デジモン達は、デジタルワールドでどんどん生息分布を広げていく。
森林やサバンナ、密林、寒冷地帯、湿地帯など…。
やがてデジモンは、険しい山岳地帯へと進出しようとしていた。
山の麓には森林が生い茂っているが、高度が増すにつれ、ゴツゴツとした岩肌が露出している。
大地が大きく傾き、デコボコしている。
それ故か、モノクロモンのように重い体を持つデジモンは、この環境に不向きなようだ。
既に植物型デジモンや、テントモン等の羽をもつ昆虫型デジモン達は、この環境に適応していた。
そんな中に、グレイモンの子供のうち二体…
ファルコモンとヴォーボモンがやってきた。
ファルコモンは、小型恐竜デジモン、アグモンに近い種である。
…といっても、アグモンをそもそも紹介していなかったか。
アグモンは、グレイモンやティラノモン、グラウモンの進化前の成長期デジモンだ。
二足歩行の小型恐竜型デジモンであり、爪が生えた大きな腕と、小型火炎弾を吐く力を持っている。
そんなアグモンとファルコモンは、鋭い爪をもち、地面をどしどしと直立二足歩行するという共通点がある。
アグモンとの大きな違いは、ファルコモンは硬い嘴と羽毛を持つことだ。
その嘴は、地面をつついて植物を掘り起こして食べたり、攻撃に使ったり、巣材を折ったり…様々な用途があった。
その羽毛は、体温を維持するのに役立った。羽毛の中に空気を含んでいるため、体温を奪われにくい。また、撥水性をもつため、雨にぬれても強い。
ときに巣材になったりもする。
ファルコモンは、アグモンより確実に進化した種であった。
ヴォーボモンは、以前翼竜型デジモンと紹介したが…
実際のところ、飛行能力はない。
全身を鉄のように硬くて重い甲殻で覆っているため、重くて飛べないのである。
その翼は、先端がナイフのように鋭いため、飛行ではなく敵に打ち付ける武器として使っていたようだ。
ヴォーボモンとファルコモンは山岳地帯へ到達すると、別れて別々に住むことにしたようだ。
狂暴な捕食者の遺伝子を受け継いだ彼らは、群れて暮らすよりも単独最強のハンターを目指しているのだろう。
やがてファルコモンは、レベル4へ進化し、さらに強靭な肉体を手に入れた。
ニワトリに似た姿のデジモン、コカトリモン。
だがその暴れっぷりは、ニワトリというより恐鳥類に近かった。
これまで、デジモンはただひたすらデカくて強ければよい、というわけではないことが、繰り返し語られてきた。
だが、レベル4としての強さの極限を攻めた、巨躯をもつグレイモン。
その子供であるコカトリモンもまた、親同様に、強さと狂暴さを極めようとしていた。
コカトリモンは極めて獰猛であり、直系の祖先であるタスクモンを彷彿とさせる暴れっぷりを見せた。
あるとき、コカトリモンは、山岳地帯で他のデジモンを発見した。
テントモンに近い種とみられる、レベル3デジモン…
コカブテリモンである。
コカトリモンは、コカブテリモンに襲いかかると、鋭いクチバシをコカブテリモンの頭部に力強く打ち付けた。
コカブテリモンの頭部は、アイスピックを振り下ろされた氷のように粉砕された。
コカトリモンは鋭い爪とクチバシで、コカブテリモンを八つ裂きにし、バラバラにして食べた。
コカトリモンは、コカブテリモンを食っている最中に、また新たなデジモンを発見した。
カラツキヌメモンの子孫とみられる、モリシェルモンである。
コカブテリモンの死骸を放置して、雄叫びをあげてモリシェルモンへ襲いかかるコカトリモン。
モリシェルモンは、固い殻の中に隠れた。
だがコカトリモンは、鋭いクチバシを、モリシェルモンの殻へ打ち付け続けた。
やがてモリシェルモンの殻は、アイスピックを突き立てられた氷のように砕けた。
そうしてコカトリモンは、モリシェルモンの軟らかい体を食い千切って捕食した。
暴れて抵抗するモリシェルモンであったが…
コカトリモンは、モリシェルモンの頭部へクチバシを突き刺し、脳を引きずり出して食った。
なんという獰猛さであろうか…。
ある時、コカトリモンは強敵と出会った。
昆虫族の中でも上位の強さを誇る、スナイモンである。
かのスターモンと互角の戦闘力を持つ種だ。戦いは避けた方がよいだろう。
だが、コカトリモンは雄叫びをあげ、スナイモンに襲いかかった。
スナイモンの鋭い刃がコカトリモンに振りかざされる。
凄まじいスピードだ。
だが、コカトリモンは口から炎のようなものを吐き、スナイモンの刃に浴びせた。
スナイモンの刃は、溶けたセメントのような物質で覆われた。
