デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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真相・前

~時は遡り、シューティングスターモン発射直後… パルタス視点~

 

私の名は、コードネーム「パルタス」。

独立行政法人ジャスティファイアの所長だ。

 

現在はある任務の最中だ。

クラッカーAAAは、その悪質な手口と技術力の高さ、そして保有するデジタルモンスターの戦力の膨大さから、国家危機級の危険犯罪者とみなされた。

これだけ強大な戦力に本拠地を攻められたバイオシミュレーション研究所はよく奴らを撃退できたものだ。

 

AAAの配下は、デジタルワールドに巣食って増え続けている。

これらを排除しなければ国民達の命にすら危機が及びかねない。

よって国家防衛戦力である我々ジャスティファイアが動くことになった。

 

AAAの配下のうち蛮族と呼ばれる類人猿型デジモンが、集会をしていると報告を受けた。

そちらにはシューティング

スターモンと、ティンクルスターモン、ピックモンズを差し向けた。

シューティングスターモンの100%の火力を叩き込めば、集落の一つや二つなど造作もなく滅ぼせるだろう。

 

奴ら類人猿型デジモンは、高い知能と器用な手足を持った優秀なデジモンだ。

そのため、我々はずいぶんと前に、狩りの最中の蛮族デジモン…セピックモンを拉致して捕獲した。

 

現在そのセピックモンは、我々のサーバーの隔離チェンバーで、両脚と左腕を切断された状態で飼育されている。

強力なデジタマをコンスタントに確保し続けたいのなら、野生デジモンを拉致してこうやって産卵機能と最低限の生存機能を残して飼育し続けるのが1番効率がいい。

 

そうしてセピックモンから産まれた類人猿型デジモンは、極めて強力な戦力へ育ち…、最終撃滅部隊『天地人』の一角を担うまでに成長している。

 

その存在はもちろん秘匿している。

国家防衛組織が自らの戦力のすべてを堂々と晒す意味などないからだ。

 

…余談が過ぎた。

ようは、蛮族デジモンを滅ぼすことのデメリットは皆無ということだ。

せいぜいシューティングスターモンの餌として死骸を回収し、保存食になってもらうとしよう。

 

さて、シューティングスターモンの発射と同時に、我々はもうひとつのミッションに取り掛かった。

キウイモン島に巣食う蛮族デジモンの掃討である。

 

元々、キウイモン島に蛮族デジモンがいるという情報は、クロッソ・エレクトロニクスのクロッソ氏(バイオシミュレーション研究所のスポンサー)から聞いた情報だ。

 

作戦に前立って偵察のために、キウイモン島のアクセスポイントへデジドローンを送り込んだことがあったが…

デジドローンの視界は完全に闇に覆われていた。

 

バイオシミュレーション研究所と同様、AAAもまたアクセスポイントにセキュリティを施していたのだ。

おそらく青銅製の箱でアクセスポイントを密封し、合言葉を言うと待機しているシャーマモンあたりが箱を開けるという簡素な仕組みだろう。

 

これはごく単純だが、極めて有効なセキュリティ手段だ。

なぜならデジドローンが出てこれる最小限の空間を確保する小さな箱の中だ。それを破壊できるデジモンをその中に繰り出せないのである。

正直、我々のデジモンではこれを突破できない。

箱の中に出せるデジモンはせいぜいピックモン数体程度。その破壊力では青銅の箱は壊せない。

 

とにかく戦闘力を高めるためのスパルタトレーニングで、DPを極限まで高めるという我々の方針が逆手に取られたというわけだ。

 

もっとも、この路線が間違っているとはつゆ程も思わない。

なぜならデジモンによるサイバー犯罪は、とどのつまり暴力で反抗デジモンを排除してしまえば解決するからだ。

故にどれだけ膨大な維持コストがかかろうと、最上位の暴力装置となる最強デジモンを保有してさえいれば、最終的には解決できるということだ。

…そのコストを捻出できる我々だからこそ取れる手といえる。

 

さて…このセキュリティを突破するにはどうすればいいか?

