ブロッサモンは、満身創痍ながらも戦おうとする。
これだけの体力…おそらくジャガモンと同じく、レベル5に到達したデジモンなのだろう。
だが、どう見てもブロッサモンは限界だ。
レベル4デジモン5体による巧みな連携攻撃で、戦闘不能のダメージを受けてしまったとしか言えない。
次にタスクモン達が突っ込んできたら、完全なトドメを刺されてしまうはずだ。
…構えるブロッサモンに、グレイモンは火炎放射を放った。
最初に見たときよりも、威力は著しく減衰している。
だが、全身大火傷な上に、蔓を再生する体力も尽きかけているブロッサモンには、それでも大ダメージであった。
残り少ない蔓で防御するも、蔓の壁は長くはもたなかった。
グレイモンの火炎放射が止まった。
反撃のチャンスがブロッサモンに訪れたが…
ブロッサモンは、攻撃用の蔓の用意が間に合わなかった。
やがてグラウモンが、波状攻撃を狙って炎をチャージした。
戦いを見守るジャガモンの目の前で、ブロッサモンは必死で蔓を再生しているが…
生えかかった蔓を、グレイモンが食いちぎった。
…これではもう、防御は間に合わない。
最早、ブロッサモンに、グラウモンの火炎放射を止める術はない。
グラウモンが火炎放射を浴びせようとしたその時…
何者かの影が、木々の間をくぐり抜けて、グラウモンの足へと突進してきた。
グラウモンは、首の向きを突っ込んできた影の方へ向けた。
そしてその影へ、火炎放射を放った。
威力が衰えたとはいえ、レベル4の中でも上位の強さを持つスターモンを安々と仕留め、レベル5のブロッサモン相手ですらダメージを与える火炎放射だ。
並大抵のデジモンでは耐えられまい。
だが、その突っ込んできた影は…
炎に包まれても尚、平然としていた。
それはそうだろう。
その肉体は、元から炎に包まれているのだから。
エレキモンから進化した哺乳類型デジモン、ボアモン。
ボアモンは火炎放射を突っ切って、グラウモンの足へ突進攻撃を浴びせた。
グラウモンは、ブロッサモンとの取っ組み合いでダメージが蓄積していたのだろう。
足が歪な形に折れ曲がり、その場に転倒した。
相方が急に襲われて驚いたグレイモン。
だがグレイモンは、ボアモンと戦う前に、ブロッサモンを確実に仕留めるべきだと考えたのだろう。
火炎放射のチャージが間に合っていないためか、強靭なアゴでブロッサモンの頭を食いちぎろうとした。
…その時。
グレイモンは、足元に弱そうでちっこいデジモンがいることに気付いた。
そのデジモンは背中がややトゲトゲしているが、見るからに弱そうだ。
邪魔に思ったグレイモンは、そのデジモンを右足で踏み潰そうとして踏みつけた。
…グレイモンの右足の裏に、トゲモグモンの背中から生えた硬い氷のトゲが突き刺さった。
そして刺さったトゲによって、体内から血液を急速に冷やされていった。
右足は足元からどんどん凍っていく。
グレイモンは悲鳴を上げた。
中途半端なチャージで微妙な火力の火炎放射を、自分の右足に突き刺さったトゲモグモンへ浴びせた。
だが、トゲモグモンは極めて高い防御力を持つ。
火炎放射を浴びても、己の冷気で相殺してダメージを抑えた。
トゲモグモンの水晶が突き刺さった右足は、脛から下が完全に凍ってしまった。
凍った右足から上ってきた、冷された血液が、グレイモンの体内を巡った。
なんとかしてトゲモグモンを引き剥がそうとして、右足を地面へ叩きつけるグレイモン。
さすがにグレイモンの足のパワーは凄まじい。
やがて凍った右足が割れて、トゲモグモンを足の裏の皮膚ごと引き剥がした。
地面に叩きつけられた衝撃で吹っ飛び、そのまま燃えかけた木に引っかかったトゲモグモン。
しばらくの間は、グレイモンのところへ戻ってはこないだろう。
グレイモンはショックを受けているようだ。
こんなわけのわからないチビのせいで、右足に甚大なダメージを負わされたのだから。
グラウモンは、折れた足を庇いながら、なんとか強靭な腕の刃でボアモンの腹へ斬撃を叩き込んだ。
致命傷には至らずとも、大ダメージを受けて出血したボアモン。
これ以上は危険と考えたのか、トゲモグモンが飛んでいった木の方へ逃げていった。
思わぬ邪魔者のせいで、チャージした火炎放射を消費させられたグレイモンとグラウモン。
その隙を、ブロッサモンは見逃さなかった。
ボアモンとトゲモグモンが時間を稼いだ間に、なんとか再生が間に合った僅かな蔓で、グラウモンを縛り上げた。
そしてブロッサモンは、暴れるグラウモンの首へ噛みついた。
このまま頸動脈を噛み千切って致命傷を与えるつもりだ…!
