を使ったものである。
食糧の確保はとても大事な課題だ。
我々のセキュリティチームは、日頃から訓練を行い、クラッカーデジモンと戦えるように強くならなくてはならない。
その戦いを支えるのは、豊富な栄養分を含む健康な食事に他ならない。
「…なあケン、ちょっといいか?」
どうしたの?ブイモン
「あのさ、まえからいおうとしてたんだけど… このしま、くっせえ!!」
え!?
「なんなんだ!めっちゃくちゃくせーぞ!さすがにいやになってくるんだけどさぁ!」
そ…そうなのか!?
デジドローンでは視聴覚しか受信できないから気づかなかった。
「なあマッシュモン!おまえもくせーとおもうだろ!?」
ブイモンがボスマッシュモンに問いかけると、ボスマッシュモンはチャットで返事をした。
『とても いいかおりに つつまれた しまで いこごちが いい』
「おまえのハナおかしいぞ!?」
…ブイモンとマッシュモンは嗅覚が違うのか。
「なあクラフトモン、ねてるとこわりーけどよ、おまえはどうおもう?このしまくさくねーか?オタマモンも!トコモンも!どうおもう?」
すると、療養中のクラフトモンは首を少しこちらへ向けて話した。
「正直 鼻が曲がりそうだ きつい」
そ、そうなんだ。
トコモンは?
「おえーーー!」
お、オタマモンは?
「タマァ~~~…」
…不満そうだ。
やっぱ臭いんだな、この島。
『なぜだ ブイモンよ このしまは これほど いいかおりなのに』
「だからおまえのハナがおかしいんだって!まあ、ププモンがたくさんふえるから、それはいいんだけどよ…」
ププモン。
デジモン達の排泄物を食べて分解し、有機肥料に変えてくれる、たくさんの幼虫型デジモンだ。
殖えたププモンは、パルモンが釣り餌として利用したり、オタマモンが食べたりしているのだが…
ジャスティファイアの大食いデジモン達の排泄物が送られてくるようになってからは、ププモンが殖えるペースが尋常でなくなっており、釣り餌では消費が追い付かなくなっている。
大量の排泄物の中を、大量の白い幼虫が蠢いているその様は、まさに究極ウンチ地獄絵図といえるだろう。
クルエが「何があっても絶対私に見せないで」と私に念押しして言ってくるほどの凄まじい光景である。
しかし、そうか…。
もとは肥料作成所は島の端っこに設置していたのだが、ププモンを狙ってガニモンが海からやってきて、巣箱を破壊してしまった。
そのため島の中央に移動したのだが…
まさか、それが悪臭問題を招いていたとは。
これはやばいな…どうにかしなくては。
そう考えていると…ブイモンがマッシュモンの方を向いた。
「なーマッシュモン、ププモンもってきてー」
『わかった いつものように もってこよう』
マッシュモンは籠を持って、肥料作成所(トイレ)の方へ向かった。
しばらくすると、マッシュモンは戻ってきた。
ププモンをたくさん籠に入れて。
『もってきたぞ あらうぞ』
そう言うとマッシュモンは、ププモン達を海水でじゃぶじゃぶ洗った。
そして洗ったププモンを入れた籠をブイモンへ差し出した。
「サンキュー!おやつだ!もぐもぐ…」
オ…
オーマイゴッド!!!
ブイモンがププモンを食べている!!
「ん?なんだよケン?」
そ、それ… 直に食うの!?
気持ち悪くない?
「なにがだよ。うめーぞププモン。ケンもくうか?」
いや…食べれないからいいよ。
しかし、食べて大丈夫なのか?
「どくはねーぞ」
そうじゃなくて…その、可愛い顔がついてはいるけどさ…
ハッキリ言って蛆虫じゃん?
「?だからなんだ?つりのエサにできるんならオイラたちだってくえるだろ」
お、おお…。
まあ、不自然じゃないか。
爬虫類の主食は虫だし。
「クラフトモン、おめーもくうか?」
「いただこう」
く、クラフトモンも食べるの?
ブイモンがクラフトモンのベッドのところへ歩いていき、クラフトモンへププモンを差し出した。
「おやつだ」
「頂きます。もぐもぐ… うん、うまいな」
「うめーよな!」
ま、マジか…。
「タマ!タマァー!」
オタマモンがブイモンのところへ駆け寄ってきた。
「オタマモンはじぶんでとってこいよ…しゅしょくだろ」
「タマァ~」
「…くせーからいやなのか?」
「タマ!」
「しょうがねーな… ほれ」
「タマ!タマァ!モグモグ!」
…。
今までは、見た目がキツイからという理由と、衛生的な観点で、ププモンを彼らのエサにすることは避けていたんだけどな。
まさかおやつにしているとは…まったくの想定外だった。
お腹壊さないようにね。
「ちゃんと洗ってるから大丈夫だぜー!」
なら、いいのか…?
まあいいか。
「トコモンもくうか?」
ブイモンはトコモンへププモンを差し出した。
「おえー!」
トコモンはそれを拒否した。
ああ… デジモンによって餌に好き嫌いがあるんだね。
興味深い。
「…でさぁ!やっぱくせーんだけどさ!!どうにかならねえのかこれ!?」
…肥料作成所、移すか…。
さすがに悪臭被害が続くとメンタルにも響くだろうし。
でも、どこに移すべきだろうか…。
前にカリアゲが探した、フローティア島の候補だった孤島がいくつかあるけど、そこに移すか?
孤島でププモンに食わせて、肥料が溜まってきたらマッシュモンに回収させるか。
「でも、そーするとガニモンがあがってきてププモンをたべたり小屋こわしたりするんだろ?」
むむ…厄介だ。
どうすべきか…?