試してみたいことがあるんですが、いいでしょうか。
とある場所から捕獲したいデジモンがいるんです。
「捕獲?いいぞ」
リーダーが快く承諾してくれたので、森林にデジタルゲートを開き、シュリモンに頼んでとあるデジモンを捕獲してもらった。
植物に擬態し、隠密行動をし、一気に捕まえた。
数々のデジタマを採取成功した実績があるシュリモンの手腕はさすがである。
そして、農園にそのデジモンを放った。
それは…
「ヒ、ヒヒー??」
…ウツボカズラに似た姿の植物型デジモン、ベジーモンである。
「なんだこいつは?」
スティングモンは不思議そうな顔でベジーモンを眺めた。
我々はベジーモンと意思疎通をとることができない。命令をすることはできない。
だとしても、今ここでベジーモンは、何をすればいいかが直感的に理解できるはずだ。
「ヒ…ヒヒー!」
ベジーモンは苗を眺めると、にったりと笑みを浮かべ、口を開けた。
しばらくすると…
スティングモンがまわりをクンクンと嗅いだ。
「ん?甘い匂いがしてきたぞ」
すると…
苗の巣から、クネモンやププモン達がもぞもぞと這い出てきた。
そしてなんと、それらの害虫デジモン達は自らベジーモンの口の中へ入った!
ベジーモンは全ての獲物が口の中に入ったのを確認すると、ばくんと口を閉じた。
「フヒ~」
ま…満足そうだ。
「フヒッ!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒビィィ!?」
突如、ベジーモンが痙攣し始めた。
体内からクネモンの電撃攻撃を受けているようだ。
だが、ベジーモンは自らの腹部をウネウネと動かし始めた。
「ンン…!ンギュギュゥゥ!」
すると、ベジーモンの腹部からブチブチと音が聞こえてきた。
ベジーモンは飲み込んだ獲物を確実に仕留めるために、咽頭歯という歯を消化官内に持っている。
これを使って、飲み込んだクネモン達を噛み砕いたのだ。
スティングモンは驚いている。
「おお…!これはいいぞ!もっと食え!」
だが…
ベジーモンは自分の腹を撫でた後、ゲップをして昼寝した。
「どうした!もっと食ってくれ!」
…ベジーモンはDPが低いデジモンです。つまり基礎代謝の消費カロリーが少ない。
こんだけ食えば当分は腹いっぱいでしょう。
「ならばもっと連れてこい!」
オッケー!
シュリモン、森でもっとベジーモンを連れてきてくれ!
「わかった!」
そう言い、シュリモンは森へ行ったが…
…なかなか見つからない。
ベジーモンは擬態が上手いのだ。シュリモンがいくら目が良くても、植物へ完全に擬態したベジーモンをすぐに見つけるのは難しい。
カリアゲがイライラしている。
「デジドローンで観察しても見つからねえぞ…!運良く最初の一体を発見したはいいけど、もっとたくさん連れてかないとあの量は捌ききれねえんじゃねーか?」
少食のベジーモンなら、クネモン3体とたくさんのププモンを食ったら1週間は何も食わずに生きていけるだろうからね。
「お?あいつはどうだ?」
カリアゲが指差したのは…
「フヒッフヒッ!」
赤いベジーモン、レッドベジーモンだ。
ベジーモンよりもDPが高くて好戦的なヤツだ。
まあ…あれでいいか。
でもレッドベジーモンは強いからな、シュリモンだけで安全に捕まえるのは難しいかも。
我々はスティングモンに協力を仰ぎ、麻痺毒で一時的に痺れさせてからレッドベジーモンを連れ去った。
そして農園にレッドベジーモンを放った。
「フヒ…?フヒイイ!」
レッドベジーモンは、苗のクネモン達を見て興奮した。
「フヒッ!フヒイイ!」
レッドベジーモンは…
苗に向かってドスンドスンと歩み寄り…
巣を触手で攻撃した!
クネモンを直接捕獲する気だ!
ああっ、そんなことをしたら…!