…ブロッサモンは、見逃さなかった。
再び、燃え尽きた木々が埃を巻き上げ、タスクモン達が突進してくるのを。
ブロッサモンは、地面に横たわっているティラノモンを掴み上げると、グラウモンとともにタスクモン達の方へ投げ飛ばした。
自分の子供達を投げ飛ばされたタスクモン達は…
無意識に、足にブレーキをかけてしまった。
突進攻撃をくらったティラノモンは真っ二つに千切れ飛んだ。
グラウモンは、タスクモンの頭突きを背中にくらい、背骨をへし折られた。
体当たりがブロッサモンに当たった頃には、その衝撃は大分相殺されていた。
とはいえ、ブレーキをかけ、グラウモン達を跳ね飛ばして尚、タスクモン達の突進攻撃は強烈だった。
特に、ブロッサモンのように、移動が苦手な植物型デジモンには、突進攻撃は効果的だった。
攻撃をくらい、倒れるブロッサモン。
タスクモン達は、ブロッサモンを仕留めようとする。
…彼らの前に、ジャガモンが立ち塞がった。
先程ジャガモンが体内に収納していた避難デジモン達は、ジャガモンの中から出て森のむこうへ逃げていった。
火炎放射を吐く恐獣達がもはや戦闘不能になったことを察したためであろう。
ブロッサモンは、ジャガモンを睨んで吠える。
邪魔をするなとでも言いたいのだろうか…。
だがジャガモンは、ブロッサモンの声を無視した。
タスクモン達が、ジャガモンと取っ組み合った。
ジャガモンは、頭突き攻撃をしたり、岩を飛ばしたりして、タスクモンを攻撃した。
右足に酷い凍傷を負ったグレイモンは、タスクモンに加勢しようとする。
背骨が折れたグラウモンもまた、上半身だけで地面を這い、ジャガモンにどうにか攻撃しようとする。
だが、タスクモン達は、グレイモンとグラウモンを睨むと、吠えた。
先程ブロッサモンがジャガモンに吠えたのと同じように。
…グレイモンは、右足を引きずりながら逃走した。
グラウモンもまた、腕だけで這ってその場から逃げ出した。
ジャガモンの張り手を食らい、吹き飛んだタスクモン達。
ジャガモンとの力量差を感じ取りながらも、尚もジャガモンへ襲いかかる。
ジャガモンは、タスクモンのうち一体を地面にうつ伏せに突っ伏させると、前足で思い切り頭を踏みつけた。
タスクモンの硬い頭蓋骨に、ヒビが入った。
ジャガモンは、何度もタスクモンの頭を踏みつける。
やがて、そのタスクモンの頭は潰れた。
グラウモンとグレイモンは、その場から逃げていた。
だが、右足だけが駄目になったグレイモンと違い、グラウモンは背骨が折れている。
なんとかして這って逃げ延びようとしたが…
途中、グラウモンの目の前に、スナイモン、ゴーレモン、ウッドモン、ドクグモンが現れた。
ブロッサモン戦で火炎放射のエネルギーを使い果たしたグラウモンは、もはやまともに戦える状態ではなかった。
ドクグモンに麻痺毒を注入され。
スナイモンに切り刻まれ。
ゴーレモンに叩きのめされ。
ウッドモンに体液を吸いつくされた。
…そうして、グラウモンの肉体は、森の養分へと還っていった。
そんな相方の無残な最期を横目に、グレイモンは山岳地帯の方へと去っていった…。
地面に倒れ伏し、ジャガモンを睨む、二体目のタスクモン。
ジャガモンは、その首を踏みつけると、足から伸ばした根を首へ突き刺し、血液を吸い上げた。
やがてタスクモンは動かなくなった。
…逃げ延びたグレイモン一体を除き、敵は全滅したのである。
…タスクモンは、足の速さではジャガモンより上だ。
立ち向かうのを諦めて、逃げてしまえば、生き延びることができたはずだ。
一体なぜ、そうしなかったのだろうか…。
…死人に口なしである。
ジャガモンは、タスクモンのうち一体を捕食した。
レベル5のデジモンは、ただ生きているだけで、莫大なカロリーを基礎代謝として消費する。
