デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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蛮族の集会

リーダーは混乱している。

「何?バブンガモンが、信徒が信徒になる前からいた信徒で、だから信徒であって信徒ではない、と?」

 

『何を言っている?理解不能だ』

 

「いや、グサグサが今言ったことをそのまま復唱したんだが…」

 

『復唱とはなんだ、知らない言葉だ』

 

「相手が行ったことを、そのまま話すことだ」

 

『…私が言ったのか。自分で言ったが、わけがわからないな。あー、…つまり、だ。信徒が信徒になる前に、バブンガモンはすでに信徒だったのだ』

 

「…要するに…」

 

リーダーはスティングモンにいろいろと言葉を教えてから、言いなおさせた。

 

『言いなおそう。つまりバブンガモンは、類人猿デジモンの集団が、AAAに支配され信徒となる前から、既に類人猿デジモンのグループにいたのだ』

 

「よし!よく理解できた。言葉を覚えてくれてありがとう、グサグサ」

 

『セキュリティチームの…貴様はリーダーと言ったな。こちらこそ助かった。便利な言葉を教えてもらった』

 

話を要約すると…

 

我々が『蛮族』と呼んでいるデジモンは、AAAが一から生み出したわけではない。

 

元々、類人猿型のデジモンの集団がジャングルにいたのだが…

ある日そこにゲートが開き、ニセシャッコウモンが現れた。

 

そしてニセシャッコウモンは、類人猿型デジモン達に餌として「砂糖」という粉を与えた。

 

この「砂糖」の甘味に憑りつかれた類人猿型デジモン達は、ニセシャッコウモンの指示を聞くようになった。

ニセシャッコウモンは自身を神の遣い…「天使」と名乗り、天使に従う者を「信徒」と呼ぶようになった。

 

そうして信徒たちに言葉を学ばせ、青銅の精錬などの原始的な科学知識を教えた。

ニセシャッコウモンは、信徒達にカースト付けをするようになった。

よりよく言語を学んだ者、よりよく神や天使を信仰する者に、優先的に砂糖を与えた。

 

やがてニセシャッコウモンは信徒達を統率・支配し、狩りやディノヒューモン農園への略奪をさせるようになった。

 

最初期の信徒達は、「砂糖」によってコントロールされていたのだが…

そのうち信徒達は、砂糖がなくともニセシャッコウモンのいうことを聞くようになった。

(代わりに『酒』という発酵飲料を醸造し、それを与えることがあるらしい)

 

信徒という集団そのものに、「ニセシャッコウモンに認められる者ほど身分が高く、支配的な立場をもらえる」という上下関係が出来上がったため、

信徒のデジモン達自身が砂糖という物質的報酬を必要とせずにニセシャッコウモンに認められる行動をとり始めたのだ。

 

そうしておかしくなっていく類人猿型デジモンの群れを…

バブンガモンは、快く思っていなかった。

だがここで反旗を翻しても結果は目に見えているため、信徒の集団の中では表立って目立った行動はしなかった。

戦うのが嫌いなバブンガモンは、略奪には参加せずに、他の仕事をしていたそうだ。

たとえ、かつて類人猿型デジモンのリーダーだった自分が、どれだけ低いカーストに落ちることになったとしても。

 

そうしてバブンガモンは、ニセシャッコウモンに従う振りをしつつ、密かにスティングモン及びディノヒューモンとコンタクトをとっていたのだ。

スティングモンとディノヒューモン… ザクザクとオサオサが日本語を学んだのはその機会によるものだそうだ。

 

スティングモンは日本語の語彙の多さに苦労したが…

先に習得したディノヒューモンから教わり、なんとか使えるようになった。

 

ディノヒューモン農園にもこの言葉を広めようとしたが…

群れの多くは『敵の言葉なんて使いたくない』と言い、頑なにこの便利な言語の習得を拒んだそうだ。

 

クルエはその話を聞いて、こそっと聞いてきた。

「AAAの奴、砂糖なんかどうやって調達したのかな…」

 

カリアゲが答えた。

「砂糖も塩も見つけてるよ。砂糖の方は草原に生えるイネ科っぽい植物『サットの実』を、塩はマングローブに生える『ショッパの実』を収穫すると作れるぞ」

 

「えー!フローティア島では栽培しないの?」

 

「ショッパの実は栽培するぞ。海水で育つからな。ただサットの実はだめだあれ。一度砂糖を作って、コマンドラモンに舐めてもらったことがあったんだよ」

 

「なんて言ってたの?」

 

「『これはいけない。こんなものを舐めていてはダメになる。…ところで、もう一回舐めていいか』って5回くらい繰り返し言ってたぜ」

 

「あー危険薬物ですわこれ。そんなのを蛮族に与えるなんて…やっぱAAAってとんでもない奴だ」

 

「でも砂糖だぞ?」

 

「砂糖ならいっか!」

 

よくない。

…まあクルエとカリアゲの話はいいや。

スティングモンの話の続きを聞こう。

 

『つまり… 信徒という集団は今や我々の敵だが、唯一バブンガモンだけは信用できる』

 

「敵のスパイになっている可能性はないのか?」

 

『無い。一度それを疑ったこともあった。バブンガモンにニセの情報を本当らしく伝えて、信徒達の待ち伏せをしたが… 罠は不発だった。バブンガモンがAAA達に情報を漏らさなかったからだ』

 

「なるほど」

 

『そういうことだ。もし信徒を滅ぼすのなら、バブンガモンと…その親のプレイリモンだけは手を出さないでくれ』

 

「…」

 

『どうした』

 

「我々は、信徒達が集会をしているときに、そのど真ん中に大きな火球を落として一気に全滅させるつもりだ。一体一体倒していくわけではない」

 

『…!?そんなことができるのか!?シェイドラモンに!?』

 

