堆肥作りのためにシューティングスターモン達の排泄物をストックしていた堆肥製造所が、実は悪臭問題によってブイモン達へストレスを与えてしまっていた。
これはどうにかしなくてはいけない。
はて、どうすべきか…
『ブイモンも わたしのように なれればいいのではないか?』
『おめーがおかしいんだよマッシュモン!』
…む?
そもそもなんでマッシュモンは、排泄物のニオイをいい匂いだと感じるんだ?
『なぜだろうか わたしにもわからない』
…もしかして。
ちょっと実験に付き合ってもらえる?マッシュモン。
『よろこんで』
…
フローティア島の候補のひとつだった孤島。
そこにシューティングスターモン達の排泄物投棄ポイントを変更した。
そして、そこにマッシュモンを連れてきた。
『なにをすればいいんだ、ケンのかみよ』
カンタンなことだ。
マッシュモン、君は菌糸のデジモンだよね。
地中の栄養分を吸い取って、子実体…チビマッシュモンを殖やせる。
『そうだ』
だったら。
この大量の排泄物の山に直接菌糸を張って、チビマッシュモンの材料にできないかな?
『ププモンがいる便所で ためしたことはあるが できなかった』
それはププモンが、排泄物を食べるときに抗菌ペプチドを分泌するからだ。
そのペプチドのせいで、マッシュモンの菌糸は生育を阻害されてしまっていたんだね。
だけど今ここにはププモンはいない。
もしかしたらできるかもしれないぞ!
『やってみよう それがわたしの しめいならば』
頑張ってね。
…翌日。
マッシュモンの調子を見に行った。
おはよう、マッシュモン。
『おはよう ケンのかみよ わたしはあさから ちょうしがいい』
調子いいの?
『チビマッシュモンは 順調に 殖えている まだ目に見えるサイズではないが 菌糸はどんどん 排泄物の中で 殖えているぞ』
おお、そうか!
やはりだ。私の勘は当たっていた。
マッシュモンが、排泄物のニオイを「いい匂いだ」と感じた理由。
それはマッシュモンにとって、デジモンの排泄物が菌糸の成長のエサとなる有益な存在だからだ。
そう。
マッシュモンはププモンやヌメモン同様に、排泄物を分解できるスカベンジャー・デジモンの一種だったんだ!
ちなみにマッシュモン。
排泄物はすべてを菌糸のエサにできるの?
『のこすぶぶんも ある』
…有機物だけを食べて、無機物は残すってことだね。
これはすごいぞ…!
「堆肥を作る」というタスクを、そのままマッシュモンが引き継ぐことができるし。
ププモンが増えすぎて困る問題も解決する。
なぜなら、マッシュモンに堆肥作り役を引き継げば、排泄物から堆肥だけでなく、チビマッシュモンという有用な労働者を大量生産することができるからだ。
チビマッシュモンはとにかく用途が広い。
フローティア島での労働ができるだけでなく、見張りマッシュモンサービスで契約者のパソコンへ派遣し、マルウェアの駆除やクラッカーデジモンの侵入検出をすることができる。
見張りマッシュモンサービスの需要はどんどん増えてきており、マッシュモンの生産が追い付かないのが難点だったが…
それも解決する!
私はこのサイクルを回せることを、チームの皆に言ってみた。
真っ先に反応したのはクルエだった。
「え?マッシュモンに何食わせてるの!?信じられない!最悪!人でなし!」
そこまで言う!?
『クルエのかみよ ケンのかみを わるくいわないでくれ わたしは たくさん おやつがたべれて 幸せだ』
「えー…?マッシュモンがそういうならいいけどさ…。まあ、ププモンがこれ以上ウジャウジャ殖えなくて済むならいいよ…。あれよりマッシュモンの方がずっといいですし」
なるほど。
ププモンが大の苦手なクルエにとっては、ププモンを見なくていいというメリットがあるのか。
次にカリアゲが口を開いた。
「なあメガ!お前んとこのアプリモンスターってマッシュモンが元になってるんだろ?じゃあさ、アプモンもウンコを餌にできるのか?」
「いや無理だね。細胞が変異しすぎていて、マッシュモンにあった能力の多くはアプリモンスター達からは失われてるんだ。うじゃうじゃと殖えたり、毒を出したり、胞子を撒いたり、大ダメージを受けても平然と再生したり…みたいなのはね」
「勿体ねーな。なんで無くしたんだ?」
「無くしたというより無くなった、というべきか。高度なアプリの力を身に着けるためにオミットされたみたいだね」
「トレードオフってわけか…」
そんなわけで。
今後、ププモンによる堆肥生産から、マッシュモンによる堆肥生産に順次切り替えていく。
ププモンの生育目的は、釣り餌やデジモン達のおやつ等に絞っていく。
それでいいかな?
私がそう聞くと…
『イギなし!!!!!!!!!!』
『賛同する』
…ブイモンとクラフトモンが真っ先に声を上げた。
そんなわけで。
堆肥の生産は、フローティア島本島ではなく、別の孤島で行うことにした。
マッシュモンが作った堆肥は、デジタルゲートを通じて本島の畑に搬送される。
『はぁ~、嫌なニオイがなくなってよかったぜ~』
ブイモンがごろんと和んでいる。
『私も 戦いのダメージより 悪臭で先に死にそうだったが なんとか助かった』
…そんなに我慢させてたんだ。
ごめんねクラフトモン。
不満があったら溜め込まずに言っていいんだよ。
『排泄物だけにか?』
…生真面目なコマンドラモンなら言わなさそうな返しだな。
クラフトモンがこういうお茶目な返答をするようになったのも、進化の一環なのだろうか。
『そこまで真剣な顔をされると困る やはり私には カリアゲのようなジョークをいうのは難しい』
ああ、面白い、面白いよクラフトモン!わはは!
『…私は寝込んで怪我の回復に専念する。今日からゆっくり眠れそうだ』
…なんかゴメンね。