デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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ディノヒューモン農園史上最大の危機

スティングモンに連れられて、畑の様子を見に行った。

すると農作物の苗は……、どれもこれも白い糸でびっしりと覆われていた。

糸の中では何かがもぞもぞと大量に蠢いているのが見える。

 

「このムシ達だ…野菜の苗を食い荒らす。果物の木もぼろぼろだ。どうにもならん」

スティングモンは、遠くから糸まみれの農作物を指さす。

 

な、なんだこりゃ…?

デジドローンを近づけて観察してみよう。

 

「あまり近付くな!」

スティングモンがとっさにそう言ったので、デジドローンを空中で急静止させた。

 

その直後…

ひとつの苗から、二、三本の糸がデジドローンに向かって飛んできた。

 

うわ!

とっさに上昇し、ギリギリのところで糸を回避した。

危ない…危うくデジドローンが捕まるところだった。

 

私はデジドローンをあまり苗へ近寄らせずに、望遠モードで観察した。

 

すると、ようやく正体が見えてきた。

苗を覆う糸の巣の中には、黄色い幼虫型成長期デジモンのクネモンが二~三体いる。

さらにその幼体とみられるププモンや、小さなデジタマがびっしりと詰まっており、苗を食い荒らしていた。

 

「い゛や゛ァァァァ!!!無理無理無理無理!!キッショ!!」

クルエが絶叫しながらモニタールームから走り去っていった。

 

こ、これが信徒以上の脅威なのか…?

確かにウジャウジャいて厄介だけども…

 

「こんなちっこい奴ら、ぶっ倒してやるぜー!」

エクスブイモンは愛用の武器、スナイモンの鎌を取り出した。

これもだいぶ刃こぼれしてきたな…。

 

「うおりゃあ!」

そしてエクスブイモンは鎌を振りかざし、中のクネモン一体の頭部を切り裂いた。

「へへん楽勝!」

 

「まずい!」

スティングモンが叫んだ直後…

その苗に潜む二体のクネモンが、エクスブイモンに糸を飛ばしてひっつけた。

 

「ん?」

その直後…!

農園中の苗の巣が共鳴するかのように同時に、バチバチと音を立て始めた。

 

そして、エクスブイモンに凄まじい電撃が浴びせられた。

「が!がぎゃああああああああ!!!」

絶叫するエクスブイモン。

な、なんだ!?一旦離れろエクスブイモン!

 

「うぎゃああああああ!」

だがエクスブイモンは感電していて動けない。見たところスタンガン以上の電撃だ。プラズマがバチバチと音を立てている。

 

たかが成長期デジモン二体の電撃攻撃が、高DPの成熟期であるエクスブイモンをここまで制圧できるのか…!?

しかしやばい!このままじゃエクスブイモンが死んでしまう!助けないと…!

 

その時。

「シャアアッ!」

鳴き声とともに火炎放射が飛んできて、エクスブイモンと苗をつなぐ糸を焼いた。

 

「が…ぐはっ…」

エクスブイモンはばたりと倒れる。

そこへ駆け寄ったのは、全身が炎のオーラで纏われた二足歩行の爬虫類型デジモン、フレアリザモンだ。

 

フレアリザモンは、エクスブイモンを抱えてその場から離れた。

 

「う、うぅ…」

地面に横たわるエクスブイモンの肌には、紫色をした稲妻模様がびっしりと刻まれている。

 

これはリヒテンベルク図形…いわゆる雷紋だ。

電撃によるダメージが大きいということだ。

 

「だ…大丈夫かエクスブイモン!」

カリアゲが心配して声を張り上げる。

幸い、フレアリザモンが早く助けてくれたおかげで命に別状はなさそうである。

 

「なんなんだこれ…?ただのクネモンが、なんでこんなに強えんだ!」

 

それは確かに気になる。

強力なDPをもつ成熟期のエクスブイモンを瞬時に昏倒させるなど、いくらなんでも幼虫型成長期デジモン二体のDPでやれることじゃない。

 

スティングモンがエクスブイモンの体を水で冷やす。

「だから待てと言ったのだ。今の貴様と同じ対処をした元信徒のシャーマモン達が、何体も死んだぞ」

 

「さき…に…言え…よ…!」

 

リーダーがその様子を見て、何かに気付いたようだ。

「わかった…。直列回路だ」

 

直列回路…?

