~ケン視点~
我々の研究所は随分デジモンの数が増えた。
シュリモンがたくさんデジタマを採取してくれたおかげである。
『やあ!おはよう諸君!調子はどうだね?』
スポンサーさんから通話が来た。
調子ですか、上々ですよ。
昔からいたパートナーデジモン達も、今や皆成熟期になりましたからね。
デジタマを産んだりしてます。
『ふむ。ではセキュリティデジモン開発を次の段階に進められる頃か。長かったねここまで』
カリアゲが首をかしげる。
「次の段階…?ってなんだっけ?」
メガがメガネをクイッと上げた。
「セキュリティデジモンの…『量産』ですね」
『その通りだよメガ君!君達本来の委託業務はセキュリティチームとしてクラッカーデジモンと戦うことではない。そのための研究開発だ』
「あ、そうだっけ。そういやそうだったな。…どう違うんだ?スポンサーさん」
「カリアゲ…。これからクラッカーデジモンの数が増えたら、僕達だけじゃ対処し切れないでしょ。この先ずっと、ランドンシーフを抱えてヘリで北へ南へ西へ東へと出張り続けるつもり?」
「そりゃしんどいよな…」
『そういうことだよメガ君!君達は非常に優秀な叩き台を作ってくれた。コマンドラモン、パルモン、マッシュモン、ブイモン…そしてデジタマモン。どれも優秀極まりないセキュリティデジモンだ!そして、それらは成熟期となり、デジタマを産めるようになった。ならば君達がこれまでにやってきたことを、セキュリティ専門チームへと委託すべきではないかな?』
それは助かりますね。
でも適正のある人材はいるんですか?
デジモンはロボットじゃありません。コミュニケーションがとれるように育てるためには、愛情を注げる飼い主が必要です。
『実はね、以前にデジタルペットとしてマッシュモンを端末とともに販売したことがあっただろう?その購入者の中から、とびきり優秀な者を選抜し、セキュリティの育成業務へスカウトしたんだ』
それはまた…!
でもあれ30万円するんですよね。かなりお高かったような。
『それだけの額を払えるほどデジタルモンスターへの関心が強いということだ。デジモンへの関心が薄い者を抜擢しても仕方がないだろう?』
…恐れ入りましたスポンサーさん。
私が提案したデジタルペット販売の案を、こういう形で活かすとは。
『ハーッハッハッハ!君達には立ち上げ時の技術的なサポートを頼むよ!』
クルエが不安そうにしている。
「でも、敵の戦力もインフレしてるし…、委託チームの成長期で太刀打ちできるのかな?」
『ある程度なら太刀打ちできるさ。前に説明した通り、クラッカーデジモンの主戦力は成長期だ。貴重な成熟期やメタルティラノモンを、おいそれと出撃できるものか』
「したじゃないですか、うちを攻めに来たとき!」
『ゲートを開けるナニモンが同伴だったからね。AAA自らが出撃するときはナニモンと共に成熟期を引き連れることもあるだろうが、全部が全部そうじゃないはずだ。委託チームの仮想的は、AAA本人じゃなくヤツの模倣犯だ』
「ああ…うちのセキュリティチームが下部組織を作るように、クラッカーも下部組織を作るだろうってことですか」
『前に大量のゲレモンによる陽動作戦をやってきたことがあっただろう?下部組織を陽動に使い、セキュリティをそちらへ引き寄せてから、AAAが本丸に攻め込むこともある。ならばせめてクラッカーの陽動部隊を蹴散らせるくらいの戦力は外部に欲しいところだ』
「そうですね…」
リーダーが口を開く。
「セキュリティチームは我々だけじゃないだろう。ジャスティファイアと、その他にもう一ついたはずだ。そいつらの動向は?」
『ああ、ローグ・ソフトウェアだね。彼らの状況もまあ似たようなものだよ。優れたセキュリティデジモンを開発している。君達とは全く異なるコンセプトでね』
「俺達とは全く異なるコンセプト?どういうことだ」
『君達のパートナーデジモンは、飼い主と心を通わせることで臨機応変な現場判断をするのが長所だ。しかしその一方で、人の愛情が籠もった知的教育という不確かな前準備を必要とする。一方、ローグ・ソフトウェアのデジモンは違う。完全に人間の命令・指示通りに働き、事前の知的教育を必要としない』
「なるほどな…。警察と提携するのも納得だ」
カリアゲがムっとしている。
「えぇ?納得か?なんか感じ悪いぞ」
「カリアゲは地元で農業をやっていたそうだな。今も草刈りや荷物運び、鋤引きは牛にやらせているか?」
「いやぁ…草刈機や軽トラ、トラクターなんか使うけど」
「そういうことだ。人はある時代までは家畜を役用に利用していたが、今や機械への置き換えが為されている。ローグ・ソフトウェアはその流れをいち早く見抜いていたということだ」
シンがスポンサーさんに問いかけた。
「それで、ローグソフトウェアはどんなデジモンを飼育してるんスか?」
『ンー、そこは守秘義務だ。いくら君達を応援しているからといって、情報を漏らすことはできないな!ハッハッハ!』
「知っといたほうが連携とか取りやすくなると思うんスけど…」
『彼らは警察と提携しているんだ。いかなるデジモンでどのように敵と戦うのか、手札は可能な限り伏せておいた方がいいという判断のようだ』
「そういう戦略なんスね」
我々以外のチームがどこからどうやってデジタマを採取し、どういうふうにデジモンを育成しているのか…興味がある。
だけど、そこは企業秘密ということなのだろう。
我々は我々で、より戦力を拡充させていこう。
少なくとも、メタルティラノモンに勝てないようではAAAは倒せない。
「ったく、そのメタルティラノモンってやつ、シューティングスターモンの全力の突撃をくらっても死なずに、自己再生しようとすたんだろ?信じらんねぇ、そんなのどうやって倒すんだよ…」
カリアゲがうなだれている。
「可能性はある」
リーダーがぼそりと呟いた。
「レベル5にはレベル5をぶつける。我々は既に、その可能性を手にしている」
レベル5をぶつける可能性…?