…案じた通り、レッドベジーモンに糸が飛んできた。
「フッギャアアアアアアアアア!!!」
例の直列放電攻撃をくらうレッドベジーモン。
「助けたほうがいいか?」
スティングモンが首をかしげる。
…勝手に拉致して利用しておいて心苦しいところだが、フレアリザモンを危険に晒してまで無理することはないだろう。
やがて電撃が止まると…
レッドベジーモンはばたりとその場に倒れた。
心停止…死んだのだ。
恐ろしい。
DPが高い成熟期すらこんなに瞬殺されてしまうなんて。
どうやらレッドベジーモンは好戦的すぎて、ベジーモンのようなまどろっこしい手段で獲物をおびき寄せようとしないらしい。
…皮肉にも、肉体が強くなって闘争本能を得たせいで、勝てる相手に勝てなくなってしまったのだ。
「んんーもどかしいな!ベジーモンをたくさん集められればいいんだけど、肝心のベジーモンがぜんぜん見つからねえ!」
昼寝中のベジーモンを見たシンが呟く。
「このベジーモンを繁殖させるとかは?」
…そうしてる間に農作物が先になくなるよ。
「あのさぁ…君達なにか忘れてない?」
メガが苦笑いしながら口を開いた。
「忘れる?何をだよ」
カリアゲがキョトンとしている。
「頼れよ!もっと!僕達デジタルアソートのアプリモンスターズをさ!」
あ…
そういやいたっけ。
…
『秘技!ディイーーープサーーーチ!!』
検索の能力を持つアプリモンスター、ガッチモンが森林で検索を行い、ベジーモンの位置を特定した。
『見つけた、ここだ!マップ転送するぜ!ベジーモンの居場所は検索済みだ!』
おお、森林マップに赤い点がいくつも出ている。
その点をよく見ると…
…いた!ベジーモンだ!よく見たらベジーモンだ!
ここさっき探したはずなのに。
肉眼だけでは見つけられなかった。なんて精巧な擬態なんだ…
…シュリモン、GO!
「ここ?わ、ほんとにいた!ベジーモン、手を貸して!」
「フヒッフヒッ!」
…そうして我々は、森林から大量のベジーモンを捕獲し、農園に放った。
クネモンとその子供たちはぞろぞろと自らベジーモンの香りに誘われ、口に入り…
そして、消化されていった。
やがて農作物を覆った糸の巣は、中に小さなデジタマが残っているだけで、蠢く幼虫達はいなくなった。
「やっぱそーッスよねぇ」
どうだグサグサ。
害虫は駆除したよ。
「凄いぞ貴様達!見直した。我々は飢えから救われた、貴様らのお陰で。助かった」
おお、あのグサグサが感謝している。
「過去に私のタマゴを奪った件は、これで水に流してやる」
それはどうも。
そうしてグサグサと話していると、農園のたくさんのデジモン達が我々のもとにきて、次々に礼を言ってきた。
その中には…
農園のリーダー、ディノヒューモンの姿があった。
「おう、おめぇら!あのムシ共を退治してくれたってなぁ!ありがどなぁ!」
な…!
訛ってる!
ディノヒューモンの言葉、訛ってるぞ!
「おお、そうだな」
カリアゲが頷いた。
「あーのムシ達ほんと悪さしてて、おら方ホント迷惑しとったんだ。あーこれで助かっただ、神様仏様セキュリティ様だぁ!」
んん!?仏様!?
「はーナムナムナム。今度うんまい大根(でぇこん)取れたらくれでやるからなぁ!」
は…はい。
ありがとうございます。楽しみにしてます。
「…終わったの?はーよかった!」
クルエが部屋に戻ってきた。
…この作戦3日以上かかってたけども、なんとその間クルエは一度もモニタールームに戻ってこなかったのである。
「これでディノヒューモン農園に感謝されて、交流が持てて、めでたしめでたしだねぇ、ケン!」
…なぜ訛ってるんだ?
「え?」
おかしいだろ。
たしかディノヒューモンは、バブンガモンから信徒の言語としてこの言葉を習ったんだろ?スティングモンと一緒に。
「そーだっけね」
なんでディノヒューモンだけ訛ってて、バブンガモンとスティングモンは訛ってないんだ?
「それは…なんでだろ。キャラ付け?」
言語の訛りっていうのは、たくさんの話者、広い土地、長い年月があって初めて生じるものなんだよ。
なのに、聞いた感じこの農園でこんなに訛った言葉遣いしてるのはディノヒューモンだけだ。
おかしいぞ!絶対!
「そんなに気になる?どうでもよくない?」
それにさ!語彙もちょっと変なんだよ!仏様とかナムナムとか言ってたけど、いつ誰からそんな言葉教わったんだろうか?
「わかんないよそんなの…本人に聞けば?」
で、ディノヒュー…じゃなくて、えーと、オサオサさん。
仏様って言葉、どこで聞いたんですか?
「ん?そだな…オラもわがんね!」
…本人すら知らないとは。
やはりこのディノヒューモンという個体、底が知れない。