デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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作戦開始前の謀略

シュリモンから連絡が来た。

もうすぐ蛮族デジモン達の集会が始まりそう…らしい。

 

集会とはつまり、ニセシャッコウモンという端末を通したAAAによる演説である。

 

即座にジャスティファイアへその旨を伝達した。

パルタス氏からの返答は早かった。

『ふはははは!待ちわびたぞ!シューティングスターモン、デジタルワールドに出てエネルギーチャージの準備をしろ!』

 

パルタスさん。

蛮族の集会が始まり次第、集会のど真ん中にシューティングスターモンの突撃攻撃を撃ち込むということでいいですか?

 

『できれば集会が終わったタイミングで丁度良く撃ち込みたいところだな!シューティングスターモンは秘密兵器だ、AAAとやらに知らせたくない!』

 

集会が終わったタイミングで丁度良く撃ち込む…厳しくないですか?

終わり次第解散するかもしれませんし。

 

「それならうちのドーガモンが時間稼ぎをするよ、ケン」

 

メガ!

 

「ドーガモンの力でニセシャッコウモンの姿と声を投影して、『演説の続き』をやる。そこへシューティングスターモンを着弾させると同時にドーガモンを引っ込める。これで蛮族デジモン達を爆心地へ留まらせることができるはずだよ」

 

『はっはっは!メガよ、デジタルアソートは非戦闘用の平和利用デジモンの開発をしていると聞いたが、随分なキラーカードに化けたな!もはや戦略兵器ではないか!』

 

「いや?ドーガモンは何も手を下さないよ、ただちょっとイタズラをするだけ」

 

『ふはははは!では、共同作戦といこう!』

 

…そして、シューティングスターモン着弾と同時に、キウイモンの島にスターモンとジオグレイモンが攻め入るんですね。

キウイモンがいたら保護をお願いします。

 

『いいだろう』

 

リーダーが立ち上がって口を開いた。

「この機会に便乗して…ひとつ、やっておきたいことがある。『ディノヒューモン農園に恩を売る』ことだ」

 

恩を売る…?

 

「そうだ。現在は蛮族と対立しているディノヒューモン農園だが、蛮族が潰れたらAAAは蛮族の代わりに農園を味方に取り込もうとするかもしれない。だから先手を打ち、農園に恩を売ってこちらの味方につける」

 

カリアゲが頷く。

「ベーダモンのときみたいにか?リーダー」

 

「そうだ」

 

でも、どうやって恩を売るんですか?

 

「簡単な話だ。シューティングスターモンの爆撃を、フレイドラモンの仕業ということにして、農園の者へ爆心地へ近付かないように事前通告すればいい」

 

手柄の横取りをするつもりですかリーダー!?

いいんですかパルタスさん!

 

『ふはははは面白い!シューティングスターモンは秘密兵器だ、他の誰かの仕業にできるならこちらとしても大助かりだ!加えてそれを貴様らセキュリティチームの実績に見せかけられるなら、貴様らの抑止力としての実績アピールにもできるだろう。いいぞ!やるがいい!』

 

…でも交渉できるんですか?

ディノヒューモン農園の言葉ってまだまだ原始的でボキャブラリーが少ないじゃないですか。

 

「農園の言葉と我々の言葉の自動変換アプリはメガが開発済みだ。それを使って、どうにか意思疎通をする」

 

大丈夫なんですか…?

 

「問題ないはずだ。『暴力による解決を、誰がやるのか』を伝えるだけだ。彼らのボキャブラリーに十分収まる情報だろう?」

 

なるほど…確かに。

 

フレイドラモンがやったことにするのはいいとして…

ブイモンは大丈夫なんでしょうか?

こないだの戦闘で、かなりダメージを負って、骨にヒビが入ったと聞いてますが。

 

ブイモン、調子はどう?

『いてて…まだなおってねーよ』

 

ほら、無理そうですよ。

 

「やれるな?ブイモン」

リーダー!?

 

『ああ、やれるぜリーダー!オイラにはデジタマモンがついてるからな!オイラたちにまかせろ!』

 

リーダー!?

無理させるんですか!?ブイモンに!

 

「ブイモンはこれくらいの無理はやってくれる」

 

いいんですかそんな扱いで…。

 

『いいぞ!』

 

「いいんだ。別に実際に戦うわけじゃない、ちょっとディノヒューモンの前に姿を表すだけだ」

リーダーはこんなこと言ってるけど…

か、カリアゲ!止めないのか!?

