…
~ケン視点~
ニセシャッコウモンの演説が終わった。
ニセシャッコウモンは、デジタルゲートから出ていこうとしている。
「ケンパイセン、この映像ってシュリモンが隠し持ってるデジドローンで撮影してるんっスよね?シュリモンであの土偶っぽいやつ倒せませんか?」
シンがそう言ってきた。
気持ちは分かる…シン。
だけどあの土偶は、おそらく中にAAAのデジドローンが入ってる。
「だからこそ!破壊しといてもいいんじゃないッスか!?」
…AAAのデジドローンに、ハックモンがマーカーを付着させてるのを覚えてる?シン。
今AAAのデジドローンを破壊すれば、デジドローンを再構築して復活させるまでしばらくの間活動不能にできるけども…
それは同時に、AAAの本拠地へデジモン伝送路を繋げる貴重な布石を失うことになる。
それを失ってまで、今ここでニセシャッコウモンを破壊するメリットはない。
「…そうなんスね。AAAのやつムカつくんで、一発おみまいしてやれないッすかね」
…今からそうするんだろう。
手駒を全滅させて。
「…なるほど」
ニセシャッコウモンがデジタルゲートから出ていった。
ええと、これからどうするんだっけ?メガ。
「このままシューティングスターモンの突撃を待っていると、集会解散した信徒達が散り散りになったり、飛行音を聞かれてターゲット逃げられたりする可能性がある。ドーガモンの力でAAAのデジドローンの立体映像を出し、合成音声で演説の続きをして、蛮族たちをこの場に引き留めるんだ」
メガがそう言うと、アクセスポイントからAAAのデジドローンの立体映像が出てきた。
ドーガモンが出したものだ。
実は一緒にドーガモンも出てきているのだが、「周囲の風景」の立体映像で身を隠している。
『あー、去るのは待て信徒達』
解散して去ろうとしていた信徒デジモン達はその声を聞き、足を止めた。
『今日はなんだか、お前たちの歌を歌いたい気分だ。なんでもいい、何か音楽を演奏してくれないか?』
その言葉を聞いた信徒達は、嬉しそうな顔をして、いっせいに何かの歌を歌い始めた。
『オオ~♪我ラ信徒~♪天使ノ加護ノモトニ~♪大地ノスベテヲアマネク照ラス~♪』
どうやら讃美歌のようだ。
骨でできた打楽器を打ち鳴らして、音楽を奏で始めた。
なるほど、音楽を奏でることに夢中にさせることで、シューティングスターモンの飛行音を聞こえなくして、危機の接近に気づかせないようにするのか。
…合理的ではあるが、メガも大概だな。いろいろと。
やがて、上空から飛行機のような音が近づいてきた。
音楽を夢中で奏でている信徒達には聞こえていないようだが。
…こちらの映像でも、シューティングスターモンの影が確認できたぞ!メガ!
「よし。ドーガモン、撤退だ」
メガが指示を出すと、AAAのデジドローンの立体映像は突如消えた。
ドーガモンもアクセスポイントから撤退したようだ。
信徒達は、相変わらず音楽を奏で続けている。
すかさずパルタス氏が号令を出した。
『やれ!シューティングスターモン!出力100%!クラスターボムも同時に放て!!』
上空のシューティングスターモンは、自身の周囲に無数のエネルギー弾を展開した。
そして…
広場の中央に、ジェット噴射しながら勢いよく落下してきた!
シューティングスターモンが、広場のど真ん中に直撃する!
凄まじい衝撃音が鳴り響き、土砂が抉れ、衝撃波と熱波が広がり…
広場に残って歌や音楽を楽しんでいた数多くの信徒デジモン達が、吹き飛ばされ、こなみじんに砕け散った。
続いて、上空に浮いていた無数のエネルギー弾が、シューティングスターモン着弾地点から放射状に飛んできた。
これは…
まるでクラスター爆弾!
