家禽のとりからボールモン達は全滅してしまった。
別に滅ぼす必要性は全くなかったのだが…
覆水盆に返らず。まあとりからボールモン達を失ったところで、我々に損失は全くない。
なにか変なものを見た、という程度で流していいだろう。
だが、スターモン。
もしもジオグレイモンがキウイモンを見て同じことをしようとしたら、今度こそきちんと止めろよ。
『ウイーッス』
その後も、スターモンとジオグレイモンは派手に暴れまわり、島民デジモンを次々と仕留めていった。
だが派手に暴れまわるあまり、島民たちは大きな戦闘音が鳴っているところから距離を置いて逃げるようになった。
こうなると島民デジモンを滅ぼしきることは難しい。追い回しても逃げ隠れるのだから。
『ツカレテキタッス』
『フゥー…ッ フゥー…ッ』
スターモンとジオグレイモンは、だんだんと疲労が溜まってきている。
いかに戦いながら獲物を捕食しようとも、消化してエネルギーに変えるまでの間には時間がかかる。
筋肉に疲労も溜まってきていることだろう。
スターモン達は高いDPによって爆発的なエネルギー出力ができるものの、スタミナが長続きしないのが弱点だ。
だが、別にいい。
スターモン達のこういう特性も織り込み済みの作戦だ。
スターモン達に期待している真の任務は、島民を仕留めることそのものでなく、「キウイモン捜索」の方なのだから。
これほど派手に大きな音を立てて暴れまわれば、島民デジモン共は家禽のことなど構わずに逃げ隠れることだろう。
ゆえに、キウイモンを捜索するための障害が自分から去ってくれるのだ。
スターモン、島民デジモン共はすっかり怯えて逃げ回っているようだ。そいつらは今は追わなくていい。
隅々まで、島民以外のデジモン…キウイモンや、それ以外の家畜デジモンなどを探せ。
『ワカッタッス デモ 蛮族ドモ滅ボサナクテイーンスカ?』
それはシャンブルモンにやらせる。
貴様らが今やるべきことは、家畜デジモンがシャンブルモンの無差別攻撃の巻き添えにならないように捕獲して集めることだ。
『オッス』
その後、スターモンたちは島を隅々まで探し回った。
だがキウイモンはとうとう見つからなかった。
ここから既に移動させられていたか、既に食われていたのか、あるいは初手の隕石攻撃で押しつぶされて死んだのか。
その代わりに、別の収穫があった。
『パミ~!』
バクに似た姿をした成長期デジモン、バクモンである。それも4体。
こいつらはおそらくシマユニモンの幼体だ。
こいつらを捕獲して持ち帰れば、あの素早い走行と放電攻撃ができる便利なシマユニモンを我々が手にすることができる。
是非とも持ち帰らない手はない。
グレイモンは、バクモンたちに尻尾のスイングを放って仕留めようとしたが…
それよりも先にスターモンがバクモンたちを網で捕獲した。
…キウイモンの代わりにこいつらを持ち帰れば収穫になるだろう。
ご苦労だった、スターモン、ジオグレイモン。アクセスポイントからこちらへ帰投せよ。
『テゴタエナクテツマンネー… モットツエーヤツトタタカイタカッタゼ』
そうしてスターモンとジオグレイモンは帰投した。
二体を撤収させた。よし。これでもういい。
いけ、最終撃滅部隊「天地人」が一体、地のシャンブルモンよ!
