デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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平和と犠牲と

スティングモンが飛んできた方を見ると…

 

『フゥッ…フゥゥッ…!』

 

岩のような甲殻の隙間に、いくつもの刺し傷があるバブンガモンが立っていた。

 

す、スティングモン!負けたのか!?

ボロボロだぞ!大丈夫か!?

 

『グサグサと呼べと…言ったはずだ。私一人ならば、この結果は敗北だが…。お前達がいる。よって…私の、勝利だ』

どういうこと!?

スティングモンがそう言うと、バブンガモンは…

 

『オッ…ウグォォ…!』

がくっと膝をついた。

『シ、シビレル…ウゴケン…!』

 

こ、これは…!?

バブンガモンの動きが止まった!

 

『ぜぇ、ぜぇ…。私の針には、しびれさせる毒がある。信徒には、長く効かないが…』

スコピオモンから受け継いだ麻痺毒か!

 

『オマエ、タチ… シスタモンヲ、ドウシタ…』

 

…逃げられたよ。

ユニモンと一緒に飛び去って行った。

 

『…ソウカ。オレノヤクメ、ハタシタ。コロスナラ、コロセ』

バブンガモンは体の力を緩め…

地面に尻をついて座り込んだ。

 

スティングモンに殴り勝つほど強かったのか、バブンガモンは。

だが、体が麻痺しているのなら、仕留める方法はいくらでもある。

オタマモン(赤)で顔面に火炎放射を放ち、甲殻の隙間をシュリモンの手裏剣で突き刺す。

そうすれば確実に倒せる。

 

ど、どうする。

 

私がそう言うと、メガが口を開いた。

「どうするも何もないよ、ケン。とどめを刺さない理由がない」

メガ…。

「バブンガモン。君は僕たちを憎んでいるだろう、恨んでいるだろう」

 

『…ニクイ…。カゾクヲ、ミナゴロシニシタ、オマエタチガ。ニクイ、キライ、タオシタイ…』

バブンガモンは震えるような声で言う。

 

「この通りだよ、ケン。ここで見逃せば、きっとバブンガモンはAAAと共に僕らへ復讐をしようとするだろう。トドメを刺さないで放っておくメリットが何もない」

 

…。

 

「ただでさえシスタモンに逃げられたんだ。バブンガモンにまで逃げられたら不利になるだけだ。そうでしょ、ケン。とどめを刺そう」

 

その時。

 

「もう…いいだろ…」

カリアゲ…?

 

「もういいだろ!!!こんなこと!!!」

カリアゲが声を張り上げた。

 

「バブンガモン!!お前はAAA…じゃない、天使を!信奉していなかった!あいつに群れを乗っ取られて嫌だったんだろ!従いたくないんだろ!?」

 

『…テンシハ、ナカヨシダッタオレノカゾクタチニ、イジメヲツクッタ。アラソワセタ。ミンナ、アンマリ ナカヨシジャ、ナクナッタ』

 

「…なあ、みんな。シスタモンにはもう逃げられちまった…。もうバブンガモンを倒す意味なんてないだろ!?」

 

「…生かすメリットが何かあるの?カリアゲ」

 

「メリットとかそういうことじゃねえだろ!メガ!もうこんなの十分だろ!生き残ったバブンガモンまで殺して何になるんだよ!」

 

「ここで仕留めるメリットと、見逃すデメリットはさっき言ったはずだよ、メガ」

 

「…バブンガモン。家族を殺されてつらいだろ」

 

『アタリマエノ、コト、キクナ…ツラスギルニ、キマッテル』

 

「だけど今まで、オサオサやグサグサの村の住人達も、信徒デジモン達に殺されてきたんだ。おんなじことを、お前の家族たちもやってたんだよ、バブンガモン」

 

『…ウ、ウゥ…!』

 

「バブンガモン、お前はどうなんだ。グサグサを殺したくないんだろ?」

 

『…ウン…』

 

「グサグサ、お前だってバブンガモンを殺したくないだろ!」

 

