~デジタルモンスター研究所 研究員視点~
マッシュモンを入れたデジタルモンスターは、無事に発送完了した。
ユーザーからはおおむね好評であり、DLCもよく売れている。
以前、フローラモン達のいるビオトープにもマッシュモンが胞子を撒いていたが…
そこから誕生したチビマッシュモン達にも、教育を施した後にデジタルモンスターへ入れて発送した。
ボスマッシュモンは少し寂しそうにしていたが…
フローラモンとともに同胞の旅立ちを見届けると、心の整理がついたようだ。
スポンサーからは「もっとマッシュモンを殖やせないか?」などと要望が来たが、前と同じ返事をしておいた。
試しにマッシュモンを構成するデータをコピー&ペーストして個体を増やせないか実験してみたが…
ペースト先に生成されたのは、干物のように干からびたバラバラの菌糸類だけだった。
デジモンをコピーすることはできないらしい。
…さて、経てしてマッシュモン騒動は収束し、メインPCの奪還に成功した。
ゴミ箱付近に作られたカビ神殿は、とりあえず削除せず残してある。
~??? 視点~
デジタルモンスター研究所の抽選に当たり、マッシュモンの獲得に成功した。
私自身が当選したわけではない。
私の同志たちに声をかけ、人海戦術で大量に応募し、その協力者の一人が当選したのである。
さて、この端末には、飼育データのログを研究所へ送信する機能がついているそうだ。
だが、間抜けなものだ。
何かしたところで、マッシュモンが奴らに没収されるわけではないのだ。
さて、まずはマッシュモンが、どの程度役に立つのかを検証しようじゃないか。
私はデジタルモンスターの端末をwebから切断し、我々の施設内のローカルネットワークに接続して、端末にハッキングを仕掛けてプロテクトを解除した。
そしてマッシュモンをパソコン内のビオトープへ転送した。
これで端末の中身にデジタルモンスターはいなくなった。
奴らに私の活動が知られることはない。
さて、まずは我々の施設内のローカルネットワーク内で実験をしよう。
実験用に用意したPC内の個人情報データを抜き出す実験だ。
一般的なウィルスセキュリティソフトをインストール済みのPCに対し、どれほどのことができるかを試してみた。
…
実験は成功。
マッシュモンは、ウィルスセキュリティに一切反応することなく、クレジットカードの情報を暗証番号やセキュリティコード含めて持ち帰ることに成功した。
なかなか優秀なデジモンじゃないか。
だが、この個体をそのまま利用するわけにはいかない。
私はマッシュモンを、PC内のビオトープへ移送した後、餌だけを与えて放置した。
マッシュモンからコミュニケーションを取ろうとこちらへコンタクトしてきても、完全に無視した。
マッシュモンを孤独に追いやったのだ。
お前は孤独に適応して進化した種なのだろう?…マッシュモン。
やがてマッシュモンは、孤独を紛らわすために、ビオトープ内へカビの巣を作り、その中で胞子をばら撒いた。
胞子からは菌糸が発育し、やがて小さなマッシュモンが生え始めた。
これでいい。
私は親マッシュモンを元の小さな端末へと戻し、プロテクトも修復してから、wifiへ再接続した。
これでこの端末と個体は用済みだ。
抽選に当選した本来の所有者へ、親マッシュモンごと端末を返却した。
あとは彼がデジタルペットとして適当に飼育し、無難な飼育ログを研究所へ送信し続けることだろう。
さて、先程はビオトープなどと大層な呼び方をしたが、実際にはそんな立派なものではない。
単なる飼育室だ。
我々はまだデジタルワールドにアクセスする技術を持っていない。
だからデジタルワールド由来の土や植物を敷き詰めているわけではない。
だが、そんなものは別に無くていい。
データマイニングによってデジタケを培養することさえできれば、デジモンを育てることは容易だ。
あとは…適度なストレスを与えてやれば、マッシュモン達は進化するだろうか…?
~デジタルモンスター研究所 研究員視点~
フローラモンとコマンドラモンは、今日もボットを使ったトレーニングをしたいと要求してきた。
彼らは訓練をゲームのように楽しんでいるようだ。
最近はボスマッシュモンもトレーニングに加わっている。
…マッシュモン達をユーザー達へ販売し、メインPCの奪還に成功したのは、フローラモンとコマンドラモンの協力のおかげだ。
コマンドラモンがマッシュモンの神殿内へ調査を行い、フローラモンがボスマッシュモンへ我々の言語を教えた。
だからこそ状況の把握が把握できたし、対話によって平和に事態の解決ができた。
…彼らにはいくら感謝してもし足りない。
さて、彼らの飼育をするにあたり、ひとつ課題がある。
それは…
我々が用意できるボットの性能が、彼らの戦闘能力に追いつかなくなっているのだ。
強力なボットを開発しようとしているのだが…
いかんせん、エネルギー源の出力が弱いせいか、ボットの強さが頭打ちになっているのである。
そこで、我々は武器と防具を用意して、彼らデジモン達同士での対戦をさせてみた。
防具についたボタンを押すと、ボタンに点灯しているランプが消灯する。
先に3つのランプを消灯させた方の勝ち…というルールだ。
彼らはこのゲームをとても楽しんでいた。
弱いボットではない、手強い相手と戦えて、張り合いを感じているようだ。
…もっとも、「必殺技」の使用は禁じている。
フローラモンの花粉攻撃は、強いアレルギー作用を持ち、高い制圧力を持つ。
コマンドラモンの自動小銃と爆弾は、単純に強力な殺傷能力を持つ。
マッシュモンにも、毒キノコを投げて毒の胞子をばらまく必殺技がある。
…巣にいる大量のマッシュモンに喧嘩を売っていたら、これをしこたま投げられていたと考えると恐ろしさで身が震える。
…これらの技は、単なるトレーニングで使ったら、遊びじゃ済まなくなる。
それこそ命を奪い合う死闘となってしまうだろう…。
…さて。
デジモンの飼育もいいが、デジタルワールドの観察も進めておこう。