戦いを終えたジャガモンは、タスクモンから栄養を取らなくてはならなかった。
傷付いて戦闘不能となったブロッサモンは、やがて体を起こした。
ジャガモンは、真っ二つになったティラノモンの死骸を、ブロッサモンに与えた。
ブロッサモンは、落ち込んだような表情をしていたが、腹の虫には逆らえないのか、ティラノモンを食って栄養補給をした。
ジャガモンは、焼け野原となった森林を眺めていた。
だが、消耗した体力を回復するためか、ひとまず休息を取ることにしたようだ。
…結局、ブロッサモンはなぜ、一人で戦うことに拘ったのだろうか。
最初からジャガモンの力を借りていれば、これほど瀕死に追い込まれることもなかったというのに。
…理由は不明である。
それにしても…
このタスクモン達は、引き下がらずに命を落としこそしたが、恐ろしく狡猾な手段で森林地域の支配を試みた。
己が環境に適応するのでなく、環境を己に合わせるという発想…。
この恐るべき知能と発想は、どこから来たのであろうか。
そして、タスクモン達のこの作戦は、「火」の性質と利用法を知っていなければできなかったことだ。
タスクモン達は、どこで火の使い方を学んだのだろうか…。
休眠するために、地中へと潜ろうとするブロッサモン。
茎などが地面へ埋まっていく。
やがて頭といくつかの葉だけが地面から出た状態となった。
このまま、地面から栄養を吸収しながら光合成を行い、体力を回復するのだろうか…。
そうして休もうとしているブロッサモンの顔面に。
突如、空中から放たれたビーム攻撃が直撃した。
叫び声をあげるブロッサモン。
ジャガモンは、何事かと振り返った。
ブロッサモンは、ビームが飛んできた方を振り向いた…。
その直後。
空中から奇襲してきた何者かが、鋭い針の攻撃で、ブロッサモンの右目を貫いた。
そして、そのまま右目をくり抜いてしまった。
針で攻撃したのは、人のような手足と胴体を持った蜂の姿をした昆虫型デジモン…スティングモンであった。
そして、昆虫型デジモンの隣に、空中からビームを放ったデジモンが降りてきた。
…そのデジモンは、なんと呼ぶべきだろうか…
グレイモンのような恐竜型デジモンとはちょっと違う。
あえて言うなら、爬虫類型…
いや、竜人型。
ニ本足で立ち、背中に翼を持つ竜人型デジモンだ。
その面影は、どこか見覚えがある。
このデジモンととてもよく似た姿を、どこかで我々は見たことがあった。
「蜂型デジモンと共生しながら暮らす、爬虫類型デジモン」
…そんなデジモン達の集団を、どこかで見た覚えがある。
そこにいた成長期デジモン、ブイモンの面影があるこの竜人型デジモンを、我々はエクスブイモンと呼称した。
ジャガモンは、最早ブロッサモンには戦う力も、自力で身を隠す力もないと察したのだろうか。
これまで聞いたことのない咆哮を上げて、二体のデジモンへ襲いかかった。
ジャガモンは、2体のレベル4デジモンが融合して生まれたレベル5デジモンである。
目の前の敵デジモンは、技の威力を見るに並~上位レベルの成熟期相当であろう。
単純な実力では、ジャガモンは負けることはないだろう。
だが、二体のデジモンは、予想外のことをしでかした。
なんとスティングモンは、己の肉体をバラバラにして、エクスブイモンへ鎧のようにくっついたのである。
…我々は言葉を失った。
いったいどんな肉体構造をしていれば、こんなことができるのだろうか。
合体デジモンは、全身にスティングモンの外殻を装甲のように纏っている。
スティングモンの腕がそのままエクスブイモンの腕に手甲のように装着されており、パワフルな腕力を感じさせる。
我々は暫定的に、この合体デジモンを、パイルドラモンと呼称した。