 

「…最近気付いたけど…ブイモンは逆境なほど燃えるとこあるんだよ。いや、いいとこなんだけどな?それに、『ブイモンの体を気遣って作戦を勝手に取りやめた』と言ったほうがブイモンには悪いだろ」

 

カリアゲ…。

 

「過保護にしすぎるのは、仲間への信頼とは真逆だぞ。ケン」

 

ううっ、カリアゲに諭された…。

正論だ。

 

 

我々はデジドローンとブイモン、デジタマモンをデジタルワールドへ送り込み…

ディノヒューモン農園付近のアクセスポイントから出現させた。

 

よし…

それじゃブイモン、デジクロスを頼む。

 

『よっしゃ、やるぞデジタマモン!』

『ウミョォ~ン!』

 

デジタマモンは、脚を引っ込めた。

卵殻に炎の紋様が浮き出て、ナイフのように鋭い角が生えた。

カリアゲはデジタマモンのこの形態に「勇気のデジメンタル」と名付けて呼んでいるらしい。

 

勇気のデジメンタルは、いくつかの破片に分割され、ブイモンを囲った。

 

破片から放たれる光がブイモンを包み込むと、光の中のシルエットは徐々に大きくなっていく。

 

やがて、破片が頭部と胸部、手足に装着されて装甲と化し…

フレイドラモンへのデジクロスが完了した。

 

『できたぜ!』

 

デジクロスの成功を見届けたリーダーは、デジドローンから音声を発した。

「フレイドラモン、できるだけエネルギー消費を抑えて形態維持に務めることはできるか?」

 

『そういうのはシェイドラモンのほうが得意じゃねえかなぁ』

 

「シェイドラモンは喋れるのか?」

 

『チャットならできるけど…喋るのは厳しいな』

 

フレイドラモンと違って、声帯の構造が喋るのに適してないのか。

 

「では、シェイドラモンに代わってくれ。チャットの文章を読み上げソフトで機械音声にすれば擬似的な会話はできるな」

 

『よし!ワームモン、代わるぞ』

 

フレイドラモンはシェイドラモンへと形態変化した。

 

それじゃ、シェイドラモンのチャットを読み上げソフトに接続してっと…。

どう?喋れる?

 

『あー あー きこえる?』

 

おお!聞こえた!

大丈夫そうだね。

 

「それでは、ディノヒューモン農園とコンタクトを取りに行くぞ」

リーダーが操作するデジドローンは、シェイドラモンと共に農園の入口へ向かった。

 

農園の入口へ付いた。

リーダーは、ディノヒューモン農園語翻訳ソフトを駆使しながら、マイクに向かって発話する。

「モシモシー! キャクキャク!」

 

やがて、何者かがやってきた。

…スティングモンだ。

 

『ナゾナゾ!?』

スティングモンは問いかけてくる。

翻訳ソフトには「誰だ」と文字が出てくる。

 

リーダーは「私は味方だ、蛮族の敵だ」と、テキスト欄に入力した。

すると翻訳ソフトが、それをディノヒューモン語に訳し、スティングモンへ発した。

「ワレワレ!トモトモ!ウホウホ、ボコボコ!」

 

それを聞いたスティングモンは…

『お前達、信徒の、仲間か?』

 

おお!?

日本語で発話して話しかけてきたぞ!?

どこで覚えたんだ!?

 

シント…信徒。

我々が蛮族と呼んでる輩は、デジタルワールドではそう名乗っているのか。

 

リーダーも日本語で返答した。

「いいや違う。信徒達と戦っている者だ」

 

『なぜ、この言葉を、使える』

 

「これは元々我々が使っている言葉だ。信徒の親玉…AAAも、この言葉を使っている」

 

『トリプルエー?天使のことか』

 

スティングモンが発した「天使」という名称を聞き、リーダーは眉を潜めた。

 

「天使…?AAAは、あなた達にはそのように名乗っているのか。傲慢なものだな、天使とやらは」

 

『傲慢?知らない言葉だ。どういう意味だ』

 

「他人を見下してばかりいる奴のことだ」

 

『なるほど、傲慢。信徒共は確かに傲慢だ』

 

…スティングモンの態度がちょっと和らいだ気がする。

リーダーは今、『AAAの悪口』を交渉の手段として用いたのだ。

 