『…降りかかる火の粉は、払わなくてはならない』

 

「でもお前を殺したくないって言ってるぞ」

 

『…ならば殺す理由はないが…』

 

「…ならもういいじゃねえか、バブンガモン…」

 

『デモ、オレハ、ダイジナカゾクノ、カタキ、トラナキャ、イケナイ…。ニクイ、オマエタチガ…』

 

「っ…それは…」

 

その時。

リーダーがマイクをONにした。

「バブンガモン。お前の家族は生きている」

 

『エ…』

 

「前に我々は天使の軍と戦った。その時、天使は信徒を、お前の家族たちを、ある島へ置き去りにしたんだ」

 

…そういえば、そうだった。

リーダーはドーガモンの力でAAAのデジドローンの偽物を作り、成長期蛮族たちとケンタルモンを騙して、離島へ島流しにしたんだ。

あいつら今どうなってるんだろ。

 

「もしも、ここですべての戦いを終わりにして…、二度と天使と組まないと誓えるのなら、そいつらと合わせてやる。残った家族と暮らせばいい」

 

『…イキノコリ、イルノカ』

 

「そうだ。だが、我々に復讐するというのなら…お前を仕留め、島流しになった信徒達も見捨てる。どうする」

 

『オ、オレハ、オレハ…!』

 

バブンガモンは混乱している。

 

カリアゲがマイクを握った。

「バブンガモン、お前は家族を護りたいんだろ…。戦いたいわけじゃないんだろ?」

 

『…ウ、ウウゥ、ゥウウ~~…!タタカイタク、ナイ…!タタカイタク、ナカッタンダ…!』

バブンガモンは、ぽろぽろと涙を流した。

 

パルタス氏が我々に通信してきた。

『何をやっている、リーダー』

 

「…こいつらにもう戦意がないなら、殺す理由はない」

 

『だが生かす理由もない!たとえバブンガモンに戦意が無くとも!せっかく島流しにした蛮族共の集団が生き残れば、AAAは必ずそいつらを洗脳してまた手駒にする!』

 

「そうならないようにバブンガモンが御すればいいだろう」

 

『できるわけがなかろう!こんな猿にシビリアンコントロールなど!バブンガモンがどう言おうが、あの狡猾な男はまたバブンガモンの家族を乗っ取るぞ!』

 

「…っ」

 

『恨みの滴はたった一滴残っただけでもヘドロを生み、我々に復讐をしに来る。唯一の回避策は、すべてを根絶してしまうことだ!』

パルタス氏がそう言ったとき…

クルエが口を開いた。

 

「いや、ひとつだけあるよ。バブンガモンの家族が、AAAに操られずに暮らしていける方法」

 

『なんだ?そんなものがあるわけ…』

 

「グサグサやディノヒューモンの村の一員になればいいじゃん」

 

『な…!?』

 

「バブンガモンだけで類人猿デジモンの群れを率いるなら、AAAに隙を狙われてまた支配されるかもしれませんけども…、でも、スティングモンやディノヒューモンみたいなしっかり者もいれば、きっと大丈夫じゃないですか?」

 

クルエの提案を聞いて、パルタス氏が答えた。

『クルエといったか。貴様の提案は、危険のない研究室で安全にくつろげる余所者だから言える絵空事だ。視点がマクロなままで理想だけを言い並べている。ミクロのレベルに視点が向いていない!』

 

「そうですか?」

 

『そうだ!ディノヒューモン村の民からすれば、蛮族共は兄弟や子を殺傷した集団だ。個人単位で晴れることのない恨みを抱いているに決まっている!そんな状況で和解できるのなんてマンガの中だけだ!』

 

「でも、バブンガモンとスティングモンは和解したがってるみたいですよ。きっと大丈夫ですよ」

 

『きっとだと?たとえ五分五分で和解に成功したとて、我々には何らメリットはない。だが和解に失敗すれば、せっかく滅ぼしかけたAAAの手駒が補充されかねない。得がなく損しかない賭けだ!そんなものなどやる意味がない!』

 

「うぅ…」

 

『バカな夢想などせず現実を見ろ。遊びではないんだ。失敗したときの被害は我々だけでなく守るべき市民に及ぶのだぞ。市民の安全を第一にするのが貴様らセキュリティチームではないのか!』

 

得なら…あります!