 

それを解決する手段は、バイオシミュレーション研究所が提供してくれた。

つくづく心強い味方だ。

 

私はデジドローンを使い…

ある小さな物体を青銅の箱の中へ設置した。

そして一旦、デジドローンを回収した。

 

1分後に、再びデジドローンをアクセスポイントに送り込むと…

箱は見事に破壊されていた。

シャーマモンやコエモン達が、せわしなく喚き立てている。

 

簡単なことだ。

クラフトモンの進化前の姿であるコマンドラモンは、爆弾の備蓄を生産していた。

クラフトモンに進化した今でも、その備蓄が残っている。

 

その限りある備蓄のひとつを譲り受けて、箱の中へ放り込んだのだ。

 

やはりコマンドラモンは優秀なデジモンだ。

飼育二体目にしてこれを育て上げたバイオシミュレーション研究所には敬意を表する。

 

さて…これでデジモンを送り込み放題となった。

来い、スターモン!ジオグレイモン!

 

 

彼らを呼ぶと、アクセスポイントにゲートが開き…

二体のデジモンが現れた。

 

ボクシンググローブを装着した星型のデジモンはスターモン。

そして、親のグレイモンと叔父のグラウモンの特徴を併せ持った、大きな恐竜型デジモンであるジオグレイモンだ。

 

あの言うことをまるで聞かなかった制御不能のアグモンが、立派に育ったものだ。

もっとも、現在でも我々の命令を直接聞こうとはしない。

スターモンに懐いているようであり、スターモン経由でしか命令を聞いてくれないのだ。

 

ジオグレイモンはスターモンと違ってチャットの文字を覚えようとしないため、専らスターモンはボディランゲージでコンタクトを取っている。

だから単純な命令しかできない。

 

強い者の言うことしか聞かないということなのだろうか。

 

スターモン、作戦は単純だ。

今やるべきことは、捕らえられている(かもしれない)キウイモンの確保と、蛮族デジモンの殲滅だ。

 

基本は現場判断に任せる。

好きに暴れろ!

 

『ウイイイイッス ヤルゼエエエ!ウリャアア!』

 

スターモンはそう言うと…

両手を上空にかざした。

 

すると上空から、まるで流星群のように大量の隕石が降り注ぎ…

島の各地へ次々と降り注いだ。

 

『マズハ アイサツガワリダゼ』

…バカ!初手で無差別攻撃をかましてどうする!

おかげで敵の警戒度が高まったぞ!あちこちで悲鳴と絶叫が聞こえてくる!

キウイモンが巻き込まれて死んだかもしれんぞ!

 

『エー ダッテ ヤッテミテージャネーッスカ』

 

…エネルギーを大量に消耗する切り札はもっと考えて使え!

 

『ヘーイ』

 

…現場判断に任せようと思ったが、先が思いやられる。

やはり私が指示を出すことにしよう。

 

スターモンの異様な戦闘力を見たシャーマモン達は、悲鳴を上げて逃げ出していく。

…逃がすと思うか?

ジオグレイモン!火炎放射だ!

 

『…』

…何をボケっとしているスターモン!おまえに言ったんだぞ!

 

『エ?オレッスカ?ア、ソッカ。イケェ!ジオグレイモン!!!ブッコロセエェ!!』

 

スターモンがそう指示を出すと…

ジオグレイモンは、口を大きく開けてシャーマモンを追いかけ…

 

『ヴオヴォオオオアオオオオオオオオオオオン!!!』

背筋が凍るような咆哮を上げるとともに、口から火炎放射を放った。

逃げまどうシャーマモンやコエモン達が火の海に包まれる。

 

『アギャアァァァアアアアアアア!!!!』

シャーマモン達は5秒ほど火の中で悶え、すぐに倒れた。

あまりの高熱を浴びたため、即死したのである。

 

やがて火が消えると…

『ガウゥゥ』

ジオグレイモンは、焼けたシャーマモン達を食べていった。

いいぞジオグレイモン。そうやってエネルギー補給と攻撃を同時にやるんだ。

 

『オレモクウゼ!ムシャムシャ…』

…野生種のスターモンはあまり肉を食べないが、我々が飼育しているスターモンは肉を好んで食うように育ててある。

エネルギー補給はその分早い。

 

よし!