 

「一体一体のクネモンが発電できる電圧は決して強くはない。だが、畑の大量の苗を覆う巣は、それぞれが電線の糸で繋がっているんだ」

 

あ、確かに。

巣同士が糸で繋がっていますね。

 

「クネモン達は外敵が近付くと、電気信号によってコミュニケーションをとり、一斉に放電を行う。大量のクネモン達の電流が直列回路によって束ねられ、それがエクスブイモンを襲ったんだ」

 

…な、なんだそりゃ…!

それじゃ、糸を一本でもひっつけれたら、全部の苗の巣から一斉に電撃が伝わってくるってことですかリーダー!

 

「そういう原理のようだ。グサグサが言っていたことは過言じゃない…。これは只の暴力で略奪に来る信徒共よりはるかに手強い」

 

…しかし、今まで見てきたクネモンはこんな凶悪じゃありませんでしたよ!

そもそも群生じゃなかったですし!

 

「農園の働き手や類人猿デジモンがどんどん進化しているんだ。ならば害虫デジモンも驚異的なスピードで進化しているのだろう」

 

…ど、どうすんだこれ。

 

スティングモンはげんなりした様子だ。

「メラメラが火炎放射で焼けば、このムシ…クネモンといったか。こいつ単体を遠くから倒すことはできる。だが苗も燃えてしまう。そうなっては収穫ができず、我々は飢えてしまう」

 

メラメラってのは…フレアリザモンのことか。

まあ害虫だけピンポイントで焼き払うことはできないよね。どうしたものか…。

 

クネモン達の巣の様子をデジドローンで観察すると…

突如巣の糸の隙間から、まるまる太った幼年期のププモンが大量に飛び立った。

 

「!まずい!殺せ、そいつらを!メラメラ!」

 

「ンバアアアア!」

スティングモンに指示されたフレアリザモンは火炎放射を放ち、何体かのププモンを空中で焼き尽くした。

 

だが十数体のププモンは生き残り…

散り散りになって飛びまわり、まだ無事な苗にくっついた。

 

その直後、ププモン達は一斉に光に包まれ…

それぞれの苗でクネモンに進化した。

 

「くそ!また増えたッ!クソ虫どもがッ!」

スティングモンは激昂し、苗についたばかりのクネモンに襲いかかる。

 

二~三体のクネモンは、スティングモンに糸を飛ばし、電撃攻撃を放つ。

「ぐっ…!この程度!もう慣れたぞッ!」

 

苗にくっついたばかりのクネモン達は、他の巣と接続していないため、大した電力を発揮できないようだ。

スティングモンは電撃に耐えながら、毒針でクネモン達を串刺しにした。

 

「ギュチイイッィ!」

 

そして、スティングモンはクネモン達をバリバリと捕食した。

 

「モグモグ…ふぅ。幸い毒は持っていないから、食おうと思えば食える。美味だ」

 

い、いいのか?グサグサ。

そんなの食べて。

 

「いいさ…もう手遅れだ」

他の苗にくっついたクネモン達は、すでに苗を糸で覆い尽くし、他の巣との電線を接続完了したようだ。

これでこの苗に近づいたら、大量のクネモン達の直列放電をくらうことになる。

 

なんて…

なんて凶悪な生態の害虫だ…。

これを放置したらマジでこの農園滅ぶぞ。

 

なんとかできないのか…?

 

カリアゲが嫌そうな目でモニターを眺める。

「害虫対策といえば、殺虫剤や農薬だけど…。あの体のデカさじゃ薬が十分回らなさそうだな…」

 

仮にあのクネモン達を殺せる猛毒を作ったところで、それを野菜の苗に浴びせたら苗ごと死んじゃいそうだね。

 

「苗ごと、どころじゃねえ。土が死ぬ」

確かにそうかも…。

 

一体一体は、大したDPを持たない成長期デジモンだ。

だが、それらすべてが一度に電撃を束ねて放ってくるとなると、エクスブイモンやスティングモンのような高DPの成熟期デジモンすら瞬時に昏倒するほどの殺傷力となる。

 

これは本当に…AAAの部下の信徒デジモン達による略奪よりはるかに厄介だ。

デジモンの進化は、一個体として強大な白兵戦闘能力を得ることだけが正解ではない。

 

このように単体では小さくとも、非常に悍ましく、それでいて脅威的な「無敵のシステム」を形成すること。

そういう方向で強くなるデジモンもいるということだ。

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