最初の爆発で危機に気づいた信徒デジモン達は、楽器を捨てて逃げているが…
次々とエネルギー弾の空爆に巻き込まれて吹き飛んでいく。
『はぁっ、はぁっ…!』
シスタモンは、よろめくキンカクモンを肩に担いで逃げている。
足元にはトコモンもおり、一緒に逃げている。
身分が高いシスタモンはいちばん真ん前で歌ってそうなイメージがあったが、意外にもそうではなかったようだ。
空爆の範囲は、どんどんシスタモンたちへ近づいていく。
そして、シスタモンたちに空爆が命中しそうになったとき…
キンカクモンは、シスタモンとトコモンに後ろからとびかかり…
二体に覆いかぶさった。
…我々にこの映像を中継しているデジドローンを抱えたシュリモンは、そのタイミングで、デジタルゲートから退避し、空爆から避難した。
ゲートを潜ったシュリモンは、ビオトープで待機している。
そして1分が経過したころ、パルタス氏から通信が入った。
『シューティングスターモンによる空爆が完了した。続いて、ティンクルスターモン&ピックモンズによる残党狩り兼食料収集を開始する。シュリモン、お前も手伝え』
そう言われたので…
シュリモンはデジタルゲートから出てきた。
…信徒の住処だったジャングルは、辺り一面が焦土と化していた。
着弾地点の広場には深いクレーターができており、その周囲1kmほどが、ほぼ生物の痕跡がないほどにメチャクチャに破壊しつくされていた。
シューティングスターモンは、深さ10mほどのクレーターのど真ん中で、土砂に埋もれていた。
『アァーーーーーハラヘッタァーーーー… ブカドモヨ オレサマノタメニサッサトメシヲアツメロォーーーー…』
焼けこげた木々が根元から引っこ抜けて、散乱している。
バラバラになった信徒デジモン達の、焼けこげた肉片が散らばっている。
シューティングスターモンの激突、およびエネルギー弾は焼夷弾ではないため、直接炎を出して木々や信徒デジモン達を燃やしたわけではない。
放たれた熱エネルギーが凄まじいため、その熱波によって焼かれたのだ。
中には瀕死の状態で生き残っているデジモンもいる。
グロットモンが、全身に火傷を負いながら、地面に倒れている。
腹部に折れた木の枝が深々と突き刺さっており、飛んできた土砂で全身を貫かれているようだ。
『ヒィー… ヒィー… テンシ…サマ… ダズゲ、デ…』
そこへ、ティンクルスターモンが回転しながら飛んできて…
グロットモンの頸動脈を深々と切断した。
『ゴボッ!ガボボ… セッガグ… シンガシタ… ノニ… ゴポッ…』
ティンクルスターモンは、次々と瀕死の信徒デジモン達にとどめを刺していく。
苦痛にあえぐ絶叫や、命乞いの言葉が、ひとつひとつ消えていく。
クルエは震えながら画面を見ている。
「あ…あぁ…っ。私たちが…やったんだよね…?これを…!う、うぷっ…!」
クルエは口を手で押さえ、駆け出すように部屋から出ていった。
シンはうつむいている。
「…こうなるって分かっててやったんスよね、俺ら。作戦に成功したのはよかった。でも…思った以上に…地獄っスね」
カリアゲは涙を流しながら、悲惨な光景を目に焼き付けている。
「くっ…うっ…!ごめんっ… ごめんっ…!人間の都合で…こんな…!でもッ…こうするしか無かったんだッ…!」
メガはただただ驚いている。
「嘘でしょ…?単独の成熟期デジモンが、一度の攻撃行為でこんな広範囲を、ここまで徹底的に破壊しつくせるものなのか…?破壊力は間違いなく、これまで観察してしてきたレベル5を超えている…!」
リーダーは険しい表情で現場を観察している。
「攻撃力もすさまじいが、シューティングスターモン自身の耐久力も驚異的だ。あんな勢いで地面に衝突したら並のデジモンなら自身の攻撃力によって粉々に消し飛ぶだろう」
そして、信徒デジモンの住処の跡地へ…
スティングモンが飛んできた。
『シェイドラモンが、これを…。本当に滅ぼしたのか、信徒を…!素晴らしいぞ、我が子よ…』
スティングモンは、周囲をきょろきょろと見まわし、何かを探している。
シェイドラモンを探しているんだろうか…?
カリアゲが口を開いた。
「探してるのは、たぶん… バブンガモンの死体だよ」
…そうだったね。
ゴーサインを出したのはスティングモンだった。
せめて友の亡骸を葬ろうと、やってきたのだろうか。
やがて、スティングモンは何かを見つけた。
それは、地面にうつ伏せに倒れているキンカクモンだった。
焼けただれた背中に木片や、硬く尖った岩がいくつも深々と突き刺さっている。
どう見ても死んでいる。
…あれほどの破壊力の空爆を食らっても尚、死体が原型をとどめているあたり、キンカクモンはそうとう頑丈なデジモンだったといえるだろう。
だが、そのキンカクモンの死体が…
ちょっと動いた。
警戒するスティングモン。
キンカクモンの下から声がした。
『ゲホ、ゲホッ…!あ、ああ… キンカクモンさま…!』
『プワァ…ッ!』
…シスタモンとトコモンだ。
親がかばったおかげで生き延びたのか。
キンカクモンが動いたように見えたのは、その下に隠れていたシスタモン達が起き上がったからだ。
それを見たスティングモンは、腕から鋭く長い針を伸ばす。
『生き残りがいたか。詰めが甘いぞ、シェイドラモンよ』
スティングモンは、シスタモンにとどめを刺そうと詰め寄る。
…その時。
