やがて、マッシュモン達が、我々のいるこの部屋へとやってきた。
数は46体…多すぎである。
成長期でこの数なら、親はどれだけいるのだろうか。
コマンドラモンは、私のドローンの前に出て銃を構えた。
まさか、私が脱出するまでの時間稼ぎをしようとでもいうのだろうか…!?
私は…
マッシュモン達へ、ペレットをたくさん投げた。
するとマッシュモン達は、ペレットを掴んだ。
…スナリザモンのときと違って、道を開けれるほどの隙は作れない。
マッシュモンのうち、やや体が大きい一匹が我々の前に出てきた。
そして、受け取ったペレットを掲げると…
私(のドローン)へ向かって、何かを叫んだ。
「シュマ!マシュシュマモ!モシュア!モシーシャモ!」
すると彼の後ろに並ぶ45匹のマッシュモン達が、いっせいに同じ言葉(?)を叫んだ。
マッシュモン達は、先程の不気味な歌を歌いながら、その場で踊り始めた。
…コマンドラモンは、ポカーンとしてマッシュモン達を見ている。
歌が止むと、先頭のマッシュモンは地面に膝をつき、手を上に伸ばして、私に頭を下げた。
「マシュムシャーー!」
それに続いて、後ろのマッシュモン達も同じ動作をした。
「「マシュムシャーー!!」」
…分からない。
何語だこれは。
…マッシュモン語…?
私は「あなた達は誰ですか?」と聞いてみた。
マッシュモンは「マムシャ?ムシャ?ムマー」と答えた。
言葉は通じないが…
…ひとまず、襲ってくるつもりはない…のだろうか。
コマンドラモンは、疲れのせいか、その場でよろめき…
地面に座ろうとした。
ふと気付いた。
コマンドラモンが座ろうとした先に…
先程の、小さな小さなマッシュモンがある…!
私はコマンドラモンを支え、小型マッシュモンを尻で潰さないように、隣へ座らせた。
マッシュモン達は、しばらく口々に、マッシュモン語(?)で話しかけてきた。
だが、言葉が通じていないことを察したらしい。
…やがて、先頭のマッシュモンは、こちらの様子を伺って、どう動くかを観察し始めた。
このままでは膠着状態だ…。
埒があかない。
私は、廊下の方へ進んだ。
すると、先頭のマッシュモンが、後ろのマッシュモン達へ「シュマッ!」と声をかけた。
マッシュモン達は道を開けてくれた。
…安全に帰れるのだろうか。
私とコマンドラモンは、廊下を進んだ。
すれ違うマッシュモン達は、私に「マシュムシャーー!」と声をかけてきた。
…そして、そのままアクセスポイントまでたどり着いたのだが…
マッシュモン達がついてきている!
ゲートを開けたら、一緒に入ってきかねないぞ。
私はゲートを開けた。
ドローンとコマンドラモンは、ゲートをくぐってフラッシュメモリ内へ帰還した。
ゲートが閉じる瞬間…
なんと、例の先頭マッシュモンがゲート内へ飛び込んできた!
