デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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原始的哺乳類型デジモンの観察…のはずだった

ここしばらくの間、デジタルワールドに突如出現し、生息域を広げつつある、とあるデジモンについて、観察しながら研究していた。

 

この種はいずれ世界各地へ進出するだろう。

 

そのデジモンとは…

全身が薄い体毛で覆われており、長い耳と複数の尾を持つ、原始的な哺乳類の特徴を持つデジモン。

成長期のエレキモンである。

 

ベタモンが進化した成熟期の単弓類型デジモン「ディメトロモン(※1)」が産んだデジタマから産まれ育った成長期がこのエレキモンだ。

 

このエレキモンは、ベタモンやディメトロモン同様に電気で攻撃する力を持っている。

 

だが、最も特筆すべき点は…

自ら体温を調節する力を持っている、という点だ。

 

暑い時期には、発汗によって体を冷やす。

寒い時期には、体毛を増やして体温を温める。

 

…それ故に、エレキモンは「素早かった」。

決して足が速い方ではない。

 

しかし、環境の変化にとても強いのである。

 

寒冷な気候の土地で、他のデジモン達が寒さで動きを鈍らせていても、エレキモンは高い体温を維持しているため機敏に跳ね回れる。

 

灼熱の炎天下で、他のデジモン達が体温が上がりすぎないように走る力をセーブしていても、エレキモンは発汗によって体温を下げるため、スタミナが長く続く。

 

我々の世界の哺乳類は、長い間恐竜から隠れて細々と生きていたが…

エレキモンという成長期デジモンは、厳しい環境下では成熟期に襲われても生存しやすかった。

 

 

…環境への適応能力は、ヌメモン以上かもしれない…。

 

デジモンが繁栄するかどうかは、捕食者や被捕食者としての、白兵戦闘能力だけがものを言うわけではない。

 

電気を発する力や、炎を発する力といった、派手な特殊能力だけが強さというわけではない。

 

エレキモンが獲得した、体温調節能力。

こういった、自然環境への強い適応能力もまた、デジモンの「強さ」なのである。

 

このエレキモンの誕生と生息域拡大は、現在のデジタルワールドにおいて、大きなインパクトをもった現象といえる。

 

 

 

エレキモン「~♪」ピョコピョコピョコ

 

さて、デジタルワールドのとある場所で、エレキモンの一個体が移動しているのを発見した。

 

この個体を観察してみることにしよう。

 

エレキモンは、森林へ向かった。

森林に今いるデジモン達は…

 

レッドベジーモンやウッドモンといった、植物型デジモン。

 

クワガーモンやスナイモン、ゴキモンといった、昆虫型デジモン。

 

ゴツモンやスターモン等の、鉱物型デジモン。

 

最近は、そこへ新たな顔が加わっていた。

 

ステゴモン、カメレモン、パラサウモン等の爬虫類型デジモンが、サバンナから流れてきたのである。

 

これら爬虫類型デジモン達は、既存のデジモン達にとって新たな脅威となった。

 

そして、爬虫類型デジモン達は、森林に来て独自の進化をしていた。

 

全身が硬い装甲で覆われた、草食恐竜デジモンが登場した。

モノクロモンである。

 

モノクロモンは強かった。

 

それまで森林では最強でデジモンの一角を占めていたスナイモンの鎌ですら、その装甲を一撃では破壊できない。

 

むしろ、火炎弾を放って反撃し、追い払うことができた。

 

モノクロモンの武器は、厚い装甲と強力な火炎弾…

 

そして、高い消化能力である。

 

 

モノクロモンの胃袋はとても強い。

レッドベジーモン等の草食デジモンをばったばったとなぎ倒し、モリモリ食いまくっていた。

 

あのウッドモンでさえ、根によるエネルギー吸収攻撃を装甲で防がれ、逆に火炎弾で燃やされ、食われてしまっていた。

 

植物に擬態するという、攻防一体の性質を持ったウッドモン。

だが、そもそも植物を獰猛に食らうタイプのデジモンには、その擬態は通用しないのであった。

 

モノクロモンの唯一の短所は、スピードがそれほど速くないという点である。

 

全身が筋肉と重い装甲で覆われているため、パワーは物凄いが、スピードは速い方とはいえない。

 

だが、それは他の爬虫類型デジモンに比べれば…の話だ。

大半の植物型デジモンは、動物型デジモンよりもスピードが遅い。

そのため、モノクロモンは植物型デジモンに対して猛威を振るったのである。

 

 

…だが、そんなモノクロモンを追って、サバンナから強力な刺客がやってきた。

二本の長いツノを背中から生やした、肉食恐竜デジモン…タスクモンである。

 

タスクモン「グルル…」ズシンズシンズシン

 

モノクロモン「…!」

 

タスクモンは、モノクロモンを見つけると、長い助走距離をとり…

 

タスクモン「ガアアァァ!」ズドドドドドドドド

 

一気に突進した。

 

モノクロモン「ゴオオォォ!」ボゥン

 

モノクロモンは、火炎弾を放って迎撃を試みた。

 

タスクモン「ガァウ!」ボゴォ

 

タスクモンの頭部に、火炎弾が命中した。

皮膚が焼け爛れ、おびただしい出血をしている。

 

タスクモン「グゥアオオォォォ!!」ズズンズズンズズン

 

モノクロモン「バァウ!?」

 

だが、タスクモンは突進を続けた。

間違いなく火炎弾で頭部にダメージを受けている。

決して軽傷ではない。

 

それでも尚、一切勢いを殺さず、モノクロモンに突進を行った。

 

タスクモン「ガウウウゥゥウ!!」ドッゴォオォォ

 