それではローラー作戦を仕掛けるぞ。

最終撃滅部隊「天地人」が一体、天のサンダーバーモンにデジドローンを運ばせ、上空から島を監視する。

そして我々は上空映像をもとに、生き残っている島民を効率よく滅ぼしていくのだ。

 

『ウワアアァァ!』

『タスケテクレエエェェ!!!』

『テンシサマアアア!!!』

二体の姿を見た島民デジモン達は逃げまどう。

スターモンは、高くジャンプすると、拳にエネルギーを纏わせて…

『スターナックルゥゥ!!!』

逃げるシャーマモン達めがけて、急降下しながら特大のパンチを放った。

 

『ウッギャアアアァァ!!!』

衝撃派で吹き飛んだシャーマモン達。

その破壊力は榴弾砲並みだ。

 

『次ィ!』

スターモンは、生き残りのシャーマモンめがけて飛び掛かる。

『コ、コウサン!降参ダ!!ミノガシテクレェ!!命ダケハァァ!!!』

 

残念だったな。命乞いをするには遅すぎた。

貴様たちは全員私刑だよ。地獄で罪を詫びるがいい!!

 

『スターパンチィィ!!』

スターモンの普通のパンチ。

『ゴプォオオオ!!』

バイクにはねられたかのように吹き飛んだシャーマモンは、首の骨が折れて息絶えた。

 

ふん…

どいつもこいつも逃げまどってばかりか。

かかってくる気概がある者はいないのか?

 

『キキィーーー!オレラノカゾク!マモル!テメェーーブッコローーース!!!』

おお?やっと成熟期がでてきたぞ。

セピックモンとジャングルモジャモン共か。

 

ジオグレイモン、やれ。

 

『ジオグレイモン!ヤッチマイナァーー!』

 

『ガオオゴォオオーーーッ!!』

ジオグレイモンは尻尾のスイングをセピックモン達に放った。

 

『キキィイーーー!!』

ふむ、素早いな。

ジャングルモジャモンやセピックモン達は、素早い身のこなしでジオグレイモンの尻尾スイングを躱した。

 

『コンドハコッチノバンダ!キキーー!!』

ジャングルモジャモン達はジオグレイモンに向かって、武器を掲げて走り出したが…

 

『ヴォオオオオオオオン!!!』

ジオグレイモンが放った火炎放射がジャングルモジャモン達を焼き尽くす。

 

『グオギャアアアア!!!テンシサマァーーー!!!』

そうしてジャングルモジャモンやセピックモン達は焼け死んだ。

 

…張り合いがないな。つまらん。

これでは一方的な虐殺だ。

まあ、無事に片付くのならそれでいいが。

 

…む?なんだここは。

サンダーバーモンが映す上空映像に、何か牧場のようなものが見える。

策で囲われた小屋だ。…家畜小屋か?

 

スターモン、その小屋を調べろ!

『アイアイサー!』

スターモンは高くジャンプすると、流星のようにエネルギーを纏ったキックで小屋に突撃し…

粉々に破壊した。

 

バカ!!

調べろと言ったんだ!壊せとは言っていない!!

 

『デモブッコワシタホウガハエージャネエッスカ』

キウイモンを生きたまま確保しろと言っているだろうが!!

中にいたらどうする!

 

『ア、ソーッシタネ』

…同じことを何度も言わせるな!

それで?中には何がいる?キウイモンはいるか?

 

『ドレドレ…』

スターモンが瓦礫となった小屋を調べようとすると…

『ピピーー!!』

何か小さなデジモン達が、小屋から一目散に逃げだした。

なんだこいつらは…?