敵の敵は味方であることを、感情的・心情的に理解させるための手だ。

 

『それで、お前達、何者だ。どこから来て、何をしに来た』

スティングモンが問いかけてくる。

 

リーダーはデジドローン越しに返事をする。

「我々はセキュリティチーム。ここから遠く離れた土地で、あなた達のように社会を形成して生きている。あなた達が天使と呼ぶ者…AAAは、我々の社会をデジモンの力で破壊しようとしている悪党だ。それを退治しようとしているのが我々だ」

 

スティングモンは首をかしげる。

『社会とはなんだ?知らない言葉だ』

 

「社会…。あなた達のように、仲間同士で助け合って生きる集団のことだ」

 

『なるほど、それが社会か。理解した。それで我々に何の用だ』

 

「今日はあなた達に話があってな…」

 

『また我々の元からタマゴを奪いに来たのか』

 

「…!?いや、違う!そうじゃない!」

リーダーは慌てている。

 

『気づかないと思ったか、セキュリティチームとやら。そこにいるデジモンは、私の子供だな』

 

「…認めよう。確かにこのシェイドラモンは、あなたの子供だ、スティングモン」

 

『スティングモン?なんだその呼び方は。私が盟友オサオサから貰った名は「グサグサ」だ。他の名前で呼ぶな』

 

「…そ、そうか。分かった。あなたのことはグサグサと呼ぶ」

 

グサグサ…

スティングモンってディノヒューモンからそう呼ばれてるんだ。

 

『あの時、信徒達の襲撃で、ブイブイとブンブンが死んだ。お前達と共犯じゃないのか、セキュリティチーム』

 

ううっ、すごく睨まれている…!

ブイブイとモスモンが死んだことを怒っている。そりゃそうだ。

 

「…そう勘違いされるのも無理はない。あのとき我々は、AAAに部下がいることを…信徒達がいることを知らなかった。信徒達があなた達の勢力と争っていることも知らなかったんだ」

 

『無理な言い訳だな』

 

「オレは真実を語っている、グサグサ。我々は今からAAAと信徒達を滅ぼしに行くつもりだ。今ここであなたに嘘をついても何の得もない」

 

『滅ぼしに行く?仲間をか?』

 

「…何度も言うが、オレたちはAAAの仲間じゃない、敵同士だ。ブイブイとグサグサのタマゴを奪ったことは謝罪する。だがそれは、あなた達が優秀なデジモンであり、AAAを倒すためにはその力が必要だと考えたからだ」

 

『ブイブイの子供はどうした?』

 

ブイブイ…エクスブイモンの子供。

つまりブイモンのことだ。

 

「今ここにいるシェイドラモンは… ブイブイの子供ブイモンと、グサグサの子供ワームモンが合体している姿だ。お前がブイブイと合体したように」

 

『何…!?合体ができるのか!?さすが我が子、優秀に育ったものだ』

 

「あの時、我々が貴方とブイブイのタマゴを奪ったせいで、グサグサとブンブンに隙ができて…結果、二人はAAAの部下、信徒達に殺されてしまった。どれだけ詫びても、二人の命を戻すことはできない」

 

『そうだろうな』

 

「だからせめて、罪滅ぼしに… 償いとして、オレ達が今からこの手で、信徒達を皆殺しにする。そしてこれ以上、信徒達に貴方たちの村が襲われないようにする」

 

『信徒たちを滅ぼす?できるのか?お前たちに。あれらは我々が長い間戦い、未だに滅ぼせていない敵だ。お前たちにあれが滅ぼせるのか?』

 

「できるさ。シェイドラモンの力があればな」

 

『それほど強いのか、我が子は』

そう言うと…

スティングモンは構えた。

 

『シェイドラモン、私と戦え。力試しをしてやる』

 

スティングモンは、あのスコピオモンの子孫だ。

デジクロスしてパイルドラモンやディノビーモンにならずとも、単体でかなり強いと予想される。

 

「しかし、今体力を消耗しては、信徒達を滅ぼすための体力が…」

リーダーがそう言おうとしたが…

シェイドラモンは突如光り輝き、フレイドラモンに変形した。

 

『リーダー!オイラやるよ。見せてやるんだ、今のオイラの強さを、ワームモンの親に!』

構えるフレイドラモン。

…ブイモンは先日の戦いの怪我がまだ残っているのだが…

大丈夫なんだろうか。

 

 

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