ついに、タスクモンの突進攻撃がモノクロモンの装甲にぶち当たった。

 

モノクロモン「ギャアアアアウウゥ!?」ズガァァッ ゴロゴロ

 

モノクロは、その強い足でふんばったが…

突進攻撃の勢いに負け、転倒した。

 

タスクモン「グゥ、ガウウゥゥ!!」ガクガクフラフラ

 

モノクロモンの硬い装甲へ頭から全力で突っ込んだタスクモンは、脳震盪を起こしたのか、ふらふらと体を揺らつかせている。

 

タスクモン「ガァア!グガアァ!」ドゴォ

 

だが、意識がおぼつかない状態でありながら、執念でモノクロモンの腹部へ角による刺突攻撃を行った。

 

モノクロモン「ギャアアウウゥ!!」ブシュウウゥ

 

転倒中のモノクロモンの腹部に、タスクモンの鋭い角が突き刺さった。

 

モノクロモン「ガウウウゥ!」

 

モノクロモンはタスクモンを睨みつけている。

 

モノクロモンは、腹部には装甲がない。

そのため腹部は護りが弱いといえる…?

 

…否。

 

モノクロモンの腹部には、厚い筋肉の装甲があるのである。

 

角の刺突が内臓に達しても尚、モノクロモンに怯えはない。

 

モノクロモン「バァウ!」ボウウゥゥ

 

モノクロモンは至近距離から、タスクモンの顔面へ火炎弾を放った。

 

タスクモン「ギャアアウウゥ!」ジュウゥウゥ

 

タスクモンの顔を火炎弾が焼く。

 

二体の恐竜型デジモンは、激しい死闘を繰り広げた。

 

…十分近くも続いた死闘の後…。

 

モノクロモン「…ガフ、ゴゥ…」ドサァ

 

モノクロモンはとうとう、出血性ショックで倒れた。

 

タスクモン「ガウ、ゥ…」ドサァ

 

だが、火炎弾をしこたま喰らいまくったタスクモンも、同時に倒れた。

ダブルノックアウトである。

 

モノクロモン&タスクモン「…」ブルブル

 

二体の恐竜型デジモンは、必死に体を起こそうとしているが、もうその体力はないらしい。

 

そこへ、二匹のデジモンが近付いてきた。

 

スナイモン&ウッドモン「フシュウゥウ…」ジュルル

 

森にもともと住んでいた捕食者、スナイモン&ウッドモンである。

 

モノクロモン&タスクモン「…」

 

スナイモン「シャアァ!」ズバアァ

 

スナイモンは、モノクロモンの腹部の筋肉の鎧を、鋭い鎌で切り裂いた。

 

ウッドモン「フシュウゥウ!」シュルシュル

 

ウッドモンは、タスクモンの傷口へ根を突き刺し、体液を吸い尽くした。

 

…モノクロモンとタスクモンは、これらの個体だけではない。

 

複数の個体が森林にやってきて、猛威を振るっている。

 

…モノクロモンの方はまあ、分かるが…

タスクモンの方は…

 

 

…何だこいつは!?

何がしたかったんだ!?

 

自分から襲っておいて、共倒れになるまで戦い続けるとは…

その凶暴性は、はっきり言って捕食者としても異常の域にある。

 

並のデジモンなら、ここまでこっぴどく火炎弾で反撃されれば、戦意喪失して逃走するもんである。

 

一体なにがタスクモンをここまでつき動かすのであろうか…

 

 

 

 

その後、森林に来たタスクモン達とモノクロモン達がどうなったかというと…

 

モノクロモンは、森林に馴染み、覇者として君臨した。

 

だがタスクモンはというと…

森林にうまく適応できなかった。

 

必殺の突進攻撃をしようにも、木々が立ち並ぶ森林の中では、十分な助走距離が稼げないのである。

 

さらに、その長い角と巨大な肉体は、木の枝に進路を遮られてしまうこともある。

 

結果、タスクモン達は、莫大な消費カロリーを補うことができず、どんどん痩せこけていった。

 

タスクモン達は、あらん限りの力を振り絞って、森林にデジタマを産んだ。

 

そして…

 

…痩せこけた体で、サバンナへと引き返していった。

 

 

サバンナに戻ってからのタスクモン達は、パラサウモンやレッドベジーモン、スナイモン等の強豪を突進攻撃によって次々と打倒し、捕食していった。

 

痩せこけたタスクモン達の肉体は、みるみるうちに力強さが戻っていった。

 

 

…タスクモンは、決して弱いデジモンではない。

むしろ、ここサバンナでは最強のデジモンと言っても過言ではないだろう。

 

だが、「見晴らしのいい平原で、強烈な突進攻撃で獲物を仕留めることに特化する」という、サバンナの環境へ先鋭化しすぎた適応をしてしまったがために、環境の変化に弱くなってしまったのである。

 

…やがて、森林にタスクモン質が残してきたデジタマに、ヒビが入った。

 

何が生まれてくるのであろうか…。

 

 

 

 

…さて。

 

エレキモンがやってきたのは、そんな激しい弱肉強食の世界である。

 

エレキモンは、この環境に適応できるのだろうか…?




※1 ディメトロモンについて…
公式のデジモン図鑑には存在していない、単弓類の「ディメトロドン」をモチーフにした架空のデジモン。
両生類と哺乳類のミッシングリンクに該当するモチーフの成熟期デジモンが公式で見つからなかったため、やむを得ず名前だけ出しました。

本作では、オリジナルデジモンはなるべく登場させず、せいぜいミッシングリンクを埋めるために名前だけ出すだけに留める方針としています。
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