さて。森林では、エレキモンが来る前にそんな動きがあった。
我々は再び、森林に来たエレキモンの動向を観察することにした。
どうやらこのエレキモンは、兄弟4匹で森林にやってきたようだ。
エレキモンは、雑食性のようだが…
あまり狩りが得意な方ではないようだ。
川でプカモンを捕まえて捕食したり、熟れて木から落ちた果実を食べたりしている。
強力な外敵が来たらすぐに逃げ、時には電気を発して身を守った。
だが、4兄弟のうち1匹は、岩石の外殻を持つ強大な捕食者…
ゴーレモンに叩き潰され、そのまま食われてしまった。
岩石の外殻には、エレキモンの電気は効かなかったのである。
エレキモン達は、森林の厳しい生存競争の中で、さらなる進化を求めたようだ。
どんな進化をするか…
エレキモンのうち一匹は、川の近くで暮らすようになった。
エレキモンの電撃攻撃は、水中の獲物を仕留めるのに便利だったからだ。
やがてエレキモンは、川を下っていき、森林を離れ、水中に適応していった。
…河口や海を自在に泳げるように進化したエレキモン。
その姿は、イルカによく似ていた。
エレキモン改めルカモンは、放電能力を応用して超音波を発生させ、水中の獲物を仕留めることができるようになった。
ゲソモンやティロモン、エビドラモンといった、既存の海中デジモンは、この突如現れた存在に大いに驚いたようだ。
陸上だけでなく、水中の環境も、どんどん変化していく…。
二匹目のエレキモンは、大型草食デジモンとなる道を選んだ。
だが、ただの草食獣ではない。
エレキモンという、発電能力を持ったデジモンは、己の発電能力を、炎を発する力へと変えた。
そうしてエレキモンは、熱く、力強い進化を遂げた。
燃える体を持つ、イノシシ型デジモン…ボアモン。
その突進攻撃は、かつてのタスクモンを彷彿とさせる。
違うところは、体当たりの威力そのもので敵を仕留めることではなく、敵を追いかけてから頭突きを放って牙を突き刺すことでダメージを与えるという点である。
タスクモンほどの威力は発揮できないが、森林の中をジグザグに走りながらでも威力を維持できる、環境に適した進化である。
それだけではない。
鼻から炎を噴射して、植物型デジモンを丸焼きにしてしまうこともできた。
ボアモンは、モノクロモンとはまた別の方向性で、攻防一体の力を持つ強豪となったのであった。
そして最後の一匹のエレキモンは…
驚くべき進化をした。
このエレキモンはおそらく、昆虫型や爬虫類型のデジモンが、冬の間は活動が鈍ることを知っていたのだろう。
エレキモン自身の記憶か、親から受け継いだ遺伝子か、その両方か…。
炎を身に纏ったボアモンとは対象的に…
3匹目のエレキモンは、「氷」を身に纏った。
透き通った水晶を背負った、ハリモグラのようなデジモン…トゲモグモン。
それが3匹目のエレキモンが辿り着いた姿であった。
トゲモグモンの背中に触れたデジモンは、瞬く間に触れたところから凍りついてしまう。
変温動物のデジモン達は、体温を自力で上げることが不得意であるため、触り続けていればどんどん末端から凍っていき、あるいは凍傷で身体組織が損傷していく。
ひとたび身を丸めれば、トゲモグモンの防御を崩せる肉食デジモンはいなかった。
スナイモンの鎌も、ゴーレモンの拳も防いでみせた。
鉄壁の防御力を身に着けた草食デジモン、トゲモグモン…
彼は無敵となったのであろうか?
…否。トゲモグモンにも嫌がる相手がいる。
野生のマッシュモンである。
並の植物デジモンならば敵ではないが、マッシュモンをうっかり食べてしまったときは、苦しそうに嘔吐していた。
…デジモンは、攻撃手段だけでなく、身を護る手段もバラエティに富んでいる。
森から川や海へと移り住んだルカモンは置いといて…
森林では、ボアモンとトゲモグモンという、2体の哺乳類型成熟期デジモンが進化に成功した。
優秀な戦闘能力と生存能力持ったボアモンとトゲモグモンは、これからデジタマを産み、子孫を残していくであろう…。
…だが、その頃。
森の中では、もうひとつの大きな存在が、息吹を上げていた。
…自身の生命すらも擲って、強大な敵を打ち倒す、狂暴な破壊者の子孫が、覚醒したのである。
トゲモグモンが、植物をバリバリムシャムシャと食べていると…
突如、森の奥から、恐ろしい咆哮が響いてきた。
驚いたトゲモグモンが、反射的に飛び退くと…
森の奥から凄まじい勢いの火炎放射が飛んできた。
火炎放射は、先程までトゲモグモンがいた場所を通過した。
…火が消えると、遠くから一直線に木々が焼き払われ、灰と化していた。
やがて、火炎放射が飛んできた方から、ズシン、ズシン…と、地響きのような足音が近付いてくる。
何事かと驚いた2代目スターモンが、空の向こうから飛んできた。
空中を飛びながら、様子を伺うスターモン。
スターモンが見たものは…
3体の巨大な恐竜デジモン達…
ティラノモン(※1)、グラウモン、グレイモンが、口から火炎放射を放って森林を焼き払っている現場であった。
3体の恐竜型デジモンは、口から炎を吐いて森林を焼き払った。
そして火から逃げ出したデジモン達へ、追い打ちのように火炎放射を浴びせた。
そうやって大勢のデジモン達を焼き殺し、その死骸を貪り食った。
…デジモンは、基礎代謝量(消費カロリーの多さ)に比例して強くなる傾向がある。
森林を焼き尽くし、暴食を続けるこれらのデジモン達…
ティラノモン、グラウモン、グレイモン達は、恐るべき強さを持っていた。
スターモンは、4体の成熟期デジモンを引き連れて、恐竜型デジモンへ挑んだ。
ゴーレモンとクワガーモン。
そしてカブトムシのような姿をした成熟期の甲虫型デジモンであるカブテリモン。
最後に、土でできた大きなテディベア…のような姿をした、ツチダルモンだ。
スターモン陣営の編成は「鉱物型デジモン」と「草食昆虫型デジモン」から成っていた。
おそらくスターモンが守ったテントモンやゴツモンから進化した成熟期デジモンなのだろう。
そうして、5対3の熾烈な戦いが繰り広げられたが…
やがてクワガーモンとツチダルモンが打ち倒された。
劣勢となったスターモン陣営は、スターモンがしんがりを務め、傷ついたゴーレモンとカブテリモンは撤退した。
スターモンは最後まで立ち向かったが…
3体全員からの火炎放射を浴び、焼き尽くされた。
クワガーモンの死骸はバラバラに解体されて食い尽くされた。
ツチダルモンとスターモンは、外殻を取り除かれた後、内部の筋肉や内臓といった軟組織をすすり食われた。
※1 ティラノモンについて…
ここで登場した「ティラノモン」は、公式デジモン図鑑でいうところの「ダークティラノモン」に相当します。
しかし、赤い方のティラノモンがまだ発見されていないため、ダークの方が「ティラノモン」と呼称されています。