突如飛んできた火炎弾が、スティングモンの頭部に命中した。
『ぐあぁッ!…なんだ!』
スティングモンは、火炎弾が飛んできた方を振り向く。
そこにいたデジモンは2体だ。
一体は、シマユニモンに翼が生えたような姿をしている、天馬のようなデジモン。
そして…
『グサグサ… ナンダ、コレハ…! オレノカゾクニ…ナニヲシタ!』
全身が岩のような甲殻で覆われたヒヒ型デジモン。
バブンガモンであった。
『…生きていたか、バブンガモン』
『グサグサ、コレハナンダト…キイテイル!』
『セキュリティチームとやらがやったそうだ。そして、我が子がな』
『…オレノ!カゾクタチガ!!シンダノカ!!ミンナ!!!』
『生き残りもわずかにいるようだな。そいつ含めて』
スティングモンは、上半身を起こして震え、涙を流しているシスタモンと、トコモンの方へ視線を向ける。
『ひっ… ひぃぃっ…!』
『プワァ…!』
バブンガモンは激昂する。
『セキュリティチーム…ナンダ…ソイツハ!オマエノ…シリアイカ!?オマエノ!サシガネカ!グサグサ!!』
『そうだ。私と信徒達は、もともと殺しあう仲だった。お前も知っていたことだろう、バブンガモン』
『ワカッテハ…イタ!イタガ!コンナコトガ!アルカ!!!ウガァア!!』
『私は去る。そいつにとどめを刺してからな』
スティングモンは、腕から出た長い針をシスタモンへ突き出そうとするが…
バブンガモンがそれを弾いた。
『ウガアァ!!オレノ!カゾク!!!コレイジョウ!!コロサセナイ!!!』
『バブンガモン…私は知っているぞ。信徒達はお前を見下し、虐げている。元リーダーのお前を。その行為を人間達の言葉では「差別」と呼ぶそうだ。貴様にそんなことをした奴らなど、もう護らなくていいのではないか!』
『ドウッテコトナイ!!オレノカゾクガ!!ゲンキナラ!!オレハイインダ!!!』
『…バブンガモン。お前自身が我々の村に侵攻しなかったから目をつぶっていたが…。貴様の家族とやらに我々の村民は随分と命を奪われたぞ。私がその復讐をしたがる気持ちは分かるだろう』
『ワカッテル!!ダガ!!コレイジョウ!!!カゾク!!シナセナイ!!!』
縞々が無く、翼が生えたシマユニモンの亜種… 仮称ユニモンは、シスタモンとトコモンを自身の背に乗せた。
『タスケテクレルの…?バブンガモン…。ワタシを…?』
『サッサトイケ!シソンヨ!』
『アリガトウ…!イマまでゴメンナサイ!』
シスタモンとトコモンを乗せたユニモンは駆け出そうとする。
そこへ…。
『行かせねえよ!!』
何者かがやってきた。
…フレイドラモンだ!
『スティングモン!あいつはオイラがやっつける!』
フレイドラモンは、シスタモンとトコモンを背負ったユニモンを追跡しようとしているようだ。
『グサグサと呼べと言っている!我が子よ!わかった、頼むぞ』
スティングモンがフレイドラモンにそう返事をすると…
バブンガモンが、フレイドラモン&スティングモンとユニモンの間に割って入った。
『ウガアァァ!!!カゾク!!!イキノコリ!!!シナセナイ!!ゼッタイニ!!!』
ユニモンは、全速力で地を駆り、走り去っていく。
『そこをどけえぇ!!』
フレイドラモンは、バブンガモンを躱してユニモンを追いかけようとする。
バブンガモンがフレイドラモンを通せんぼしようとするが…
スティングモンが、腕の張りでバブンガモンを攻撃した!
それを受け止めるバブンガモン。
『我が子シェイドラモンよ!私がバブンガモンの相手をする!お前はあれを仕留めろ!』
『ああ、わかった!』
フレイドラモンは、スティングモンのおかげでバブンガモンの通せんぼをかいくぐり…
ユニモンの追跡を始めた。
農園の二大リーダーの一人、スティングモン。
信徒の元リーダー、バブンガモン。
その二体が対峙する。
『イチドダケイウ、グサグサ。カエレ』
『断る』
『ソウカ。ナラバオワカレダ。オマエトウタッテ、オドッタコト…タノシカッタ』
『ああ。私も楽しかった。お前と酒を呑み交わす友になれたことを、私は後悔していない。さらばだ友よ!』
『オレモ、コウカイシテイナイ。イクゾ…コロシテヤル!トモヨ!』
スティングモンとバブンガモンは、激しく衝突した。
この映像をデジドローンで撮影しているシュリモンは…スティングモンとフレイドラモン、どちらのアシストをすべきだろうか?
リーダーが口を開いた。
「シュリモン!フレイドラモンと共にユニモンを追え!AAAは、人に似たデジモンを育てて何かをする気だ!その最先端であるシスタモンを、絶対に生かしてはおけない!」
『わかった!』
デジドローンの映像から察するところ、シュリモンは足をバネのようにしてびよーんと高くジャンプし、バブンガモンを飛び越えたようだ。
器用だな!パルモンが進化した成熟期のシュリモンは。
後ろで激しい衝突音が鳴るのを聞きながら…
デジドローンは、フレイドラモンと、その奥にいるユニモンの姿を捉えた。
ユニモンは、さすが走行に特化した馬の姿をしているだけあって…
スピードがとてつもなく早い!
どんどん差を離されていきそうだ。
成長期以下とはいえデジモンを背に二体も乗せているのにあんなスピードを出せるなんて、尋常じゃない。
単純なスピードでは、フレイドラモンやシュリモンを大きく超えている。
やみくもに追いかけていては追い付けないぞ…!