デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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奇跡VS…

ど、どうしたブイモン!?

 

『ファンビーモンのやつ、あたまのなかでうるせえんだ!はやく狩れ、仕留めろ、殺せ、食わせろって!わかってるっつーの!』

 

そ、そうか。

 

『わーったって!今追い付くから黙ってろ!うおおおお!!』

 

四足歩行型形態のブイモンは、全速力で走りだす。

うおお速い!フレイドラモンよりもずっと早い。

ユニモンとの距離がちょっとずつ縮まっていく…か…?

 

…いや!縮まらない!!

これでもまだユニモンの方が速い!!

デジモン2体を背中に乗っけておいてなんだこの走力は!?

 

それでもまあ、フレイドラモンの時より差の広がり方はマシになったな。

四肢の獣の形質を、ファンビーモンと融合したドリモゲモンのデジタマから引き出したのだろうか。

『くらえええ!!おりゃああ!』

 

おおっ!?

獣型形態のブイモンは、頭部のツノから放電攻撃を繰り出し、ユニモンへ浴びせた!

『ヒヒィィン!?』

 

電気ショックを浴びたユニモンは、一瞬体が硬直した。

すごい…電撃攻撃までできるのか!

でもなんでだ?

 

リーダーが画面を見ながらつぶやく。

「ドリモゲモンの頭部のツノは…もともとは放電器官だったのかもしれない。その電気をドリルに供給して回転させ、地面を掘れるように進化したのがドリモゲモンなのではないだろうか」

 

な、なるほど…。

現在のドリモゲモンから退化している放電能力を、先祖返りによって獲得したということか。

 

なら、新しい形態のブイモンの姿を…

ライドラモンと名付けよう!

 

一瞬硬直したユニモンは、スピードを出して走っていたため転倒しかかっている。

この間に距離を縮められるぞ!

 

ライドラモンは、二撃目の放電を浴びせようとするが…

 

『ダメ!ユニモンは、ワタシが!マモる!』

そう言い、シスタモンは杖を構えると…

自身とユニモンを光の膜で覆った。

 

ってか、ほんとにユニモンって名前で合ってたんだ。

AAAとネーミングセンスが一致したみたいで気色悪いけどまあいいや。

 

『くらええ!』

ライドラモンは、再度放電攻撃を放つが…

シスタモンが張った光の膜が、電撃攻撃を弾いた。

 

ば…バリアか!

シスタモンのやつ、戦闘能力がなさそうだと思ってたら、防護に特化していたのか。

 

しかし、成熟期相当のデジクロス体の放電攻撃を弾くとは、かなりの耐久性能だ。

成長期にしてはかなりやるな、あいつ…。

ティンカーモンもああいうことはできるんだろうか。

 

そうしていると…

突如、デジドローンが映している映像がガタついた。

『ぜはっ、ぜはっ…も、もうだめ、はしれない…』

シュリモンの声だ。

 

デジドローンの映像が揺れ、ライドラモンたちからどんどん引き離されていく。

どうやら全力疾走し続けていたシュリモンの体力の限界が来てバテたようだ。

シュリモンは立ち止まって、ぜぇはぁと荒い呼吸をした。

 

…バテはしたが、シュリモンは決してフィジカルが弱いデジモンというわけではない。

我々のサーバーのシステムが、先日の侵攻で破壊されてしまい復旧中であるため、まだシュリモンの筋肉のデータを解析したりはできていないが…

おそらくシュリモンの筋肉は、ほとんどが『白筋』だと推測される。

 

筋肉には、赤筋と白筋の二種類がある。

赤筋は、ミオグロビンという酸素を蓄えるタンパク質を大量に含んでいるため、長時間力を発揮するスタミナがある。

しかし血中の栄養素を分解してエネルギーを得るのが若干遅いため、瞬発力やパワーは劣る。

 

一方で白筋は、ミオグロビンがほぼ無いが、パルブアルブミンというたんぱく質がある。

これは血中の糖分を分解することで、瞬時に大量のエネルギーを生成できる。

だから瞬発力やパワーはあるが、スタミナが劣る。

 

馬などの長時間走り続けることが得意な動物は、筋肉のほとんどが赤筋だという。

 

シュリモンがバテるのが早かったのは…

瞬発的な戦闘能力に特化しているが故のトレードオフといえるだろう。

 