刃についたセメントはすぐに硬化した。
これでは自慢の切れ味が活かせない。
コカトリモンは、スナイモンの関節部へ、この炎を吐きつけた。
スナイモンの関節部はどんどんセメントで固められ、動きが鈍っていった。
やがてコカトリモンは、スナイモンの首に噛みつくと…
頭部を噛みちぎって切断した。
我々は驚いた。
あのスナイモンを、ここまで圧倒するとは。
さすがはグレイモンの子孫…。
コカトリモンは、スナイモンを解体して捕食した。
翌日、再びデジモン狩りをするコカトリモン。
新たな獲物はすぐに見つかった。
ヤギ型デジモン…ゴートモン。
ボアモンの子供だ。
コカトリモンはニタリと笑うと、食いかけのコカブテリモンを捨て置き、ゴートモンの方へ駆け出した。
ゴートモンは、蹄のある自慢の脚で逃げ出した。
さすが走ることが得意なボアモンの子だけあって、走行スピードは速い。
木々の間を縫うように、機敏な走りを見せた。
だが、コカトリモンも猛スピードで爆走し、ゴートモンを追いかけた。
凄まじいパワーのクチバシで木々をへし折ってなぎ倒しながら追跡する。
やがてゴートモンは、険しい崖へと追い詰められた。
コカトリモンは、ゴートモンを崖へ追いやってていく。
するとゴートモンはなんと、崖の下に飛び降りた。
そして崖の僅かな突起に蹄をひっかけて、切り立った崖を登り始めたのである。
驚くコカトリモン。
だが、美味そうな獲物を目の前にして、このままおめおめと似がせるわけがない。
コカトリモンもまた、崖の下に飛び降り、ゴートモンのように崖にしがみつこうとした。
だが、無理だった。
足を滑らせたコカトリモンは、200mの高さの崖から転落した。
必死に翼をバタつかせたが、飛ぶ機能は備わっていない。
どんどん遠ざかっていくゴートモンを睨みながら、コケエエエエと大声で叫んだ。
…そのままコカトリモンは、激しく地面に体を打ち付けた。
バーーーーンという大きな音が、30秒ほど山々に木霊した。
やがて砂埃が消えると、地面に倒れ伏しているコカトリモンの姿が現れた。
全身を複雑骨折し、内臓も破裂しているとみえる。
なんとも痛ましい姿だ。
目玉が飛び出ているコカトリモンは、絞り出すように鳴き声を発しようとするが…
気嚢が破れており、声を発することができないようだ。
死に瀕して悔しそうな表情をするコカトリモン。
己こそが最強だったはずだ。間違いなく山の生態系の頂点だったはずだ。
その自分が、あんな弱そうな奴を捕食できず、こんな無惨な最期を遂げるだなんて。
最強であるはずの自分に、こんなことがあっていいはずがない…!
…そんなことを考えているのが、コカトリモンの全身からありありと伝わってきた。
コカトリモンは、最期の力を振り絞り、デジタマを産んだ。
そして徐々に冷えていくぬくもりで、デジタマを温めた。
…
コカトリモンの死骸が、ヌメモンやゴキモンに食い尽くされた頃…
その遺骨の下の地面が、モコモコと盛り上がった。
地面から出てきたのは、なんとも可愛らしい姿の雛鳥型幼年期デジモン…プルルモンであった。
プルルモンは草の実などを食べて成長し、幼年期第二段階のポロモンへ進化した後、やがて成長期へ進化した。
その姿は、親のファルコモンより、さらに鳥に近い特徴が発達していた。
未発達ながら翼がある。
しかし、その代償として、胸や翼以外の筋肉量はファルコモンよりも少なくなっており、骨の中が中空となっているように見受けられる。
大空を舞うためには、地上で暴れるための強い筋肉や、重くて丈夫な骨格を捨て、軽量化しなくてはならないのである。
小鳥型デジモン…ピヨモンは、未発達な翼で、地上3mほどの高度でばたばたと飛んだ。
地上から飛び上がるのは得意じゃないらしい。
たった一世代で、大空を舞う力が備わるわけではないようだ。
だが、それでも…
崖から飛び降りても、ゆるやかに着地することはできるようだ。
ピヨモンは、崖から飛び立って地面を目指しているときに、何かが目に入った。
それは、ピヨモンの親…コカトリモンのように、ゴートモンを追いかけている、恐鳥型デジモン。
ディアトリモンの姿であった。
どうやらディアトリモンは、ファルコモンとともに山にやってきた成長期、ヴォーボモンが進化した姿のようだ。
やはりヴォーボモンもコカトリモン同様に、飛行能力を得るのでなく、陸上での戦闘能力を追求する進化を遂げたようだ。
ディアトリモンは、崖を登るゴートモンを追いかけ…
そして、足を滑らせて転落した。
あのショッキングな音が、再び山々の間に木霊した。