我々はガレー船を観察した。
ホエーモンの調査も大事だが、その前にこの船がなんなのかを確かめておきたい。
オールを漕いでいるのはなんだ…?
デジドローンでこっそり観察したところ、やはりデジモンが漕いでいるようだ。
それは蛮族の類人猿型成長期デジモン、シャーマモンによく似たデジモンだった。オールの数だけいるとしたら100体はいる計算になる。
仮称スノーゴブリモンとしよう。
スノーシャーマモンではないのか?とツッコまれるかもしれないが、シャーマモン達のようにシャーマニズム信仰しているか分からないので今はこう呼ぶことにする。
スノーゴブリモン達の腕は筋肉ムッキムキである。かつて戦ったシャーマモン達よりも腕が太い。
デジモンはトレーニングを積むことで戦闘力が飛躍的に向上する。おそらくこのスノーゴブリモン達は、日頃からオールを漕ぎまくっていることで腕力が鍛えられているのであろう。
…まさか蛮族の生き残り?
AAAの配下だろうか。
だとしたら不気味だ。なぜこんな長期航海に向かない軍船で航海を…?
クラッカーとしての活動に関係あるのか?
カリアゲは首を傾げている。
「これは漁船かなんかか?プカモンをたくさん捕まえるためか?」
リーダーは腕を組んでいる。
「漁船ならばこんなに船員はいらないだろう。船を軽くして、帆船で風に乗って漁をしたほうが効率的だ。航路を開拓していればの話だが…」
スノーゴブリモン達が漕ぐガレー船は、しばらく速度を落として進んでいた。
しかし、突如船長デジモンが号令を出した。
「ムム!見つけたぞォ!七時の方向!取り舵いっぱい!ヨーソロー!」
大声でそう叫んだ後、舵輪を勢いよく回した。
「オォーッ!」
スノーゴブリモン達は返事をすると、オールを漕ぐスピードを上げた。
船が進路を変え、スピードを上げ始めた。
我々とベーダモンは、デジドローンの映像越しにこの集団の行動を観察した。
「ヒョーガモン!上がってこいやァ!」
船長デジモンがそう声を張り上げると、やがて甲板にもう一体、大柄なデジモンが上がってきた。
「うーっし!やるぞフックモォォン!ガァッハッハ!」
ヒョーガモンと呼ばれて現れたデジモン。その姿は、今は亡き蛮族の王フーガモンによく似た、青い肌の類人猿型デジモンだ。
ヒョーガモンは、フックモンと呼ばれた船長デジモンの側に立った。
フックモンは、じっくりと海を眺めている。
「ここだァーーーッ!!」
突如、フックモンは勢いよく右手のフックを伸ばし、海中に飛ばした!
真っ直ぐに飛んだフックはほとんど水飛沫を上げずに水中へ入射した。
そしてフックモンは、自分の右腕を勢いよく引っ張った。
ヒョーガモンは自らの足を特殊な器具で甲板に固定し、フックモンを支えた。
やがて、海面に大きな水飛沫があがった。
「オォオォオォ~~~!!!」
…ホエーモンだ!
ホエーモンにフックが突き刺さっている!
フックモンはホエーモンを力いっぱい引っ張っている。
フックが突き刺さったホエーモンは、ガレー船のパワーに引っ張られた。
「オォオォオォンン!!」
ホエーモンはじたばたと暴れている。
ホエーモンは、甲板のフックモンを見つけると、頭部の呼吸孔をそちらへ向けた。
だがフックモンはすかさず叫んだ。
「面舵一杯!かわせ!」
そう言うと、フックモンの代わりにスノーゴブリモンが舵輪を回し、船を旋回させた。
直後、ホエーモンの呼吸孔が広がり、勢いよく水流が噴射された!
フックモンは先周りして船を旋回させていたため、すんでのところで水流を回避した。
だが水流は甲板に直撃。
木製の板が砕け、船に大きな穴が空いた。
凄まじい威力だ!思った以上にこのホエーモンの戦闘能力は高いようだ。
やがて水流が止んだ。
ホエーモンは広げていた呼吸孔を縮めようとした。
「ハッハァーーッ!バカめ!勝負ありだ!」
フックモンは、ホエーモンの呼吸孔めがけて左腕の砲身を構え…
砲撃した!
ボンッという轟音とともに、フックモンの左腕から硝煙が上がる。
「ギャアアァァーーーーー!!」
ホエーモンの頭部の呼吸孔が破裂し、凄まじい血飛沫が上がった。
どうやら砲弾は見事に呼吸孔に直撃し、内部で爆発したらしい。
「ハアァァーーーッ!!」
フックモンは二度、三度と砲撃し、ホエーモンの頭部の傷口を広げた。
「オォ…ゴォ…」
やがてホエーモンは海水を血で染めながら、ぷかぁと浮かび上がった。
「ハッハァーーーーー!!獲ッたぞォォーーーーッ!!ウオオォーーーッ!!」
フックモンは大声で雄叫びを上げる。
「ウオオォーーーッ!!フックモン様ァーーーー!!」
船員のスノーゴブリモン達が歓声を上げ、フックモンを讃えた。
カリアゲは口を大きく開けている。
「ホエーモンが…仕留められた!そうか、これが『海戦』か…!この船はこのための…!」
メガは汗をかいている。
「…軍船じゃない…これは、捕鯨船だったのか…!」
クルエは困惑している。
「あ、あれ?でもおかしくない?海のデジモンはホエーモンの声を聞いたら逃げていくから、ホエーモンは無敵なんじゃなかったの?」
リーダーは映像の中のフックモンを睨んでいる。
「怖がるはずがない。何故ならこいつらは海のデジモンじゃないからだ。見ろ、片腕が砲身になっている。こいつはおそらく…!蛮族であるゴリモンの子孫だ!」
ベーダモンは大きく目を見開いている。
『おぉ これが 余の仇敵の 今の姿だというのか』
ベーダモンは…
涙を流していた。