『まてー!』

『ヒヒィイン!』

ユニモンとライドラモンは、そのままシュリモンが抱えるデジドローンが視認できないほど遠くまで走り去っていった。

 

『ぜーはー…ごめん、ケン…』

…気にしないで、シュリモン。

全速力で追い付こうとはしなくていいさ。

一息ついたら、シュリモンが無理のないペースで、まっすぐ進んでみよう。

 

きっとライドラモンは、うまくやってくれるはずだ。

 

…しばらくして、シュリモンが体力を取り戻してから。

ジョギングくらいのペースで進んでいると…

 

何かが見えてきた。

 

『はぁ、はぁ…』

ブイモンとデジタマモン。

そして、大きな黒いピーナッツのような形をした物体だ。

 

ブイモンは地面に座って、険しい表情をしている。

デジタマモンも、地面に座っている。

 

…ユニモンとシスタモンの姿は、そこになかった。

 

『…ケン…』

お疲れ、ブイモン。

 

『…ちくしょう…にげられちまった、ちくしょう…!』

 

何があったの?

 

『なんぱつか、デンキをくらわせて、バリアをやぶれたんだけど… ユニモンのやつ、そらとびやがった』

 

空を…!?

 

『うちおとそうとおもったけど…とどかなかった』

 

…追跡失敗か…?

いや、まだだ…

ガッチモン!かつて沼でシャコモンの殻を探したように、周囲からユニモンとシスタモンを検索してくれ!

 

『やってみる!』

 

ガッチモンは、一度さっきティンカーモンが出てきたアクセスポイントにデジタルゲートを開き、そこからデジタルワールドに出たらしい。

そして、検索を行った。

 

『…みつからねえ』

 

だ、ダメか…!?

 

『オレのけんさく、じめんから情報をとってくるから… そらとんでるやつはみつけられねえみてーだ』

 

…。

逃げられた。

 

『わりい、ケン…。オイラ、しっぱいしちまった…』

 

その時。

パルタス氏から連絡が来た。

 

『貴様ら喜べ!上を必死に説得した結果、我がジャスティファイアの最終撃滅部隊…「天地人」の一部に出撃許可が出たぞ!』

ぱ、パルタスさん…。

 

『さっきのデジタルゲートで待ち伏せすればいいんだな!?』

 

…その地点はもう過ぎました。

シスタモンには逃げられてしまいました。

 

『…逃げ延びさせてしまったか。確実に仕留めておきたかったな』

 

…。

我々は、できることを全てやったはずだ。

ベストを尽くしたはずだ。

 

二足歩行のフレイドラモンでは追い付けない猛スピードのユニモンに、引き離されそうになった時…

奇跡のような出来事が起きて、ブイモンはライドラモンとなった。

 

四足歩行になり、飛び道具を獲得した。

この状況で最も欲しい形質を手に入れた…それは間違いない。

 

だが、それでも尚。

我々が起こした奇跡を…

ユニモンとシスタモンが積み重ねてきた力が、上回ったのだ。

 

『ジョーカーたった一枚が舞い込んだだけでは、ゲームには勝てない』…。

AAAがかつて言った言葉が、身に染みて理解できた。

 

『どうしよう、ケン…』

 

悔やんでいても仕方がない。

スティングモンとバブンガモンが戦っているであろう地点へ戻ろう。

 

途中にあったアクセスポイントのとこまで戻れば、そこからデジタルゲートを開いて、集落跡地まで戻れる。

 

『…そっか』

 

我々は最後の詰めに失敗した。

だが…

失敗して終わり、じゃない。

戦犯探しをして誰かに責任を押し付けて責めたり、「次は頑張ろうね」と励まし合っても仕方が無い。

 

我々のチームの誰かに悪気があったわけじゃないし…

今回だって最大限頑張ったのだから。

 

我々は研究チームだ。

研究とは、いつも失敗し、振り返り、学んで進んでいくものだ。

 

事が済んだら、失敗を分析し…

どうすれば良かったか。次に成功するにはどうすればいいか。

それを考えていこう。

 

今回は敗けたとしても…

次こそは勝つために。

 

 

 

 

…ブイモンとデジタマモン、シュリモンが、デジタルゲートを通じて集落へ戻ると…

大きな衝突音が聞こえてきた。

 

何か大きなものが飛んできて、地面を転がった。

それは…

 

『ぐっ…うっ…!』

全身の甲殻が痛々しくヒビ割れ、右腕がへし折れた、血まみれのスティングモンだった。

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