 

…鳥の雛のように見えるが…どこか異様だ。

まるで鶏のから揚げのような姿をしている。

 

昔ファストフード店にあったメニューの「とりからボール」のようだ。

 

…見たところ、小屋の中に成熟期デジモンの姿は(生死問わず)存在しない。

キウイモンはいないようだ、よかった。

 

『ピーピー!ピィピィ!』

ともあれ、この逃げまどう雛デジモン、とりからポールモン達は…

逃げ足が遅い。

 

親はいないのか?どこだ?

鳥型デジモンということは、キウイモンの子孫に見えるが…

 

『ピ…』

む?

一羽のとりからボールモンが、動きを止めた。

 

『ピィ!』

なんと。

とりからボールモンはデジタマを産んだ。

 

…このデジモン、あからさまに幼年期デジモンのようだが…

デジタマを産むのか。

 

なんということだ。

鳥類デジモンは元をたどれば、我々が飼育しているジオグレイモンの親、グレイモンの子孫なのだ。

あの強大無比な大恐竜の末裔が、こんなに弱弱しくなるとは。

 

…キウイモンではないが、まあいい。

バイオシミュレーションの要望としては、野禽デジモンが有益な家畜になりえるから捕獲しろという話だった。

キウイモンが見つからなくとも、とりからボールモン共を持ち帰れば奴らは喜ぶだろう。

 

スターモン!こいつらを網で捕獲しろ。

『アイアイサー!』

 

スターモンは、サンダーバーモンが投下した網をキャッチした。

 

『ツカマエテヤルゼ!ダイジョーブ トッテ食ヤシナイ トッテ食ヤシナイ』

 

スターモンがそうやって、そろりそろりととりからボールモンに忍び寄ると…

 

『オオ、ォオオ・・・!』

…ジオグレイモンの狼狽した声が聞こえた。

 

ジオグレイモンは、とりからボールモン達を見て、明らかに動揺している。

その眼には、恐怖、憎悪、嫌悪、悲哀、憤怒…

様々な感情が伺える。

 

どうした!?

どうしたんだジオグレイモン!!!

 

『アンギャアアア!!オアアアア!!!』

 

これは…まさか。

ジオグレイモンはショックを受けているのか…!?

 

ジオグレイモンは単純なバカではない。こいつはこいつなりに物事を考えている。

アグモンだった時代に、親のグレイモンの映像を見せてみたところ、こいつなりに自分の親か親戚であることを察したのだろう、テンションが上がっていた。

 

勝手な想像だが…

ジオグレイモンは、目の前の弱弱しい家畜どもが、自分と血を分けた兄弟の末裔であることを本能的に察しているのだ。

 

誇り高き恐獣の、暴力と破壊を極めんとする血統が…

こんな無様な姿に貶められてしまったことを察してしまい、憐れみや嫌悪感などの大量の感情がごちゃまぜになっているのだ。

 

『アアアァ… アアァアーーーー!!!ゴアアアアア!!!』

ジオグレイモンは凄まじい怒号を発した。

地の底まで響き渡るような、恐ろしい声だ。

 

『ピ…ピピ…!』

とりからボールモンたちは、ぺたんと尻もちをつき、ぶるぶると震えながら泣いている。

あまりにも恐ろしすぎて、逃げまどうことすらできないようだ。

 

す…スターモン!

早く回収してやれ。さすがにそいつらが哀れだ。

 

『アイッサー』

スターモンがそう言ってとりからボールモン達へ駆け寄る前に…

 

『ガアアアアアウウウーーーーーーーーーーーッ!!!』

ジオグレイモンが、これまでにないほど凄まじいエネルギーを込めた、強大無比な猛火を口から放射した。

大地を薙ぎ払う火炎放射は、牧場を一瞬で火の海に変えた。

 

『ピイィィイーーーーーッ!!!』

とりからボールモン達は、一匹残らず炎の海に包まれた。

 

 

 

 

 

本作に登場した人間キャラで好きなのはどのキャラでしょうか

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  • クルエ
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  • 神木
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