『ハーイ』
デジタルゲートからシャンブルモンが出現した。
一見すると、頭部の模様が真っ白になったマッシュモンの色違いにしか見えない姿だ。
こいつはバイオシミュレーション研究所から貰ったマッシュモンを鍛え上げて成熟期へ進化させたデジモンだ。
マッシュモン時代の高かった知能は低下しているが、代わりに別の能力を与えている。
…というわけでシャンブルモン。
いつものようにやれ。
『ハーイ!キャハハハハハ!!アーッヒャッヒャッヒャッヒャ』
シャンブルモンは狂ったような笑い声をあげると…
周囲に胞子をぶちまけた。
しばらくすると、島中からうめき声が聞こえ始めた。
『アアアア!!イテエエエ!イテエエヨオオオオ!!!』
『ウギギッギ!ヒッコヌイテモ!ハエテクルウウ!!!ギャアアア!!!』
『トッテクレエエエエ!!キノコ!トッテクレエエエエ!!!テンシサマアアアア!!』
シャーマモン達の悲鳴だ。
そのうち、島の海岸からイカダに乗ったシャーマモン達が出てきた。
『モウイヤダ!!ウミカラニゲルゾオオ!!』
『キノコハエタクネエエエ!!!』
『ニゲロオオオオ!!!』
どうやらあのイカダを使って島から脱出するつもりのようだ。
イカダはどんどん海へ進んでいく。
…逃がすわけがなかろう。
サンダーバーモン、やれ。
『キョオォオオォオーーーン!!!』
島の上空30mの高度を飛んでいる鳥型デジモン、サンダーバーモンは、角に電気を溜めて…
イカダに向かって放った。
『ギャオオォォ!!』
シャーマモン達は電気ショックを浴びた。
この電撃攻撃には、敵を感電死させるほどのパワーはない。
せいぜい全身が痺れて十数秒間動けなくなる程度だ。
だが、それでいい。
イカダの上で麻痺したシャーマモン達は昏倒し…
海に落下した。
麻痺して泳げないシャーマモン達は、もがくこともできず海へ沈んでいく。
あのまま溺死するだろう。
『アイツダ!』
他のイカダに乗ったセピックモンが、サンダーバーモンに気づいたようだ。
『キキーー!』
セピックモンはサンダーバーモンに向かってブーメランを投げてきたが…
さすがにこの高度だ。届くはずもない。
『コロセエエエエ!!シズメラレルゾ!オトセーー!』
イカダに乗ったコエモンやシャーマモンは、手持ちの道具や武器を手当たり次第にサンダーバーモンに向かって投げるが…
当然届かない。
『キョオォーーン!』
再びサンダーバーモンは雷鳴を発射する。
『アギャアアアア!!!』
一方的な電撃攻撃により、セピックモン達は海に沈んでいった。
やがて数時間が経つと…
何かがシャンブルモンに近づいてきた。
『アァ~…イタミ…ヤワラグ…』
『タスケテ…タスケテ…』
『イタクナクシテ…』
体中からキノコを生やしたシャーマモン達だ。
『ア゛ァ~…』
シャーマモン達は、シャンブルモンの前で寝そべった。
シャンブルモンはそれを見て大喜びした。
『アヒャヒャヒャヒャヒャ!!!イタダキマス!!!アームッ!!』
シャンブルモンはシャーマモン達の体から生えたキノコを引きちぎり、それを食べた。
『ンマイ!!アヒャヒャヒャヤ!!ンマーイ!!モット!モット!!モグモグ!!』
夢中でキノコを食べているようだ。
『ア~… イタクナクナッテク…トッテ、モットトッテ…』
シャーマモンの体から、次から次へとキノコが生えていく。
やがて、シャーマモンは…
骨と皮だけになった。
『モットイルネエ!モットオイデエエ!』
シャーマモンは周囲にそう呼びかける。
すると草むらがガサガサと揺れる。
『モゾモゾ…』
数体のデジモンが出てきた。
葉っぱに擬態している幼虫型デジモン、リーフモンが6体。
島に住みついて排泄物や生ごみを食べて生きていると思わしき、ヌメモンが4体。
シャーマモンやコエモンの進化前とみられる幼年期、トコモンが5体。
全員、全身からキノコが生えている。
