デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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骸の観察

私はグレイモンの観察レポートをまとめ、研究チームへ提出した。

そして、チーム内でレポートを共有することにした。

どうやら、私以外にも、「あの戦いの後」についてレポートをまとめていた研究員がいたようだ。

 

 

リーダーは私へ、至急レポート「ブロッサモンの死骸の観察」を閲覧するように指示した。

 

デジモンの死骸がどうしたというのだろうか…?

 

レポートは、ドキュメントと映像記録の2つで構成されている。

私はまず映像記録を確認した。

 

 

 

映像に映ったのは、ブロッサモンの死骸だ。

謎の合体デジモンに首を千切られて持っていかれてしまい、胴体が半分地面に埋まった状態である。

これがどうしたというのだろうか…?

 

…しばらく観察していると、ブロッサモンの胴体が蠢き始めた。

まさか、生き返るのか…?

 

次の瞬間、全く予想していなかったことが起こった。

 

ブロッサモンの胴体が引き裂かれ、中から何かが出てきたのである。

 

現れたのは…

上半身だけで地面を這いずる、全身ドロドロのデジモンである。

 

これは、既に面影がないが…

おそらくブロッサモンに丸飲みにされたはずのティラノモンである。

 

私は目を疑った。

ばかな。

ティラノモンは死んだはずでは…!?

 

私はいったん映像を止め、レポートに目を通した。

なぜ、死んだはずのティラノモンが蘇生したのか…?

 

…いや。そもそも、死んだはずという前提が間違っていた。

我々は、ティラノモンが明確に「死んだ」ことを見届けていないのである。

 

改めて、ティラノモンが負ったダメージを再確認しよう。

 

ブロッサモンの花弁の刃では首を真横に切り裂かれ、夥しい出血をしながら倒れ、それっきり動かなくなった。

その後、タスクモンの突進攻撃をくらい、

真っ二つに千切れ飛んだ。

 

そして、ブロッサモンに丸呑みにされた。

 

 

…これで死んだと思わない方がおかしいだろう!

頸動脈を切断されて、下半身が千切れ飛んで、何故死なないんだ!?

 

…いや、「まだ死んでいない」というだけのようだ。

 

胴体の傷から臓物を晒しながら、上半身だけで地を這い、胃液で溶かされた痛々しい姿を晒すティラノモン。

首からの出血は未だに止まっていない。

 

生への執着はすさまじいが、あのままでは…

やがて死ぬだろう。

 

ティラノモンは、弱々しく地面を這っているが…

やがて、その力は弱くなっていった。

 

ついに、その場から一歩も動けなくなり、腕を動かすことが精一杯になった。

 

…ティラノモンはここまでだろう。

そう思った、その時。

 

ティラノモンの前に、大きなデジタルゲートがほど開いた。

 

…デジタルゲートとは、我々が研究室のサーバーからデジタルワールドへ、デジドローンを転送するときに空けるゲートだ。

ティラノモンは、最後の力を振り絞り、そのデジタルゲートへ入った。

ティラノモンが入ったデジタルゲートは、やがて閉じられた。

 

…以上が、1つめの映像ファイルである。

 

これは…どういうことだ?

デジタルゲートを通じて、瀕死のティラノモンを我々のサーバーに連れ込んだということだろうか?

 

リーダーに確認したところ、なんと「あのゲートについては何も知らない」とのことである。

 

ばかな…

するとあのゲートは、我々が全く知らない、何者かによって空けられたということだろうか。

そして、その何者かは、瀕死のティラノモンを捕獲した…?

 

つまり、我々以外にも、誰かがデジタルワールドに干渉し始めたということだろうか…。

 

このレポートを書いた研究員は、このとき空いたデジタルゲートを分析し、特有の信号パターンを記録した。

 

もしも今後、同じデジタルゲートを目撃したときは、照合することができるだろう。

 

 

…さて。

ティラノモンを助けた者は、何が目的なのだろうか?

 

憐れみからきたものなのか。

研究対象とするためなのか。

あるいは…。

 

 

 

 

…レポートには、2つめの映像が添付されていた。

再生してみよう。

 

時期的には、グレイモンがタマゴを産み、それらが成長期まで育った頃のことだ。

 

ブロッサモンの死骸があった場所。

既に死骸はヌメモン達によって食い尽くされており何もなくなっていた。

 

その場に、例の信号パターンを示すデジタルゲートが開いた。

やがて、ゲートの中から何かが出てきた…。

 

こ…これは!?

おぞましい姿のデジモンが、ゲートから這い出てきたのである。

 

腐りかけたおぞましい姿。

下半身を失ったまま、腕だけでズルズルと這い回っている。

 

どうやら、機械のようなものが体に埋め込まれているようだ…。

まさか、これはティラノモンの成れの果てなのだろうか?

やがて、ゲートからはデジドローンが飛んできて、死にかけのデジモンを観察し始めた。

 

我々は、このデジモンをレアモンと名付けた。

レアとは、rare…『希薄な』を意味する単語に由来している。

途絶えかけた希薄な命を表す名である。

 

レアモンの周りに、ヌメモンやゴキモン等のスカベンジャーデジモンが寄ってきたが…

レアモンは、それらにガスを吹きかけた。

するとヌメモン達は、体の表面が焼けただれていき、苦しんだ。

 

どうやらあのガスは、かつて炎を吐く力だったものの名残りのようだ。

硫酸かなにかだろうか…。

 

そしてレアモンは、己の肉片を千切ってヌメモンへ投げつけて攻撃した。

そして弱ったヌメモンを、己の肉片ごと食べた。

 

…おぞましい。

それ以外に、形容する言葉が見つからなかった。

 

そのうち、ウッドモンやスナイモンが、レアモンを発見したが…

 

彼らはあまりの悪臭に耐えきれず、その場から離れた。

 

「あんなものを食ったら病気になる」と思ったのだろうか。

実際そうなるだろうな…。

 

そうしてレアモンは、悪臭によって外敵を退けながら、悪臭に惹かれてきたスカベンジャーデジモン達を捕食し続けた…。

 

 

果たして、こんな姿になったティラノモンは、今に満足しているのだろうか。

生き続けていて、辛くないのだろうか。

 

…その答えは。

あんな姿になっても尚、必死に生きようと足掻き続ける様が、全てだと言えるだろう…。

 

 

 

…以上が、レポート「ブロッサモンの死骸の観察」である。

 

なんということであろうか…

この先レアモンは、どうなるのであろうか。

全く予想がつかない…。

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