「シェイドラモンだけでなく、オレ達セキュリティチームのデジモンの仲間の力を集めて行うんだ」

 

『…それでは…』

 

「…トータモンやカメモンが巻き込まれない範囲に落とすようにしてある。だが、そのバブンガモンという奴は、今更個別で攻撃範囲から助けることは難しい」

 

『トータモン?カメモン?誰だそれは』

 

「こいつらだ」

リーダーはそれら二種のデジモンの姿を、デジドローンのプロジェクターで投影した。

 

『…カチカチとノシノシか。こいつらはオサオサの大事な家族だ。助けてくれるのは助かる。だが…バブンガモンが…』

 

「…すまない。もう間に合わない。バブンガモン個人に伝えて『一人だけ逃げろ』と伝えたら、信徒全員に逃げろと言う可能性がある」

 

『…間違いなくそうするだろう。何に支配されようと、信徒たちはバブンガモンの家族だ。家族を皆殺しにすると伝えられて、怒らない者などいない』

 

「…」

 

『…』

 

「…許してくれるか、オレ達を」

 

『…バブンガモンは良い奴だった。狩ったニクをくれたこともあった。一緒に踊って歌ったこともあった』

 

「…」

 

『…だが、バブンガモン一人を助けるために、信徒全員を殺せるチャンスを捨てるわけにはいかない。やってくれ』

 

そう言うスティングモンの声は…

とても辛そうだった。

 

 

 

 

 

…さて今、蛮族もとい信徒達の集落はどうなっているか。

草木に紛れて隠れているシュリモンが隠し持っているデジドローンからの映像を見てみよう。

 

広場に、シャーマモンやコエモン、ジャングルモジャモン、セピックモンが集まっている。

 

その中には、傷付いたキンカクモンの姿もあった。

腹部には大きな傷跡が残っている。糸で傷を縫っているようだ。

…あの糸はどうやって調達したんだろう。既に糸を紡ぐ技術がこの原始的な文明にはあるのだろうか。

 

キンカクモンはまだ立って歩けるほど癒えていないらしく、横たわっている。

 

そこへ…

一体のデジモンが、瓶のような土器を持って近付いてきた。

これは…!?人間の少女か!?

いや、デジタルワールドに人間がいるわけがない。

ということは、人間の少女とほぼ同じ姿を進化によって獲得したデジモンが、とうとう現れたというわけだ。

 

どことなく修道女を思わせるような出で立ちの、白い甘ロリータ衣装を纏っている。

信徒デジモンはここまで人間に近付いたのか…!?

 

『ミズデス キンカクモンサマ』

修道女デジモンは水瓶をキンカクモンに渡す。

 

『ヨロシイ ワガコヨ』

キンカクモンはそう言って水瓶を受け取り、水を飲んだ。

 

なんということだ…。キンカクモンの子供はああなるのか。

うちのフローティア島にいる、キンカクモンの第一子はまだトコモンなのに。

おそらく第二子と思われるあっちの方が成長が早いな。

うちのはデジタマ時代が長すぎたせいで、成長段階に差がついたということか。

 

キンカクモンのもとへ、トコモンが一体、ぴょいんぴょいんとやってくる。

 

口には袋を咥えている。

 

トコモンはキンカクモンへ、袋を差し出した。

中身は果物のようだ。

 

『タスカルゾ ワガコヨ』

キンカクモンは、果物をいくつか食べたあと…

『アトハ オマエガ オタベ』

残りはトコモンへ差し出した。

トコモンは、美味しそうに果物を食べ始めた。

 

広場にはたくさんの信徒デジモンが集まっている。

バブンガモンの姿は見えない。

 

やがて、デジタルゲートからニセシャッコウモンが出てきた。

 

信徒デジモン達は一斉に平伏した。

『カミサマ!テンシサマアアーーー!』

 

ニセシャッコウモンのもとへシスタモンが駆け寄った。

『ミナノモノ!テンシサマの オイデだ!ソノミコトバを イチゴイック カミシめ アリガタく キクヨウに!』

 

修道女デジモンがそう言うと、信徒デジモン達は声を揃えてニセシャッコウモンを称えた。

『テンシサマ!シンセイナル テンシサマ! ワレラニ ヨゲンヲ サズケタマエ!』

 

やがて、ニセシャッコウモンが語り始めた。

『うむ。集まったな。…キンカクモン、これはお前の子か?』

 

声は異なるが…口調は間違いなくAAAだ。

ボイスチェンジャーを使っているのだろうか。

 

弱っているキンカクモンの代わりに、シスタモンが答える。

『ハイ!テンシサマ!ワタシは テンシサマのソンザイに チカヅクタメに キンカクモンサマカラ シンセイな ニクタイを サズカり ウマレて キマシた!』

 

『ふむ、よくやったキンカクモン!お前の子が、これほどまでに我々に近づくとはな!そいつにはシスタモン・ブランという名を授けよう。貴様がさらに進化すれば、ようやく我らの一員になれるやもしれんぞ』

 

『ハハー! アリガタき オコトバ!』

シスタモンはニセシャッコウモンに平伏す。

 

『第二子はいるのか?シスタモン』

…正確にはうちのフローティア島にいるトコモンが第一子なのだが、それはカウントせず、シスタモンを第一子として数えているようだ。

 

『ワタシの キョウダイが コチラに!』

トコモンがぴょこぴょこと近寄ってきた。

 

『プワァ!』

 

『フム、幼年期の段階では、まだシスタモンの幼年期の頃と同じ姿か。第二子トコモンよ、貴様も我々に近付けるよう、修行に励むことだ』

 

そう言い、ニセシャッコウモンはトコモンを撫でた。 

『プワァ~!』

 

…あいつもデジモンを撫でたりするのか。

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