『オイデオイデェ~、キノコオイデェ~!』
シャンブルモンはフェロモンを放出して、キノコが生えた苗床デジモン達をおびき寄せる。
そうして苗床デジモン達は、シャンブルモンの前で横たわった。
『キノコイッパーイ!オイシイネー!ムシャムシャ!』
苗床デジモン達からキノコをちぎる度に、新しいキノコが生えてくる。
苗床デジモン達の肉体を材料にして。
そうして2日ほど経った。
シャンブルモン自身と、上空30mを飛んでいたサンダーバーモン以外は…
島にいたすべてのデジモン達が、みんなシャンブルモンの隣でキノコの苗床になっていた。
島に住みついていた野生デジモンたち含め、全てである。
それだけでなく、樹木にもキノコがびっしりと生え、枯れている。
これがシャンブルモンの能力。
撒いた胞子を吸い込んだデジモンから、キノコが生えてくる。
そのキノコからも、どんどん胞子がばら撒かれるのだ。
キノコが生えている部分は激痛を伴う。
そのため菌床となったデジモンは、キノコを千切って苦痛を和らげようとするのだが、
その千切られたキノコも胞子を撒き続けるのである。
そうして、キノコはデジモンからデジモンへと、どんどん感染して胞子をばらまいていく。
やがてキノコに全身をむしばまれた菌床デジモンは、シャンブルモンが発するフェロモンを感じ取るようになり、
そちらに行けば苦痛が和らぐような錯覚を覚える。
シャンブルモンのところへ到達した菌床デジモンは、その強烈なフェロモンに充てられて酩酊状態となり、自ら横たわる。
そしてシャンブルモンにキノコをとってもらうと、苦痛が取り除かれ、快感が生じる。
菌床は、次々と生えてくるキノコをシャンブルモンに取り除いてもらうことしか考えられなくなり…
やがて痩せこけ、衰弱死していくのだ。
尚、シャンブルモンのフェロモンが届かない範囲ではキノコは生えてこない。
フェロモンの有効範囲はおおよそ半径10kmである。
…そう。
シャンブルモンの周囲10km以内にいるデジモンは、すべてキノコに食いつくされて死ぬのだ。
これで任務完了だ。
島にいるデジモン全ては根絶した。
蛮族デジモンは駆除完了だ。
バイオシミュレーション研究所のやつらに映像で報告するときは、サンダーバーモンとシャンブルモンの映像は全てカットする。
これらは我々の最重要機密事項であり、何者にであろうとその正体を見せるつもりがないためだ。
適当に、スターモンとジオグレイモンが蛮族を滅ぼしたように見せかけて報告しておけばよいだろう。
我々のいるリアルワールドでは、生物兵器や毒ガス兵器の使用は禁止されている。
だがデジタルワールドは現在無法地帯だ。法整備が一切進んでいない。
いずれデジモンやデジタルワールドが、多くの人々にとって身近な存在になった場合…
そこには必ずルールが必要になる。
公共の福祉を護るためのルールや、あるいは戦争法に準ずる何かが。
では、それを決める主導権を握る者はだれか?
決まっている。
「その時点で、最も力を持つ者」が、自分に都合よくルールを決める。
これは人類史上一度も崩れたことのない絶対のルールだ。
戦争法も、国際法も。
全て「力を持つ者」が決めている。
我々ジャスティファイアが何に替えても力を求めるのは、このためだ。
来るべき時に、「ルールを決める側」に立つためだ。
どこぞの余所者が都合のいいようにルールを決めてしまっては、そいつらに手綱を握られてしまい、
我々の国民を守ることができなくなるかもしれない。
だからこそ、我々は常に最強の力を維持し続ける必要がある。
…市民たちを永久に護り続けていくために。
【デジタルモンスター研究報告会 season2 完】
season2完結です!
長い間ご愛読いただきありがとうございました!
気に入っている点や疑問点、他もろもろ、読んで感じたことを何でも書いてもらえたら幸いです。