デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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糸の要塞

さて。

とりあえず、未調査のキノコを食べさせずに済んだところで、我々は要塞の奥へと進んだ。

 

四輪型ドローンは床を走れないので、コマンドラモンに背負ってもらった。

 

私はドローンから顔と上半身を出し、進みたい方向を指差す。

 

するとコマンドラモンは、私が指差した方向へ進んでくれた。

 

フローラモンは、あちこち散策したがっているようだが…

先程の一件でちょっと申し訳ない気持ちになっているのか、我々についてきた。

 

カビ要塞の中を進んでいると…

何かがいた。

 

キノコから手足が生え、顔がついたような姿をしたデジモンだ。

おそらく成長期だろう。

 

キノコ型デジモン…命名マッシュモン。

 

マッシュモンは我々に気付くと、こちらを訝しげに観察してきた。

 

警戒しているようだ…。

 

なにもこちらから攻撃する必要はない。

安全を確保して警戒した。

 

いざとなれば、デジモンキャプチャーで逃げれる。

 

「幼年期しか捕獲できない」というのは、「仮に暴れられても、幼年期ならマシンアームで押さえつけて鹵獲できる」という意味だ。

 

捕獲対象が、もしも一切暴れなければ…

ゲートに自ら入ってもらえれば、小型の成熟期デジモンなら回収できる。

モリシェルモンみたいなデカい奴は無理だが。

 

 

しばらく様子を見ていると、マッシュモンは要塞の奥へ走っていこうとした。

 

私は、とっさにマッシュモンへとあるものを投げた。

 

それは、データマイニングによって生成したペレット…

キノコの餌になる原料である。

 

マッシュモンは、一瞬きょとんとした顔で、ペレットを見た。

 

マッシュモンはペレットを拾うと、恐る恐るこちらへ近付いてきた。

 

フローラモンとコマンドラモンは、じっと様子を伺っている。

 

私は、ペレットをデジドローンVRのマシンアームの手のひらから出してみせた。

 

するとマッシュモンは驚いたような表情をした後、大声をあげながら要塞の奥へと走っていった。

 

 

 

このカビの要塞を構成する菌糸は、毒がないようだ。

我々は要塞の奥へ進もうとした。

だが、この狭い迷路を進んだら、曲がり角で鉢合わせしそうだな…。

 

すると、コマンドラモンは、息を深く吸い込んだ。

なんとコマンドラモンの体表の色が、周囲と同じ色に溶け込んでいくではないか。

 

これには驚いた。

なんとコマンドラモンは、カメレモン同様に光学迷彩ができるのであった。

 

マジ!?

性能盛りすぎじゃないかコマンドラモン!?

 

だが、美しい花弁を持った目立つフローラモンがいては、隠れる意味がない。

 

…コマンドラモンが、壁を背にしてゆっくり進み、フローラモンには壁とコマンドラモンの間に隠れながら進んでもらうことにした。

 

うーん。さすがに無理があるな…。

フローラモンには、いったんゲートを通じてフラッシュメモリの中に帰ってもらった。

 

どこか適当なアクセスポイントが見つかったら、またそこから出てきてもらおう。

 

私は、コマンドラモンにドローンを持ち上げてもらいながら、慎重に要塞の中を進んだ。

 

 

 

やがて、マッシュモンの部屋らしき空間を見つけた。

 

床には粘菌が蠢いており、要塞の外からペレットを自動で運んできてくれるようになってるみたいだ。

 

部屋の中には、このパソコンにプリインストールされているピンボールやソリティア等のゲームがあった。

 

これで遊んでいるのだろうか…?

 

その時。

廊下の奥から、マッシュモンの声が聞こえた。

 

コマンドラモンは、部屋の中に隠れ、顔だけ出して廊下の様子を伺った。

 

やがて、マッシュモンの足音が近付いてくる…。

 

 

 

 

 

我々は目を疑った。

大量のマッシュモンが、一列に並んで歩いてきているのである。

 

マッシュモン達は不気味な歌を歌いながら、各自ペレットを右手に持って掲げながら行進している。

 

何体いる…?

すれ違うマッシュモンの数を数えてみた。

 

3, 4 5 6 7 8 …

 

 

…27体…

…まだいる!

 

馬鹿な!?

有りえない!

40体を過ぎても、まだいる!

 

こんなことはあり得ない!

事前にロジスティック方程式によって、個体数のシミュレーションを行ったが…

あれだけの短期間で、こんなに成長期デジモンが繁殖するなど…

あり得ない!!

 

 

成熟期デジモンは、一体でこんなハイペースにデジタマを産めないはずだ!

大量の成熟期デジモンが住み着いている…?

そうだとしたら、データマイニングで送ったペレットがあっという間に底をつくはずだ。

 

何故だ…

何故成長期デジモンが、こんなにたくさん増えているんだ!?

 

 

 

やがて、46体のマッシュモンが通り過ぎた後、ようやく列の最後尾となった。

 

コマンドラモンは、慎重に一本道の廊下の奥へと進んだ。

この先に、マッシュモン達を産んだ成熟期がいるのだろうか…?

 

やがて我々は、要塞の最奥へたどり着いた。

そこにいたのは…

 

 

 

 

…何もいない。

 

いや、何もいないわけではない。

 

いる。

 

…床から、成長途中の小さな小さなマッシュモンが、8匹ほど生えている。

 

 

なんだ、これは…?

幼年期デジモンか?

 

これを産んだ親は留守なのか?

 

私は小さなマッシュモンのデータを分析してみた。

 

…成長期デジモンだ、これは。

幼年期ほどのサイズだというのに。

 

コマンドラモンは、光学迷彩を解除した。

ぜぇはぁと激しく息を荒らげている。

 

どうやら光学迷彩はエネルギー消耗が激しいようだ。

疲れているコマンドラモンへ、私はデジタケを与えた。

 

よくやったよ。成長期なのに、ここまでよくやった。

 

…やがて、大勢のマッシュモンの足音が聞こえてきた。

先程の不気味な歌が近付いてくる。

 

マッシュモンの戦闘力がどれだけあるかは分からないが…

これだけの数だ。

今のこちらの戦力では、まともにやり合ったら歯が立たない。

 

どうするか…

もう緊急離脱して、デジモン達を避難させるか?

 

…できなくはないが、厳しいな。

かなりアクセスポイントから離れてしまった。

 

デジタル空間には、アクセスポイントという地点が存在する。

私が普段デジタルワールドへドローンを送り込んでいるのは、そのアクセスポイントである。

 

ゲートを開いたり閉じたりするのは、アクセスポイントがすぐそばにあれば一瞬でできるが、アクセスポイントが遠ければ時間がかかる。

 

以前、ディノヒューモン農園のフロッグモンからドローンを逃がしたときは、すぐそばにアクセスポイントがあったから一瞬でゲートを潜れた。

 

だが、今回はアクセスポイントからそこそこ離れている。

先程フラッシュメモリへフローラモンを帰したときも、ゲートを開けるのに70秒、閉めるのに20秒ほどかかっていた。

 

先程よりももっと奥へ進んでいるため、ゲートを開け閉めする時間はより長くかかるだろう。

 

今からゲートを開けるなら、開けるのに100秒、閉めるのに30秒はかかるだろう。

 

もしかしたら、仮にフラッシュメモリへ逃げ込むことはできても…

閉めるまでの30秒の間に、マッシュモン達がフラッシュメモリ内へ侵入してくるかもしれない。

 

マッシュモン達の足音と歌声が近づいてくる。

 

 

 

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