…フラッシュメモリ内へ、マッシュモンが一体、入ってきたのであった。
私はとりあえず、新設した第2ビオトープへマッシュモンを隔離した。
成長期なので、デジタマを産むことはないだろうが…
念の為である。
尚、ビオトープの壁は脱走防止用のファイヤウォールで囲われているため、マッシュモンが脱走することはないだろう。
分からないことだらけだが。
何はともあれ…
フローラモンとコマンドラモンは生還した。
そして、第2ビオトープへ、仮住まいとしていったんマッシュモンを送った。
メインPCは、依然としてあの状態だ。
コロニーの中には、ペレットを運ぶ粘菌や、ピンボール等のゲーム、そして最奥の謎の部屋があったが…
マッシュモン達を産んだ成熟期デジモンの姿は見えなかった。
…調査はまだ終わっていない。
そして、メインPCに住み着いたマッシュモン達は、どうすればよいのだろうか…。
デジモンの遺伝情報は、彼らの細胞内の核酸らしき領域へ記録されている。
デジモンは進化するとき、自身のDNAを書き換えていることが分かっているが…
生まれてから一度も変化しない領域と、進化によって変化する領域に分かれていることが判明した。
変化しない領域を「DNA_ROM」、進化で変わる領域を「DNA_RAM」と呼称する。
DNA_ROMは、親デジモンから産まれたときに一度だけ、親デジモンのDNA全体がほぼそのまま書き込まれるようだ。
その後、進化をするにつれて後天的に、DNA_RAMが継ぎ足されていく…。
つまり、同じ親から産まれた兄弟デジモンは、DNA_ROMが完全に同じなのである。
ディノヒューモン農園のカメモンの皮膚の断片を採取し、コマンドラモンと比べた結果、そう結論付けられた。
マッシュモンのDNA_ROMを調べたところ、植物型デジモン達に共通するコードを持っていた。
このことから、マッシュモンはぱっと見菌類に見えるが、植物型デジモンの系統ということが分かった。
我々は、デジタルワールドを調査して、マッシュモンと近いDNAを持つデジモンがいないかを調べた。
その結果…
森林にいた。
別個体のマッシュモンが。
このマッシュモンの細胞の断片を入手し、うちのビオトープにいるマッシュモンとDNAを比較したところ…
なんと、完全に一致していたのである。
完全な一致というのは、今までに見たことがない。
ディノヒューモン農園のスナリザモン3兄弟のウロコを調べても、完全には一致していなかったというのに。
私はフローラモンに頼み、再度マッシュモンの要塞の調査を行った。
そして、最奥の部屋に生えていた小型マッシュモンを観察していると…
数日後に、それらは地面から足を切り離して歩き回った。
翌日、一体のマッシュモンが、最奥の部屋へやってきて、胞子をばらまくと…
翌日には、その場に小型マッシュモンが生えていた。
このコロニーのマッシュモンのうち、皮膚の断片を入手できた4~5匹のDNAを比較したところ、完全に一致していた。
…なんということであろうか。
マッシュモン達は、デジタマを産むことなく、成長期のまま成長期のデジモンを産み出していたのである。
いや、むしろ…
今歩き回っているマッシュモン達は、おそらく繁殖用の子実体だ。
つまり、何というべきか…
そこら中を歩き回っている個体は、正確には個体ではなく、「マッシュモン」という存在を構成する細胞の塊のひとつ、ということになる。
今、このパソコンに作った要塞の内部に張り巡らされている全ての菌糸を含め、これらの個体全てが「マッシュモン」というデジモンの一個体なのである。
…何なんだこいつは!?
デジタルワールドにいるマッシュモンは、よくスナイモンに狩られて捕食されているが…
マッシュモンを食ったスナイモンは、すぐに胃の内容物をぶちまけて、毒に悶え苦しんでいる。
そのせいか、肉食デジモンはマッシュモンを捕食しようとしない。
マッシュモンは、胞子をばらまくことで、デジタルワールド内でも成長期のまま自己複製しているようだ。
結果、マッシュモンの個体数は、デジタルワールドでもどんどん増えている。
…始末に負えないな…。
どうすればいいんだ?
今のところ、ドローンやフローラモン、コマンドラモンに敵対的な反応はしていないが…
だからこそ、どうすべきか悩むところである。
そして先日。
ビオトープに入れていたマッシュモンが、ビオトープ内の土の上で胞子をばら撒いた。
このまま放置していれば、ビオトープにもマッシュモンが殖えてきかねない…!
そして、恐ろしいことに、こいつらは成長期である。
つまり、武力行使を試みるなどして、自分の身に危機が訪れたら、環境に適応するために、いっせいに成熟期へと進化する危険性があるのだ。
ただでさえ数が多いのに…
それらが成熟期になったら本当にどうしようもないぞ!?