「エクスブイモンだ。ブイモンはジャスティファイアで鍛えられ、地獄の修行を終えて強大なDPをもつエクスブイモンへ進化した」
そうですね。
しかし、エクスブイモンがいくら強くても、そのメタルティラノモンに勝てるかどうか…
「エクスブイモンはブイモンの頃、土壇場でデジクロスの力を覚醒させた。その力を発動できれば…こちらもレベル5に到達できるかもしれない」
…デジクロスは短時間しかもちません。
時間との戦いになりそうですね。
でもデジクロスの相手は?
デジタマモンとのデジクロスで、エクスブイモンはフレイドラモンやライドラモンになれますが、レベル5ほどのDPじゃないですよ。
「…デジクロスの相手は、なにもデジタマモンだけに限定しなくていいだろう。デジクロスの仕組みを解析し、これから育てるデジモン達にもその力を与えることができれば…」
…勝機はあるかもしれませんね。
メガが腕を組みながら口を開いた。
「それよりまっさきに試すべき相手がいるんじゃない?」
え、誰?
「スティングモンだよ、ディノヒューモン農園の」
ああ!そうか…確かに!
「AAAは農園にとっての仇敵でもある。結託できる可能性はあるでしょ」
よし、早速試しに行こう。
…
そういうわけで、エクスブイモンがディノヒューモン農園に向かった。
さっそくスティングモンが出迎えた。
「ほう、親そっくりになったな。ブイブイが化けて出たようだ。どうだ、我々と共に暮らさないか」
「暮らさねえよ!オイラの家族はセキュリティチームだい!」
「フフ、そうか。それで?用はなんだ」
「オイラ、合体ができるようになったんだぞ!ちょっとデジクロスできるかどうか試してくれねーか?スティングモン」
「だからそのスティングモンという呼称はいい加減にやめろ。何度言えば分かる?私には盟友オサオサから貰ったグサグサという名がある。私を呼ぶならそう呼べ」
「お、おう…わかったよグサグサ」
「どれ、では試してみるぞ。準備をしろ」
「お、おう!いくぜグサグサ!デジクロス!」
エクスブイモンは精神を集中させた。
スティングはその隣に立ち、同じように精神を集中させた。
…だが。
デジクロスが発動しない。
「あれ?くっつかねーぞ?手抜いてんじゃねーのかグサグサ?」
「貴様の方こそ、私に合わせろ。ブイブイはやってのけたぞ」
「オマエがオイラに合わせろよ!」
「合わせようとしている!貴様も私に合わせろ!」
「オイラだってやろうとしてるって!」
「どこがだ下手糞!」
「なんだと!?やるかグサグサてめぇ!」
「いいだろう、我が子との合体無しで貴様がどれほどやれるものか試してやる」
そう言い、エクスブイモンとスティングモンは喧嘩をし、取っ組み合いを始めた。
な、何やってるんだ!
DPではエクスブイモンが勝っているが、どうなるか…?
結果は…
スティングモンがエクスブイモンを組み敷いた。
「く、くそ、つええなグサグサ…!」
「パワーは中々のものだ。だが動きに無駄が多い。なんだその力任せの戦い方は?ふざけているのか」
「ジャスティファイアで修行したってのに…!ちくしょー!」
「鍛えただけあってパワーは中々だと評価しているだろうが。戦い方を学べ」
「…へーい。ってか、バブンガモンはよくオマエと引き分けになれたな…」
「ヤツは強い。私が麻痺毒針の使用を解禁してやっと互角だ」
「オイラも負けねえぞ…!」
…まあデジクロスに頼らず、エクスブイモン自身がきちんと強くなる事が大事だね。
「そうだ、もののついでだ。貴様達、いま我々の農園が直面している危機に手を貸してくれ」
直面している危機…?
まさか翼人型デジモンか?
最近はデビドラモン達の勢力とやりあってるって聞いたけど…
「それよりもさらに厄介な奴らだ」
さらに厄介な奴ら…!?
そんなのがまだいるのか?心当たりないぞ!
つ、強いの?
「強いというか…そういう問題ではない。攻撃して倒すという手がとれない相手だ」
い、いったい何だ…?
見に行ってみよう。