和解するメリットが!我々にも!

 

『なに…?』

 

今回、蛮族デジモンが集会をした直後にシューティングスターモンを撃ち込みましたが…

本当に、デジタルワールドの類人猿デジモンを、バブンガモンとシスタモン以外みな滅ぼせたとお思いですか。

 

『…全てではないかもしれないな』

 

そうです。

蛮族デジモンの集落には、被差別階級の身分のデジモン達がいた。

 

差別され虐げられた類人猿デジモンが、すべて虐げらながら集落に留まっていたとは考えにくい。

フーガモンのいる集落から離れたところに逃げ延び、AAAの支配から逃れた類人猿デジモンもいるはずです。

 

『…そうだな』

 

たとえ今一時、フーガモン集落を壊滅させたとしても。

AAAはそうしてフーガモン集落から散らばった類人猿デジモンを集めて、手駒を補充する可能性があります。

 

『ならばそいつらも滅ぼせばいいだろう!ガッチモンで探して、フレイドラモンで焼き尽くせばできるはずだ!』

 

暴力は恐怖を生みます。

溺れる者は藁をも掴む。

類人猿デジモンを探して虱潰しにしようとするなら、彼らは我々を恐れ、自らAAAに助けを求めるようになるのではないでしょうか。

 

そうすれば、AAAは生き残りの類人猿デジモンを今より容易に味方につけられるはずです。

 

『ならばどうするというのだ』

 

ガッチモンで類人猿デジモンを探すのは同じです。

しかし、生き残りの類人猿デジモンたちには、ジェノサイドの使者としてフレイドラモンを差し向けるのではなく。

対話の使者としてバブンガモンに出向いてもらいます。

 

そうして彼らをディノヒューモン農園の労働力として囲い込めれば、AAAの手駒が増えるのを防げます。

 

『…確実性がない。メリット足りえないな。やはり類人猿デジモンは滅ぼしてしまった方が安全だな』

 

メガが口を開く。

「パルタスさん、覚えてる?僕たちの社会には、デジモンを全て滅ぼしてしまえと言う人達がたくさんいる。クラッカーデジモンだけでなく、セキュリティデジモンや野生デジモンまでも」

 

『ふむ…そうだったなメガ』

 

「どう思う?パルタスさん」

 

『下らん。セキュリティデジモンはクラッカーデジモンだけでなく、一般のマルウェアの侵入を防ぐこともできる。それを滅ぼせなどと、まるで理解が足りていない』

 

「今のパルタスさんは、それと同じことを言ってますよ。あなたは、そして今までの僕は、無理解からくる恐怖に囚われて、怖がっていただけだ!」

 

『なんだと…』

 

メガ…!

 

「…どうして僕はこんな簡単なことに気付けなかったんだろう。僕は、デジタルアソートは…、元々デジモンの平和利用を目指し、人とデジモンが共存できる社会をつくっていこうとしていたのに」

 

『…怖がって何が悪い。市民がクラッカーの魔の手に脅かされる可能性を恐れない者に国防が務まるとでも?』

 

「もしも、バブンガモンとスティングモンが無事に共生できたら…、その映像を、僕達デジタルアソートのプロモーションとして利用させてもらうよ。デジタルモンスターは分かり会える存在だとアピールするためにね」

 

『…』

 

「世の中が平和で便利になることは!ジャスティファイアの望みじゃないのか!パルタス!」

 

『っ…』

 

 

本作に登場した人間キャラで好きなのはどのキャラでしょうか

  • ケン
  • メガ
  • カリアゲ
  • クルエ
  • リーダー
  • スポンサーさん
  • 岸部エリカ
  • 神木
  • パルタス
  • バンモチ
  • 小学校の先生
  • AAA
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