いや、本当にスピードに差がありすぎる。
距離をどんどん離されていく。
シュリモンは手裏剣を投擲したが、射程範囲外のようだ。
フレイドラモンはシェイドラモンに変形し、粘着糸を飛ばすが、まったく届かない。
シュリモンに抱きかかえられているデジドローンの視界に映るユニモンの姿は、どんどん小さくなっていく。
このままじゃ逃げ切られる…!
どうすればいいんだ!
「あ…」
クルエが急に声を出した。
どうしたの!?
「いや…言っていいのかなコレ…」
言え!
「…ドーガモンで、AAAの声出せば止まってくれるんじゃない?」
おお!ナイスアイデア!
さすがクルエ!ろくでもないアイデアを出すことにおいてはチーム一だ!
「…あんま言いたくなかった…」
ドーガモン!頼む!
『出番ガ ネーノカト オモッタゼ イクゼ!』
スピーカーは、シュリモンが抱えている我々のデジドローンについている。
ドーガモンは、AAAの声で叫んだ。
『止まれシスタモン!ユニモンを止まらせろ!そうすればこの追手共を倒せる!私を信じろ!』
さあどうなるか…!?
ユニモンは…。
…だめだ、止まらない!!走り続けている!
デジドローンのスピーカー音量では小さすぎて、あの距離を蹄で地を鳴らして走っているユニモンや、それに乗っているシスタモンには聞こえてないんだ!
まさしく馬耳東風である。
くそ…もう追い付けないのか…!?
『オレたちの でばんは ねーのか?』
『ガッチモンどの 拙者たちは 平和利用デジモン 致し方ないことで ござる』
…!
ガッチモン、ナビモン!
そうか、こいつらがいた!
アプリンクしてくれるか!?
『どうしたんだ?いいけどよ』
『やるでござる!アプリンク!』
これで、現在研究室のサーバーで待機中のガッチモンとナビモンは、機能をリンクした。
「検索」と「ナビゲート」を組み合わせて、同時に行えるようになったのだ。
カリアゲが、訝しげな見ている。
「なあ…やっぱりそいつら合体しないの?アプ合体、みたいな感じでさ」
メガが無理だって言ってただろ!
こんなときにふざけたこと言ってんじゃないよ!
「うん…ん-…俺が間違ってるのか…まあいいや」
『それでどうするんでござるか?』
追い付けないなら…
待ち伏せをする!
ナビモン!
今までのユニモンの走行ルートから、これからの逃走ルートを予測してくれ!
そしてガッチモン!
ユニモンの予測逃走ルート付近から、デジタルゲートを開けそうなアクセスポイントを検索して!
『わかったでござる!フン!ルート予測!』
リーダーが頷く。
「なるほど。いくらユニモンが逃げようとも、逃げた先のアクセスポイントからデジタルゲートを開き、そこから新たな追手を出せば差を縮められる!それで誰を向かわせるんだ?」
そこなんですよ。
正直、今の我々の手持ちでは、ユニモンを止められるデジモンがいない。
力の弱いマッシュモンとチビマッシュモン達や、オタマモンでは、蹴りとばされてしまうし。
ケンキモンとその中身のクラフトモンは絶対安静の療養中だ。
トコモンにはもちろん無理。
…パルタスさん!スターモンを出せませんか!?
『スターモン!?今はキウイモン島をジオグレイモンと共に攻めている!無理だ!』
えぇ!?
前に聞いた話では、ジオグレイモン?が単体で作戦をやるんじゃないでしたっけ!?
『作戦前に予行演習で別の任務をさせたが… 戦いになると頭に血が上って無差別に破壊してしまう!単体での任務遂行は無理だ!ゆえにスターモンをつけた』
ほ、他に出せるデジモンはいませんか!?
『…いない』
出せないデジモンはいるんですか!?
『秘密だ』
…うぅ、ジャスティファイアからは戦力を呼べないか。
待ち伏せ作戦をしようにも、待ち伏せをするデジモンがいない…!
カリアゲが驚いた声を出している。
「ん!?あれ!?フローティア島を見たら…トコモンが進化してる!」
クルエがカリアゲの席のディスプレイを覗いて、いっしょに驚いた。
「ほんとだ!可愛い!」
トコモンが!?成長期に!いつの間に!!?
で、出れるか!?
「いや、ケン… 進化したトコモン、あんまフィジカル強くなさそうだから、ユニモンを止めるのは無理だと思うぞ…」
だめか!!
「んお!?ふぁ、ファンビーモンのデジタマが!?な、なんだ… トコモン…じゃなくてその進化形態!そいつをとりあえずデジタルゲートの前へ連れていけ!」
え!?何!?
今度は何が起こったの!?
「ファンビーモンのデジタマがひとりでに動いた!」
まさか…デジタマモンと同じ現象か!?
『ディープサーチ完了!もう十秒後に、ユニモンはこのアクセスポイントに来るぞ!どうする!?』
ええい、いちかばちかだ!
進化したトコモンと、ファンビーモンのデジタマを!ゲートから出してくれ!
「ケン!そういうのはやけくそっていうんじゃねえのか!?ええい、だけど他に方法がない!いけ!ええと、名前は…」
カリアゲが悩んでいる。
「悩んでる場合じゃないでしょカリアゲ!私が名前を付ける!」
「お、おお!頼むクルエ!」
デジドローンからは遠くてよく見えないが…
デジタルゲートから、なにかデジモンが出てきた。
人型のシルエットをしているようだ。
「いっけー!ティンカーモン!」
ティンカーモン…それがトコモンが進化したデジモンの名前か。
遠くて姿が見えないが、頑張れ!
ティンカーモンは…
ファンビーモンのデジタマを抱えたまま、こっちに向かって飛んできた!
…うん、ごめん。
やっぱ成長期なりたててユニモンを止めるのは無理だよね。
しかし、ファンビーモンのデジタマを持ってきてどうするんだ?
やがて、バテかけながら全力疾走しているフレイドラモンのところへ…
デジタマを抱えたティンカーモンが来た。
おお、人間そっくり… というか、ほぼ人間みたいだ。さすがシスタモンの姉(?)。
それに蝶のような翅が背中から生えている。
人間というか… 妖精?に近いな。
『コレを!』
ティンカーモンが抱えたデジタマは…
飛び跳ねて、フレイドラモンにぶつかった!
おお、な、何をするんだ…!?
フレイドラモンと、ぶつかったデジタマは…
同時に光り輝いた。
そして、ふたつのシルエットが混ざり合った。
やがて、シルエットから何かが飛び出てきた。
…これは…
炎の紋様が刻まれた、デジタマのような形状の物体。
『勇気のデジメンタル』が小型化したような物体だ。
なんだ?
なんでフレイドラモンが、ファンビーモンのデジタマと混ざり合ってから…
小さい勇気のデジメンタルが飛び出たんだ!?
やがて、光が止むと…
そこには、フレイドラモンでもシェイドラモンでもない姿のデジモンがいた。
…四足歩行の獣型の体型になったブイモンが、全身に黒い装甲を纏ったような姿。
額からは、イナズマの形をした刃物のツノが生えている。
な、なんだ…
何が起こった!?
獣型の形態になったブイモンは…
突然叫んだ。
『うるっせえええ!!!ファンビーモン!!!すこししずかにしろ!!!!』
ど、どうした!?